福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

眠らない、いや、眠れない奉仕者たち

2006-12-14 19:02:41 | 旅行記

061214かつてここで働いていたことがあります。意外かもしれませんが。当時、30歳前後の若き奉仕者たちから多くのことを学びました。

とかく誤解されやすい職なのですが、ちょっとしたミスが大きな波紋を呼ぶことがあり、気が抜けない職です。

この時期、補正予算や緊急の案件で大忙しに違いありません。終電に間に合うように帰ることができれば良いのですが、雑然とした大部屋のソファーで仮眠ということも。自分が休んでしまえば、仕事がたまる一方です。誰も手伝ってくれません。きっと多くのことを犠牲にしているに違いありません。

すり切れてしまうことも多々あろうかと思います。なんとか工夫して、なんとか知恵を絞って、その職で生き抜いて欲しい。

忙しい中、イイノビル地下食堂で一緒に昼食をとってくれた、若き奉仕者の姿を見ていて、ふとそんなことを考えていました。志を貫徹してください!

トボトボ歩いていたら、先週と同じ場所にさしかかりました。気温14℃か。暑061214_1いなあ。都会の雑踏でノロノロしていたら、危ないウィルスに感染してしまいそう。この時期、絶対に病気になれません。

我が身をキリッとさせてくれる札幌に、さあ、早く帰ろう。


大学院時代をどう過ごすか(2)

2006-12-14 00:36:03 | 大学院時代をどう過ごすか

研究には満足感だけでなく、挫折や失望もある。実験の設定がまずかったり、技術的にやっかいな問題があったり、自然そのものが扱いにくいために失敗することもある。良さそうに見えた仮説が、何ヶ月も費やしたあげく、間違いであることがわかったりもする。同僚と、実験データの正しさや、結果の解釈、業績の評価に食い違いが生じる場合もある。このような困難は、科学研究に常につきまとうことである。そのような問題に、若い研究者も年配の科学者も同じように悩んでいる。しかしそのような困難との闘いこそが、また重要な発展をうながすのだ。

米国科学アカデミー編/池内 了訳 『科学者をめざす君たちへ』より

特に大学院は研究年限が限られています。研究期間の終盤に差し掛かって、仮説が間違いであることに気付いたり、データがバラついて統計的に有為な結果が得られないこともあります。そんな状況で、深夜自宅に帰ってもなかなか眠られず、時に枕を濡らしてしまうこともあるかもしれません。そんなとき、思い出して欲しいのです、なぜ研究者を志したのかを。

「動く遺伝子」の発見でノーベル賞を受賞した米国の遺伝学者バーバラ・マックリントック(Barbara McClintock)は、かつて研究についてこんなことを語っています。

「私は、自分が研究していることに非常に興味があったので、朝目が覚めるのが待ちきれず研究に取りかかったものです。これを見て友人の遺伝学者が、まるで子供みたいね、といってました。だって、朝待ちきれずに起きだして、したいことに夢中になるのは子供だけですから」

素朴なことですが、マックリントックと同様な経験をしている大学院生ならば、研究上の苦しみを乗り越えられるはずです。そして、経験を積んだ教員と一緒にデータを検討してみましょう。何かが見えて来るかもしれません。そこで、洞察力を養うことの大切に気がついて欲しいのです。

それでは洞察力をいかに養うかですが、生物学における洞察力は知識と経験を積むしかないと思います。しっかりと体系だてて学ぶ努力を惜しまないようにしましょう。そう言う意味で、大学院時代にしっかりした英文テキストを研究仲間と輪読することは洞察力を養う上で大切なことだと思います。