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函館市とどほっけ村

法華宗の日持上人にまつわる伝説のムラ・椴法華。
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読書の秋

2013年10月04日 11時16分38秒 | えいこう語る
秋だからといって読書に励むタイプでもない。
9月末で天然昆布漁が終了したので、頭を漁師から元の自分に切り替えようと思い、本を手にとったまでだ。
釧路出身の主婦、桜木紫乃さんが、直木賞を受賞した。
テレビでの飾らぬコメントが、なんとも人柄を浮き立たせ、とても魅力的な女性だ。
実家がラブ・ホテルを経営し、高校時代からホテルの清掃をしていたという体験が、受賞作「ホテルローヤル」のベースになったという。
それに、この本の表紙の絵の構図が、私が好きな米国の画家・・・ああ!思い出せない、によく似ているのも購入の誘引となった。その作家は[都会の中の孤独]を、得意とする画家だ。
7つの物語で構成され、どこにもいそうな男女の人間模様が書かれているのだが、やはり直木賞作家の筆力がひしと伝わる、小粋な文章だ。
一見孤独そうに見える男女、だがその向こうにはわずかな希望が見え隠れしているのが、主婦作家の真骨頂だ。
※ネイティブ。アメリカンのナバホ族が住む砦のような、銚子岬。


読み終えてから、次におなじ直木賞作家の藤沢修平の江戸ものを読んでいる。
藤沢作品は、その魅力に引きずり込まれ、つい夜更かしをしてしまう。
庶民の生活の中に起きる、誰にもありがちな出来事を題材に、庶民ならではの矜持が描かれていて、小気味がよい。
小説は「人間を描ききることだ」ということでは、二人の作家は共通している。
桜木さんは、現代版藤沢修平なのかもしれない。
藤沢作品には「おぶん・おしち・おゆみ・おきく」などのありふれた名前が出てきて、それが読むものに親近感を与える。
中にはしたたかだったり粋だったり、女性が魅力的に描かれている。
ふと思い出した女性がいる。
随分前の話だが、ある研修会で何度か一緒になり、親しくなった女性がいた。私より一回り下の年齢に見えた。
私は時代劇的なその彼女の名前が気に入っていた。
「竹子」という。
名前の通り背がすらりと高く、会話もさばさばして、ちょっぴり男っぽい感じもした。
ある時、一泊旅行の研修会に参加することになり、その夜の宴会で同席になった私たちは、酒を飲み交わした。
なかなかの酒豪だが、名前の通りさっぱりした性格に、さらに好感が持てた。
翌朝、ひと風呂浴びてからの朝食。
私たち男性は、ビールを傾けていた。さすがに女性は朝からとはいかないようだ。
その時、離れたテーブルで朝食をとっていた彼女と目が合った。
彼女は、水の入ったコップを私に突き出す動作をした。
「ビール私にもちょうだい」そう唇が動いた感じがした。
私はビールを注ぎに彼女のテーブルに向かった。
今朝も雲一つない秋空だ。
私の読書の秋は「ホテルローヤル」からスタートしたのだ。