元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「MONDAYS」

2022-12-03 06:16:01 | 映画の感想(英数)
 正式タイトルは「MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない」らしいのだが、劇中タイトルには「MONDAYS」としか表示されない(苦笑)。ともあれ、巷では「カメラを止めるな!」(2017年)以来の低予算ブロックバスターとの声が多いらしい。確かにワン・アイデアで機動的な作劇であることは認めるが、「カメラを止めるな!」ほどのインパクトは無い。気の利いた小品という評価がまあ妥当なところだろう。

 主人公の吉川朱海は小さな広告代理店に勤めているが、密かに憧れの人がいる大手への転職を狙っている。それでも日々の業務を貫徹しなければならず、土日も返上同然で働いて迎えた月曜日の朝、彼女は後輩2人から自分たちが同じ一週間をずっと繰り返していることを告げられる。最初は信じなかった朱海だが、確かな証拠を突き付けられて愕然とする。このタイムループの原因は、どうやら部長の置かれた境遇にあるらしい。社員たちは“時の牢獄”から脱出するため、何とかして部長に真実を気付かせるべく奮闘する。



 舞台を小規模な企業の現場に設定したのがミソで、このイレギュラーな事態に最初に気付いた若手社員たちが、問題の核心である部長に直接アプローチしないのが面白い。ちゃんと社内のステータスの順番で事の重大さを納得させていく。これは稟議書のハンコの並びと一緒であり、つまりは“根回し”だ。会社組織を皮肉っているのが愉快だが、社員たちがタイムループを自覚した後に(時間はいくらでもあるので)それぞれ仕事のスキルを上げていくのは説得力がある。

 さらには朱海の転職問題に関しても進展があり、一種の“サラリーマンもの”としての興趣も醸し出す。終盤の処理も悪くない。しかしながら、タイムループ自体が超現実的なネタであり、なおかつパラドックスを指摘されやすい。細かく見れば突っ込みどころは多々ある。非日常的なホラーものと思わせて実は徹底してリアリティを確保していた「カメラを止めるな!」とは、そこが違う。さらに部長が抱える事情そのものも、ドラマの主要プロットに据えるには無理がある。もっと平易なネタでも良かった。

 竹林亮の演出はテンポが良く、別の題材での仕事ぶりを見たくなる。キャストは部長役のマキタスポーツと取引先幹部に扮するしゅはまはるみ以外は馴染みが無いが、演技が拙い者が一人もおらず観ていて気持ちが良い。特に朱海を演じる円井わんは、美人ではないけど実に芸達者で後半には可愛く見えてくる。幸前達之によるカメラワークと大木嵩雄の音楽も良好だ。

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