元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「街のあかり」

2007-10-09 06:56:23 | 映画の感想(ま行)

 (原題:Laitakaupungin Valot)アキ・カウリスマキ監督作品としては「浮き雲」や「過去のない男」などの過去の諸作とは少し異なり、主人公はけっこう若い。ルックスも決して悪くはない。ただし、救いようの無さは甚だしい(爆)。

 彼はショッピングセンターの警備員。仕事ぶりはまじめだが、同僚とはソリが合わず、友人もいない。もちろん色恋沙汰なんて縁がない。飲み屋でも一人きり。それでいて“オレはレベルの低い周りの連中とは違うのだ”という孤高ぶりを気取ったりする。本当に“周りの奴らとは違う”のであれば、しがないガードマンなんかに身をやつしているはずもないのだが、自分の姿を冷静に見つめていない点がいかにも青臭い。まあ、この主人公は極端だとしても、若い頃には誰しも身の程知らずな思い込みをしてしまうものだ。そのあたりの普遍性をキッチリ押さえているところがポイントが高い。

 自分がクールだと思っているだけの彼は、ある日偶然(を装って)声を掛けてきた魅力的な女にコロッと参ってしまう。柄にもなくデートに入れ込み、寝ても覚めても想うのは彼女のことばかり。冷静に考えれば彼のような根暗男にモーションかけてくるような女などまず存在しないのだが、案の定、彼はキッチリとオトシマエを付けられることになる。でも、そんな主人公をちゃんと見てくれている人間もいる。終盤にかけての展開は、作者の彼に対する暖かい視線が感じられて心地良い。

 中身が伴わないのに夜郎自大な態度を取ってしまい、周囲から総スカンを食らっても、心が本当にダークサイドに染まって悪に走らない限り、必ず手を差し伸べる者はいる。“絶対的な孤独”なんてものは、存在しないのだ・・・・という、作り手のポジティヴなスタンスには大いに納得できる。

 演技やシークエンスを必要最小限にまで絞り込んだストイックな展開はいつもながら感心する(上映時間は78分)。フィンランドの冷たい空気が伝わるような映像構成、バックに流れるカルロス・ガルデルの歌声が抜群の効果だ。主役のヤーネン・フーティアイネンのパフォーマンスも申し分ない。

 それにしても、登場人物達が全編これでもかというほどタバコを吸っているには苦笑した。職場や飲み屋は元より、ライヴハウスや映画館でも、ところ構わずスパスパだ。マフィアのボスもその情婦も、当然チェーンスモーカー。喫煙場面を抑える方向に行っているハリウッド映画などに真っ向からケンカを売っているような姿勢は、ある意味天晴れかもしれない(笑)。

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