元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ジャッジ!」

2014-01-27 06:37:22 | 映画の感想(さ行)

 面白い。練りに練ったオリジナル脚本と、ライトな演出。ただ笑わせるだけではなく、浮き世の世知辛さをスパイスとして挿入するバランス感覚。的確なキャラクター配置と、それに応えるキャスティング。娯楽編としては合格点を付けたい。

 大手広告代理店の電通・・・・じゃなかった、現通に勤める若手CMプランナーの太田喜一郎は、横柄な上司から“何かと忙しいオレの身代わりとして、サンタモニカで開かれる国際広告祭の審査員を担当してこい”という無茶苦茶な命令を受ける。理由は上司の名前が大滝一郎であり、太田喜一郎と発音表記が一緒だからだ。さらに男一人で行くとゲイと間違われるということで、仕事は出来るが酒と賭け事が大好きな同僚社員の大田ひかりをニセ妻として連れて行くことにする(もちろん理由は名字の読み方が一緒だからである)。

 ところが、その広告祭には大口のクライアントである竹輪メーカーの“箸にも棒にもかからない低劣なCM”が出品されており、それを入選させなければ喜一郎はクビになるという。当然のことながら各エントリー作のレベルは高く、さらにライバル会社の博報堂・・・・じゃなかった、白風堂の手によるトヨタのハイレベルなCMも参加しており、竹輪云々が取り沙汰される余地は無い。果たして彼に打つ手はあるのか。

 何より、本作のシナリオは伏線の張り方が上手い。映画の冒頭で出てくる、喜一郎が手掛けて酷評されるエースコックのきつねうどんのCMをはじめ、謎の窓際族であるベテラン社員からのワケの分からんアドバイス、ひかりの特異な(?)行動形態、果ては喜一郎が未練がましく持ち歩いている元カノからのプレゼントに至るまで、前半に散りばめられた各モチーフがすべて終盤の展開に絡んでくるという巧みさだ。使われているギャグの数々も秀逸で、いずれも長引かせて嫌味になる寸前で切り上げているのがアッパレ。

 公式な広告祭とはいえ不平等がはびこり主人公達は四苦八苦するのだが、そんな中でも“CMで人を幸せにしたい”というモットーを崩さずに奮闘する喜一郎の姿勢には共感を覚える。監督の永井聡も脚本の澤本嘉光もCM畑の出身だからこそ、そこで働く者達の哀歓を掬い上げることに長けているのだろう。

 主演の妻夫木聡は絶好調で、今のところ“ヘナチョコ青年”を演じさせれば彼の右に出る者はいない(爆)。ヒロインに扮する北川景子も“ゴーマンのようで実はカワイイ”というオイシイ役どころを楽しそうに演じている。リリー・フランキーや鈴木京香、豊川悦司、荒川良々といった脇の面子もそれぞれ得意分野での見せ場を与えられていて納得出来る。個人的には、一発ギャグのためにワンポイントで出演した松本伊代がウケた。外国人のキャストも大挙して出てくるのだが、それらの扱いにもボロは出していない。

 それにしても、豊川が演じる大滝一郎の“無茶と書いてチャンスと読む”という決めゼリフは奥深いものがある。私も機会があれば使ってみたい(苦笑)。

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