元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「フライト・オブ・ジ・イノセント」

2013-05-14 06:43:58 | 映画の感想(は行)

 (原題:La Corsa Dell' Innocente)92年作品。この映画は何といっても冒頭の10分間がスゴイ。舞台は南イタリアの山村。主人公の少年の家をマフィアの一団が襲う。家族を一瞬にして皆殺しにするあたりのすさまじい残虐描写、キレのいい演出、あふれるスピード感、手に汗握るサスペンス。もしもこのペースで全篇つっ走るとしたら、とてつもない傑作になることを予感した。しかし、残念ながらそうならない。

 物語はただ一人生き残った少年と、彼を狙う殺し屋の追跡劇へとなだれこむ。実は少年の親兄弟はマフィアの一派で、この惨劇も北部の富豪の息子を誘拐した一味の仲間割れが原因だった。誘拐された子供はすでに殺されたが、身代金だけはせしめようとする一味。そのことを子供の両親に知らせようと、主人公はローマへと急ぐ。果たして間に合うのか・・・・。

 実に面白そうな設定で、事実、ある程度は面白いのだが、何を勘違いしたのか、ストーリーの展開速度が映画が進むにつれて遅くなっていく。

 昔からイタリア製娯楽映画には残酷ホラーものとかアメリカ映画のパクリとか、少しクサい部分があるが、それらと同じくらい有名なものに“子供をダシに使ったお涙頂戴路線”というのがある。可愛くて芸達者なガキが出てきて、死病ものとか母親探しとか下世話な題材でもって観客の涙をしぼり出させる、あのパターン(実例をあげるのは控えるが)。これが途中から見えてきてしまう。

 死んだ子供の両親と会うシーンがその際たるもので、思い入れたっぷりのロング・ショットがセンチメンタルな音楽をバックに延々展開される。甘い回想シーンもバッチリ。実にあざとい(笑)。

 特筆すべきは映像の美しさ。茶系を中心とした暖かい色調で、イタリア南部の田園風景、夕暮れのローマの街の描写など、見とれてしまう。

 アメリカ映画ならすっきりとまとめてしまう題材であろう。ヨーロッパ映画らしい雰囲気は捨て難いが、もうちょっとドライなタッチを要求したいところ(それでも、本国では、あまりにアメリカ映画っぽいということで批評家のウケが悪かったとか。難しいものである)。ただ、監督カルロ・カルレイはインタビューで、イタリアでは北部の金持ちを狙った誘拐事件が後を絶たないらしく、この映画のような話は珍しくないということを話している。彼の国の南北問題の深刻さを再確認してしまった。

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