元・副会長のCinema Days

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「轢き逃げ 最高の最悪な日」

2019-06-08 06:49:52 | 映画の感想(は行)

 捻ったストーリーで観客を翻弄しようとして、物語の根幹部分が崩壊するに至るという、何ともやりきれない映画だ。有名俳優が演出(および脚本)を手掛けること自体に異存は無いが、今回のケースは的確な助言やサポートが出来る人材が周囲にいなかったと思わざるを得ない。

 関西地方のある都市で、若い女性が轢き逃げに遭って死亡するという事件が発生。運転していたのは大手ゼネコン社員の宗方秀一で、彼は同社の副社長の娘である白河早苗との挙式を控え、その打ち合せに急ぐ途中だった。助手席には彼の親友の森田輝が座っていたが、2人ともその夜から不安で押し潰されそうになる。さらに、目撃者と思われる者から脅迫状のようなものが届けられる始末。一方、被害者の父親である時山光央は遅々として進まない警察の捜査に業を煮やし、自分で勝手に犯人を追い詰めようとする。

 単純な轢き逃げ事件に見えたが実は裏に意外な真相が控えていて・・・・という筋書きだが、困ったことにプロットの組み立て方が弱い。事件の鍵を握る人物が後半に焙り出されるのだが、その伏線は無いに等しい。そもそも轢き逃げ自体が“偶然の産物”に過ぎず、裏の人物が明確に狙ったシロモノではないことは、マイナス要因ではないのか。事件に付随した事柄が判明したところで、秀一の罪状が変わるわけではないのだ。

 光央の行動にも随分と無理があり、ヘタすれば逮捕されるのはこっちの方じゃないかと思ってしまう。また、若手平社員に過ぎない秀一がどうして副社長令嬢のハートを射止めたのか、まるで不明。だいたい、このゼネコンの社内風景は異様だ。斯様にパワハラが表立って横行する有名企業など、今どきあるのだろうか。さらに、秀一と輝がまるで“恋人同士”のように戯れるシーンは、正直気持ちが悪い。

 水谷豊の演出は前作「TAP THE LAST SHOW」(2017年)よりは幾分こなれてきたが、まだ不安定だ。特にキャストの動かし方がぎこちない。各キャラクターの振る舞いには違和感しか覚えないし、一部のキャストに“意味の無い大熱演”を強いるのも愉快になれない。

 中山麻聖に石田法嗣、檀ふみ、岸部一徳、そして水谷自身という出演陣は揃って精彩が無く、僅かに早苗役の小林涼子の可愛らしさが印象に残る程度。ロケ地の神戸市の風景はキレイだが、どこか絵葉書的。手嶌葵による主題歌は良かったが・・・・。

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