特殊能力(?)を持ったポップでジャイヴでイカした奴ら(謎 ^^;)が銀行強盗に挑むという、伊坂幸太郎の同名小説の映画化。こういう地に足がついていないキャラクターたちを無理なく動かして、しかも明るくサラッと後味希薄に仕上げるという芸当は邦画が苦手とするところだが、本作の前田哲監督は健闘していると言える。
セリフは軽くてウィットに富んでいるし、登場人物達のファッションをはじめ画面全体もカラフル。カーチェイス場面に至っては車をCGで描いて“どんなショットでもお手の物”状態を演出。一歩間違うと寒々とした雰囲気が漂うところだが、ノリの良さで違和感なく見せきっている。前田哲の作品を観るのは初めてながら、このライトな感覚は得難い個性であろう。佐藤“フィッシャー”五魚による音楽も好調だ。
しかし、脚本の詰めは甘い。クライマックスのどんでん返しの展開の弱さに代表されるように、プロットの積み上げが行き当たりばったりで、ワクワクするような面白さには欠けるのだ。上映時間も少々無駄に長い。細部をリファインさせれば快作に仕上がったかもしれないのに、惜しい。
キャスト面では“秒単位まで正確な体内時計を持つ女”に扮する鈴木京香と“24時間延々と演説できる男”を演じる佐藤浩市のテンションの高さが印象的(笑)。
なお、佐藤の妻が加藤ローサという“年の差カップル”なのだが、彼女を口説き落とした“演説”がどのようなものだったのか、とても興味がある(爆)。