元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ドミノ・ターゲット」

2019-02-24 06:23:01 | 映画の感想(た行)
 (原題:The Domino Principle)77年作品。数々の秀作をモノにしたスタンリー・クレイマー監督も、最後の映画になった本作では往年の才気は影を潜めてしまった。ただし、製作当時の先の見えない国際情勢を反映しているであろう点には、多少の興味は覚える。

 カルフォルニア州のサン・クエンティン刑務所に殺人犯として収監されているロイは、ベトナム戦争では凄腕のスナイパーとして恐れられていた男だった。ある日、マービンと名乗る男がロイに面会に来る。ロイにとって初対面の相手だが、マービンはロイの過去をよく知っていた。そして“我々に協力すれば出してやる”と言う。ロイは同房のスピベンタも同行させることを条件に、マービンの提案を受け容れる。

 脱獄したロイを待っていたのはリーザー将軍という謎の男で、彼はロイをコスタリカに連れて行く。そこでロイは妻のエリーに再会し、束の間の安息を得るが、やがてリーザー将軍は彼に暗殺の仕事を持ちかける。渋るロイだったがエリーを人質に取られ、仕方なく政府要人を始末する任務に就く。

 主人公を取り巻く状況は曖昧模糊としている。たぶんマービン達はCIAか何かなのだろうが、どういう理由でロイに目を付け、何を目指しているのかハッキリとしない。また、当然のことながら簡単に言うことをきかないロイに“仕事”を押し付ける算段も上等とは思えない。そもそも、エリーと一度会わせて良い思いをさせた後に態度を豹変させてロイに強要するのは、どう考えても面倒くさい(笑)。

 後半になると、ロイに“仕事”を持ちかけたキーマンの一人が消されたり、序盤にいなくなったはずの人物が何の説明も無く生存していたりと、プロットが乱雑になってくる。やがて気勢の上がらないラストが待ち受けているという、鑑賞後の印象はあまりよろしくない。

 とはいえ、中米とアメリカとの関係性を暗示するようなモヤモヤした雰囲気は、ある程度は出ていたと思う。また、主人公がヘリコプターに乗ったまま狙撃体制に入るという活劇場面だけは面白かった。

 ロイ役のジーン・ハックマンをはじめ、キャンディス・バーゲン、リチャード・ウィドマーク、ミッキー・ルーニー、イーライ・ウォラックとキャスティングはかなり豪華。ただし、作劇面でそれらが活かされていたとは言い難い。ビリー・ゴールデンバーグによる音楽は悪くない。
コメント
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