元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「追いつめられて」

2019-02-01 06:36:10 | 映画の感想(あ行)
 (原題:No Way Out)87年作品。ペンタゴンを舞台にしているのでポリティカル・サスペンスと思われがちだが、これは下世話なメロドラマに近い。しかし、筋書きは良く練られており、何より“意外な結末ベストテン”(?)にランクイン出来るほどのラストの扱いはインパクトが大きい。観て損のないシャシンだと思う。

 人命救助の功績によって米国防総省に転属になったトム・ファレル海軍中佐は、前の勤務地で知り合ったスーザンと再会。たちまち2人は良い仲になる。だが、実は彼女はプライス長官の愛人だった。スーザンの浮気に気付いた長官は彼女を暴力的に問い詰めるが、勢い余ってスーザンを殺害してしまう。愛人の浮気の相手が誰だか知らないプライスは、本人を特定させると共に、ついでにそいつがソ連のスパイだということにして、始末してしまおうと画策する。1948年製作の「大時計」のリメイクだが、筋書きや設定は変更になっている。



 たかだか痴情の縺れを一省庁を巻き込んだスキャンダルにしてしまう長官の小物ぶりには、呆れつつも笑ってしまう。斯様なトラブルに関わってしまったトムこそ良い面の皮だが、何度ピンチに陥っても紙一重でかわしていくフットワークの軽さは痛快だ。

 ロジャー・ドナルドソンの演出はテンポが良く、あれよあれよという間に驚天動地の(?)ラストまで観客を引っ張っていく。また、トムとスーザンとのアヴァンチュールは、80年代っぽい大仰な描写で楽しめる。トムに扮しているのがケヴィン・コスナーだというのがミソで、同年製作された「アンタッチャブル」の役柄を逆手に取ったようなキャラクター設定には感心するばかりだ。

 プライス役のジーン・ハックマンは憎々しい悪役を余裕で演じているし、ウィル・パットンやハワード・バフ等の他の面子も万全。スーザンに扮したのはショーン・ヤングで、彼女としては珍しく“ヒロイン然としたヒロイン”(謎 ^^;)を演じているが、前半で早々に姿を消してしまうのは何とも皮肉だ。音楽にモーリス・ジャール、撮影にジョン・オルコットという手練れのスタッフを配しているのも興味深い。
コメント
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