元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「イヴの総て」

2017-07-10 06:30:27 | 映画の感想(あ行)

 (原題:All About Eve )1950年作品。その年のアカデミー賞において作品賞以下6部門に輝いた話題作だが、私は“午前十時の映画祭”にて今回初めてスクリーン上で接することが出来た。世評通り面白く興味深い映画で、いわゆる“芸能界の内幕もの”というジャンルを確立した作品と言えるかもしれない。

 劇作家ロイド・リチャーズの妻カレンは、毎晩劇場の楽屋口で大女優マーゴ・チャニングを“出待ち”しようとしている田舎娘イヴを見かける。彼女に興味を持ったカレンは、イヴをマーゴに紹介する。それをきっかけに、イヴはマーゴの付き人として雇われる。当初はすべてにおいて完璧に仕事をこなすイヴに感心したマーゴだが、次第に有能すぎるイヴをマーゴは疎ましく思うようになる。そしてマーゴの恋人である演出家のビルに対して傲慢な態度を取ったイヴに、マーゴは怒りを隠さない。

 だが、代役として舞台に立つ機会を得たイヴのパフォーマンスは評判を呼び、やがて彼女は批評家のアディスンを利用して有利な条件で次々と仕事をゲットするようになる。しかしアディスンの方が一枚上手で、彼はイヴの“正体”を掴んでいた。それでもイヴの名声は衰えず、ついにはアメリカ劇界最高の栄誉であるセイラ・シドンス賞を獲得するに至る。

 冒頭で授賞式の場面が映し出され、映画はそこから8か月前、つまりイヴとマーゴが最初に出会った頃に時世が遡る。あえて最初に結末を提示しているのは、たとえ“ネタバレ”をしても語り口の上手さによって最後まで観客を引っ張っていけるという、監督兼シナリオ担当のジョセフ・L・マンキーウィッツの自信のあらわれであろう。事実、終盤に至るプロットの組み立て方や、各登場人物の配置には名人芸クラスの風格を感じさせる。

 よく考えてみると、いくら才能があってもイヴがわずか数か月で層の厚い演劇界においてスターダムにのし上がれるわけがない。それ以前に、イヴが実力派ならば地元で何らかの実績を残しているはずである。だが、そんな瑕疵が気にならないほど、本編の展開は巧みだ。

 目的の為なら手段を選ばないイヴと、それを阻止しようとするカレン&マーゴの容赦ないバトル。翻弄されるばかりのロイドとビルの男性陣。そして海千山千のアディスンの暗躍。それらが組んずほぐれつ進行する様子は、一種のスペクタクルだ。さらにラストには飛び切り辛口の仕掛けが用意されており、興趣は高まるばかりである。

 イヴ役のアン・バクスター、マーゴに扮するベティ・デイヴィス、いずれも絶品。セレステ・ホルムやジョージ・サンダース等、他のキャストも万全だ。また新人時代のマリリン・モンローが顔を見せているのも嬉しい。一見の価値はある映画だ。
コメント
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