元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「聖なる狂気」

2013-03-17 06:43:43 | 映画の感想(さ行)
 (原題:The Passion of Darkly Noon)95年作品。デビュー作「柔らかい殻」で、その不気味な映像美とサイキックなストーリーで映画好きを驚かせたフィリップ・リドリー監督の第二作。

 禁欲的なキリスト教系異端カルトに抑圧されて育った男、ダークリー(ブレンダン・フレイザー)は両親を殺されたショックで森を徘徊するうちに倒れ、山奥で口のきけない恋人と暮らすキャリー(アシュレイ・ジャッド)に助けられる。彼女に初めての性欲を覚え、罪の意識にさいなまれる彼は次第に常軌を逸した行動に走るようになる。



 まず圧倒的な森の存在感に注目だ。底がみえない緑の魔境、といった不気味さと美しさはこの監督ならではのもの。さらに思い込みの異様に激しい粘着気質の主人公が引き起こす惨劇、という筋書きも一致しており、カルト教団が話にからむのも公開当時の日本の世相にピッタリだったと思う(?)。

ただ、後半みるみるうちに面白くなくなってくるのは、映画を娯楽方向に振りすぎたせいだ。サイコ・スリラーよりスプラッタ・ホラーに近くなり、クライマックスなんぞ「13日の金曜日」そのまんま。最後までワケわかんない不安さで押しまくってほしかったが、ちょっと大きな資本で撮るとこうなってしまうのだろうか。

 なお、この監督は本作を含めて90年代に数本を撮った後、第一線から退いていた。2009年になって14年ぶりに新作「HEARTLESS」を発表するも、あまり話題になっていない。才気はあっても表現方法が一本調子ならば、行き詰まるのも早いのだろうか。
コメント
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