元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

TADの新型スピーカーを試聴した。

2013-03-21 06:33:30 | プア・オーディオへの招待
 PIONEERのハイエンド部門のブランドであるTADの新型スピーカー、TAD-CR1MK2(ペアで390万円)を試聴してみた。前作のTAD-CR1は過去に何回か聴いており、そのたびに酷評したのだが(爆)、このモデルチェンジ版はどういう展開になったのか、期待1割で怖いもの見たさ9割という不謹慎な態度で試聴に臨んだ次第。

 なお、SACDプレーヤーには同社のTAD-D600(260万円)、プリアンプにTAD-C600(300万円)、メインアンプにはTAD-M600(500万円)という国産品としては超高価なラインナップが揃えられていた。



 実際のサウンドだが、やっぱり予想通りというか、聴感上での物理特性は凄いが基本的にメカニカルで無味乾燥な音だと感じた。このスピーカーを鳴らすということは、通常我々が思っている“音楽鑑賞”という概念から乖離していることが印象付けられる。

 しかし、今回の場合は前作と様相が少し違うようにも思えた。前回までが単に“スペック上のデータ追求”という課題の結果報告みたいなものでしかなかったのに対し、この新型は“データ値を突き詰め、その後に到達する何か”を垣間見せてくれたような感じがしたからだ。とにかく、聴いている間の“不快度”は前作よりは低い。

 ではその“何か”とは具体的にどういうものかというと・・・・一概には説明できない(こらこら ^^;)。ただ、このニューモデルに接して真っ先に思い浮かべたのが、かつて松下電器(現Panasonic)がTechnicsブランドでリリースしていた一連のオーディオ商品のうち、その最後期に発表された製品群だ。

 Technicsのオーディオ機器は技術的には凄いものがあったが、一部のモデルを除けば音楽的な味わいに欠けていた。しかし、90年代末に発表されたこのブランドの最後発の製品は、スペック追求の末に行き着いたような清涼で見晴らしの良い展開を示していて感心したものだ。まさに国産品でなければ成し得なかったサウンド世界と言っても良いだろう。



 今回のTADの新作スピーカーは、そんなTechnicsの“到達点”に少し通じるものがあると感じる。それに大きく貢献したのが新開発の低域ユニットかもしれない。発泡アクリルをアラミドファイバーで挟み込んだ振動板を採用しているとかで、中低音のS/N比が向上しているらしい。

 とはいえ、かつてのTechnicsは今のTADのように超高額品オンリーではなかった。一般ピープルでも十分に手が届く価格帯の商品でも独自のテイストを披露出来ていたのだ。現在のPIONEERにそれが可能かというと、無理だと思う。何しろ、あの頃の松下電器の資本力は並外れていた。いくらPIONEERがオーディオの老舗でも、ハイエンドであるTAD-CR1MK2の方法論を普及品に応用するのは並大抵のことではない。

 何のかんの言っても、私には総額一千万円にも達するTADのシステムは買えないし、大半の消費者にとっても同様だ。極端な高価格品でいくら存在感を見せても、エンドユーザーが手にすることが出来る製品が上質でなければ何もならない。今後も同社のスピーカーは精彩を欠いたままなのだろうか(-_-;)。
コメント
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