大学2年の夏、「伊豆の踊子」を追い駆けて、自転車で伊豆半島を訪ねた。
南伊豆から西伊豆にかけて、冬は白いマーガレットの花の栽培が盛んだった。 決して見事な美しい花、との印象はなく、地味な花。
当時、西伊豆の松崎から南、海岸沿いの道路は、ガタガタの砂利道で、バスも満足に通っていなかった。 無論、自動車専用道路などなく、何とも鄙びた、ポツポツと寒村の連なる地域だった。 冬は西風が強く底冷えがし、マーガレットの花が可憐に思えた。
「雲見」の民宿Tには、マーガレットの如く色白で清楚な美形、独身若女将がおり、その後、休みの度に幾度となく訪ね、級友達と卒業旅行に訪れた「学生時代の思い出の場所」であった。
社会人生活が始まると訪れる機会も滅多になくなった。 更に2年後には大阪転勤で、記憶の中だけの「伊豆の踊子」になってしまった。 もう、半世紀も昔の話だが、マーガレットの花と共に、必ず思い出す楽しくもほろ苦い記憶。 当時、私小説にとどめようと考えるも、文才に乏しく、且つ会社生活に追いまくられ負けてしまった。 彼女は、今、どうしているだろうか?
元気な内に、バイクで伊豆半島巡りを考えるのも、故あっての話。