#photobybozzo

沖縄→東京→竹野と流転する、bozzoの日々。

たぬき/山之口貘

2007-10-05 | MUSIC
てんぷらの揚滓それが
たぬきそばのたぬきに化け
たぬきうどんの
たぬきに化けたのしても
たぬきは馬鹿に出来ないのだ

たぬきそばはたぬきのおかげで
てんぷらそばの味にかよい
たぬきうどんはたぬきのおかげで
てんぷらうどんの味にかよい
たぬきのその値がまたたぬきのおかげで
てんぷらよりも安あがりなのだ

ところがとぼけたそば屋じゃないか
たぬきは生憎さま
やっていないんですなのに
てんぷらでしたらございますなのだ

それでボクはいつも
すぐそこの青い暖簾を素通りして
もう一つ先の
白い暖簾をくぐるのだ

    ●

この詩ではじめて「たぬき」に、合点した。

なるほど「たぬきそば」は
「てんぷらそば」に化けたって意味なのね。

諸説いろいろあるみたいだが、
この理屈がいちばん、説得力があるじゃない。

「きつねそば」は
油揚げが「きつね」に似ているからってな
理由だったような。

しかし、関西では
「たぬき」が油揚げをのせたそばで
「きつね」が油揚げをのせたうどん…
というからややこしい。

しかし、江戸の町民は、洒落があって、粋だねえ。


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紙の上/山之口貘

2007-10-05 | MUSIC
戦争が起き上がると
飛び立つ鳥のように
日の丸の翅をおしひろげそこからみんなで飛び立った

一匹の詩人が紙の上にいて
群れ飛ぶ日の丸を見上げては
だだ
だだ と叫んでいる
発育不全の短い足 へこんだ腹 持ち上がらないでっかい頭
さえずる兵器の群をながめては
だだ
だだ と叫んでいる

だだ
だだ と叫んでいるが
いつになったら「戦争」が言えるのか
不便な肉体
ともる思想
まるで沙漠にいるようだ
インクに渇いたのどをかきむしり熱砂の上にすねかえる
その一匹の大きな舌足らず
だだ
だだ と叫んでは
飛び立つ兵器の群をうちながめ
群れ飛ぶ日の丸を見上げては
だだ
だだ と叫んでいる
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頭をかかえる宇宙人/山之口貘

2007-10-05 | MUSIC
青みがかったまるい地球を
眼下にとおく見下ろしながら
火星か月にでも住んで
宇宙を生きることになったとしてもだ

いつまで経っても文無しの
胃袋付きの宇宙人なのでは
いまに木戸からまた首がのぞいて

米屋なんです と来る筈なのだ

すると女房がまたあわてて
お米なんだがどうします と来る筈なのだ

するとボクはまたボクで
どうしますもなにも
配給じゃないか と出る筈なのだ

すると女房がまた角を出し

配給じゃないかもなにもあるものか
いつまで経っても意気地なしの
文無しじゃないか と来る筈なのだ

そこでボクがついまた
かっとなって女房をにらんだとしてもだ

地球の上での繰り返しなので
月の上にいたって
頭をかかえるしかない筈なのだ


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年輪/山之口貘

2007-10-05 | MUSIC
ふと かれに出会って
ふと キスされて
ふと かれが好きになって
ふと すばらしいとおもって

ふと ほほえんで
ふと 大きなこえをあげて
ふと 未来をちかって
ふと うつくしい生活をはじめて

ふと 子供に見とれて
ふと かれの変化に気づいて
ふと 捨てられたことをしって
ふと 涙をながして

ふと ひとりぼっちになって
ふと 身よりをたずねて
ふと 顔のしわをみつめて
ふと 眼を閉じて


    ●

本日、眼科に行く。
2週間ほど前から右眼が充血。
まぶたの内側になんだかできものが。

ひととおりの検査をしてもらう。
視力、眼圧、内障など。
左眼が視力0.1となっていることに驚く。

うちまぶたの白いできものは
どうやらシコリのようなものらしい。
異物が入って出来た疵が、そのまま固まったようだ。

これも歳のせいか。

目薬でシコリを小さくはできるが、
完全除去は手術が必要…とのこと。

おいおい、今度は眼の手術?

なんだか、いろんなところが
支障をきたしている。

ははあ、頭が一番危ないって?
そうかもしれない。

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