劇団山の手事情社公演「
ヘッダ・ガブラー」
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文化学院_講堂
山の手事情社・安田雅弘演出2度目の体験。
度肝抜かれる…。
シンプルな構成、シンプルな舞台装置、研ぎ澄まされたセリフ_。
若い頃、確かに持っていた。しかしふと気がつくと
指の隙間から滑り落ちるように無くなっているもの。
今回の舞台美術や衣装は、そういう考えのもとに作業を進めた。
年を取るのも忘れて、何百年も舞踏会を続けていた人々が、
亡霊となって織り成す物語として【ヘッダ・ガブラー】を捉えなおした。
かつてカタチを持っていたもの、カーテンや帽子や花束やグラスや本は、
すでにボロボロになっている。かろうじて意思だけが残った人々が、
通りかかった女性に「ヘッダ・ガブラー」の物語を、夢として見せるのである。
亡霊たちの振る舞いは、一見空しく、ばかばかしい。
しかし、それは取りも直さず、私たちの姿である。
イプセンが亡くなって、百年強。
翻って百年後、私たちも含め、私たちが手にするモノは、
皆例外なく朽ち果てる。しかし、それゆえにこそ世界は美しいのだ…と、
私には思えるのである。(ヘッダ・ガブラー解説_by_安田雅弘)
手に取るモノすべてがモクズと化した舞台で、役者たちは空疎にモクズをグラスに見立て、演ずる。
その振る舞いが、人間の喜怒哀楽の儚さ、空しさを浮き彫りにしていて、戦慄もの。
身震いがする…身の毛がよだつ…。なんという浅はかな存在なのか…!!
安田演出、クセになる面白さであり、奥深さ。
演劇人にはタマラナイ劇団であること、間違いナシ!
29日〔土)まで。