ピアノトリオがオリジナルのブルースの演奏を終えて、ピアノが
「The Star Crossed Lovers」のイントロを弾き始めた。ボクが
店にいるとそのピアニストはよくそのバラードを弾いてくれた。
ボクがその曲を好きなことを知っていたからだ。エリントンの作
った曲の中ではそれほど有名な方ではないし、その曲にまつわる
個人的な思い出があったわけでもないのだが、何かのきっかけで
耳にしてから、ボクはその曲に長いあいだずっと心を引かれ続け
ていた。学生時代にも教科書出版社に勤めていた頃にも、夜にな
るとDuke EllingtonのLP「Such Sweet Thunder」に入っている
「The Star Crossed Lovers」のトラックを何度も何度も繰り返
して聴いたものだった。そこではJonny Hodgesがセンシティブで
品の良いソロをとっていた。その気だるく美しいメロディを聴い
ていると、当時のことがいつもボクの頭の中によみがえってきた。
あまり幸せな時代とは言えなかったし、ボクは満たされない思い
を抱えて生きていた。ボクはもっと若く、もっと飢えていて、も
っと孤独だった。でもボクは本当に単純に、まるで研ぎ澄まされ
たようにボク自身だった。その頃には、聴いている音楽の一音一
音が、読んでいる本の一行一行が体にしみ込んでいくのが感じら
れたものだった。神経は楔のように鋭く尖り、ボクの目は相手を
刺すようなきつい光を含んでいた。そういう時代だったのだ。
(「国境の南太陽の西」村上春樹著)
●
11月05日の夜、2年ぶりに六本木alfieへ行ってみた。
2年前は会社の慰安旅行で東京に来た時だから、
なんだかかなり遠い記憶に感じる。
…2年前だったか。
あの頃は会社勤めもしていて、
慰安旅行に託けてalfieへ顔を出したのか…。
そんな時代があった…んだ…と、
かなりセンシティブな心境だけれど、
今回の目的はもちろん川崎太一朗さんのブリリアントな音を聴きに。
しかしオルガンをバックに従えての演奏だとは思わなかった。
このオルガン奏者、河合代介さんがものすごいPlayerで、ハイ。
オルガンはベースを足で奏でるのだけど、
この足裁きが目を見張る素晴らしさ。
両手でソロを弾きながら
左足でGrooveたっぷりのベースラインを弾くって、
曲芸以外の何ものでもないと…ただただ口あんぐり。
目の前で繰り広げられる神業と、
レスリースピーカーから産まれてくるgroovyなサウンドと…。
いやあ、知らなかったけど、
ハモンドオルガンって、今日本で作っているのね。
とにかく驚きのFunkyTuneの連続で、リーダーを務める太田剣さんも
Cannonball Adderleyを崇拝するアルト吹きだけあって、
スケールを縦横無尽に吹き飛ばすあたり度肝抜かれたんだけど、
(ホント、alfieでは驚嘆な演奏ばかりに出会えて嬉しい)
そのFunkyなソロに気負ったのか、
川崎さんのソロは1,2曲と少しばかりGrooveが薄くて、
見ているこっちがちょっとばかりはにかんでしまう感じだったのだけど、
いやいや、さすがの太一朗さん。
びっくりしました。
このDuke Ellington's Sound of Loveって曲で。
「Charles Mingusすげえ」って、楽曲自体にも驚いちゃって、
春樹の「国境の南太陽の西」で出てくる
「The Star Crossed Lovers」思い出しちゃったんだけど、
今、聞き比べるとよお似てる。さすが、チャールス。
この気だるい感じと、スケールの大きさ。
楽曲のもつヴィジュアルイメージの懐の深さ。
これを河合さんのポリフォニックなオルガンを背に
朗々と歌う川崎さんのFlugelhornがもう、たまらなくて。
…何かのきっかけで耳にしてから、
ボクはその曲に長いあいだずっと心を引かれ続けていた。
じゃないけど、
あの日以来、中古CD屋を巡る日々。
チャールスのあのいかつい顔からは想像つかないほど、
彼の作る楽曲はとても奥ゆかしくそんでもって奥深くて
人間の懐の深さっていうか、「JAZZは人間そのもの」って
名言吐くほどの生き様だったんだなあ…と改めて聴き入っている。
Monksにしろ、Mingusにしろ、Dolphyにしろ、
Jazzにすべてを捧げたミュージシャンが奏でる音楽は
いつ聴いても色褪せないし、センセーショナルだ。
そんな出会いを導いてくれた六本木Alfieには、
学生時代からの思い入れがあるから、
日野元彦さんの面影も感じつつ、いつも襟を正してJazzを拝聴してる。
夜な夜な徘徊して、Jazz漬けの日々で
飯が食えたら最高なのに…と、今夜もJazzに心酔。
「The Star Crossed Lovers」のイントロを弾き始めた。ボクが
店にいるとそのピアニストはよくそのバラードを弾いてくれた。
ボクがその曲を好きなことを知っていたからだ。エリントンの作
った曲の中ではそれほど有名な方ではないし、その曲にまつわる
個人的な思い出があったわけでもないのだが、何かのきっかけで
耳にしてから、ボクはその曲に長いあいだずっと心を引かれ続け
ていた。学生時代にも教科書出版社に勤めていた頃にも、夜にな
るとDuke EllingtonのLP「Such Sweet Thunder」に入っている
「The Star Crossed Lovers」のトラックを何度も何度も繰り返
して聴いたものだった。そこではJonny Hodgesがセンシティブで
品の良いソロをとっていた。その気だるく美しいメロディを聴い
ていると、当時のことがいつもボクの頭の中によみがえってきた。
あまり幸せな時代とは言えなかったし、ボクは満たされない思い
を抱えて生きていた。ボクはもっと若く、もっと飢えていて、も
っと孤独だった。でもボクは本当に単純に、まるで研ぎ澄まされ
たようにボク自身だった。その頃には、聴いている音楽の一音一
音が、読んでいる本の一行一行が体にしみ込んでいくのが感じら
れたものだった。神経は楔のように鋭く尖り、ボクの目は相手を
刺すようなきつい光を含んでいた。そういう時代だったのだ。
(「国境の南太陽の西」村上春樹著)
●
11月05日の夜、2年ぶりに六本木alfieへ行ってみた。
2年前は会社の慰安旅行で東京に来た時だから、
なんだかかなり遠い記憶に感じる。
…2年前だったか。
あの頃は会社勤めもしていて、
慰安旅行に託けてalfieへ顔を出したのか…。
そんな時代があった…んだ…と、
かなりセンシティブな心境だけれど、
今回の目的はもちろん川崎太一朗さんのブリリアントな音を聴きに。
しかしオルガンをバックに従えての演奏だとは思わなかった。
このオルガン奏者、河合代介さんがものすごいPlayerで、ハイ。
オルガンはベースを足で奏でるのだけど、
この足裁きが目を見張る素晴らしさ。
両手でソロを弾きながら
左足でGrooveたっぷりのベースラインを弾くって、
曲芸以外の何ものでもないと…ただただ口あんぐり。
目の前で繰り広げられる神業と、
レスリースピーカーから産まれてくるgroovyなサウンドと…。
いやあ、知らなかったけど、
ハモンドオルガンって、今日本で作っているのね。
とにかく驚きのFunkyTuneの連続で、リーダーを務める太田剣さんも
Cannonball Adderleyを崇拝するアルト吹きだけあって、
スケールを縦横無尽に吹き飛ばすあたり度肝抜かれたんだけど、
(ホント、alfieでは驚嘆な演奏ばかりに出会えて嬉しい)
そのFunkyなソロに気負ったのか、
川崎さんのソロは1,2曲と少しばかりGrooveが薄くて、
見ているこっちがちょっとばかりはにかんでしまう感じだったのだけど、
いやいや、さすがの太一朗さん。
びっくりしました。
このDuke Ellington's Sound of Loveって曲で。
「Charles Mingusすげえ」って、楽曲自体にも驚いちゃって、
春樹の「国境の南太陽の西」で出てくる
「The Star Crossed Lovers」思い出しちゃったんだけど、
今、聞き比べるとよお似てる。さすが、チャールス。
この気だるい感じと、スケールの大きさ。
楽曲のもつヴィジュアルイメージの懐の深さ。
これを河合さんのポリフォニックなオルガンを背に
朗々と歌う川崎さんのFlugelhornがもう、たまらなくて。
…何かのきっかけで耳にしてから、
ボクはその曲に長いあいだずっと心を引かれ続けていた。
じゃないけど、
あの日以来、中古CD屋を巡る日々。
チャールスのあのいかつい顔からは想像つかないほど、
彼の作る楽曲はとても奥ゆかしくそんでもって奥深くて
人間の懐の深さっていうか、「JAZZは人間そのもの」って
名言吐くほどの生き様だったんだなあ…と改めて聴き入っている。
Monksにしろ、Mingusにしろ、Dolphyにしろ、
Jazzにすべてを捧げたミュージシャンが奏でる音楽は
いつ聴いても色褪せないし、センセーショナルだ。
そんな出会いを導いてくれた六本木Alfieには、
学生時代からの思い入れがあるから、
日野元彦さんの面影も感じつつ、いつも襟を正してJazzを拝聴してる。
夜な夜な徘徊して、Jazz漬けの日々で
飯が食えたら最高なのに…と、今夜もJazzに心酔。