環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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平成19年版「環境・循環型社会白書」の不可解

2007-10-27 16:42:58 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
 
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去る10月21日の第1回学習会では、「安心と安全な国づくりとは何か-スウェーデンに学ぶ持続可能な社会」と題して、この分野で最先端を行くスウェーデンの行動計画をお話しました。第2回の学習会が12月に予定されています。今回は日本のお話です。このブログの読者の皆さんと直接意見交換ができればと願っています。また、皆さんのお知り合いの方にお声をかけていただければ、幸いです。



10月24日のブログで、皆さんは「持続可能な社会」、「低炭素社会」、「循環型社会」、「自然共生社会」、これらを組み合わせた社会とは何だかおわかりですか、私にはさっぱりわかりません と書きました。これらの言葉は、10月17日の環境新聞に寄せられた鴨下一郎・環境大臣の「バイオマス総合展 2007」開催へのあいさつ文に登場したものでしたね。

今日は次の図から始めましょう。この図は最新の「平成19年版 環境・循環型社会白書」の「刊行に当たって」から抜粋したものです。若林正俊・前環境大臣が書いたことになっています。図に示したように、最初の20行は省略してあります。


「刊行に当たって」に書かれることは、常識的には、刊行した本の著者がその本に託した最も重要な考えや主張やメッセージをまず読者に知っていただこうと真剣に力を入れて推敲したものであるはずです。この「刊行に当たって」で、私が注目した点が2つあります。

一つは、この短い文章の中に、なんと、私が10月24日のブログで指摘した「持続可能な社会」、「循環型社会」、そして「低炭素社会」という概念が異なる3つの用語が混じっていることです。

そこで、本文を読んでみました。この白書は「第1部 総説」と「第2部 環境・循環型社会の形成の状況と政府が環境の保全・循環型社会の形成に関して講じた施策」から成っています。「第1部総説」は「総説1」と「総説2」からなります。「総説1 進行する地球温暖化と対策技術」の中に、23ページから始まる「第3章 地球温暖化対策を進める技術」があります。この章建ては次のようです。

第1節 持続可能な社会への転換(p23)
第2節 対策の現状と技術の役割
第3節 技術による環境問題克服の経験
第4節 身近にある対策技術
第5節 対策技術の活用の方向性
むすび 低炭素社会を目指して(p50)

不思議なことに、本文23ページの「第1節 持続可能な社会への転換」で始まったこの章は、50ページの「むすび 低炭素社会を目指して」で終わっています。そして、「むすび」の中で「低炭素社会」という言葉が突如2度出てきますが、何の説明もありません。「第1節」から「第5節」までは一度も「低炭素社会」という用語は出てきませんでした。また、この白書の392ページから409ページに「語句説明」があるのですが、ここにも「低炭素社会」の説明はありません。つまり、この章では「持続可能な社会」と「低炭素社会」を結びつける説明が全くないのです。もちろん、「循環型社会」という言葉この章には全く出てきません。

51ページから「総説2 我が国の循環型社会づくりを支える技術-3R・廃棄物処理技術と変遷-」が始まり、107ページで終わります。「循環型社会」という用語はこちらに出てきます。

そこで、私は試しに平成18年5月の「平成18年版 環境白書」を調べてみました。この白書の「環境白書の刊行に当たって」は小池百合子・元環境大臣が書いています。ここでは「持続可能な社会を築いて、あるいは、持続可能な社会を構築する」という表現で、「持続可能な社会」という用語が3回登場します。

平成18年版白書も19年版白書と同じように、「第1部 総説」は「総説1 人口減少と環境」と「総説2 環境問題の原点 水俣病の50年」から成っています。「総説1」に「第2章 人口減少に対応した持続可能な社会づくり」があります。この章建ては次のとおりです。

第1節 持続可能な社会に向けての契機
第2節 始まった持続可能な社会づくり
第3節 持続可能な社会の姿
第4節 むすび

こちらは、19年版白書とは違って、「第1節」から「第4節」まで、「持続可能な社会」で統一されています。

つまり、混乱し、迷走し始めたのは最新の「平成19年版環境・循環型社会白書」からということのようです。


次は、私が「平成19年版環境・循環型社会白書」で注目したもう一つの点です。「刊行に当たって」には、「本年は、国民の皆様に環境問題や循環型社会形成の取組の全体像が一体的に見渡せるよう、2つの白書を一冊にまとめた形で公表することとしました。」と本書の目的が書いてあります。「国民の皆様に全体像が一体的見渡せるよう、2冊の白書を一冊にまとめた」とは、好ましいと思いましたが、本文は木に竹を無理に接ぎ木させたような違和感を感じました。





でも初めての試みなので、今後、改善されるだろうと思っていたところ、次のような記事に遭遇しました。どうやら2つの白書をひとつにした理由は、「国民の皆様に全体像が一体的に見渡せるよう、2冊の白書を一冊にまとめた」のではなくて、次のような理由、つまりコスト削減のためだったようです。どおりでね。これで合点がいきました。やはり、こんなことだったのですね。

いよいよ、日本の21世紀前半社会の概念形成がますます混乱し、ついに迷走し始めたのではないでしょうか。

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