秋の日の石仏

2010-09-23 | 日記
石は微笑んでいた。

秋の日の山道の誰も顧ない路傍に、それは約束を待っているかのように失われていたのだった。

  「 石は紅差して千年答えず 」

瀧口修造の詩の一節だが、彼の何という詩であったか、今は忘れてしまった。「 石 」 とは石仏のことだろう。「 紅 」 とは口紅が剥がれ落ちてしまって、微かに残る紅のことだろう。紅はまた、慈悲のことでもあるかも知れない。石仏は千年の時を経ても答えられないのだ。あなたの顔が見えないし、あなたの声も聞こえない。問われたことさえ知らないのだ。ただ静かに座して千年の時が巡った。そして、いつか石は微笑んでいた。  


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