アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

上岡のブル3を再考

2017-06-21 06:00:00 | 音楽/芸術

この週末に、先月聴いてきた上岡敏之によるブルックナーの第3交響曲のテレビ放送があったので、あらためて聴いてみた。Eテレの「クラシック音楽館」という番組だ。

インタビューのシーンで、上岡氏はワーグナーとブルックナーとは全く正反対の音楽であると語り、ブルックナーの音楽には深い祈りを感じると語っていた。歌えるようなモチーフはなく、単純な主題の積み重ねから表れる響きの中で、目に見えないものを感じ取るということなのだろう。実際、アントンKもブルックナーを聴く場合は、響きの奥深さの善し悪しで感じることが違ってくるように思っている。だから自分にとっては、技術至上主義な演奏よりはパウゼを意識した精神至上主義の演奏の方が好みなのだ。この点から言えば、この日の上岡敏之の演奏は、まさにプレーヤ達から、どこか神がかった雰囲気が伝わってきたと言えるだろう。

番組内のリハーサルシーンで、指揮者上岡が、第1楽章の出の部分、弦楽器に対して「弾かないくらいの感じでいきましょう~」と極端な事を要求していたが、まさにこの部分は、アントンKにとって当日のっけから驚嘆したポイントだった。主題を奏するTpに対し、このリハーサルでは、「周りを気にせずしっかり出して!」と言っていたが、本番では、このTpでさえ抑えられていた印象だった。もっともテレビのスピーカからの音では、当日を再現することは不可能であり、演奏の記録として割り切らなければならないが、それでも表面に現れた音楽表現については、確認できるから、今後しばらくはVTRを鑑賞してみたいと思っている。

それにしてもオーケストラの各パートの方々が証言していたが、上岡氏の経験や伝統に捕らわれない演奏解釈は本物だ。音に色が付いているとすれば、今までにない色まで要求するだろう。それが今回のブルックナーであり、そしてワーグナーということになる。きっと新日本フィルも上岡氏の求める音色を自然に奏でる様な関係になっていくのだろうが、その過程を一緒に歩むことも自身心の栄養になり、ワクワクさせられるひと時なのだ。

 

 


つかの間のひととき

2017-06-18 10:00:00 | 鉄道写真(EL)

都内でも紫陽花が綺麗な花を付けている。もう今年も半分終わる、そんな季節になった。

何気なく通りかかった線路端に綺麗な紫陽花を見つけた。カメラを持って撮影ポイントを探していても、不審者扱いを受ける切ない世の中。通行人の目を気にしながらアングルを探すが、狭い短絡線では思うようにはいかない。ほどなくして踏切が鳴り、いつもの列車が近づいてきた。

梅雨の晴れ間、朝のひととき・・

今年はまだ雨が少ない。空梅雨なのか?少し心配だ。

2017-06     153レ  尻手短絡線にて


カシオペアの行方

2017-06-17 10:00:00 | 鉄道写真(EL)

JR東日本でもこのGWから「四季島」の営業運転が始まったが、依然として「カシオペア」も団体列車として存在している。北海道まで乗り入れることは無くなったが、JR東日本管内を周遊する団体客向けの列車として運行されているのが現状だ。今月も青森までの運転が毎週末ごとにある。

いつもなら四季島と絡めてこの日の長い時期、撮影計画をたて遠征に出向くであろうアントンKだが、ここのところちょっと意気が上がらない。理由は多々あるのだが、最大の理由は時間を他の事に費やしたくなったためだろうか。正直なところ、そんなに焦って撮影もしたくはなくなった。こんな気持ちで遠征しても良いものは撮れないだろうから、ここはきっぱり充電に徹する方が得策と考えているのだ。それと今後は撮影スタイルを徐々に変えていきたいので、このタイミングが都合良いのかもしれないと思っている。

さてそのカシオペア。今月を始め片道運行が主体となりつつあり、往路は営業、復路は回送のパターンが増えてきた。これも撮影行きに引っかかるポイントで、アントンKの中ではHMの無い回送列車は魅力が半減してしまう。もちろんE26系という銀色の客車自体如何なものか、という根本的な趣向も自分の中では沸き上がってきてしまった。客車で長ければ何でも良いのかという趣向である。まあじっくり時間をかけて考えていきたい撮影考なのである。

今の気持ちに相応しい写真があったので掲載しておく。上越国境を越えるカシオペアはロクヨンの補機が付くのが通例だったが、現状はEF81単機牽引で走っているようだ。この時はかろうじて補機付きマーク無しの回送列車。秋晴れ想定の沼田だったが薄雲にやられてしまった痛恨のカット。

2016-10   回9830レ  EF641031+EF8181


飯田線/旧型国電の思い出

2017-06-14 05:00:00 | 国鉄時代(モノクロ)

今回は40年以上前に飯田線で撮影した思い出のカットを掲載。

時代はSLブームがひとしきりして、旧型電機へと目が向きつつある頃。ご多分に漏れずアントンKも友人とともにED18~19とEF10の撮影旅行に出た。当時、飯田線にも貨物列車が煩雑に設定されていたが、合間に現れる旧型国電も大変魅力的な被写体となった。「国電」なんて言ったら、現代の鉄道マニア達には死後だろうか。非常に懐かしい響きに感じてしまう。今も存在するかわからないが、「旧型電車ガイドブック」という専門書をいつも手元に置いて各形式をなめるように見ていたことも懐かしい。そのガイドブックに載っている車輛に実際乗車して、ツリカケモーターの走行音を味わったことも忘れられない思い出だ。

写真は、水窪川を渡るようで渡らない、当時はとても奇異に感じていたガーター橋を川原に降りて撮影した。地形の関係なのだろうか、左奥から姿を現した電車は、ガーター橋で対岸に渡ると思いきや、そのまま弧を描いて、再びもとの側へ戻って行く線形だ。こんな線路配置は当時は全国でも珍しいと感じていたが、今でも同じような線路配置なのだろうか。時間を見つけて再び乗車してみるのも面白い。

これは、実際乗車した電車の窓から、同場所を撮影した画像。

1976-07-21     1222M  Mc54002ほか4連    飯田線/城西-向市場にて


冨平恭平のブル4の快演を聴く

2017-06-10 22:00:00 | 音楽/芸術

昨年12月に偶然出会った冨平氏のブルックナーに共感し、それ以降彼の演奏会を覗っていたが、ようやく想いを本物にする時がやってきた。今回も某金融機関で構成されたみずほフィルというアマチュアオーケストラだったが、アントンKには、極論を言ってあまりオケの善し悪しは二の次だ。録音されたものと違って、実演奏に接する場合は、指揮者やプレーヤーからの想いや意気込みが演奏から伝わってくる事の方が大事であり、心を一つに出来た時の感動もひとしおなのである。増してアマオケの場合、プロとは違った事務的なところは皆無で、今まで積み重ねてきたものが本番にダイレクトに現れてくると考えられるのだ。

さて、今回の冨平恭平のブルックナーの第4交響曲だが、やはり指揮者の意図とも言うべき、ブルックナーの響きを完全に掴んでいる演奏であった。非力なオケをあそこまで自分の理想であるだろう響きの世界に近づけるとは、相当な努力が必要だったはず。素晴らしいことだ。

第1楽章の出の数小節を聴いただけで、この演奏が凄いことになると予想できるくらいの内容で、まずピアニッシモ(pp)で開始される冒頭の弦楽器の霧が、しっかりとした音として鳴り響き、その上にホルンが大きめに悠々と主題を提示する。こんなテンポでこの後大丈夫なのかと心配させるくらいの厳かな雰囲気を醸し出していたが、ちょうどチェリビダッケの92年あたりの演奏か、あるいはエッシェンバッハの録音で聴かれるくらいの言いまわしだった。音楽が膨らみ、例のブルックナーリズムの提示部でも、金管楽器が叫ぶようなことはなく、オーケストラ全体のトーンを感じられたことは嬉しくなった部分。アントンKがこの楽章で最も好きな譜面Kからの下りは、緊張感の中に各声部のバランスを重視しようとする冨平氏が心強く、安心してその響きに身を置くことができたのである。

どちらかというと大柄な冨平氏の指揮振りには、器用さは感じられず、唐突な動きの中に直接的な指示が飛び、客席からの姿はどことなく若い頃の朝比奈隆に通づると思ったくらいだ。

今回の第4交響曲は、緩徐楽章がアダージョではなくアンダンテで書かれている。多くの指揮者は、緩徐楽章だからということなのか指示を無視してゆっくりと作り上げる事が多い中、冨平氏はしっかりとアンダンテということを意識しており、こういう細かい譜読みもブルックナーの場合重要に思う。森の散策と言った部分や、弦楽器のピッチカートの表現は最良であり、聴いていて納得させられるポイントが多かったのだ。

普段ブルックナーなど聴かない聴衆たちが多かったのか、曲が後半に渡るに連れてホール内には飽きを感じられたり、はたまたオーケストラも体力的になのか、ロングトーンの音量が減少してしまったり、ここぞというキメの部分で外してしまったりと残念な部分が増えてしまったが、それでも、フィナーレのコーダの高揚感と響きのバランス感覚は流石であったと記しておきたい。

今回の演奏は、楽曲が進むに連れて粗雑になってしまったり、歌のない木管楽器群を差し引いても、アントンKには指揮者冨平恭平氏のブルックナー愛は感じ取れたと思っている。普段は合唱の指導や指揮活動、オペラ等の演出も手がけている冨平氏であるが、出来ることなら次回は、読響か大阪フィルでブルックナーを聴いてみたい。フランス物と組むようなプログラムにはせずに、前半にモテットやテ・デウムを置き、メインにはがっちり交響曲を演奏するような彼ならでわの独自性の強い演奏会を望みたいところだ。

2017-06-10   府中の森芸術劇場 どりーむホール

みずほフィルハーモニー第32回 定期演奏会

モーツァルト 歌劇「魔笛」序曲

ドリーブ バレエ組曲「コッペリア」より抜粋

ブルックナー 交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティツク」 (ハース版)

~アンコール~

ドリーブ バレエ組曲「コッペリア」よりコーダ