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〔 温泉地巡り 〕 やぶ(藪)塚温泉

久しぶりに『温泉地巡り』シリーズです。

〔やぶ(藪)塚温泉について〕
<プロフィール>
老舗の湯宿数軒からなるやぶ塚温泉は、東毛エリア随一の歴史ある温泉地です。
さしもの広大な関東平野もこのあたりまでくるとようやく丘陵をまじえ、ここもなだらかな丘陵のはざまにあります。
周辺には木枯紋次郎ゆかりの三日月村、マニアックなジャパンスネークセンター(個人的にはかなり面白かった(笑))に旧石器時代の岩宿遺跡など、多彩な観光資源があります。


【写真 上(左)】 アプローチのサイン
【写真 下(右)】 温泉街

このあたりの名物は紅こだますいか。たくあんや大根干しの味のよさにも定評があります。
かつては東毛を代表する温泉地であったやぶ塚温泉も、近年はマスコミはおろか温泉好きのあいだで語られることも稀になりました。
のどかな農村風景となかなかに滋味のあるお湯、古い歴史と個性的な観光資源をもつ温泉地なので、あらたな活路を見いだしてほしいものです。

<歴史>(温泉神社境内の掲示などを参考)
「その昔、やぶ塚の地では、巨石の割れ目からこんこんと湯が湧きいで、里人は病を治す湯場としてつかっていた。ある日、葦毛の馬が飛来し、一声高くいななくと(一説に、湯に飛び込むと)、嵐を巻き起こしつつ天に舞い上がり、それ以来、やぶ塚のお湯は冷泉に変わってしまった。
里人は嘆き悲しんだが、村の古老の夢枕に薬師如来が現われ、『悲しむことはない、この水を温めて湯浴みすれば、万病がたちどころに治り長寿をまっとうできる。』とのお告げがあった。これをきいた行基上人は、やぶ塚のお湯の効能を各地に広く伝えられた。」
この説話をうけて、やぶ塚温泉の開湯は天智天皇の御代、行基上人によるものとされています。
また新田義貞が鎌倉攻めの折、兵士を湯治させたことにちなみ、”新田義貞公の隠し湯”とも伝えられる、趣ふかい歴史に彩られた古湯です。
これらの歴史を物語るように背後の山裾には温泉神社(かつては湯権現と呼ばれ、本尊は薬師如来だったらしい)が祀られています。


【写真 上(左)】 藪塚温泉神社
【写真 下(右)】 温泉神社の額

近代のやぶ塚温泉の沿革がなかなかとれないので、ここからは勝手な推測です。
やぶ塚温泉のある旧藪塚本町は、桐生・太田・伊勢崎など北関東有数の物産の集散地に囲まれていたため、多くの旅客を迎えたものと思われます。
また、これらの街の奥座敷としてつかわれたことも容易に想像できます。


【写真 上(左)】 温泉の縁起書
【写真 下(右)】 温泉神社から温泉街

また、東京方面からの交通の便も比較的よかったので、週末の温泉旅行先としても手頃だったのでは?
近年、温泉地の人気が山奥の秘湯にシフトし、社用や地域の宴会需要も減少して、平地の温泉地には厳しい時代となりました。
また、桐生・太田・伊勢崎など近くの都市に手軽に入れる日帰り温泉施設ができたことも、逆風になっていると思われます。
ここらへんの立地環境は、西毛の八塩温泉に共通したものがあるように思います。


【写真 上(左)】 厳理水の泉源
【写真 下(右)】 温泉標識 (厳理水)

【写真 上(左)】 厳理水の分析書
【写真 下(右)】 渋い街灯

<温泉>
takayamaさんの「群馬の温泉ページ」に掲載されている県薬務課作成の温泉統計(平成11年度温泉利用状況)によると、藪塚温泉で利用源泉3(内 自噴1、動力2)となっています。
また、やませみさん提供のデータでは下記の4源泉。

1.厳理水
   規定泉(Si,NaHCO3)(Na-HCO3型) -℃ pH=8.6 蒸発残留物=0.37g/kg
2.藪塚館の湯
   規定泉(Si)(Na-HCO3型) 16.3℃ pH=7.3 成分総計=0.46g/kg
3.福寿館の湯
   規定泉(Si)(Ca-HCO3型) -℃ pH=7.4 蒸発残留物=0.15g/kg
4.ホテルふせじま
   規定泉(Si,NaHCO3) -℃ pH=-

1は「開祖 今井館」(立ち寄り不可)および「ホテルふせじま」(入湯済、未レポ)、2は「湯元 藪塚館」(立ち寄り可)、3は「福寿館」(営業状況不明)で利用していると思われます。
太田市の公式HPによると、現在温泉を利用している旅館は、「ホテルふせじま」「今井館」「藪塚館」の3軒なのでこれで源泉数と合致します。
ただ、「ホテルふせじま」にはふたつの浴場があって、あきらかにお湯のイメージがちがったので、どちらかは自家源泉をつかっているかもしれません。(掲示分析書はどちらも「厳理水」)


【写真 上(左)】 藪塚館
【写真 下(右)】 藪塚館の渋い館内

【写真 上(左)】 藪塚館の男湯
【写真 下(右)】 藪塚館の女湯

やぶ塚温泉の泉質名は以前からナゾが多く、いろいろな資料に記載された泉質は多岐におよびます(下記)。
重炭酸泉 / 弱アルカリ炭酸泉 / メタケイ酸・炭酸水素ナトリウム含有 / 含炭酸重曹泉 / 炭酸水素塩泉 / 含メタケイ酸-炭酸水素泉 etc...
泉質名表記のむずかしい規定泉が複数源泉があるために、このような混乱が生じているかと思います。
なお、厳理水の泉源は温泉神社のわきにあります。


【写真 上(左)】 ホテルふせじま
【写真 下(右)】 ホテルふせじまの「あさひの湯」

【写真 上(左)】 ホテルふせじまの「長者の湯」の内湯
【写真 下(右)】 ホテルふせじまの「長者の湯」の露天

やぶ塚温泉は「湯元 藪塚館」と「ホテルふせじま」(未レポ)に入湯していて、重曹系の清澄なツルすべ湯を想像していましたが、金気や硫酸塩を交えたかなり複雑なもの。
ともに循環ながら渋い個性をもち、古湯の名に恥じないおくの深いお湯だと思います。



〔 2011/01/08UP 〕
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