民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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樋口一葉「いやだ!」と云ふ  田中 優子 その1

2015年09月01日 00時02分25秒 | 古典
 樋口一葉「いやだ!」と云ふ  田中 優子(1952年生まれ) 集英社新書 2004年

 はじめに その1

 今、仕事が思うようにいかない。いい仕事についても厳しいノルマにさらされ、こなさなければリストラが待っている。ならば自力で生きよう、と思ってもなかなかヒットは生まれない。女性なら結婚で乗り切ろうと思うかもしれないが、専業主婦の危うさは、まわりを見回せばすぐにわかる。
 景気回復、という。しかし自分(自国)だけ豊かになろうとすれば、他の誰かを貧しくする。なによりも、これ以上むさぼるなら、すでに傷ついた地球がさらに壊れ、足下には洪水が押し寄せてくる。
 思わず「ああいやだ」と言いたくなる。それならいっそ大声で「いやだ!」と言ってしまおう。むさぼるのはもういやだ!別の生き方をしたい。
 戦争は終わらず、たいてい泥沼になる。ひとつ終われば、アメリカは次の戦争を始める。国際競争は間違いなく激化するが、「反戦」という言葉は「反テロ」とぶつかって、両方とも沈没している。「反~」は次の「反~」を生み出すだけなのだ。こんな時代は、「いやだ!」と叫んだほうがいいような気がする。テロはいやだ。戦争もいやだ。