民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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「中高年のための文章読本」その7 梅田 卓夫

2014年11月03日 00時43分21秒 | 文章読本(作法)
 「中高年のための文章読本」その7 梅田 卓夫 著  ちくま学芸文庫 書き下ろし 2003年

 「カタカナは表現をひろげる」 P-108

 カタカナにはことばを音声へ還元する働きがあります。
 漢字表記によって見慣れてきたことばには、知らないうちに他人の手垢(時代の垢)が付着しています。
その手垢は、ときには倫理的・道徳的な思想であったり、美文調を思わせたり、センチメンタリズムであったり、します。
記号としてのことばのプレーンな意味のほかに情念的なプラス・アルファが付きまとうのです。
この手垢を洗い落としたいとき、あるいはこの手垢に抵抗感を示したいとき、カタカナが使われます。
(必ずしも、漢字を知らないとか、忘れたとかの理由ではないのです。)
音声へもどることによって、漢字とそれに付きまとう古い思想(先入観)をふり払い、記号としてのことばのプレーンな意味を回復しようとするのです。

 これまであたりまえのようにして漢字で書いてきたことばを、あるときカタカナで書いてみようとするとき、<自分にしか書けないこと>にふさわしい新鮮な日本語を求める自分がいるのです。
このデリケートなニュアンスを求める感覚を大切にしたいものです。