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「食の安全」とグローバリゼーション

2008年02月02日 00時50分07秒 | 一人も自殺者の出ない世の中を
 中国産冷凍餃子の食品汚染被害が全国に広がっています。この餃子を食べた消費者が、相次いで嘔吐や下痢の症状に見舞われ、問題の餃子からは有機リン系殺虫剤「メタミドホス」が検出されています。この餃子の製造元は中国河北省石家荘市にある天洋食品という会社です。そこの餃子が、双日食料によって日本に輸入され、JTフーズなどが卸し、各地の生協やスーパーで販売されました。しかも、対象商品も餃子だけではなく、ウインナーその他の冷凍・加工食品全般にまで広がる様相を示しつつあります。この問題について、現時点で色々思う所を書きます。

 まず第一に、製造元の「天洋食品」を初めとする中国の労働事情について。この企業は、主に日本向けの輸出食品を製造している所ですが、正にスウェット・ショップ(搾取工場・奴隷工場)を地で行く職場の様です。下記参考資料の産経新聞の報道によると、従業員を休み無しで一日13時間以上も働かせ、ついこの前も労働争議に見舞われていたのだとか。食品汚染の程度が重篤で残留農薬のレベルを遥かに超えている事や、この数日間で急に被害が発生しだした事から、それまでの会社の仕打ちに怒った従業員による異物混入の可能性も否定できません。今の中国はもう、社会主義国とは名ばかりの資本主義・新自由主義の天下ですから。

 次いで第二に、その「中国版・女工哀史」の上に胡坐をかいて、中国共産党政府と利権を山分けしてきたのは一体誰かという事。それこそ、世界を股にかけるグローバル(国際)資本であり、その一員たる日本の独占資本(双日・JT・味の素などの輸入商社)や自民党政府・財界じゃないですか。これらの財界人・政治家たちが、WTOやFTAを通してアジア・第三世界の農民・労働者を搾取し、現地で大規模な環境破壊を引き起こし、「安かろう悪かろう」の商品を世界にダンピング輸出して、日本の国内農業を潰し、国内の食料自給率を引き下げ、輸入食品の規制緩和で農薬・添加物まみれのレトルト食品を溢れさせ、国民をジャンクフード漬けにし、「食の安全」を損なってきたのじゃないですか。その問題を抜きにして、ただ単に「中国が悪い」とか「これはあくまで中国の問題であって日本は関係ない」とかいう事にはなりません。今の中国の姿は、謂わば日本資本主義の行き着く先を暗示しているのです。

 そして第三に、その中では決して生協も例外では無かったという事。それは、今回自主回収の対象になった商品の中に、生協ブランドのコープ商品も多数含まれている所に、この問題の深刻さがあります。生協は今まで「安心・安全」とか産直・「消費者と生産者との連帯」を謳ってきましたが、最近はそれも次第に形骸化してきているのではないでしょうか。確かに、食生活が多様化し生協のシェアが拡大するに連れて、生協がスーパー化していくのも、やむを得ない面があります。しかし、それでスーパーの悪い所も真似していたのでは、もう「庇を貸して母屋を取られる」以外の何物でもありません。下記のJ-CAST記事にある「生協は存在価値あるのか」という問いかけに対しては、私も元生協人として忸怩たる想いがあります。

 最後の第四に思う事は、決してこれは中国だけの問題でも無ければ、日本国内だけに限って幾ら「安心・安全」とか「食・農連帯」とか言っていても、何にもならないという事です。況してや今の日本の右翼の様に、この問題を単なる「反日・媚中」ネタとしてしか理解できず、徒に排外主義や靖国ナショナリズムを煽るだけの単純で偏狭な立場からでは、新自由主義・グローバリズムの矛盾も現代中国の問題点も一切見えてこないという事です。
 いきなり世界革命とまでは言わないまでも、こういうグローバリゼーションの下での南北問題・国際格差の問題を解決しない事には、「食の不安」も「産業空洞化」も「国内経済格差」も根本的には解決しないという事です。中国国内の労働者・農民搾取を廃絶し政治の民主化を成し遂げる道筋も、こういう国際的な視野にたってこそ初めて見えてくるのではないでしょうか。それでこそ、我々も彼の国の人々も共に解放されるというものです。

(参考資料)
・WTO(世界貿易機関)とかFTA(二国間自由貿易協定)、GATS(貿易・サービス一般協定)などの用語の意味については、下記リンクを参照の事。上記記事はあくまでも、これらの言葉の基本的な意味を理解されている事を前提として書かれていますので。
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/wto/data/fta.html
 http://www.oasisjapan.org/100nin.html
 http://kongyeesaimau.blog32.fc2.com/blog-entry-73.html#more
・中国産冷凍ギョウザが原因と疑われる健康被害事例の発生について(厚生労働省)
 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/01/h0130-1.html
・当該ギョウザ製造業者(中国・天洋食品)対象商品リスト(同上)
 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/01/dl/h0131-2a.pdf
・ 冷凍食品の一部回収について (JT)
 http://www.jti.co.jp/JTI/attention/about_recall_20080130.html
・CO・OP手作り餃子等に関するお詫びとお知らせ(第1報)(日本生協連)
 http://jccu.coop/info/announcement/2008/01/coop1130.html
・「天洋食品の製品」の件について(プレスリリース)(双日食料)
 http://www.sojitz-foods.com/images/20080131002.pdf
・利益優先の「天洋食品」 従業員に13時間労働(産経新聞)
 http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/119713/
・日本が中国に委託した餃子に農薬(広島瀬戸内新聞ニュース)
 http://hiroseto.exblog.jp/7164579/
・WTO協定改定を(農民連)
 先進国の格差拡大も開発途上国の搾取・環境破壊も、その根っ子は同じ。
 http://www.nouminren.ne.jp/wto/wto.htm
・日本の食料自給率(健康・安全・食百科>輸入食品の安全性について)
 他の先進国は全て食料自給率を回復。意図的に引き下げている国は日本のみ。
 http://www.shokusan.or.jp/hyakka/safety/imports/index.html
・食品の輸入検査(同上&大阪府議会HP)
 検査官は全国31ヶ所に僅か300人。検査はサンプルのみ。捕捉率も良くて1割。
 http://www.shokusan.or.jp/hyakka/safety/imports/imports2.html 
 http://www.pref.osaka.jp/gikai/kaigirepo/hokoku/0709/iken070904.html
・「食の安全」守れない 生協は存在価値あるのか (J-CAST)
 http://news.www.infoseek.co.jp/society/story/20080201jcast2008216269/

(蛇足)
・厚生年金:転記作業で派遣の中国人ら大量ミス(毎日新聞)
 これも基本的構図は中国産餃子の問題と同じ。偽装請負の悪徳派遣企業フルキャストが、形式主義・予算至上主義のお役所仕事につけ込んで、今まで日本人ワーキングプアにしてきたのと同じ事を、中国人ワーキングプアにもしているだけの話。
 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080131k0000m040113000c.html
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