5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

コロナに負けるなコンサート

2020-07-07 22:45:47 |  文化・芸術

長引くコロナ禍で仕事が出来ないのは世の中誰もがそうだといえるが、芸術を生業とする人たちも大きな負担をかかえながら生活している。パフォーミング・アーティストといわれる演劇人や音楽人たちはこの長期戦をどうやって乗り切ってゆくのだろう。

オフィスや学校に行かずとも、遠隔で仕事や勉強ができる(という)リモートワークスがおおもてのようだが、パフォーミング・アートの世界でもこれを実践している人々がいる。

自分の好きなクラシックのコンサートを例にしてみると、5月28日にノルウエー大使館が「海をまたいたコンチェルト」というツイートをした。

ノルウエーの有名な音楽祭、ベルゲン国際フェスティバルは関係者の努力でちょっと違ったコンサートを行った。音楽祭の目玉、ノルウエーの大作曲家グリーグのピアノ協奏曲を、アイスランドのピアニスト、ヴィキングル・オラフソンがレイキャビクから遠隔出演。イギリス人指揮者、ガードナーによるベルゲンフィルはノルウエー、ベルゲンにあるグリーグホールから共演をするといったデジタル世界にふさわしい新企画である。

コンサートホールのステージの背後には大型スクリーンがピアニストの演奏を映し出す。オラフソンはデジタル送信の大問題である、音のズレを見事に読んだソロを務め、きわめてスリリングな演奏となった。オケメンバーにマスク姿はなかったものの、演奏家の間の距離を取ってソーシャルディスタンスを実行しながら、巧みなアンサンブルを見せた。これは思わぬ拾い物だった。

Youtubeを覗くと、世界のオーケストラが同様のコロナ対応コンサートを開いて、自分たちの存在をアピールしている。

ベルリンフィルは2カ月近くを無聴衆で演奏し続け、その一部を無料公開し、クラシックファンを楽しませてくれた。ペトレンコの指揮と樫本大進がリードする室内楽編成のオケでマーラーの4番を聴いたが、これも面白かった。ベルリンフィルはカラヤン時代から彼らの演奏をデジタルで残す活動を続けており、これが〈デジタル・コンサートホール〉として彼等の収入源のひとつになっていることはよく知られた事実だ。パナソニックとIIJという日本企業も肩入れをしているのだから親近感も湧く。

さて、海外オケではなく日本のオケはどうなのだろう。今日の中日WEBに「フルオケの迫力を動画配信 中部フィル、団員メッセージも収録」という記事が載った。

動画配信は中部フィルと小牧市、こまき市民文化財団が企画したとある。関係者の中には上記のような外国オーケストラの先例を細かく研究している人たちがいるのだろう。ただでさえ広告広報の予算が限られる地方オケであれば、コロナ禍をきっかけにコンサートのデジタル配信という〈パーフォーミング・アート〉のありかたを試行錯誤するのもよろしかろう。

撮影は去る六月十二日に小牧市の市市民会館で行い、県内の団員やエキストラ計四十七人が演奏した。感染防止策には、オケピットを使って舞台を広げ、管楽器奏者の前にアクリル板を設置して臨んだ。中には演奏中もマスクを外さない団員がいるというのが日本的だ。金管楽器はラッパの部分に薄いガーゼのふんどしをつけて飛沫防止を心がけている。

「ウイイアムテル序曲」と「新世界の終楽章」の短いビデオ演奏だったが、ホール音響は良くイイ音でオケが鳴る。若いオケの強みか。TVカメラをいくつ設置したのかはわからぬが、細かいカット割りもあって見飽きなかった。演奏者たちのアップ画面があればもっとよい。曲の間には団員たちのメッセージもあって、地方オケらしいアプローチだった。最後はイタリアからのリモート参加だという女性歌手を加えた「ちゃんと手を洗おう」という予防喚起の小曲も忘れなかった。リモートだというから、ベルゲン並みだなと思ったが、どうやらこれは後で合成をしたものらしい。

ともあれ、国内ではさほど多くはない〈コロナに負けるなコンサート〉、中部フィルの積極性に拍手を送りたい。

 


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