おとらのブログ

観たもの、見たもの、読んだもの、食べたものについて、ウダウダ、ツラツラ、ヘラヘラ書き綴っています。

九月大歌舞伎 夜の部①

2012-09-17 02:16:53 | 観たもの
 松竹座で行われている「六代目中村勘九郎襲名披露」公演の夜の部です。今月は特に他に予定もなかったので、昼夜分けて観劇することにしました。

 夜の部の演目と配役です。
 一、女暫(おんなしばらく)
   巴御前       玉三郎
   舞台番       勘太郎改め勘九郎
   轟坊震斎      翫 雀
   女鯰若菜      七之助
   局唐糸       吉 弥
   手塚太郎      壱太郎
   紅梅姫       新 悟
   家老根井主膳    薪 車
   江田源三      亀 蔵
   猪俣平六      市 蔵
   木曽太郎      進之介
   成田五郎      彌十郎
   蒲冠者範頼     橋之助
   清水冠者義高    秀太郎

 二、六代目中村勘九郎襲名披露 口上(こうじょう)
      勘太郎改め勘九郎
      玉三郎
      我 當
      秀太郎
      幹部俳優出演

 三、勘九郎六変化 雨乞狐(あまごいぎつね)
   野狐/雨乞巫女/座頭小野道風/狐の嫁/提灯  勘太郎改め勘九郎

 四、雁のたより(かりのたより)
   髪結三二五郎七    翫 雀
   愛妾司        壱太郎
   若旦那万屋金之助   亀 鶴
   若殿前野左司馬    薪 車
   乳母お光       吉 弥
   家老高木治郎太夫   彌十郎
   花車お玉       扇 雀

 最初は玉ちゃんの「女暫」です。歌舞伎十八番の一つ「暫」を、女形が演じます。「暫」の主役は鎌倉権五郎ですが、「女暫」では巴御前となっています。江戸時代の顔見世興行では、この「暫」の趣向を用いた場面を上演することで、1年間の繁栄を祈念し、祝祭劇的要素が横溢する華やかな舞台が繰り広げられたそうで、それを本歌にした「女暫」も祝祭劇としての華やかさ、歌舞伎の様式美、色彩美あふれる作品です。そういうところが、お目出度い襲名披露にぴったりの演目ということで、玉ちゃんもこの演目をお選びになったのでしょう。

 幕が開くと、役者さんといい、セットといい、非常にカラフル、ド派手です。舞台にいらっしゃる役者さんの数も多く、ちょっと窮屈そう?って思いました。歌舞伎らしい台詞のやり取りがあって、天下を乗っ取ろうとする蒲冠者範頼が異を唱える清水冠者義高らを討とうとした瞬間に揚幕から「し~ばぁ~ら~くぅ」の声とともに、玉ちゃんの巴御前が登場です。お衣装は柿色の素襖姿、ご紋は市川家の三升です。

 お姿はもちろん美しく、見得も決まるし、太刀だってぶるんぶるんと豪快に振り回していらっしゃいましたが、声がどうももひとつ? 聞き取れないということではないんです。よく通るし、何をおっしゃっているかはわかるんですが、“奥歯にものが挟まっている”ように聞こえます。例えはよくないかもしれませんが、私には、歯の治療で奥歯に綿を詰めたまま何かモノを言ってるように聞こえました。いつもの声と違います。お役的に、いつものきれいな女形さんの声とは違う声を出さないといけないんでしょうね。難しいですよね。ちょっと違和感を感じてしまいました。

 他の方たちですが、橋之助さん、貫禄ついてきました。タバコをお止めになって少し太られたそうです。翫雀さん、こういう愛嬌のいるお役、いいですよね。秀太郎さん、壱太郎さんは立役でご登場でしたが、颯爽としていらっしゃいました。秀太郎さんが台詞をおっしゃると“いかにも歌舞伎”って感じで、舞台が締まります。
 
 勘九郎さんは「舞台番」ということで、幕が閉まってからご登場です。玉ちゃんとちょっと“楽屋オチ”みたいなやり取りがあります。歌舞伎座さよなら公演の時は玉ちゃんの巴御前に対し吉右衛門さんがお勤めになったそうで(時蔵さんのときは左團次さんでした)、どちからと言えば同格か格上の方が演じられるもので、勘九郎さん、お大変だったのではないかと思います。勘三郎さんにとてもよく似ていらっしゃるだけに、「ここがお父様だったら…」とつい思ってしまうのが人情というもので、お気の毒でした。

 「口上」は玉ちゃんが司会進行でした。舞台の並びは上手から我當さん、扇雀さん、翫雀さん、玉ちゃん、勘九郎さん、七之助さん、橋之助さん、彌十郎さん、秀太郎さんでした。人数が少ない分、一人当たりの持ち時間が増えたのか、皆さんいろいろなエピソードを織り交ぜながら、私が思っている「口上」らしい「口上」でした。

 今年は「口上」を聞くのはこれで4回目ですが、又五郎・歌昇襲名は播磨屋さんが真面目なのかあまり脱線することがなく、皆さん同じようなことをおっしゃっていました。又五郎さんと歌昇さんのお立場、お家の格ということも関係しているんでしょうね。猿之助さんの時の「口上」は一種悲壮感漂うもので、こちらも必死で聞かなければ!って感じでした。

 そういうのに比べると、ほんわかとした楽しい「口上」でした。ただ、皆さん“諸先輩の方々”なので、エピソードと言っても、どうしてもお父様の勘三郎さんがらみのことで、お父様がついてまわります。仕方ないことだけれど、ここでも何だかお気の毒…とちょっと思ってしまいました。
コメント (2)
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