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2017.11 厄介者の雪も活かせば資源、雪活用の一念が活路を開く

2017年11月16日 | studywork

2017.11 雪を活かす  新潟県安塚町+山形県舟形町+青森市

 先日、モーニングショーで新潟県安塚町での雪活用を紹介していた。北海道・室蘭工大で雪活用を学び、その可能性を実践しようと、安塚町に居を構えたIさんが取材に応じていた。
 私が安塚町を訪ねたのは1990年代だったと思う。安塚町に先だち、山形県舟形町で雪冷房を取材し、心地よい冷房を体感したことがあった。冬のあいだに雪を貯蔵し、夏の冷房に活用するという画期的なアイデアで、電気によるクーラーと違い穏やかな冷風+マイナスイオンの発生で、いわゆるクーラー病が起きず、合宿中の運動選手は疲れが取れる、と好評だった。その技術指導が室蘭工大の媚山先生だった。
 実例の舟形町農業体験実習館は高台に位置され、高台の下に雪貯蔵室が設けられている。冬にブルドーザで雪を貯蔵室に押し込む。雪は冷暗所に密閉すると意外と溶けないそうだ。夏になり冷房に使用するときは雪に風を当て、ダクトで上階の実習館に送風する仕組みである。雪を溶かすためマイナスイオンが発生する利点もある。

 舟形町から安塚町も雪活用に取り組んでいると聞き、確か、その年の秋に安塚町を訪ねた。まだ雪がない季節だったが、雪活用に取り組み始めたばかりで、間もなく雪だるま財団が本格的に活動を展開すると熱弁していた。
 数年後の冬の始め、改めて安塚町を訪ねた。青木淳氏設計の雪のまちみらい館も竣工していたし、雪中貯蔵や雪室米も軌道に乗っていた。まだ雪は少なく、雪貯蔵室には雪がなかったが、翌日の帰るころに在来線が不通になるほどの大雪が降った。やむを得ずタクシーで新幹線の駅まで行ったが、内心、いよいよ雪貯蔵が威力を発揮すると思い、顔がほころんだ。
 厄介者と思っていた雪を逆転の発想で資産、資源にする試みはもっともっと広まっていいはずだ。

 実例の一つ、雪中貯蔵は高台を掘り下げて貯蔵室を組み立てる。貯蔵室出入り用の扉を設けておく。雪はブルドーザで上から落とし、貯蔵室を包み込むように積んでおく。日射しが出て気温が高くなる前に、雪を籾殻や藁、シートで覆っておくと雪は溶けにくいそうだ。
 実例の二つは地上に設置された雪室米貯蔵である。雪で低温を確保した貯蔵室に米を保管すると低温熟成するらしい。前述した安塚町のI氏によると、食材によって熟成期間が違うそうで、試行錯誤を続けているそうだ。

 青木淳氏設計の安塚町雪のまちみらい館はみらい館の裏側に雪貯蔵室が設けられていて、雪貯蔵の様子はらせんのスロープを上がるときに丸窓からのぞくことができる。1階の右手、雪貯蔵室の隣の部屋に薪ストーブが設置されていて、この熱が上階の暖房に使われる。夏は雪による冷房で、年間を通して熱負荷の少ない省エネルギーを目指している。

 青森県の国際芸術センター安藤忠雄設計)も雪を活用した冷房を設置している。1階に野外劇場ともなる円形の階段席が設けられ、芸術センターの主要室は2階に配置されていて、その下に雪貯蔵室が設けられている。雪を活用するという発想がデザインに連動するから、前述の青木淳氏や安藤忠雄氏のようにたぐいまれな設計力があるからこそ成功したといえるが、凡人でも雪を活用しようという一念があれば、活路が開かれると思う。

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