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2022.5中禅寺湖畔を歩く イタリア大使館別荘・英国大使館別荘

2022年10月28日 | 旅行
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 2022年5月、14:00ごろ、日光東照宮参拝後、第2いろは坂=国道120号線=日本ロマンティック街道を上る。明智平を過ぎて間もなく二荒橋前の交差点に出て、第1いろは坂=国道120号線=日本ロマンティック街道と合流する(明智平は2022.10訪問、別項に紹介予定)。
 大鳥居の立つ次の立木観音入口交差点で左折し、中禅寺湖の東縁=県道250号線を南に走る。このあたりは西に中禅寺湖が広がり、北に男体山を望める景勝地で、明治中ごろ~昭和初期に、景勝に優れた避暑地として外国大使館別荘や外国人別荘が多く建てられた。
 イタリア大使館別荘はだいぶ前から一般公開されていて、近年英国大使館別荘が改装され一般公開されたので訪ねた。
 それぞれに見学者用の駐車場はなく、歌ケ浜第2駐車場に車を止めて湖岸沿いの遊歩道を歩く。遊歩道は林に包まれていて散策には心地いい。木々の隙間から見える中禅寺湖を眺め、鳥のさえずりを聞き、のんびり歩くこと10数分で英国大使館別荘に着く。さらに数分歩くとイタリア大使館別荘である。


 イタリア大使館別荘アントニン・レーモンド(1888-1976)の設計で1928年に建てられた(写真web転載)。
 レーモンドはチェコ出身で、アメリカに渡りフランク・ロイド・ライト(1867-1959)のもとで設計活動を進め、ライトが帝国ホテル設計(1923年完成)のため来日したときに同行し、ライト帰国後、日本に設計事務所を開いた。軽井沢タリアセンに建つペイネ美術館は、1933年に建てられたレーモンドの別荘兼アトリエの移築である(長野を歩く「2021.11 塩沢湖・軽井沢タリアセン」参照)。レーモンドは軽井沢の聖ポール教会(1934)、群馬県高崎市の群馬音楽センター(1961、群馬を歩く「2022.4群馬音楽センター」参照)、新発田カトリック教会(1965)など数多くの作品を残している。
 イタリア大使館別荘は湖岸に沿って北西・南北軸とし、1階は湖側の広縁に続いてワンルームの食堂、居間、書斎を配置している(写真web転載)。2階も湖に面して寝室を並べていて、中禅寺湖の景観がデザインの基本になっている。
 レーモンドは木の質感を大事にする。イタリア大使館別荘でも木を現しにし、内外装に杉皮を市松模様に張っている。和を基調にした斬新なデザイン、中禅寺湖を見晴らす開放的な空間は居心地がいい。イタリア大使も喜んだのではないだろうか。
 1997年までイタリア大使と家族の別荘として使われたのち栃木県が買い取って修復し、一般公開した。観覧料は300円だが、英国大使館別荘共通観覧料は450円になる。
 イタリア大使館別荘では、コーヒーを飲みながらイタリア大使の気分で中禅寺湖の風景を楽しんだ。


 遊歩道を数分戻り英国大使館別荘を見学する(写真)。観覧料300円はイタリア大使館別荘共通観覧料を購入すれば450円になる。
 別荘のパネルを見てアーネスト・サトウSir Ernest Mason Satow(1843-1929)を知った。現在のドイツ・ヴィスマール生まれ、父はドイツ人、母はイギリス人で、ロンドンで学びイギリス外務省の通訳生となる。
 日本にあこがれ、1862年、19歳のときイギリス駐日公使館通訳生として着任する。日本語を習得して通訳官となり、幕末~明治維新の表舞台に登場する徳川慶喜、西郷隆盛、大久保利通、伊藤博文、勝海舟、明治天皇といった要人たちと会ったそうだ。
 1866年に泉岳寺前に英国公使館が建てられ、アーネスト・サトウは近くに住み、日本人の女性とのあいだに子どもをもうけている。
 1895年、52歳のときに駐日英国公使になる。この間、日本各地を旅していて、1872年に日光を旅し、「日光案内」を刊行している。1896年、中禅寺湖畔に別荘を建てた。この別荘がのちに英国大使館別荘となり、2008年まで利用された。のちに栃木県に寄贈され、改装されて一般公開された。
 湖岸に沿って北・南軸とし、1階、2階とも中禅寺湖側に広縁を設けている。部屋は展示室に改装されているのでアーネスト・サトウが別荘としたときの間取りは不明だが、サトウの時代の家具調度品が置かれていて、英国文化の雰囲気を感じることができる(写真)。
 2階の英国文化交流室で、広縁を通して中禅寺湖を眺めながら紅茶をいただいた。
 湖の向こうの黒檜岳?、中山?、大岳?などの山並みを霧が過ぎていく(写真)。夕方は湖面に霧が出やすいそうだ。霧の動きは速い。風景が刻々変って見える。サトウや大使館員は雄大な風景を楽しんだのであろう。


 今日の宿は中禅寺湖北東の湖岸に建つホテル湖上苑である。宿に向かう途中、湖畔沿いのベルギー大使館別荘、フランス大使館別荘を通り過ぎる。両別荘とも、現在も使用されていて非公開である。
 最盛期には中禅寺湖畔に40棟ほどの大使館別荘、外交官別荘が建てられたそうだ。今日の宿、ホテル湖上苑は外国大使別荘の跡地に建てられ、その趣を生かした客室で寛げる、と紹介されていた。湖に面して立地し、北西・南東を軸にした木造2階建てで、客室、レストラン、露天温泉は目の前が中禅寺湖である。
 南西向きになるので、やや左にイタリア大使館別荘+英国大使館別荘記念公園、正面に八丁出島、その右に半月山(標高1753.2m、2022.10半月山を歩く、別項に紹介予定)が見える(写真左側、凹みが半月峠、峠の手前湖に突き出しているのが八丁出島と思う)。かつてのここの主だった外国大使はこの風景を楽しんだのであろう。
 まずは露天温泉から湖を眺める。波のひたひたが目の前で、水に浮かんでいる気分になる。2階の部屋でイタリア大使館別荘+英国大使館別荘あたりを眺めながら風呂上がりのビールを傾ける。おぼろげだが桟橋も見える。ここの主はイタリア大使が出かけた、英国大使館別荘に客人が来たといった情報収集をしたかも知れない、などを妄想する。
 夕食は箸で食べるフランス料理で、日光湯葉、ニジマス唐揚げ、栃木牛ステーキなどを、夕闇に揺れる波を見ながらいただいた。
  (2022.10)  

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