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2018.12千葉 鎌数伊勢大神宮・屏風ヶ浦・犬吠埼灯台

2024年09月13日 | 旅行

2018.12+2020.12 鎌数伊勢大神宮・屏風ヶ浦・犬吠埼灯台

 香取神宮、鹿島神宮参拝では千葉県旭市の九十九里浜に建つ宿に泊まり、太平洋を眺めながら温泉を楽しんだ。前後して宿の近くの見どころに寄り道した。

 鎌数伊勢大神宮は千葉県旭市鎌数(下総国海上郡)に鎮座する。素木の大鳥居で一礼する(写真)。
 由緒を読む。祭神は天照大神である。江戸時代寛文年間(1661~1673)、太田ノ胡水とも呼ばれた椿海の干拓が、伊勢桑名藩士辻内刑部左衛門らによって始められた。工事が難航し農民の反発もあったため、伊勢神宮御師に依頼して伊勢神宮に干拓事業の完成を祈り、祈願を受けた榊と神札を椿海に流したところ、風に吹かれて現在の社殿近くに流れ着いた。この場所から工事を再開したところ工事は順調に進み、農民の反対もなく椿海の干拓を完了することができた。
 寛文11年1671年、伊勢神宮から天照大神の分霊を遷し、干潟八万石総鎮守として鎌数伊勢大神宮が創建された。1735年に伊勢神宮内宮を模した社殿が建てられ、その後の建て替えでいまに至ったらしい。
 参道正面に拝殿が建つ(前頁写真)。銅板葺切妻屋根で、正面に向拝を伸ばす。二礼二拍手一礼する。
 側面に回ると玉垣=瑞垣に囲まれた本殿が見える(写真)。桧皮葺切妻屋根で、伊勢神宮内宮を模し、棟に5本の鰹木を乗せ、先端を水平にした=内削の千木を伸ばしている。
 参拝は年の瀬だったが、鳥居脇には謹賀新年が立てられ、初詣の準備が進んでいたので、初詣を済ませた気分で参拝を終える。

  教科書でも習う九十九里浜は、千葉県東部の刑部(ぎょうぶ)岬から太東崎に及ぶ66kmの日本列島最大級の砂浜海岸である。99里は1里≒4kmとすると396kmだから、実際の66kmを大げさに誇張したのであろうが、100里にせず99里にしたところに日本的な含蓄を感じる。
  刑部岬展望館に寄った(写真)。展望館は屏風ヶ浦の断崖絶壁の上、高さおよそ60mに立地する。3階建てで、太平洋を水平線の外れまで見通すことができる(写真)。
 この辺りで黒潮=日本海流と親潮=千島海流が合流するというのも教科書で習った(合流は三陸沖と銚子沖のあいだで起こる)。穏やかな波で、黒潮と親潮が合流している様子はうかがえない。

 刑部岬展望館から浜辺まで下りて車を止める。切り立った断崖絶壁が屏風ヶ浦である(写真)。千葉県銚子市から旭市までの太平洋海岸線に連なる海食崖の景勝地で、国の名勝及び天然記念物に指定されている。しかし、遭難の危険を伴うことや一部に私有地が含まれているので、柵で立入禁止になっていた。遠望では名勝らしさは感じ難い。
 江戸時代後期、この辺りの特徴的な地形が形作る景観が名所図会などに取り上げられた。歌川広重は「六十余州名所図会 下総 銚子の濱 外浦」を描いている(図web転載)。左手の巨大な岩は千騎ヶ岩(せんきがいわ)、右手中ほどの断崖絶壁が屏風ヶ浦に刑部岬、右上の水平線上に房総半島、中央に富士山も描かれている。
 刑部展望館からは、老眼のためか、富士山は見えなかった。浮世絵師の目の力は卓越していて、荒海で波にもまれながら富士を眺めることができたり、鷹のように空高くから田園を俯瞰したりすることができるから、広重には見えるのであろう。

 海岸線に沿った道を北東に走り、犬吠埼灯台に寄った(写真、重要文化財)。資料によれば、灯台の建つ台地は標高24mほどで、灯台の高さは31mだそうだ。地上から灯火までの高さは27mなので、海面から灯火までの高さは51mほどになる。
 創建は1874年、イギリスから招聘した灯台技師の設計で煉瓦造である。
 灯台の光度は1100000カンデラといわれても想像できないが、光達距離は36kmだから36km先まで光が届くことになる。沖合を航行する船は犬吠埼の灯りを見て航路を確認したのであろう。
 99段のらせん階段を上り回廊に出る。銚子港の彼方の太平洋を望むことができる(写真)。水平線まで遠望できるが、雲が垂れ込めてきた。灯台が建つ台地の周辺は白波がたっている。岩礁が集まっているようだ。灯台は港への安全な航海にも欠かせないことが分かる。

 資料館には国産第1号の大型1等レンズが展示されていた(写真)。直径3mほどで光度は1100000カンデラ、光達距離は約40kmなので、いま使われているレンズと性能は変わらないようだ。
 灯台の隣に、濃霧のとき、灯火に代わり灯台の位置を知らせる警鍾を鳴らす霧笛舎が建つ。1910年に鉄骨造で建てられた。灯台も霧笛舎も資料館もすべて白色で、さんさんと降り注ぐ太陽の下、青い空、青い海、台地を覆う緑に映えそうである。
 犬吠埼灯台は「日本の灯台50選」「各国の歴史的に特に重要な灯台=世界灯台100選」に選ばれている。世界灯台に選ばれた日本の灯台は、犬吠埼灯台(千葉県銚子市)、姫埼灯台(新潟県佐渡市)、神子元島灯台(静岡県下田市)、美保関灯台(島根県松江市)、出雲日御碕灯台(島根県出雲市)の5灯台である。日ごろの旅では車、電車、飛行機の利用がほとんどで、めったに船に乗らないから灯台への関心が低くなってしまう。船旅で海と空と陸を眺め、灯台を発見したいね。  (2024.9)

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