ドイツでも新型コロナウィルスの感染が拡大しています。
感染経路が確定でき、まだ市中感染がないこともあるのかもしれませんが、感染対策に関して、今の所行政への批判の声は聞かれません。
ここ2週間ほど感染者数は16人で抑えられていましたが、カーニバル直後から衝撃的な新型コロナウィルスの話題がメディアに登場するようになりました。
私が住むNRW州にあるハインツベルグ郡の男性が新型コロナウィルスに感染し重症であること、奥様も感染したこと。
お二人は2月15日にカーニバルの集会(参加者300人)に参加したこと、そして奥様は幼稚園の先生であることなどです。
それでこの地区では濃厚接触者1000人に対して2週間の自宅待機が要請されました。
2週間分の食料に対しては市の危機対策本部の職員が責任を持って宅配業者や当事者の親類知人と調整することなどが発表されました。
ここケルンでもハインツベルク郡のカーニバルの集会に参加したケルン在住の人物が感染者となりました。
新聞は「ケルンにも遂にコロナウィルス到達」とセンセーショナルなタイトルで一面トップで記事を掲載しました。
その日のお昼にシュパーン保健大臣がゼーホーファー内務大臣と共に記者会見を行いました。
テレビ中継を視聴したのですが、39歳という若い保健相の理路整然とした説明と答弁(原稿なしのフリースピーチ)は大臣の頭脳明晰さを示していました。
余談ですが、先日ベルリンで仕事をご一緒した在独日本大使館の方がシュパーン大臣は保健省の中でも人気があるということを述べておられました。政策ビジョンがはっきりしているので職員は仕事がしやすいのだそうです。
この記者会見でシュパーン保健相が「パンデミック・プラン」の発動準備について語っていたので、ドイツでは各自治体レベルまでそのような「行動計画」が策定されており、それが緊急時にはすぐに実行に移せることを知りました。
この記者会見は国民がパニックになるのを防ぐのに効果的だったと思います。
また先日シュパーン大臣は「マスクが品薄になるのではないか」という質問に対して、「マスクの輸出を禁止し、緊急時には接収することも考えられる」と答えています。
今日のネットで閲覧した「AERAdot.」の新型コロナウィルス対策で成果をあげている台湾政府の政策に類似していると思いました。
台湾では中国へのマスク輸出禁止や厳しい渡航制限などがかなり早い時期に施行されたということです。
ドイツでは中国などへの渡航制限は各会社毎に決められているようです。
ただ中国、韓国、日本、イタリア、イランなど感染者数の多い国からドイツへの入国者に対しては「所在追跡・健康質問票」への記載が義務付けられ、後日感染経路が追跡できるようになりました。
多くの感染者の引き金となったハインツベルグ郡在住の夫妻に対しては「この時期カーニバルの集会に参加した」ことへの非難の声も聞かれますが、それに対して現在「危機管理本部」の広報担当をしているプッシュさん(この郡の郡長)のお答えが良かったです。
「夫妻がカーニバルの集会に参加したのは2月15日です。その頃ドイツでは新型コロナウィルスは他の国の出来事としてほとんど話題にならなかったではありませんか。そんな時ちょっと鼻かぜ気味だったらアナタだって集会には参加するんじゃありませんか?夫妻も誰かから感染された被害者なのです。非難よりも重症者にはお見舞いの言葉を述べるべきではないですか」