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時事ひとりごと − 63 (憲法の母)

2024-05-31 14:58:00 | 時事ひとりごと
今日のNHK朝の連ドラ「虎に翼」では主人公の寅子が新しく交付された日本国憲法第14条に「国民は法の前で平等であり、---性別において差別されない」と記載されているので、自分を女性裁判官として雇ってくれるようかけあうシーンで終了していました。

ドイツの憲法では、単に「性別においての差別」だけではなく「男女同権」が明確に記載されています。
平等権について記されている憲法第3条の第2項に男女同権が言及されています。
日本国憲法の「性別において差別されない」より一歩踏み込んだ記載です。

戦後のドイツ憲法にこの一項を入れることに尽力したのは65名の憲法制定委員会の中の4人の女性委員です。



今年は1949年5月23日にドイツ憲法が制定されて75周年ということで新聞に掲載された特集記事でこれら4人の女性委員について知りました。
やはり男性が多くを占める委員会では始め「特に男女同権を記載する必要はない」との意見が多かったそうですが、
4人は不屈の精神で男女同権の項を入れるということを説得したのだそうです。
この4人は「憲法の母」と呼ばれています。

ところでドイツ憲法は憲法にあたるドイツ語Verfassungという言葉ではなくGrundgesetzが使われているので
訳語は「ドイツ基本法」と呼ばれています。
これは戦後西ドイツを占領していた戦勝国(英米仏三ヶ国とベネルックス三国)の要請により新憲法を制定するにあたり、
西側の連邦州が東西ドイツが分断されている期間に憲法という言葉を使うと分断を認めてしまうことになるとして、
憲法ではなく行政の基本原則を定めた基本法と名付けることにしたためです。
東西ドイツ統合後も「基本法」という名前は残されました。

それからドイツ憲法でもう一点。
日本国憲法の第一章第一条では「天皇の象徴的地位と国民主権」について記されていますが、
ドイツ憲法の第一章第一条第一項は基本権が記された第1章の中でも一番重要な基本権としての「人間の尊厳」についての項です。
これはナチス時代の苦い経験から人間の尊厳を権利としてではなく、これを侵害されない権利が最も根本的な基本権として捉えられていることからきています。

コロナ時代、介護施設が隔離され高齢者が家族に看取られることなく亡くなってしまった時、
「人間の尊厳」は死亡する時にも侵害されてはいけないことだから、コロナ感染予防措置といえどもこれは憲法違反ではないかという意見がありました。

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時事ひとりごと–62(ブチャの復興)

2023-08-08 17:18:00 | 時事ひとりごと
ウクライナの首都キーウ近郊の町ブチャは2022年3月ロシア連邦軍が民間人に対して行った虐殺の場所として知られています。
2022年2月24日にロシアのウクライナ侵攻が始まりました。
その3日後2月27日にロシア軍はブチャに入り、1ヶ月間占拠しました。
3月31日にロシア軍はブチャから完全撤退しました。
ブチャの市長アナトール・フェドルク氏は4月1日に
「3月31日はロシア軍から解放された日として私たちの街の歴史に刻まれるだろう」と語っています。
その後占拠されていた1ヶ月間にロシア軍が住民に行ってきた残酷な虐殺が次々に明るみに出ました。
通信社のジャーナリストは「静かな並木道に見渡す限り遺体が散乱していた」と報道しています。
新聞に掲載された当時のブチャの通りです。



ドイツに来て以来私が住んでいるケルン近郊の町はブチャと姉妹都市です。
2022年2月のロシアのウクライナ侵攻後に姉妹都市になりました。
元々ポーランドのプシュチナという町と姉妹都市だったのですが、
ロシアのウクライナ侵攻後、隣国のポーランド経由でウクライナに何か手助けできないかと
プシュチナの市長に相談したところ、プシュチナの姉妹都市がブチャだということでブチャとも姉妹都市になったというわけです。
ブチャの虐殺が世間に知られる前のことです。
国家間の支援だと大がかりになりますが、町通しだと支援は小規模ながら機動性は高くなり支援物質が集まると直ぐ出発できます。
これまで寄付された種々の支援物資に加え、中古の消防車や救急車、バスや道路整備車などの車両を2000km離れたブチャに運びました。
運搬を担当するボランティアのドライバーは退職したバスやトラックの運転手さんたちです。
無事ブチャに到着した時の写真です。
前列左から4人目(白いシャツに黒いカーディガン、手を組んでいます)がブチャの市長アナトール・フェドルクさんです。



ブチャでは感謝から町の名前を記した広場ができたということです。



ブチャ復興のためにこれまで世界中から支援が寄せられています。
最大の支援団体はGlobal Empowerment Foundationです。
この団体の資金提供によりブチャの並木道は綺麗に整備されました。



この通りの住民も戻りつつあります。
住民のひとりはこのように語っています。
「ここで生まれ育ったから絶対ここに戻ってきたかった。
それにここに居続けることはウクライナの存在を認めようとしないロシアへの抵抗でもあるのです」



コメント (2)
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時事ひとりごと− 61(ウクライナ和平会議)

2023-08-07 16:11:00 | 時事ひとりごと
サウジアラビアで開かれたウクライナ和平会議が終了しました。
ロシアは招待されませんでしたが、中国同様ロシアに融和的なインドや南アフリカ、
グローバルサウスと呼ばれる南半球の振興・途上国など40ヵ国が出席しました。
今後の具体策は提示されなかったと会合に批判的な意見もありますが、
今回は国連の原則、国際法や主権と領土保全を尊重するということを参加国が一致して認識したのは意義あることだと思います。
これまではロシア対西側諸国とNATOの枠組みでの今後の和平策が考慮されてきましたが、
穀物輸出のことを考えると今後は国連の平和部隊も導入されるのが望ましいのではないでしょうか。
現に黒海を通過するウクライナの穀物積載貨物船に国連の監視船を併走させるべきという提案もあります。
国連の集団安全保障(複数の国々が互いに武力行使を慎むことを約束し、約束が破られた場合には、残りの全ての国が結集することで侵略行為を辞めさせようとする)はロシアの参加がないので適用は難しいかもしれませんが、現在の膠着状態に少しでも進展があることを願っています。

戦争終了までの道のりは長いと思いますが、終了後もウクライナの人々にとっては長い復興の日々があります。
1996年のノーベル文学賞を受賞したポーランドの詩人ヴィスワヴァ・シンボルスカの詩『終わりと始まり』を長くなりますが記します。

戦争が終わるたびに誰かが後片付けをしなければならない
物事がひとりでに片づいてくれるわけではないのだから

誰かが瓦礫を道端に押しやらなければならない
死体をいっぱい積んだ荷車が通れるように

誰かがはまりこんで苦労しなければ
泥と灰の中に長椅子のスプリングに
ガラスのかけらに血まみれのぼろ布の中に

誰かが梁を運んで来なければならない
壁を支えるために誰かが窓にガラスをはめ
ドアに戸口を据えつけなければ

それは写真うつりのいいものではないし
何年もの歳月が必要だ
カメラはすべてもう別の戦争に出払っている

橋を作り直し駅を新たに建てなければ
袖はまくりあげられてずたずたになるだろう

誰かがほうきを持ったままいまだに昔のことを思い出す
誰かがもぎ取られなかった首を振りうなずきながら聞いている
しかし、すぐそばではもう退屈した人たちがそわそわし始めるだろう

誰かがときにはさらに木の根元から
錆びついた論拠を掘り出しごみの山に運んでいくだろう

それがどういうことだったのか知っていた人たちは
少ししか知らない人たちに場所を譲らなければならない そして
少しよりももっと少ししか知らない人たちに
最後にはほとんど何も知らない人たちに

原因と結果を覆って茂る草むらに
誰かが寝そべって穂を噛みながら雲に見とれなければならない
(沼野充義訳)

次回は私が住む町の姉妹都市ウクライナのブチャの復興について記します。。
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時事ひとりごと - 60 (南ドイツ新聞の記事)

2023-06-07 18:21:00 | 時事ひとりごと
友人が5月31日に掲載された全国紙南ドイツ新聞の日本関連の記事を送ってくれました。



先日長野県中野市で4人が殺害された痛ましい事件に関連して、
過去に起きた事件(2019年7月京都アニメーション放火事件や2021年12月大阪市クリニックの放火事件、2022年7月の安倍元首相銃撃事件他)を列挙して、こうした事件は東洋大学の桐生正幸教授が指摘する「ローンウルフ(一匹狼)による日本型テロ」と捉えているようです。
こうした一連の事件を日本特異の負の現象と捉えるのは海外の新聞社だからなのかなと思っています。
私は人を殺傷する事のハードルが低くなっているのが問題でこれは別に日本に限ったことではないような気がします。
(このところ日本でこのような事件が多発しているのは確かですが)
バーチャルやメタバースなど仮想空間で過ごす時間が多くなると人間が備えている現実を認識する感覚が損なわれてしまうのかもしれません。

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時事ひとりごと - 59 ( サミット・マラソン )

2022-06-22 21:13:00 | 時事ひとりごと
明日の6月23日から30日までは欧米日の政府首脳にとってはとても忙しい一週間になりそうです。
先日の地元紙のトップ記事もこの一週間の過密スケジュールについて記していました。
記事のタイトルは「サミット−マラソン」です。



1) 23日と24日はブリュッセルでEU首脳会議(欧州理事会)が開かれ、ウクライナのEU加盟などが主要議題になります。

2) 26日から28日まで南ドイツのエルマウではG7先進国首脳会議があります。

3) 29日と30日はマドリードでNATO首脳会合があり加盟国の政府首脳が集まります。
  今回は加盟国ではない日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの首脳もパートナーとして招かれています。

G7の会場となるリゾートホテル、シュロス・エルマウの写真です。
冬はロマンチックな雰囲気ですね。








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