気がつけばふるさと離れて34年

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荒木健太郎著 『気象のはなし』

2024-07-09 21:17:08 | 読書
この本には『読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし』という長いタイトルが付いています。

今日の空も綺麗でしたが、これは読後だからというわけでもないようです。
それよりもこの不思議な雲の名称を知りたいのですが、
付け焼き刃で気象の本を一冊読んだくらいではわかりませんよねぇ(^。^)


気象の本に目を通したいと思ったのはこのところの異常気象が理由です。
特にドイツではこれまでほとんど経験したことがなかったゲリラ豪雨が良く起こるようになり、
そもそも意味もよくわからずにゲリラ豪雨と呼んでいたので、電子書籍の試し読みの目次欄にゲリラ豪雨の項目があったこの本を購入したというわけです。

最初の章の「味噌汁で感じる雲のしくみ」に始まり、「木漏れ日に包まれて」や「飛行機の旅を楽しむ」などワクワクする気象の話が満載です。各章の最後に登場する荒木さんご自身が撮影された写真もとても興味深いです。

特に私は第2章の「雲と遊ぶ、空を楽しむ」のアニメと気象についての項が好きです。
荒木さんはアニメに関する造詣も深く、2019年公開された新海誠監督『天気の子』の制作時気象監修されたのもうなづけます。
この章でも「ラピュタと竜の巣」「ドラえもんと台風」「アンパンマンと花粉」の記載があります。
中でも「ドラえもんと台風」の話が良いです。
原作は『ドラえもん のび太とふしぎ風使い』です。

「ふしぎ風使い」は暖かい空気を食べて育つ台風の子ども「フー子」のことで、
フー子は風を自在にあやつる力を持っています。
そしてフー子は凶悪な台風(マフーガ)に立ち向かい嵐を鎮めようとして消滅してしまうのです。

荒木さんはこの映画作品のことを「涙なくしては観られない感動作」と記しています。

最後になりましたが、「ゲリラ豪雨」というのは新しい気象用語ではなく、
「予測の難しい局地的な大雨」を指す言葉として1969年に気象庁の職員が最初に使用したということです。
現在は単に局地的大雨のことをゲリラ豪雨と呼んでいるようです。


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『須賀敦子の手紙』

2024-05-12 10:34:00 | 読書



一時帰国前に友人に書籍の購入をお願いしています。
電子版では入手出来なく、忙しい一時帰国中の購入は難しいと思われる書籍です。
今回購入して頂いた中で一番嬉しい本でした。
Kさん、いつもありがとうございます。

「好きな作家は?」と問われたら真っ先に挙げるのが須賀敦子さんです。
この本にはイタリア人の夫ペッピーノさんと死別して、1971年に帰国した須賀さんがこころを許す友人夫妻に出会い、
このご夫妻に宛てた1975年から亡くなる前年の1997年までの55通の書簡全てが封筒の表書きや手紙の写真と共に収録されています。

あとがきの松山巌さんの文章が私の感想を代弁しています。
「コーン夫妻に宛てた須賀さんの手紙を読み、良かったな、と感じたのは、彼女に喜びを分かち合い、恋を失ったことから教師生活の苦労まで、愚痴も言い合える友人が二人も晩年にいた事実だった」

この本は「つるとはな」という人生の先輩に話しを聞く雑誌の創刊号と第2号に掲載された書簡に加筆修正、再編集され出版されたということです。
「つるとはな」という雑誌にもいつか目を通したいです。
挿入されていた栞の創刊号p.47の文にも心惹かれます。
「私たちは求めすぎるから悩み、不安になるのだと思う」


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村上春樹著 『街とその不確かな壁』

2024-02-08 08:23:00 | 読書
10日間のご無沙汰でした。
別に身体の調子が良くなかったと言うわけではなく、日常の雑事に追われブログを記せなかっただけです。
この本は昨年一時帰国時に購入したのでほぼ9ヶ月間「積ん読」状態でした。



このまま「積ん読」が続きそうでしたが、独訳本が出版されたという新聞記事を読みようやく重い腰を上げました。
どちらかと言うとこの作家の作品は苦手でこれまでも数えるほどしか読んでいないのですが、
一時帰国時に話題になった本はとりあえず購入することにしているので今回も購入したわけです。



Haruki Murakamiはドイツでも大変な人気で我が家の町の小さな本屋さんでも早速平積みされていました。





読み始めたら予想に反して(?)かなり惹き込まれる内容で久しぶりに読み応えのある本に出会えて読書を楽しみました。
でも650ページ以上だったので読了まで2週間以上かかりました。
「あとがき」で作家自身が記しているように、元々は1980年に「文學界」に発表した中編小説を書き直し、
40年後に長編小説として出版された作品です。
作者はこの間31歳から71歳になっていました。
1980当時は「今の自分に何が書けるか、何が書けないかじゅうぶんに把握できていなかった」ということでこれまで元の中編小説については忸怩たる思いを抱いてきたのでしょう。
コロナで外出規制されていた3年間ほぼ引きこもり状態で執筆されたと言うことです。

内容を一言でいうと「自分と影との対峙」でしょうか。
真実と虚構、実体と仮象、夢と現(うつつ)の境の描写が多く登場します。

ところで町の本屋さんに平積みされていた本の表紙が「白無垢」の花嫁さんで目にとまりました。



ドイツ語のタイトルを直訳すると『色に秘められた人生』ということになるでしょうか。
著者のラウラ•今井•メッシーナさんは在日イタリア人作家で作品はイタリア語で記されています。
これまで出版された本の中でベストセラーとなり唯一邦訳もされているのは『天国への電話』です。
早速読んだという友人によると2作品共とても良い小説なので薦められたのですが手に取るのはいつになるでしょうかねぇ(^。^)。






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ウクライナ俳人の句集

2023-12-20 15:53:00 | 読書




ウクライナの俳人ウラジスラバ・シモノバさんが俳句に興味を持つようになったのは、
14歳の時入院先の病院に置いてあった詩歌集に掲載されていた日本の俳句が目に留まったからです。
俳句が短い言葉の中に多くの意味を込めることができることに感動し、
印象を留めることができる素晴らしい方法だと気づいたのです。

入院中で意気消沈していたシモノバさんは特に芭蕉の次の句に希望の光を見出したということです。

まづ祝へ梅をこころの冬籠り
(厳しい冬の寒さに堪える時にも、間も無く梅の花と共に訪れる春をこころに持ち、まずは祝うが良い)

馬渕睦夫氏(元ウクライナ大使)が著書の中で「ウクライナの学校で芭蕉、奥の細道を取り上げ勉強していると知り感激した」お書きになっていると友人から聞きました。
シモノバさんも日本の俳句や芭蕉についてどこかで耳にしたことがあるのかもしれません。
14歳で俳句に出会ってからすぐに作句を始め、黛まどかさんと知り合うまでの10年間に700句も詠まれたということです。

黛さんは知り合いの女性俳人十数名と句の背景を知るウクライナ人、ロシア語を母語とするロシア人と翻訳作業チームを作り、
7ヶ月間かけて50句を選句、翻訳推敲を重ねて今年の夏に句集が出版されました。

シモノバさんの句はロシア語で詠まれています。
彼女はウクライナ語はもちろん使えるのですが、1世紀以上にわたるロシア・ソ連の植民地政策の結果、
ロシア語が第一言語になったからです。
今回のロシアによる軍事侵攻後、彼女はロシア語を使うことは辞め、ウクライナ語での作句を始めたので、
第二番目の句集が出版されるまではまだ時間がかかるでしょう。

巻末に掲載されている黛まどかさんと駐日ウクライナ大使との対談も心に響きました。
数学専攻の博士でもある大使は黛さんと日本文化の美と数学の美についても話しています。
その中で黛さんが日本の数学者の岡潔さんは「多変数複素関数論」という分野で長年未解決だった三大問題を解く前に、
一年間数学をやめて芭蕉の俳句をずっと読み続けたという興味深いエピソードを紹介してくれました。

ウクライナ軍は厳しい冬を迎えて前線で苦戦をしているようですが、挫けることなく頑張って欲しいものです。
そして爆撃を受けながらも作句を続けているシモノバさんのように文化を愛する気持ちは失わないで欲しいです。
ウクライナ大使も「戦時下に文化、心、教育の発展がなければ、何のための勝利か」と語っています。

最後に書道の先生にお願いした芭蕉の句の書を載せます。
長い投稿を最後までお読みくださりありがとうございます。






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ベストセラー『化学の授業』

2023-12-08 17:44:00 | 読書



ドイツ語の本は読むのに時間がかかります。
購入後読了までほぼ3週間かかりました。
ドイツ語のタイトルは“Eine Frage der Chemie“ です。
英語のオリジナルタイトルは”Lessons in Chemistry“です。



世界的大ベストセラーですが邦訳はまだ出版されていないので敢えて邦題をつけるとすれば『化学の授業』になります。

舞台は1950年代のロスアンジェルスです。
当時自然科学の世界は男性中心主義で女性科学者がキャリアを積むには非常に閉鎖的でした。
化学研究所の助手として仕事をしていた主人公の女性化学者は未婚で妊娠したということで研究所を辞めさせられシングルマザーとして財政的に苦労します。
家計補助のためふとしたことからテレビの料理番組を受け持つことになります。
彼女が番組で使う化学用語(「塩」ではなく「塩化ナトリウム」とか、「酢」ではなく「エタン酸」)や、
調理によりどのような化学変化が起こるかという解説が視聴する主婦の間で大変な評判になります。
番組プロデューサーにとっては悪夢のハプニングが続出し頭を抱えることが多くなるのですが、
職員の女性は「難しい化学用語を聞くと少し賢くなったような気がする」と言って、
青ざめる上司に対して「頭痛ですか? アセチルサルチル酸(アスピリンの有効成分)でもお持ちしましょうか?」と言う始末です。

小説自体はフィクションですが、当時の女性科学者を取り巻く環境はまさに小説で描かれているようにとても厳しいものであったようです。
まあこれまでのノーベル賞の女性受賞者はわずか63人ですし、日本人女性はまだいませんから科学は相変わらず男性中心の世界ではありますが。

主人公にとっては苛酷な状況も描かれていますが、思わず笑ってしまうような愉快なセリフも多々あり痛快で爽快な読後感が味わえます。
邦訳が出たらお勧めの本です。


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