気がつけばふるさと離れて34年

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井上靖著 「天平の甍」

2017-06-30 11:03:23 | 読書


以前、文庫本を購入したはずなのですが、どうも地下室にしまい込んだらしく見つからなかったので電子書籍をiPad miniにダウンロードして再読しました。

再読したいと思ったのは今年4月の一時帰国で訪れた高野山で「菩薩授戒」をドイツ人の夫と共に受けたからです。



高野山には多くの施設があります。諸堂拝観の場合、金剛峯寺、霊宝館、大師教会、根本大塔、金堂、徳川家零台の六ヶ所は有料となり、
「諸堂共通内琲券」を購入(1500円)すると割引価格となります。

そのため共通券を購入したのですが、大師教会の「授戒料」も含まれていました。

それまで「授戒」という言葉をしりませんでした。

色々調べている過程で唐の高僧鑑真は日本での授戒師として唐から招かれたということを知りました。

昔「天平の甍」を読んだはずなのに→一体私は何を読んでいたのでしょうか?

今回は少し真面目に(?)読みました

「天平の甍」の主人公は第九次遣唐使節団(732年)の留学生として唐に渡った大安寺の僧普照です。

当時、日本には既に仏教は伝来していましたが、百姓は課役を免れるために出家、僧尼の行儀は堕落、仏教に入った者の守るべき規範は何一つ定まってはいませんでした。

そこで唐より高僧を迎えて正式の授戒制度を日本に広めることがこの遣唐使の目的の一つになっていました。

「授戒」は仏門に入るものに戒律を授けること。受戒をさずけること。
「受戒」は仏門に入るものが仏の定めた戒律を受けること。

私たちが体験した「授戒」はもちろん本来の意味からはかけ離れていたのですが、暗闇の中での体験はとても厳かなものでした。

日本で授戒を行いたいという意志のもと5回に亘る遭難や盲目となりながらも渡日し、天皇を始め多くの人々に授戒を行い日本での布教に大きな影響を与えた鑑真。

唐で写経だけに執心し、多くの経典を日本に持ち帰ろうとしたけれど結局、船が遭難してしまい経典も自身も日本の土を踏めなかった僧の業行。

20歳で入唐した安倍仲麻呂は唐で官吏となり玄宗皇帝に優遇されなかなか日本に帰してもらえなかったのですが、在唐36年にしてようやく渡日の船に乗船することができます。

日本へ帰国できるという時、唐で送別の席で詠んだのが百人一首にも収められている以下の歌です。
「天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山にいでし月かも」

けれども仲麻呂の船は遭難し、中国に再び戻り、その後日本へ帰国することはなく仲麻呂は73歳で死去します。

主人公の普照は在唐20年にして鑑真の乗った船で無事日本に到着することができます。

けれど普照は以下のような思いを抱きます。
「日本語より唐語の方が話易い。自分自身最も日本人と違ってしまったと思うのは言葉以上にものの感じ方と考え方だ」

数か月前、友人がお父様のご逝去で一時帰国されたのですが、親戚の人に
「日本語を話しているのだが、半分外人が話しているように聞こえる」と言われたということです。

多分、私もそういう状態になっている(半分エイリアン?)のかもしれません


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夏の飲み物

2017-06-27 10:49:35 | 日記
暑さも少し落ち着いてきました。

猛暑が続いた先週、我が家の人気ドリンクは麦茶と「ゴルファー」でした。

ゴルフ場のレストランで人気のこのドリンクはピンクグレープフルーツジュースと
トニックウォーターをミックスしたものです。



以前、製薬会社の仕事をした時にもらった「悪魔君(?)」のグラスで飲んだら
少しは暑気払いになるでしょうか(笑)。




喉越し爽やかなドリンクを口にしながら、
お母様が絞ってくださったオレンジジュースを飲まれた小林麻央さんや
間も無く一周忌を迎える友人がお見舞いに持って行った少し生温くなってしまった麦茶を美味しそうに飲んだことなどを思ったことでした。

両親が亡くなったのは12月と2月で寒い時期だったから最後に温かいお茶など飲んだのかななどと、
日本を離れる時に両親のことは看取れないと覚悟はしていたはずなのに、こんな時、最後に側にいてあげられなかったことがやはり申し訳なく思われます。
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夏のゴルフ

2017-06-22 10:15:18 | 日記
猛暑が続いています。

今日は38度位まで上がるらしいです→恐ろしい !

先日、ゴルフの後でテラスの寒暖計を見たら35度以上でした。


普段はフェアウェイの真ん中でのさばっている水鳥も今日は木陰で涼んでいました。



私たちも木陰で休みながらゆっくりプレーしました。


大きくなった雛鳥は暑さにもめげず親鳥の後を一生懸命追いかけていました→頑張って!


上空は雲ひとつない快晴で飛行機からの眺めはさぞかし素晴らしかったでしょう。


三回シャッターを押して機体が写っていたのはこの一枚だけでした。
飛行機って速いのね〜(笑)。

ようやく最終ホール、クラブハウスが見えてきました。
日射病にもならずたどり着けて良かったです。


湿度の低いドイツは気温が高くても凌ぎやすいーとよく言われるのですが、
暑さが続くと疲労が蓄積されてくるようです。

日本の健康ドリンクが欲しいです。

ちなみにドイツ語には「夏バテ」という言葉がありません。
「暑さでグッタリした」というように文章にしないといけません。

ただ「春先の気だるさ」を表す「Frühjahrsmüdigkeit」という語があります。

こう暑いと「夏バテ」を一語で表すドイツ語の新語が登場するかもしれません。


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高島俊男著 「漢字と日本人」

2017-06-18 15:49:20 | 読書


10年以上前に購入したこの本を再読しようと思ったのは書道のお稽古で新しいお手本をいただいてからです。

今、変体仮名の練習をしているのですが、今回のお手本は柿本人麻呂の以下の和歌です。

夏山の峰の梢し高ければ空にぞ蝉の声も聞こゆる

変体仮名(万葉仮名)では「なつやま」の元の漢字は「奈徒也万」、「そら」は「所良」です。

どうして「夏山」とか「空」という漢字を使わなかったのだろうかと疑問に思いました。

高島先生が色々ご説明して下さっているのを要約すると以下の通りです。

☆昔の日本には話し言葉を表記する文字がなかった。

☆中国から伝わった漢字を前にして日本人はとりあえずここの漢字の意味を日本語に当てはめた。
 例えば山(やま)、川(かわ)、村(むら)、人(ひと)、森(もり)


 当時の大和の人たちは「地面が盛り上がったところ」は「や」「ま」という二つの音で表すのが一番しっくり来るものだったので
 その意味を持つ中国の「山」という漢字を「やま」と読むことにしたのです(この部分は高橋こうじ著「日本の大和言葉を美しく話す」の「はじめに」の項から拝借しました)。

☆日本語の固有名詞を発音通りに書き記す場合には漢字をそのまま使っても書き表すことができないので、発音にあう漢字をあてはめ(借字)、
 この字体を草書より崩して記す→変体仮名(万葉仮名)

☆漢字仮名交じり文は平安時代から始まっていたが、和歌では漢語を使わずに読み、また仮名だけで書くように慣習づけられていた。

それで上のお手本のようになったということのようです。

私が高島俊男さんの本を愛読するのは間違いを指摘する時の文章が辛辣なのですがユーモアに富んでいるからです。以下に一例を書き出します。

『ときどき、英語のアルファベットはたったの二十六文字で、それで何でもかけるのに、漢字は何千もあるからむずかしい、と言う人があるが、
 こういうことを言う人はかならずバカである・・・』

それからこの本では「漢字崇拝という愚」という項もあり、漢字を色々書ける=知識階級と勘違いする人々を批判しています。
昔「薔薇」や「憂鬱」という漢字を書けるようになって得意になっていた私などにはとても耳の痛いご指摘でした。

高島俊男さんの次の本の「ネアカ李白とネクラ杜甫」の項も痛快です。


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薬の偽造

2017-06-16 16:02:08 | 日記
もうひと月前になりますが、ダブルブッキングした通訳の同僚の依頼で一時帰国直後、まだ「時差ボケ」が残る状態でデュッセルドルフで開催された世界最大級の包装見本市「インターパック」で仕事をしました。

今回は環境に優しいエコパッケージが強調されていましたが、印象に残ったのは「印刷偽造防止」のテクノロジーを紹介していた企業が少なからずあったことです。

近年、高級化粧品のみならず高価な薬の偽造がとても増えているのだそうです。

先日、ドイツでは「C型肝炎」の薬の偽造品が流通しているとの警告記事が掲載されていました。



この「ハーボニー」という薬の偽造品は日本では既に見つかっているのだそうですが、今回初めてドイツの医薬品市場でも流通しているのが発覚したのだそうです。オランダから流入したのではないかと言われています。




錠剤の偽造だけでなく、添付書、パッケージも不正に模倣されているので、背後に大がかりな組織犯罪グループがいると予想されています。

犯罪グループがこの薬を標的にしているのは薬価が特に高いからです。
日本で2015年7月に承認された時、一錠あたり8万円の 値段が付いていました。
2016年に薬価が改定され5万4千円まで値下げされましたが、1日一錠服用して3ヶ月の治療ですから
かなり高額な治療費です。でも100%の治療効果が期待できるのだそうです。
高額治療の適用が受けられるので患者さんの負担は月々2万円位ではないでしょうか。
ドイツでは治療費は原則、全額給付ですので、患者の自己負担は多分10ユーロ以下だと思います。
国の医療費支出が膨らむだけです。

でも偽造品を知らずに服用していたら治る病気も治らなくなってしまいます。
儲かることだったら「ひとの命」を何とも思わない悪人がいるということに愕然としてしまいます。

「偽造薬」の酷い記事を読んだ日、テレビでは往年の名作「第三の男」が放送されました。


オーソン・ウェルズ扮するハリーライムは軍事病院からペニシリンを盗み、それを希釈して売りさばいていた犯罪グループの一員でした。効き目のない薬を服用して亡くなってしまう子供達の姿がツィター演奏と共に現れる悲しいシーンは何度見ても胸が痛みます。

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