goo

坂族の襲撃

「GO」
 ジャンが鋭くいった。車輪止めが外された。駐車ブレーキを解除。車が坂を下り始めた。だんだんスピードが上がってくる。
 この車に原動機はない。しいていえば積荷の5トンという重量が原動機だ。
 今から8時間かけて車は約1500キロの坂を一気に駆け下りる。止まればやられる。
 車の後部からはロープを引っ張っていて、ロープは出発点に設置してある滑車まで伸びている。
「坂族は出るでしょうか」
 ノーミがジャンに聞いた。ジャンは肩をすくめただけだった。
「昨日行った酒場で上がって来た連中と相席だった。連中の話では、遠くにチラッと見えたそうだ」
 ジェフがノーミに答えた。
「坂族」それは下りの車に乗る者にとって最大の関心事。坂の中程を根城としていて、突然出現し襲いかかってくる。奴らの目当ては積荷だ。時には命を奪われることも多々ある。
 なんらかの理由で坂の途中で止まったりスピードダウンしている車は坂族の格好の餌食となる。
 運転席に座るゾノの肩をボグルがポンと叩いた。ボグルの後ろにジャンも立っていた。「交代だ」
 ゾノはハンドルを固定して運転席を下りた。かわりにボグルが座りハンドル固定を解除した。運転席後方一段高い席からノーミが下りてきた。ジャンがその席に行きノーミから双眼鏡を受け取った。
 大きな満月が出ている。あたりは青い月明かり。横は右も左も、どこまでも地平が続いている。地平線がうすく丸みを帯びて見える。 後ろの地平線は遙か高い所にあって、思いっきり首を上げないと見えない。
 前は奈落の下まで下り坂が続いている。前方の地平線が一番近くに見える。しかし、その地平線は逃げ水のように走っても走っても追いつかない。
 夜の風は猛スピードでジャンのほほを擦っていった。風防ゴーグルの上から双眼鏡を当てた。坂族はいないようだ。
 やつらに襲われると積荷を根こそぎ持っていかれる。積荷を盗られると車は空車になる。車の動力源は積荷だ。その動力源が無くなると車のスピードが落ちる。それも襲われた車だけが遅くなるわけではない。
 後ろに伸びているロープは坂の上の滑車を通って、坂を上がって来る車に繋がっている。下りる車には積荷がある。上がる車は積荷はなく上に戻る人間だけが乗っている。
 族に積荷を奪われると、2台の車のスピードに影響する。
「来た」
 ジャンがいった。
「何台だ」
 ボグルが聞いた。
「3台」
 斜め後方に現れた3台の車は、見る見るうちに追いついてきた。族の車は積荷をつんでいないから軽快で速い。
 1台が前に、2台が左右の斜め後方に付く。そのまましばらく併走する。それだけで族からのメッセージが分かる。
 止まれ。積荷を渡せ。拒否すれば攻撃する。 1台に3人の族が乗っている。こちらは5人。9対5。攻撃を受ければ殺される可能性が高い。
 いきなり矢が飛んできた。運転しているボグル以外の4人が応戦する。猛スピードで坂をくだり下りながらの戦闘だ。矢が当たることはめったにない。勝負は奴らがこっちの車に乗り移ってからだ。それ以前に乗り移りを阻止する必要がある。
 3方から錨が打ち込まれてきた。ただちに斧で錨につながったロープを切断する。
 前を走る族の車がスピードを落とした。こちらのスピードを削ぐつもりだ。斜め後方の2台が真横に回り込んだ。同時に左右から錨を投げた。
 瞬間、車は巨人の手で後ろへグイッと引っ張られた。運転手のボルグが急ブレーキをかけたのだ。族の3台は一瞬先行した。3台はブレーキをかけた。
「いまだ。ロープを切れ」
 リーダーのジャンが怒鳴った。車の後尾にいたノーミが長く伸びているロープの根元を切った。
 グンと車は急加速した。スピードを緩めていた族の3台はたちまち後方に置き去りにされた。
「いいですか。上がりの連中下に戻ってしまいますよ」
「いいさ。下で一杯おごるさ」
 単独で走るようになった車はますます加速する。家に帰り損ねた連中に一杯おごるため。
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2月19日(火) オール電化は素晴らしいか?

 最近のマンションの広告を見るとオール電化を売り物にしているマンションがよく目につく。また、電力会社はオール電化の生活の素晴らしさを盛んにテレビでPRしている。
 現在の日本の電力事情は原子力抜きでは考えられない。火力、水力だけでは必要とされる電力にはとうてい足らない。ところが原子力はご承知の通り大きな危険が伴う。幸い中越沖地震の時の柏崎原発は大事には至らなかったが、いったん異変が起きると大惨事になるかも知れない。最悪の場合は日本がチェルノブイリになる可能性も否定できまい。
 ところが電力会社は増加する電力需要に対応するために原子力発電に理解を求めている。だったら電気の使用をできるだけひかえるように消費者にお願いするのがスジだろう。ところがオール電化の生活を盛んに推奨している。これ、矛盾していないか。
 結局、電力会社も民間企業ゆえ、電気をたくさん使わせて儲けることしか考えていないのだろう。
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善き人のためのソナタ


監督 フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
出演 ウルリッヒ・ミューエ、マルチナ・ゲデック、セバスチャン・コッホ
 
 1984年。社会主義政権下の旧東ドイツ。全体主義国家で政府は国民を信用せず、あちこちに監視の目が光り、反体制の疑いがかけられた者は、捕らえられ獄につながれる。
 主人公は国家保安省の役人ヴィースラー大尉。彼の仕事は、劇作家ドライマンと女優のクリスタの監視。ドライマンとクリスタは恋人同士で同棲している。
 この任務、実はドライマンに反体制的な嫌疑がかけられている事は事実だが、クリスタに横恋慕する、政府のエライさんヘンプフ大臣の個人的な欲望もからんでいる。
 任務に忠実に、二人を監視するヴィースラー。盗聴し盗撮し、二人の行状を細かく書類に記録する。そんなヴィースラーに心境の変化が。
 そんなある日盗聴器から美しいピアノ曲が聞こえてくる。その曲はドライマンが、尊敬する演出家から贈られた「善き人のためのソナタ」という曲だった。その曲を聞いたヴィースラーは自分の任務に疑問を持ち始める。そして、ベルリンの壁が崩壊。
 主役のヴィースラーを演じたウルリッヒ・ミューエがいい。映画の前半は東条英機を思わせるハゲ頭の冷酷非常は国家権力の手先。血も涙もない国家保安省のエージェント。それが、皮肉なことに任務を忠実に遂行していくうちに、だんだんと人間らしさを取り戻していく。
 人権を無視する全体主義国家を描いた映画だが、処刑、粛清といった過激な表現はない。国家に反抗した者の行く末は、閑職に追いやられ、極めてつまらない単純労働に就かされる。それがリアルでかえって恐い。
 ヴィースラーが保安省で教官をしていた時の生徒の一人が、東ドイツの最高権力者ホーネッカー議長をからかったジョークをいった。その生徒、映画の後ろできっちり懲罰的単純労働に就かされている。少しでも反抗的な者は絶対見逃さない監視国家の恐さを表わしたシーンだった。
 東西ドイツ統一後の登場人物たちのその後も、きっちりと描かれている。ラストが感動的。救われた。
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2月18日(月) 堀江謙一氏の次の航海

 堀江謙一さんが、また新しい航海に出る。今度の船は波浪推進船。海面の波の動きを推進力に変えて進む船だそうだ。
 1962年、23歳の時、世界で初めて単独太平洋横断を成功させた堀江さんも69歳。まだまだ冒険心はおとろえそうにない。
 単独無寄港世界一周、縦周り世界一周、ソーラーボートによる太平洋横断、足こぎボートによる太平洋横断、東西両方向周りの世界一周、など様々な海の冒険を成功してきたが、いずれも燃料を燃やして動力で推進する船ではなく、自然の力をそのまま使う船だ。今回も海に無限にある波を使う船。
 毎回毎回、まったく違う方法で太平洋横断や世界一周を成し遂げておられる。その冒険心もさることながら、企画力と、それを実現させる実行力には敬服するしかない。次回の波浪推進船の横断も成功されるであろう。と、なるとその次はどんな船で冒険の航海にでられるか楽しみだ。

 こんなSFを思いついた。
 20世紀から21世紀にかけて活躍した偉大な海洋冒険家ホリエの記憶は、データ化され1個のICチップに保存された。
 遥か遠未来。地球は何度目かの氷河期を迎えていた。今度の氷河期は地球誕生以来、最大の氷河期だった。
 大陸移動によって何度もくっついたり離れたりしたユーラシア大陸とアメリカ大陸。その時は離れていた。両大陸の間の広大な海が凍り始めた。そして、ついに両方の大陸の間に氷の橋ができた。
 ユーラシア大陸の東の端、かってニッポンと呼ばれた島で一体のアンドロイドが目を覚ました。彼の頭にはホリエの記憶を保存しているチップが埋め込まれていた。
 アンドロイド・ホリエは立ち上がり、ニッポンを離れてかって太平洋と呼ばれた氷の橋を渡り始めた。一歩一歩、遥か大昔の記憶を想いおこすように歩を進める。そして氷の橋を渡り終えた。
 ホリエはつぶやいた。「僕の航海はこれで終わった」

 堀江謙一氏の次の航海の成功をお祈りする。
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2月17日(日) ヘイ! コロッケ定食あがったよ


 最近、杉浦茂が再評価されている。実に喜ばしい。杉浦茂は昭和30年代の漫画家で代表作は「猿飛佐助」独特の丸っこい線で、何が出てくるか分からない、奇想天外なお話。実にポップな漫画を描く人だった。この杉浦漫画のキャラに「コロッケ5円のすけ」というのが出てくる。
 そうだなあ。昔はコロッケ1個5円ぐらいだったかなあ。いや、いくらなんでも5円ということはなかったな。
 子供のころ、休日の昼のおかずによくコロッケが食卓にのった。母親が駅前のパチンコ屋の向かいの肉屋で買ってきた。コロッケとじゃがいもの串揚げ。パン粉をつけて、揚げる前のやつを買ってきて自分で揚げてたな。あのコロッケ。おいしかったけど、あんまり肉は入ってなかったな。
 そういうわけで、今日の昼食はコロッケ定食。じゃがいもをゆでる。メークインより男爵の方がいい。玉ねぎ、牛ひき肉を炒める。パチンコ屋の向かいの肉屋のコロッケは肉が少なかったが、自分で作るのだから肉は多い目にしよう。
 ゆでたじゃがいもをつぶして、炒めた玉ねぎ、ひき肉を入れて、塩、こしょう、ナツメグで味付け。小判型に成形して、小麦粉、卵、パン粉をつけて揚げる。中身は火が通っているので、表面がカリッとするだけでいい。
 お皿にコロッケを並べ、キャベツの千切りを添える。ワカメの赤だし。漬物の小鉢。ごはん。これでコロッケ定食の出来上がり。コロッケはウースターソースをかけて食うことが多いが、小生は醤油をかけるのも好きだ。
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2月16日(土) 肉や肉や、牛肉や、ステーキや


 肉ばっかり食べんと野菜を食べなあかん。健康診断で中性脂肪が基準値を超えてるゆわれたんやろ。あんたはすでにメタボおやじなんやから、肉ばっかり食べたらあかんで。
 てなことをいわれる。そんなことわかっとるけど、やっぱり野菜より肉の方がうまい。たしかに肉ばっかり食うのは、あけんけど、肉かて別に毒ちゃうやろ。
 ちゅうわけで、肉。ここは関西や神戸や、肉ちゅうたら牛。貧乏人につき、牛肉なんてめったに口にできん。たまにはゼータクを。
 ちゅうわけで今夜はステーキを焼く。すき焼きや焼肉もええけど、牛肉をストレートに楽しむには、シンプルにステーキというのが一番。
 塩、こしょうして、熱したフライパンに入れ、強火で両面を焼く。フライパンの底を水につけて冷やし、フライパンにフタをして弱火で加熱。後は、レア、ミディアム、ウェルダン、と、お好みの焼き加減で。
 ソースは洋風のグレービーソースではなく、和風に醤油と味醂で。牛肉には醤油が一番あうんちゃうやろか。
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2月15日(金) 車は機械だ

 ときどき室内を満艦飾に飾り立てた車を見かける。バックミラーに小さな人形をぶら下げるぐらいならかわいいが、フロントウィンドウの上になにやらビラビラをぶら下げたり、リアウィンドウの前にいっぱいぬいぐるみを並べたり、全身にステッカーを張って耳無し芳一のようになった車だ。
 自分のお部屋をどうしようと勝手だが、車は自分のお部屋ではない。確かにプライベートな空間だが、車は決して居間ではない。1トンを超すの金属のかたまりが60キロなり100キロなりのスピードで疾走しているのである。少しの間違いで重大な事故を引き起こす。
 従って、走向に不必要なものは車に搭載すべきではない。前のビラビラは前方視界を妨げる。後ろのぬいぐるみのコレクションは後方視界の邪魔。もしそんなものを車にくっつけている人がいたら即刻取り外すべき。
 車はあくまで機械であり、運転は機械を操作する作業なのだ。操作を間違えれば人が死ぬ。だから免許が必要。
 車はわたしのかわいいペット、運転席はおしゃれなわたしだけのお部屋、と思っていたら大間違い。
 車とは、化石燃料と空気を混合させて、混合ガスに電気スパークで点火。その時の爆発力でシリンダー内のピストンをキックしてクランクシャフトを回し、その力をデファレンシャルギアを通じてタイヤを回転させ、地上を走向する機械だ。決してペットではない。
 そんなに飾り付けたいのなら、自分の手足お顔お部屋だけにして車はやめて。どうしても自分の車につけて走りたいのならば、自分専用のコースを作ってそこで走ってちょうだい。
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2月14日(木) 市川昆監督が亡くなった

 市川昆監督が亡くなった。市川監督の映画で一番印象に残っているのは、やっぱり「犬神家の一族」70年代終わりから80年代初頭にかけてメディアミックスの大規模なキャンペーンを展開した、角川春樹映画の最初の作品。
 映画としても大変に面白く、小生は今は亡き梅田の北野劇場(だったと思う。記憶あいまい)で観たのを憶えている。この映画公開を契機に、横溝正史がブレークして、角川書店は黒の装丁の横溝ミステリーで大きな売上げを上げた。
 市川監督のテレビでの仕事は「木枯らし紋次郎」笹沢佐保原作の股旅時代劇で、同時代の「必殺シリーズ」とともにテレビ時代劇に一つの革新をもたらした作品。従来の水戸黄門的勧善懲悪時代劇とはまったく違うコンセプトの時代劇だった。毎週土曜日の夜「ど~こかで、だ~れかが、風の中で」という、上条恒彦の歌声が聞こえ、芥川隆行のナレーションが聞こえるとワクワクした。しかし、水戸黄門大好きなオヤジには不評だった。
 東京オリンピックの映画というのも話題になったな。市川監督が撮った東京オリンピックの記録映画は芸術面に重点を置いて、記録性がなおざりにされている、と当時の自民党のエライ人河野一郎(今の衆議院議長河野洋平のお父さん)がクレームをつけた。で、芸術か記録かという論争があった。
 これも不思議な論争だった。芸術と記録は対立するものではなく、並立するものではないだろうか。優れた記録は芸術たりうるのではないだろうか。例えば「蒙古襲来絵図」は蒙古が日本に襲来した時の記録だったのだろう。しかし、あの絵図は記録であると同時に、優れた絵画、芸術でもあるわけだ。
 ただたんに客観的な記録を保存するだけならば、新聞の縮刷版とニュース映像を編集して保存するだけでもいい。なにも市川監督のような優れた映画監督に依頼する必要はないわけだ。
 市川昆監督のご冥福をお祈りする。

星群の会ホームページ連載の雫石鉄也「SFマガジン思い出帳」が更新されました。
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2月13日(水) 「上方演芸ホール」を観る

NHK「上方演芸ホール」を観る。

桂よね吉 蛸芝居
桂雀三郎 哀愁列車

 よね吉さん。うまい。うまいなあ。師匠の故吉朝師匠よりも、大師匠の米朝師匠をほうふつとさせる芝居噺だ。
 雀三郎さん。小佐田定雄さん作の新作落語。恋に破れた男が列車で旅に出る。向かいの席が開いている。たまたま、向かいに美女が座って、新たな恋を得る、という妄想を抱く噺。で、向かいの席にどういう人物が座って、どういうやり取りがあるかが面白い。
 この噺、向かいの席の人物を次々入れ替えることができるので、いくらでも長くできる。どういう人物を座らせるかで、様々なくすぐりを入れられる。今日の雀三郎さん、小佐田さんの原作を忠実になぞっているのでは。
 向かいの席には3組の人物が座る。老婆、子連れのおばさん、酔っ払いのおっさん。これ小佐田さんの原作どおりかどうか知らないが、時間の関係もあるが、もう一人、客が考えもしない奇想天外な人物を座らせてもらいたかった。
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とつぜんリストラ風雪記 3

 とつぜんリストラ風雪記 1
 とつぜんリストラ風雪記 2

 第3章 さらばK電気 

このままK電気に残ってもいずれ指名解雇にあう。そうなれば退職金の割増しもない。倒産すれば退職金さえ危ない。家族とも充分に相談して、熟慮して退職の決心をした。
 もちろん小生とてこの歳で再就職は難しいことは判っていた。しかし、なんとかなると思っていた。今から考えると非常に甘い考えだった。現実はそんな生易しいものじゃなかった。
 もし、あなたが45歳以上で会社を辞めようかとお考えなら、小生は反対する。現実はあなたが考えている以上に厳しい。正社員で雇用される可能性は極めて低い。派遣、契約といった非正社員でも40歳までと考えた方がいいだろう。幸いにも派遣、契約で雇用されても、月に20万の収入は夢のまた夢。15万以下、ヒトケタ万円というのも経験した。年収だと200万以下となる。
 小生の場合は、資材、購買、生産管理といった仕事を27年やってきた。これらの仕事はある程度経験が必要なので、担当者が急に退職して困っている会社があれば、中高年でも採用してくれる。現在、小生は某重厚長大産業で正社員として働いている。6社目にしてやっと正社員として雇用された。ここで、倉庫業務と購買仕入れを担当している。この職場は前担当者が定年で退職するので後継者として小生が採用された。営業、総務といった職種なら、状況はもっと困難だろう。そういうホワイトカラーよりも、技術者や製造現場の職人さんといったブルーカラーの方がいいかも知れない。

2002年10月18日(金)
会社を辞める決心を固める。
10月19日(土)
土曜日出勤だが有給休暇を取る。1日家でのんびりする。
10月20日(日)
家族で海遊館に行楽。経済的に苦しくなることが予想される。行楽にもたびたび行けないだろう。クラゲの企画展示をやっていた。ゆらゆらと水中を漂うクラゲを見ていると、なんだかうらやましい。クラゲになりたかった。
10月21日(月)
今日でK電気での仕事も終わりと決めていた。退職は11月だが、たまった有給休暇を消化するため、10月22日から11月15日までを有給休暇扱いとする。
 この日の帰り道、やりたかったことを実行する。クリント・イーストウッドのダーティーハリー。あの映画のラストでハリーが「警察なんか辞めてやる」というわけで、警察バッヂを川に投げ捨てるシーンがある。あれかっこええな。いっぺんやりたいな、と思っていた。長年の念願を叶えた。
 JR伊丹駅近くの川に27年間つけていたK電気のバッヂを投げ捨てた。実に気持ちよかった。憑物が取れたような感じだった。
10月22日(火)
2回目の面談。常務、工場長、総務部長の3人が面談の相手。「結論は出たか」と聞く。小生は黙って書類を出した。ちなみに退職の形態はAを選択。割増しをもらうことにする。3人はうんうんと首を縦に振りながらうれしそうに書類を受け取った。「何か質問は」ということなので「再就職の斡旋とか支援はしないのか」と聞いた。
 希望者は就職支援会社のパソナに会社の費用で登録してやるとのこと。登録を希望した。この日は面談だけして帰宅する。
10月24日(木)
 労働組合の脱退届を提出しにK電気へ。組合加入時から月々積み立てをしているから、そのお金が戻ってくる。20年以上かけてきたからそこそこの金額になる。会社に残している私物を持って帰る。
 車を11月中に手ばなすことにする。収入がなくなるのだから、車の維持は不可能になる。車大好き人間の小生としては非常につらいがしかたがない。
 小生が小学生4年の時、親父がトヨタのパブリカを買った。その時以来、わが家にはずっと車があった。小生は19歳で免許を取った。車のない生活をものすごく久しぶりに体験することになる。借りている駐車場を解約しに行く。
10月30日(水)
 小生が勤務していたK電気伊丹工場は伊丹の空港のすぐ近く。離着陸する飛行機のお腹が手でさわれそうな所にあった。飛行機が離陸する瞬間、着陸する瞬間が間近で観られて、小生は最も迫力ある見物ポイントを知っている。と、いうわけで家族と飛行機見物に出かける。
11月6日(水)
 退職説明会でK電気へ行く。社長が出てきてない。小生たちは会社の犠牲になって今から路頭に迷うわけだろう。会社のトップなんだからこの場に出てきて一言あってしかるべきだろう。どういっていいかわからない?では、ここで小生が見本を見せる。
「私の力が至らぬため会社の業績を悪化させてしまいました。従業員の皆さんには大変なご苦労をおかけしております。特にここにおられる方々には、会社を去る、という重大な決断をさせてしまいました。この決断をされるまでのみなさんの心中を思うに、誠に慙愧に耐えません。
 みなさんが会社を去るという結果を真摯に受け止め、これを会社復活の起爆剤として、業績の上昇によりいっそう励むことをここに誓います。業績が好転したならば、その影にはみなさんという犠牲があったことを決してわすれません。みなさんはこれから世間の荒波にもまれるわけです。大変なご苦労かと思いますが、今までの経験をいかして必ずや第2の人生を切り開くことを信じてやみません。それでは、みなさん、さようなら。誠に申し訳ございませんでした。そして、みなさんのこれからの人生に幸多からんことを強くお祈り申し上げて私のごあいさつといたします」  
 と、せめてこれぐらいのあいさつぐらいできんか。それが人の道というものだろう。ま、その程度のご仁が社長をやっているのだから、会社が斜めになるのもムベなるかな。
 この席で小生は「私たち従業員は会社を去りますが、あなたがた経営陣の何人が会社を去りますか」と質問した。答えは「一人も辞めない」
 2年前に本社工場新築を決断したのは経営陣。組合がM電機におんぶにだっこじゃいかんといっているのに聞かなかったのも経営陣。会社がこういう具合になった責任は経営陣にある。その経営陣からは一人も辞めないで、小生たち従業員を切る。逆ではないか。この会社のリストラに限ったことではないが、なぜ従業員から切っていくのか不思議に思う。まず責任のある経営陣から切っていき、そして従業員に手をつけるべきではないか。
 従業員を切っても、アホが会社に残れば、またアホを繰り返すだけ。その証拠にK電気はつぶれた。
11月8日(金)
 これから無職になる。午前中、東灘区役所に保険関係と税金関係の問合わせに行く。午後、K電気に行き、パソナの人と会い、説明を聞く。
11月10日(日)
 有馬の瑞宝寺公園へもみじ狩に行く。「銀の湯」につかってくる。これがインテグラで行った最後の行楽。
11月13日(水)
 梅田の新阪急ビルのパソナのオフィスを見学。
11月14日(木)
 愛車ホンダ・インテグラを手放しにガリバーへ行く。いくらで引き取ってくれるかなと思っていたら、逆に二万円取られた。10年以上年乗った車、中古車として売れないとのこと。スクラップとされる運命。ガリバーの駐車場に置かれたインテグラから離れるのがとても辛かった。
 小生が嬉しいこと楽しいことをしている時は、いつもこのインテグラが横にいた。
11月15日(金)
 午前中、最終的な退職手続きのためK電気へ。各書類の処理。作業服を返還。もちろん洗濯して。バッヂも返せといわれるが紛失したと答える。昼前、K電気を出る。これでK電気とも縁切り。
 午後、保険と年金の手続きのため区役所へ。


                    つづく
 


 
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2月12日(火) 家庭内ゲーム温暖化対策

 その家には3人の男の子がいます。3人ともゲームが大好きです。そのためか、3人とも目が悪く目医者にかかっています。医療費がかかる上、健康にも良くないので、おかあさんは3人にゲームの時間に制限をつけました。1日で1人30分ずつと決まりました。
 ところが、おにいちゃんは塾の関係で1日に15分ずつしかゲームができなくなりました。すると下の弟がおにいちゃんのゲーム時間15分をチョコ3枚と引き換えました。弟は毎日45分ずつゲームをするようになりました。弟はさらに目が悪くなりました。その家の医療費はあいかわらず多いままです。
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2月11日(月) SFマガジン2008年3月号

 SFマガジン2008年3月号№623を読み終えました。大昔、SFマガジンでは「人気カウンター」というコラムがありました。
 毎月、同誌に掲載された作品のランキングを読者に投票してもらって、次の号でランキングを発表するものです。このコラムがなくなって久しい。そこで、これから小生が小生の個人的なランキングをつけてこのブログで発表しようと思います。なお、対象は読み切り短編だけで、連載は対象外とします。
 では早速、

2008年3月号 №623
1位 シスアドが世界を支配するとき コリイ・ドクトロウ 矢口悟訳
2位 十月二十一日日の海 平山瑞穂
3位 エコー エリザベス・ハント 柿沼瑛子訳
4位 十億のイブたち ロバート・リード 中原尚哉訳

 1位は新型インフルエンザの流行が心配されている。妙にリアルに感じた。2位のようなSFもいいなあ。
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男はつらいよ 寅次郎恋やつれ


監督 山田洋次
出演 渥美清 吉永小百合 倍賞千恵子 松村達雄 三崎千恵子 宮口清二

 先日、テレビで放映されたものを録画していて、昨日観た。お話はいつもの「寅さん」 
このシリーズ、数年前、テレビ大阪で全48作一挙放映をやった時、48全部観た。で、今回、改めて観たら、つくづく山田洋次と渥美清のうまさに恐れ入った。
 笑わす、しんみりさせる、の起伏を104分のパッケージの中に、ギャグをちりばめながら収める。実に山田洋次の演出とシナリオのうまさが認識できた。
 渥美清。必ず、とらやにて、寅がみんなに情景を語るシーンがあるが、これなどは実に見事な渥美清の芸である。
 マドンナは吉永小百合。吉永小百合といえば小生たちの少し上の人たちにとって最大のアイドル。きれいな人だ。歳を取るに従ってきれいになってくる。63歳の今の吉永さんが出ていたがきれい。
 ところが吉永さんは決してうまい女優さんではない。どっちかいうと倍賞さんの方がうまい。吉永さんはどの映画でも吉永さん。大竹しのぶなどは大竹しのぶという媒体を通じていろんな役が憑依するタイプだが、吉永小百合には吉永小百合しか憑依しない。
大スターとはそんなもんではないだろうか。三船敏郎はどの映画でも三船。高倉健はどの映画でも高倉健。ジョン・ウェインも同様。
ところで、両方とも亡くなったので今となっては夢だが、ぜひ観たい「男はつらいよ」がある。「男はつらいよ 葛飾の休日」
マドンナはオードリー・ヘップバーン。「ローマの休日」のアン王女が葛飾に来るというストーリー。グレゴリー・ペッグの新聞記者をテキヤの寅さんにかえれば「ローマの休日」のシナリオがそのまま使える。実現するには色々手続きが必要だろうが。実現してもらいたかった。

 
 
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2月10日(日)その2 シズクバーガーがいちばん 


 小生はマクドのハンバーガーはあまり食べない。ある年の正月、ちょっと事情があって、おせち料理なんかなくって、マクドだけを食って3が日を過ごしたことがあった。とってもさみしい正月だった。
 その小生の少ない経験で判断すると、マクドのハンバーガーは小生の口には合わなかった。だいたい、このようなことをしている会社が作っているハンバーガーである。もともと食べなかったが、よりいっそうマクドのハンバーガーなんぞは食べない。
 とはいいつつも小生とてハンバーガーを食べたい時もある。マクドは食べないが、かといってモスバーガーなんかの他のハンバーガーチェーンで食べる気もない。
 自分で作る。結局、これが一番。シズクバーガーが一番うまい。と、自分では思っている。と、いうわけでハンバーガーを作った。
 中身のパテは基本的にはハンバーグと同じ作り方だが、パン粉を入れないで作った。あんまりふっくらしない方がいいだろう。
 ハンバーガーバンズにバターとマスタードを塗って、レタス、パテ、チーズを挟んで200度のオーブンで15分ほど焼く。
 
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2月10日(日) 「SFが読みたい!2008年版」

「SFが読みたい!2008年版」が出た。毎年、この本のランキングには注目している。小生も小生なりの読んだ本のランキングを発表している。
 2007年版はこのブログに掲載した。2002年から2006年までのぶんは星群の会のホームページ掲載の雫石鉄也のコラム「とつぜんコラム」にて、毎年2月に発表していた。
 で、今年のランキングだが、まず国内。小生は「星新一 一〇〇一話をつくった人」を1位にして「虐殺器官」を2位にしていた。「SFが読みたい」では「虐殺器官」を1位に「星新一」を4位にしていた。「虐殺器官」の1位は大いに納得が行く。しかし「星新一」が4位というのはいかがなものか。どうも同書がフィクションでないからという理由で投票しないアンケート回答者が多かったようだ。
 このようなランキングは読者全員が納得することはありえない。必ず、あ、ワタシのと違う、オレのと違う、こんなんがランキング入りしているのはおかしい、なんでアレがランクインしてへんねや、と、ごじゃごじゃといわれることだろう。だから、このブログもその、ごじゃごじゃのひとつだが、「星新一」は非常に上質なSFを読んだ時と同様なセンス・オブ・ワンダーを感じた。今後もこのような上質なSF関連のノンフィクションが出てくるだろう。そういう時どういう基準で投票するのか「SFが読みたい!」の編集部には考えてもらいたい。
 小生が5位にしている「ロック・ラモーラの優雅なたくらみ」はランクインしていなかった。ま、この作品は純然たるファンタジーだから、いたしかたない。しかし、サブジャンルの海外ファンタジー担当の三村美衣氏が今年の収穫として少し触れておられた。さすが。
 また海外では[擬態」と「老人と宇宙(そら)」が6位7位という高位にいる。あの作品がなぜこんな高位なのか。この2作がこんな位置にいるということは2007年は海外SFは不作だったのかな。 
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