goo

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ


監督 水島努
出演(声) 矢島晶子、ならはしみき、藤原啓次、村松康雄、小林清志

 傑作である。映画への愛に満ちた傑作だ。かってスターウォーズ第1作初公開の時、こんなことをいった批評家がいた。「この映画の唯一の欠点。それは終わりがあること」
 面白い映画はいつまでもいつまでも観ていたい。このまま、ずっと、この素晴らしき連中とめくるめく冒険と愛に満ちた世界にいたい。この映画館の暗闇から出たくない。映画館から出れば、そこは惑星タトウィーンでも、西部の町ツウムストーンでも幕末の京都でもない。映画館に入る前の日常の世界が眼前にある。そして、夜はウィスキー片手に阪神タイガースを応援し、明日から会社に行かなくてはならない。でも必ず映画には終わりがある。映画が始まって、2時間程度時間が経つと、必ずスクリーンに「おわり」「完」あるいは「THE END」「FIN」という文字が映写される。これが出ると嫌でも現実の世界に戻らなくてはならない。
 しんのすけ一家が映画館カスカベ座に入った。客はいない。無人の映写室では映写機が映写を続けている。スクリーンには広漠たる荒野が映されている。
 ふと気がつくと、しんのすけたちは、その荒野にいた。不思議なロボットがある。岩壁に鎖でくくりつけられた鉄の扉がある。鉄道もある。
 線路に沿って歩くと。町にたどり着いた。西部劇に出てくるような町だ。この町「ジャスティスシティ」は知事ジャスティスが支配する町だ。ジャスティスと手下の保安官は暴力で町民に強制労働を課す。しんのすけたちは、この不可思議な西部の町を脱出して、埼玉県春日部に戻りたい。しんのすけはジャスティスの屋敷でメイドをしている少女つばきと知り合い、ここを脱出する方法を探る。そしてジャスティスの横暴を許さない人たちと汽車に乗って、「禁じられた場所」に向かう。そこであるものの封印をとくと春日部に帰れる。この反ジャスティス派の用心棒となったのは、この七人
 いやあ映画好きの琴線にふれまくる。特に小生のような西部劇ファンにとっては感涙もの。まず、最初の荒野。これはジョン・フォード+ジョン・ウェインの名作「駅馬車」の舞台アリゾナはモニュメントバレー。しんのすけたちが町の酒場に入ると。いかにも西部劇の悪役といったおっさんがからんでくる。で、盛大に殴り合い。酒場の殴り合い。ジョン・フォード+ジョン・ウェインのジョンジョン西部劇の定番。ウェイン、ワード・ボンド、ビクター・マクラグレンらが必ずはでに殴りあう。
 バックに流れる音楽はマカロニ・ウェスタン風というかエンニオ・モリコーネ風。しんのすけの母が酒場でへたな歌を歌うが、これが白いドレスを着てギターの弾き語り。これなどはマリリン・モンローの「帰らざる河」だ。
 しんのすけや七人が乗った汽車をジャスティスが自動車で追いかけるが、「西部劇に自動車?」との疑問に、映画オタクのマイクが「自動車が出てくる西部劇もある」といっていたが、確かにある。リチャード・ブルックスの傑作冒険西部劇「プロフェッショナル」の冒頭、リー・マーヴィンが機関銃の試射をやっているシーンに自動車が出てくる。サム・ペキンパーの大傑作「ワイルドバンチ」にも自動車が出ていた。この汽車を自動車で追跡するシーンは「マッドマックス2」だ。またジャスティスはムチの達人。インディ・ジョーンズだ。
 で、この映画も「おわり」となる。ラスト、しんのすけ(う~む。どうも、あべしんのすけを思い起してしまうな。こっちも負けへんけど、あっちも負けへんな。こら、竜、星、燕、鯉、しっかりうさぎを食え。虎ひとり食ったってセリーグはおもしろくない。かくなる上は獅子、海、戦士、牛、鷹、鷲に食ってもらおう)は、映画の世界に戻りたいと泣く。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 卵サンド 阪神連勝スト... »