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ワイルドバンチ


監督 サム・ペキンパー
出演 ウィリアム・ホールデン、アーネスト・ボーグナイン、ウォーレン・オーツ、ロバート・ライアン

 堀晃さんのホームページを見ていると「ワイルドバンチ」が観たくなった。封切り時は、今は無き神戸新開地の聚楽館で観た。確かVHSのテープであったはず。見当たらない。しかたがないのでアマゾンでDVDを買った。ずいぶん久しぶりに観た。傑作だ。
 西部劇の最も重要な小道具は拳銃だろう。この映画の前半部、主人公たち強盗団の拳銃は軍用のオートマチック拳銃を使用していた。西部劇の象徴たるリボルバーのコルト45ピースメーカーではなく。オートマチック拳銃だ。映画の後半はピースメーカーを腰にぶら下げていたが。自動車が出てきた。小生の観た西部劇で自動車が出た映画は、リチャード・ブルックスの「プロフェッショナル」ぐらいしか記憶にない。
 典型的な西部劇、ジョン・フォードに代表される西部劇は19世紀後半、つまり南北戦争が終わった直後のころの話だ。ところがこの映画は1913年のメキシコ革命さなか、という時代設定だから20世紀初頭。いわゆる「西部劇」よりも50年近く現代に近い。
 荒々しい西部開拓時代から近代へと移行しようとしている時代。アメリカ、メキシコ国境。時代に取り残されたかのような武装強盗団がいた。首領のパイクは初老。足を洗って静かな生活を送ろうと思っている。同じく時代に取り残された賞金稼ぎグループのリーダーも初老の男ソーントン。
 パイク一味は鉄道会社を襲うが、金袋の中身は鉄の座金。くやしがりながらも次の仕事に取りかかる。鉄道会社に雇われたソーントンたちを振り切って米軍の武器弾薬を奪ってメキシコへ逃亡。
 そこで彼らは革命軍と戦う政府軍マパッチ将軍と逢う。マパッチの軍隊は政府軍といいつつも半分山賊みたいな軍隊。パイク配下のメキシコ人エンジェルの故郷の村で乱暴狼藉好き放題。エンジェルの恋人もマパッチの女に。
 マパッチはパイクに奪った武器を買い取ると持ちかける。商談成立。ところが村出身のエンジェルの頼みで武器1箱を抜き取り革命軍に横流し。怒ったマパッチはエンジェルを捕らえ拷問にかける。パイクたちは、たった4人でエンジェルを救うため200人のマパッチ軍に戦いを挑む。
 最後の4人の殴りこみ。4人肩を並べて横一列になって正面を向いて歩く。大変かっこいい。「昭和残侠伝」シリーズで高倉健と池部良が男同士の相合傘で肩を並べて殴りこむシーンを彷彿とさせる。のちにテレビの「Gメン75」でまねをしていた。また時代劇の「大江戸捜査網」までまねをしてた。
 ラストの大銃撃戦は「死の舞踏」と称される、映画史に残るアクションシーンだ。ちなみに小生が考えるハリウッド映画3大名アクションシーンは「ベン・ハー」の戦車競走、「ブリット」のカーチェイス。そしてこの「ワイルドバンチ」の銃撃戦。スローモーションを多用した映像は壮絶かつ美しい。
 滅び行く「西部」とともに滅んだパイクたち。死体累々の銃撃戦の後には賞金稼ぎがハゲタカのように群がり、死体から金品を剥ぎ取っていく。その横でパイクに先に逝かれたソーントンが一人静かに座っている。
「西部」終焉とともにアメリカは、豊かな資本主義工業国となり、豊かになろうとしている東洋の国日本と戦う。そして、その後も朝鮮、ベトナムと戦い、こうしている今もイラク、アフガニスタンで戦っている。時代が下るにつれアメリカの戦いは美しくなくなっていく。
 ペキンパーは西部劇に引導を渡した監督といわれる。パイクたちの「死の舞踏」はある意味アメリカの最後の「美しい戦い」だったかもしれない。
 とはいうもののこれはハリウッド映画の中の話。本当のアメリカは独立時から、この大陸で平和に暮らしていたネイティブ・アメリンを美しくない戦いのすえ追い払い作り上げた国。ペキンパーはこの映画でアメリカの夢を終わらせたのかも知れない。 

コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
TBありがとうございます (西荻住人)
2007-11-15 12:39:45
ほんとうに、最後の銃撃戦は圧巻でしたね。
そのあと一人座り込むソーントンの姿も印象的でした。
 
 
 
西荻住人さん (雫石鉄也)
2007-11-15 20:30:16
 コメントありがとうございます。
 西部劇好きの私にとってこの映画は大好きな作品です。西部劇はジーさんが魅力的なものが多いですね。
このワイルドバンチのパイク、ソーントン、ダッチ、それに「黄色いリボン」のジョン・ウェインもいいですね。
 
 
 
私が思うこと (アブダビ)
2015-12-19 03:05:13
西部劇でありながら、近代兵器が出てくる出てくる。
それでラストで、追ってきた男が、彼らのホルスターを見ますね。
リボルバーの6連発を抜いてない。
あれは衝撃でした。
西部の男の誇りに値しない殺戮だったのでしょう。
感傷ではあるが、西部劇好きとしては泣けるラストでありました。

ところで、TSUTAYAで過去の名作紹介シリーズで、ジョン・カーペンターの初期の低予算映画である「要塞警察」がリリースされてます。

サウスブロンクスの閉鎖される予定の警察署が舞台。
ブロンクスのストリートギャングに娘を殺された親父が、彼らを射殺して逃げ込んで来る。親父は人事不祥。
若いギャングに引き渡すのを拒否した臨時署長と、数人の後始末の事務員たちが署に立てこもる。
ついに死刑囚にまで銃を渡して戦う!
舞台は20世紀の話ですが、ウエスタンですよ、気が向いたら鑑賞をお薦めいたします。
 
 
 
アブダビさん (雫石鉄也)
2015-12-19 09:02:41
へー、あのぐちゃぐちゃホラーの名作「遊星からの物体X」のジョン・カーペンターがそんな映画を撮ってましたか。面白そうですね。
 
 
 
ラストは (さすらい日乗)
2016-06-22 13:43:13
ラストは、ベトナム戦争のことでしょうね。
これで一番いいのは、ロバート・ライアンでしょうね。
彼は、民主党支持の役者で有名でした。
 
 
 
さすらい日乗さん (雫石鉄也)
2016-06-22 15:10:38
ラストはベトナムではなかったのですね。
その後、アメリカはイラク、アフガニスタンと戦い続けております。困ったものです。
 
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