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眼下の敵


監督 ディック・パウエル
出演 ロバート・ミッチャム、クルト・ユンゲルス

 二人の艦長の戦いである。アメリカの駆逐艦とドイツの潜水艦の艦長。どういう艦長か、映画の冒頭で手際よく紹介している。
 アメリカの駆逐艦の艦長。マレル艦長。元は民間船の航海士。戦争で妻を亡くしている。「素人艦長」と乗組員からバカにされている。
 ドイツの潜水艦の艦長。シュトルベルグ艦長。大ベテランのUボート乗りで歴戦のたたきあげ。戦争で二人の息子を亡くしている。ナチスに批判的。ヒットラーが嫌い。艦内にある総統に忠誠を呼びかける標語にタオルをかけてかくす。
 よくできた映画はシンプルである。この映画もシンプルだ。二つの艦、二人の艦長の戦いを描いた映画である。アメリカ人で「素人」のマレル。ドイツ人でベテラン軍人のシュトルベルグ。対照的ではあるが、根本的なところは似ている。双方とも卓越した戦術の持ち主で、自分の艦を自在に操る。部下の信頼もあつく、部下思いである。マレルは当初は素人とバカにされていたが、戦いが始れば、有能な艦長であることが判り部下に信頼される。そして、二人とも戦争をくだらないことだと思っている。非常に有能なもののふではあるがいくさは大嫌い。仕事だから戦う。
 水中と水上。ソナーだけを頼りに、敵の動きを読み、自艦の防御を固め、機雷と魚雷を放って、攻撃し、やり過ごし、交わし、海底にひそみ、海中を探る。頭脳の限りを尽くして戦う。そのうち、二人の艦長は相手のことを想う。「ただものではない」「おぬしできるな」「おみごと」
 最後は相打ちのような形になる。炎上するお互いの艦に立ち、二人は視線を合わせる。「こいつに違いない」目と目があった。双方だまって敬礼。潜水艦が爆発する時刻が迫っている。マレル艦長がロープを投げてシュトルベルグ艦長を助ける。
 最後、救援に来たアメリカの駆逐艦の艦上。Uボートの副官の葬儀を終えたあと、マレルがシュトルベルグにタバコをすすめ、火をつけてやりながらいう。
「こんどはロープを投げないぞ」
「いいや。君ならまた投げるさ」
 うう。かっこええな。この映画には女は一人も出てこない。男の美学、男のかっこよさ。も、さいこう!
 

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