雫石鉄也の
とつぜんブログ
とつぜん対談 第37回 郵便ポストとの対談
今日の対談相手は郵便ポストさんです。ポストさんは長年日本の郵政事業の最前線に立たれて仕事をしてこられました。日本の郵便も先年の郵政民営化で、大きく変わりました。
ポストさんは雨の日も風の日も、夜も昼も、人々の手紙を受け入れてこられました。ご苦労もさぞかし多かったことでしょう。
雫石
こんにちは。
ポスト
はい、こんにちは。
雫石
毎日、大変ですね。寒いでしょう。
ポスト
暑さ寒さはなれています。
雫石
ポストさんの会社も大きく変わりましたね。国営だったのが民営になりましたね。ご苦労はありましたか。
ポスト
エライ人たちが勝手に決めたことで、私たちには関係ありません。それに、私の仕事は、官でも民でもやることはいっしょなので。
雫石
ポストさんはいまどき珍しい丸型ですね。
ポスト
1970年代までは私の仲間が多くいたが、ほとんど引退しました。今は四角い若いヤツがほとんどですね。
雫石
今までいろんな郵便物を受け入れてきたでしょう。
ポスト
そうですね。最近はメールする人が多くなって手紙を書く人が少なくなってきました。
雫石
長年、この仕事されておられるから、色々な経験もされているでしょう。
ポスト
そうですね。30年以上昔の話です。私の前で娘さんが手紙を持って、もじもじしていました。
雫石
その手紙を投函しにきたのですか。
ポスト
そうらしいのです。手を伸ばして手紙を入れかける、止めて手を引っ込める。思い直して手を伸ばす。その繰り返しです。ポッとほほを赤らめていました。
雫石
ラブレターですか。
ポスト
判りません。私は職業上、手紙の中身を知ることはもちろん、推察することも許されません。
雫石
その娘さんはどうしました。
ポスト
長い時間、手紙を手にして迷っていました。
雫石
手紙をあなたに入れたのですか。
ポスト
雨が降ってきました。それをきっかけに、娘さんは思い切って手紙を私に入れました。
雫石
その娘さんは近くの子ですか。
ポスト
そこに古い家があるでしょう。そこの娘さんです。それからしばらくして、その娘さん、雨の降る日にお嫁に行きました。時々、旦那さんとお子様を連れて、幸せそうに、あの家に来られます。
雫石
すっかり夜になってしまいましたね。
ポスト
あ、そこ、あの男の子、さっきいったあの家の娘さんのお孫さんです。そのお孫さんが一人で、おばあさんの実家に遊びに来られるように、赤い丸い郵便ポストがいい目印になるのです。
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