明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(99)福島原発の現状はどうなっているのか。靄の向こうにあるのは何か。

2011年05月06日 23時00分00秒 | 明日に向けて5月1日~31日
守田です。(20110506 23:00)

福島原発の今の状況の分析に戻りたいと思います。

このところ僕は、福島原発の現状に、靄のようなものがかかっていること、情報
がよく見えなくなっていることを何度が指摘してきました。この状態が依然、
続いていますが、こうした中で、欧米では、事故当初に起こった3号機の爆発が
水素爆発ではなく、即発臨界爆発=核爆発だったのではないかという推論が
出され、話題となっているようです。

これらの背景にあるのは、超ウラン元素、プルトニウムやアメリシウム、
キュリウムなどが、環境中に出ていることが、測定されだしていることです。

この点については、のちほど分析を深めて紹介していきたいと思いますが、
これらも頭に入れつつ、まずここでもう一度、福島原発の現状に注目して
みたいと思います。そうして福島原発の今の報道を拾ってみると、ここの
ところ、もう長い間、1号機の水棺化が進められていながら作業が難航して
いることが目につきます。

朝日新聞の記事でみていくと、4月28日に「「水棺」作戦難航」という記事が
出されました。(すでに紹介しました)。そこでは原子炉格納容器内に、毎時
14立法メートルの水を入れようとしたが、水素爆発の懸念が出てしまうので
10立法メートルに下げると書かれています。

さらに5月6日の記事では「1号機の注水量増やす」とありますが、これは
4月28日以降に、10立法メートルも入れられなくなり、6立法メートルまで
下げたものを、再度、8立法メートルまで上げたことを指すもので、当初の
毎時14立法メートル注水するという目標には、ほど遠いことが分かります。

しかしこれらの記事を読んでいても、現場の臨場感というか、緊迫感が
伝わってきません。この間の記事の全般的な傾向ですが、なぜかを考えたとき、
最近、ほとんど地下やタービン建屋に溜まっているはずの高濃度放射能
汚染水の、濃度や、量が報道されないことに要因があると思われます。

つまり、現状では相変わらず、相当量の放射能が漏れており、何万トンという
汚染水が未だ現場にあるはずなのに、それらのリアルは報道がなくなって
しまっている。その結果、あたかも放射能がどんどん消えており、事故が
収束に向かっているかのような誤解が、醸成されているように思えます。

しかしそうではないはずです。今も大量の放射能が出ており、さらにそれが
さまざまな形で私たちに跳ね返り始めている。郡山市の県中浄化センターで、
政府が海洋投棄した「低レベル放射能汚染水」の3分の2にあたる量の
放射能汚染物質が出て来て、そのうちの多くが、すでにセメント資材として
配送されてしまっていたことなどは、その顕著な例です。

しかしこうした情報がほとんどリアルに出てこなくなってきている。なぜなので
しょうか。やはり汚染が、今、確認されているよりも、もっと深刻であることが
明らかになってきているにもかかわらず、再び三度、「パニックを恐れて」
実態隠しがなされているのではないでしょうか。


この点で大変、気になる情報を見つけました。
「米NRC委員長、余震による事態悪化を懸念」という読売新聞の記事です。

核心部で同委員長は次のように述べています。
「大きな余震などで施設の冷却能力の一部が失われることはありうる。現状は
静止しているが安定しているとは言えない。時間とともに改善しているが誰もが
望む状態にはなっていない。」

静止しているが安定しているとは言えない。つまり余震など、何らかの要因で
事態が悪化する可能性をNRCは認識しているというのです。

さらに注目すべきなのは次の点です。
「 ――在日米国人に対する原発50マイル(約80キロ・メートル)内からの
避難勧告の根拠は
 限られた情報しかなく、その中で最善の判断をした。起こりうることについて、
かなり手堅い評価をしたため、50マイルになった。日本は違うアプローチと違う
見方を取ったのだろう。条件が整えば50マイルを緩和するが、今すぐ判断を
変更する決定的な情報はない。」

これは極めて重要です。アメリカは今なお80キロ圏外への退避指示を
解除していない。「今すぐ判断を変更する決定的な情報はない」。
つまり事故当初の避難指示を変更する情報はないとアメリカNRCは
述べているわけです。

これはもはや、80キロという判断が、事故当初にとりあえず安全マージンを
取ろうとしてなされたのではなく、何らかの合理的判断に裏付けられたもので
あることを示しています。重要なのはアメリカがそれを今なお維持している
ことです。アメリカは80キロ圏内に、一般の人が近づいてはいけない
何らかの根拠を持っているのだといわざるをえません。

そこにあるのは何なのか。
さらにデータ解析と推論を重ねていきたいと思います。

*************************

1号機、「水棺」作戦難航 気になる原子炉圧力の低下

2011年4月28日11時58分 朝日新聞
 東京電力福島第一原発1号機の格納容器を水で浸す「水棺」が難航している。
東電は原子炉への注水量を2.5倍にして内部の温度や圧力の変化を見る
予定で27日に作業を始めたが、まず毎時6立方メートルから10立方メートル
にしたところで温度や圧力の低下が長引いた。27日中に予定していた
14立方メートルにできずにいる。

 東電が特に気にしているのが、格納容器の圧力が低いことだ。冷たい水が
増えたことで、水蒸気が水になっているとみられる。もし1気圧を下回れば
外部から空気が入り込みかねない。水素爆発を避けるために窒素を注入して
いるが、酸素濃度が高まると、水素と混合して爆発する危険が高まる。
東電は28日、さらに24時間、10立方メートルのまま様子を見ると発表した。

 一方、原子炉圧力容器の温度は、27日朝に132度だったのが、24時間で
107度になった。まだ下がり続ける傾向にある。
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201104280170.html?ref=recc

「水棺」に向け、1号機の注水量増やす 福島第一原発

2011年5月6日12時29分 朝日新聞
 東京電力は6日、福島第一原発1号機の原子炉格納容器を水で満たして
冷やす「水棺」に向け、原子炉圧力容器への注水量を毎時6トンから8トンまで
増やした。前日の5日に、東電は「設計上の想定地震と同程度の余震なら
耐えられる構造で安全性に影響はない」との報告書をまとめ、経済産業省
原子力安全・保安院に提出。保安院も「妥当」と評価していた。

 圧力容器への注水で、蒸気や水があふれ、外側の格納容器内にたまって
いく見込み。今後、建屋内に作業員が入って水位計を確認する。保安院は、
想定より大きな揺れがあれば、格納容器につながる圧力抑制室の支柱が
曲がる恐れはあるとみているが、「やむを得ない」と判断したという。
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201105060093.html

米NRC委員長、余震による事態悪化を懸念

2011年5月4日13時54分 読売新聞
 【ワシントン=山田哲朗】米原子力規制委員会(NRC)のグレゴリー・ヤツコ
委員長は2日、米紙ワシントン・ポスト本社で同紙や読売新聞と会見し、東京
電力福島第一原子力発電所について「大きな余震などで冷却能力の一部を
失うことはありうる」と述べ、余震や津波で事態が悪化することへの懸念を示した。

 そのうえで、「専門知識の提供を続けていく」と日本政府への支援継続を
表明した。

 以下、会見の要旨 
――現在の態勢は
 11人のチームが日本にいて専門知識の提供を続ける。米国内では福島の
教訓を受け、規制の見直しを進める。
 ――福島で余震の心配は
 大きな余震などで施設の冷却能力の一部が失われることはありうる。現状は
静止しているが安定しているとは言えない。時間とともに改善しているが誰もが
望む状態にはなっていない。
 ――在日米国人に対する原発50マイル(約80キロ・メートル)内からの
避難勧告の根拠は
 限られた情報しかなく、その中で最善の判断をした。起こりうることについて、
かなり手堅い評価をしたため、50マイルになった。日本は違うアプローチと違う
見方を取ったのだろう。条件が整えば50マイルを緩和するが、今すぐ判断を
変更する決定的な情報はない。
 ――日本政府の情報提供が不十分だったのでは
 日本政府の第一の責任はNRCに情報を提供することではない。最終的に
時間と資源をどう最も能率的に使うかは日本の判断だ。
 ――蒸気放出や海水注入は遅かったか
 なされなかったことにコメントしても得るところは少ない。地震と津波という
非常に特異な状況で、米政府なら違う対処ができたのか、推測はしたくない。
 ――チェルノブイリ事故と同じレベル7は妥当か
 レベル8や9があったならチェルノブイリと比べられないかもしれないが、
既存の尺度では重大な事象だ。
 ――日本政府に米国の原発のテロ対策を伝え、注意喚起したことはあるか
 詳細は話せないが、米同時テロ後に原発への影響を研究した。日本を含め
多くの国とテロ対策の情報は共有している。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110504-OYT1T00180.htm
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明日に向けて(98) 福島のお母さんさんたちの声を受けて・・・。

2011年05月06日 13時00分00秒 | 明日に向けて5月1日~31日
守田です。(20110506 13:00)

明日に向けて(94)で、京都精華大学のキャンプに参加している福島の親子の
お母さんに声を聞かせていただき、紹介しましたが、非常に多くの反響があり、
この声をぜひ、友人に伝えたいというメッセージを次々といただきました。

また、ブログへもたくさんのメッセージをいただきましたので、これらを
一つにまとめるとともに、山水人の祖牛さんのキャンプ訪問
報告などもまじえ、一本の情報として発信したいと思います。

キャンプは昨日(5日)が最終日。子どもの日ということで、山水人の祖牛さんたち
が赤飯を炊いて、差し入れにかけつけてくれたそうです。以下、山水人MLに
流れた祖牛さんの報告を転載します。

**************************

祖牛です。

今日は『こどもの日』、すべてのこども達が、安全で、平和に暮らせる
日が、はやく来るように願います。

精華大の卒業生たちが企画した福島の子供たちのキャンプに行って
きました。

京都岩倉の精華大学キャンパスの一番奥の森の中に不思議な空間があって、
福島から来た子供たちやお母さん、それにボランティアの人たちが
餅つきをしていました。大きな焚火をしたり、石うすできな粉をひい
たりと、みんな生き生きしていました。

関西テレビも取材に来てこども達にお土産をプレゼントしていました。
山水人に来る精華大の卒業生達も何人もいて大活躍。

「わく星学校」の敬子さんが「こどもの日」ということで赤飯をつくり
差し入れにもって行き、私たちもあんこの入ったお餅やお汁を一緒に
いただきました。こども達の元気な笑顔にふれ、こちらも元気を
もらいました。

*************************

僕は「明日に向けて」を、ピースウォーク京都HP上に作らせていただいている
特設ページと、gooブログで作っている僕のブログにアップしていますが、
それぞれにたくさんのコメントをいただています。

このうち、gooのブログでは、キャンプを主催した側の左近さん、あの日、お話を
聞かせて頂いた「福島の母B」さんからもコメントが寄せられてました。そこで
これらをまとめて、再度、情報として発信することにします。
以下、寄せられたコメントと、僕からの返信を掲載します。

**********************

「明日に向けて(94) 福島のお母さんたちの声を聞かせていただいて」
への、gooブログへのコメントから
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/8508287b3a427a159c65cd5c1b288e1d?st=0


福島の現状をどう支援? (右近ゆみ)
2011-05-04 23:45:19

こんばんは、守田さん。
日頃の情報発信、ありがとうございます。
私も上記の支援に「お母さん係」として携わり、Bさんと何時間もお話ししました。
正直、できることはなんでもしたい気持ちですが、何をどうすればいいのか考えて
しまいます。

私の周りのお母さん達の間では、自民党・河野太郎さんのブログにあるように、
「とにかく国会議員に会いに行こう」という計画があります。
その時に「20mシーベルト」という基準を見直してほしい!と意見し、資料も
出したいと思うのです。
来週の火曜日、出町柳での守田さんの講演会に参加しますので、是非アドバイス
をお願いします。


ありがとうございます。 (守田敏也)
2011-05-04 23:52:37

そうですか。お母さん係、どうもご苦労さまでした。ありがとうございました。
現場でも会っていたのかもしれませんね。

アドバイスとはおこがましいですが、僕にできることは何でもしますよ。
ただ出町柳のその講演会は17日なので、来々週になります。他に8日午後
7時から、おなじく出町柳の「かぜのね」というところでも、お話します。
この情報もまたあとで流します。



ありがとうございました。 (福島の母B)
2011-05-05 05:09:27

おとといは、守田さん、右近さんに話を聞いていただきましてありがとう
ございました。
思っていることを口に出せない現実が続いていたので、共感していただける
方々に気持ちを吐露できてどれだけ救われたことか…

また、こんなに遠くの方々が…大勢の方々が…福島の事を心配して下さって
いることをただただ有難く有難く思いました。

この連休中で風が変わり始めています。
文科省VS原子力安全委員会…なんてものも見えてきました。
また、福島大の先生方も動き始め外に発信しだしました。
市民団体もリスクアドバイザーの解任を求め動き始めます。

私達は中から風を大きくすべくでき得る限りのことをしていくつもりです。
どうぞ、外からも大きな団扇で扇いでください。
出会うはずのないご縁をいただいた事…たくさんの方々に感謝します。


ヒバクシャ (郡山在住)
2011-05-05 06:41:15

http://www.med.nagasaki-u.ac.jp/adi-pphy/prof/201104.html
我々県民は彼によってヒバクシャに認定されたようです。
大丈夫だと言い続け、今後どのような病気が出てくるか観察していくつもりかも
しれません。早く追い出して欲しいです。


福島の母B様 (守田敏也)
2011-05-05 07:53:31

当日は大切なお話を聞かせていただき、本当にありがとうございました。
また直接コメントをいただきありがとうございました。あとで個人メールも
させてください。

みなさんのお話はとても胸を打つもので、たくさんの方から、これを友人に
伝えたいというメッセージをいただいています。

そうした方々に、再度、「外からも大きな団扇で扇いでください」というBさんの
メッセージを伝えます。

ぜひ、今後も一緒に歩んでいきましょう!


本当にひどい・・・ (守田敏也)
2011-05-05 07:58:44

ヒバクシャ(郡山在住)様

山下教授の言葉を確認しました。これですね。
「『原研医療』では大学病院国際ヒバクシャ医療センターと準備してきた緊急
被ばく医療対応に加え、グローバルCOEプログラムの根幹である放射線
リスク健康管理を、福島県ならびに福島県立医科大学の要請を受けて、
いち早く現場で実践しています。本領域における20年間の海外での活動実績は、
広島・長崎に次ぐ国内3番目のヒバクシャを生み出した福島県にこそ
生かされるべきだと考えると、新生『原研医療』も直ぐに正念場を迎えることに
なりました。」

福島県民には、放射性降下物の影響は皆無、マスクもしなくていいといい
ながら、「広島・長崎に次ぐ国内3番目のヒバクシャを生み出した福島県」と
語っているのは本当に許しがたいです。

しかもここにはグローバルCOEプログラムという、巨額の予算のつくプログラム
を走らすために、福島県民の苦しみを使っていることがあけすけに見えています。
今、友人が、山下教授の福島講演の内容を精査して批判を書いてくれています。
こうしたものなどを活用して、みなさんで一緒に、山下センセイを追い出しましょう!


Unknown (Unknown)
2011-05-05 16:17:07

我が家も原発のおかげで真っぷたつです
それに避難したくても、現役高校生と、高校受験の結果発表と入学手続きの
日程変更通知待ちの子供もいて、とてもじゃないけど仙台を離れられない
状態でした小学生以下だったら実家に帰ってただろうと思います。


Unknown (k)
2011-05-06 10:23:17

福島のお母様たちの生々しい証言に食い入るように記事を読みました。貴重な
発信をありがとうございました。九州の私の友達にもこれを知らせたいと思います。
お母様たち、こどもさんたち、心挫けそうになると思いますが理解者がいることを
信じて生きていかれますよう願います。


胸が痛いです。 (守田敏也)
2011-05-06 11:28:24

Unkown様
「我が家も原発のおかげで真っぷたつです」・・・。胸が痛いです。多くの家庭で
温度差から非常に苦しい対立が生じてしまっていることを耳にしています。
僕はこれ自身も、放射能漏れ事故の深刻な被害の一つだと思います。

今はそんなコメントしか出せずにごめんなさい。また考察したことをブログに
書きます。


ありがとうございます。 (守田敏也)
2011-05-06 11:31:56

Kさん
いつもコメントをいただいて、ありがとうございます。ぜひお友達にお伝えください。
そこから福島や、仙台をはじめ原発近隣の地域の人々を包む温かい輪が
生まれるといい、苦しい気持ちが吸い取られ、事態の打開の何かが生まれると
いいと僕は思うのです。そのためにも、今は少しでもこの痛みを、たくさんの
人でシェアすることが大切だと思います。
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