守田です。(20110506 23:00)
福島原発の今の状況の分析に戻りたいと思います。
このところ僕は、福島原発の現状に、靄のようなものがかかっていること、情報
がよく見えなくなっていることを何度が指摘してきました。この状態が依然、
続いていますが、こうした中で、欧米では、事故当初に起こった3号機の爆発が
水素爆発ではなく、即発臨界爆発=核爆発だったのではないかという推論が
出され、話題となっているようです。
これらの背景にあるのは、超ウラン元素、プルトニウムやアメリシウム、
キュリウムなどが、環境中に出ていることが、測定されだしていることです。
この点については、のちほど分析を深めて紹介していきたいと思いますが、
これらも頭に入れつつ、まずここでもう一度、福島原発の現状に注目して
みたいと思います。そうして福島原発の今の報道を拾ってみると、ここの
ところ、もう長い間、1号機の水棺化が進められていながら作業が難航して
いることが目につきます。
朝日新聞の記事でみていくと、4月28日に「「水棺」作戦難航」という記事が
出されました。(すでに紹介しました)。そこでは原子炉格納容器内に、毎時
14立法メートルの水を入れようとしたが、水素爆発の懸念が出てしまうので
10立法メートルに下げると書かれています。
さらに5月6日の記事では「1号機の注水量増やす」とありますが、これは
4月28日以降に、10立法メートルも入れられなくなり、6立法メートルまで
下げたものを、再度、8立法メートルまで上げたことを指すもので、当初の
毎時14立法メートル注水するという目標には、ほど遠いことが分かります。
しかしこれらの記事を読んでいても、現場の臨場感というか、緊迫感が
伝わってきません。この間の記事の全般的な傾向ですが、なぜかを考えたとき、
最近、ほとんど地下やタービン建屋に溜まっているはずの高濃度放射能
汚染水の、濃度や、量が報道されないことに要因があると思われます。
つまり、現状では相変わらず、相当量の放射能が漏れており、何万トンという
汚染水が未だ現場にあるはずなのに、それらのリアルは報道がなくなって
しまっている。その結果、あたかも放射能がどんどん消えており、事故が
収束に向かっているかのような誤解が、醸成されているように思えます。
しかしそうではないはずです。今も大量の放射能が出ており、さらにそれが
さまざまな形で私たちに跳ね返り始めている。郡山市の県中浄化センターで、
政府が海洋投棄した「低レベル放射能汚染水」の3分の2にあたる量の
放射能汚染物質が出て来て、そのうちの多くが、すでにセメント資材として
配送されてしまっていたことなどは、その顕著な例です。
しかしこうした情報がほとんどリアルに出てこなくなってきている。なぜなので
しょうか。やはり汚染が、今、確認されているよりも、もっと深刻であることが
明らかになってきているにもかかわらず、再び三度、「パニックを恐れて」
実態隠しがなされているのではないでしょうか。
この点で大変、気になる情報を見つけました。
「米NRC委員長、余震による事態悪化を懸念」という読売新聞の記事です。
核心部で同委員長は次のように述べています。
「大きな余震などで施設の冷却能力の一部が失われることはありうる。現状は
静止しているが安定しているとは言えない。時間とともに改善しているが誰もが
望む状態にはなっていない。」
静止しているが安定しているとは言えない。つまり余震など、何らかの要因で
事態が悪化する可能性をNRCは認識しているというのです。
さらに注目すべきなのは次の点です。
「 ――在日米国人に対する原発50マイル(約80キロ・メートル)内からの
避難勧告の根拠は
限られた情報しかなく、その中で最善の判断をした。起こりうることについて、
かなり手堅い評価をしたため、50マイルになった。日本は違うアプローチと違う
見方を取ったのだろう。条件が整えば50マイルを緩和するが、今すぐ判断を
変更する決定的な情報はない。」
これは極めて重要です。アメリカは今なお80キロ圏外への退避指示を
解除していない。「今すぐ判断を変更する決定的な情報はない」。
つまり事故当初の避難指示を変更する情報はないとアメリカNRCは
述べているわけです。
これはもはや、80キロという判断が、事故当初にとりあえず安全マージンを
取ろうとしてなされたのではなく、何らかの合理的判断に裏付けられたもので
あることを示しています。重要なのはアメリカがそれを今なお維持している
ことです。アメリカは80キロ圏内に、一般の人が近づいてはいけない
何らかの根拠を持っているのだといわざるをえません。
そこにあるのは何なのか。
さらにデータ解析と推論を重ねていきたいと思います。
*************************
1号機、「水棺」作戦難航 気になる原子炉圧力の低下
2011年4月28日11時58分 朝日新聞
東京電力福島第一原発1号機の格納容器を水で浸す「水棺」が難航している。
東電は原子炉への注水量を2.5倍にして内部の温度や圧力の変化を見る
予定で27日に作業を始めたが、まず毎時6立方メートルから10立方メートル
にしたところで温度や圧力の低下が長引いた。27日中に予定していた
14立方メートルにできずにいる。
東電が特に気にしているのが、格納容器の圧力が低いことだ。冷たい水が
増えたことで、水蒸気が水になっているとみられる。もし1気圧を下回れば
外部から空気が入り込みかねない。水素爆発を避けるために窒素を注入して
いるが、酸素濃度が高まると、水素と混合して爆発する危険が高まる。
東電は28日、さらに24時間、10立方メートルのまま様子を見ると発表した。
一方、原子炉圧力容器の温度は、27日朝に132度だったのが、24時間で
107度になった。まだ下がり続ける傾向にある。
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201104280170.html?ref=recc
「水棺」に向け、1号機の注水量増やす 福島第一原発
2011年5月6日12時29分 朝日新聞
東京電力は6日、福島第一原発1号機の原子炉格納容器を水で満たして
冷やす「水棺」に向け、原子炉圧力容器への注水量を毎時6トンから8トンまで
増やした。前日の5日に、東電は「設計上の想定地震と同程度の余震なら
耐えられる構造で安全性に影響はない」との報告書をまとめ、経済産業省
原子力安全・保安院に提出。保安院も「妥当」と評価していた。
圧力容器への注水で、蒸気や水があふれ、外側の格納容器内にたまって
いく見込み。今後、建屋内に作業員が入って水位計を確認する。保安院は、
想定より大きな揺れがあれば、格納容器につながる圧力抑制室の支柱が
曲がる恐れはあるとみているが、「やむを得ない」と判断したという。
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201105060093.html
米NRC委員長、余震による事態悪化を懸念
2011年5月4日13時54分 読売新聞
【ワシントン=山田哲朗】米原子力規制委員会(NRC)のグレゴリー・ヤツコ
委員長は2日、米紙ワシントン・ポスト本社で同紙や読売新聞と会見し、東京
電力福島第一原子力発電所について「大きな余震などで冷却能力の一部を
失うことはありうる」と述べ、余震や津波で事態が悪化することへの懸念を示した。
そのうえで、「専門知識の提供を続けていく」と日本政府への支援継続を
表明した。
以下、会見の要旨
――現在の態勢は
11人のチームが日本にいて専門知識の提供を続ける。米国内では福島の
教訓を受け、規制の見直しを進める。
――福島で余震の心配は
大きな余震などで施設の冷却能力の一部が失われることはありうる。現状は
静止しているが安定しているとは言えない。時間とともに改善しているが誰もが
望む状態にはなっていない。
――在日米国人に対する原発50マイル(約80キロ・メートル)内からの
避難勧告の根拠は
限られた情報しかなく、その中で最善の判断をした。起こりうることについて、
かなり手堅い評価をしたため、50マイルになった。日本は違うアプローチと違う
見方を取ったのだろう。条件が整えば50マイルを緩和するが、今すぐ判断を
変更する決定的な情報はない。
――日本政府の情報提供が不十分だったのでは
日本政府の第一の責任はNRCに情報を提供することではない。最終的に
時間と資源をどう最も能率的に使うかは日本の判断だ。
――蒸気放出や海水注入は遅かったか
なされなかったことにコメントしても得るところは少ない。地震と津波という
非常に特異な状況で、米政府なら違う対処ができたのか、推測はしたくない。
――チェルノブイリ事故と同じレベル7は妥当か
レベル8や9があったならチェルノブイリと比べられないかもしれないが、
既存の尺度では重大な事象だ。
――日本政府に米国の原発のテロ対策を伝え、注意喚起したことはあるか
詳細は話せないが、米同時テロ後に原発への影響を研究した。日本を含め
多くの国とテロ対策の情報は共有している。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110504-OYT1T00180.htm
福島原発の今の状況の分析に戻りたいと思います。
このところ僕は、福島原発の現状に、靄のようなものがかかっていること、情報
がよく見えなくなっていることを何度が指摘してきました。この状態が依然、
続いていますが、こうした中で、欧米では、事故当初に起こった3号機の爆発が
水素爆発ではなく、即発臨界爆発=核爆発だったのではないかという推論が
出され、話題となっているようです。
これらの背景にあるのは、超ウラン元素、プルトニウムやアメリシウム、
キュリウムなどが、環境中に出ていることが、測定されだしていることです。
この点については、のちほど分析を深めて紹介していきたいと思いますが、
これらも頭に入れつつ、まずここでもう一度、福島原発の現状に注目して
みたいと思います。そうして福島原発の今の報道を拾ってみると、ここの
ところ、もう長い間、1号機の水棺化が進められていながら作業が難航して
いることが目につきます。
朝日新聞の記事でみていくと、4月28日に「「水棺」作戦難航」という記事が
出されました。(すでに紹介しました)。そこでは原子炉格納容器内に、毎時
14立法メートルの水を入れようとしたが、水素爆発の懸念が出てしまうので
10立法メートルに下げると書かれています。
さらに5月6日の記事では「1号機の注水量増やす」とありますが、これは
4月28日以降に、10立法メートルも入れられなくなり、6立法メートルまで
下げたものを、再度、8立法メートルまで上げたことを指すもので、当初の
毎時14立法メートル注水するという目標には、ほど遠いことが分かります。
しかしこれらの記事を読んでいても、現場の臨場感というか、緊迫感が
伝わってきません。この間の記事の全般的な傾向ですが、なぜかを考えたとき、
最近、ほとんど地下やタービン建屋に溜まっているはずの高濃度放射能
汚染水の、濃度や、量が報道されないことに要因があると思われます。
つまり、現状では相変わらず、相当量の放射能が漏れており、何万トンという
汚染水が未だ現場にあるはずなのに、それらのリアルは報道がなくなって
しまっている。その結果、あたかも放射能がどんどん消えており、事故が
収束に向かっているかのような誤解が、醸成されているように思えます。
しかしそうではないはずです。今も大量の放射能が出ており、さらにそれが
さまざまな形で私たちに跳ね返り始めている。郡山市の県中浄化センターで、
政府が海洋投棄した「低レベル放射能汚染水」の3分の2にあたる量の
放射能汚染物質が出て来て、そのうちの多くが、すでにセメント資材として
配送されてしまっていたことなどは、その顕著な例です。
しかしこうした情報がほとんどリアルに出てこなくなってきている。なぜなので
しょうか。やはり汚染が、今、確認されているよりも、もっと深刻であることが
明らかになってきているにもかかわらず、再び三度、「パニックを恐れて」
実態隠しがなされているのではないでしょうか。
この点で大変、気になる情報を見つけました。
「米NRC委員長、余震による事態悪化を懸念」という読売新聞の記事です。
核心部で同委員長は次のように述べています。
「大きな余震などで施設の冷却能力の一部が失われることはありうる。現状は
静止しているが安定しているとは言えない。時間とともに改善しているが誰もが
望む状態にはなっていない。」
静止しているが安定しているとは言えない。つまり余震など、何らかの要因で
事態が悪化する可能性をNRCは認識しているというのです。
さらに注目すべきなのは次の点です。
「 ――在日米国人に対する原発50マイル(約80キロ・メートル)内からの
避難勧告の根拠は
限られた情報しかなく、その中で最善の判断をした。起こりうることについて、
かなり手堅い評価をしたため、50マイルになった。日本は違うアプローチと違う
見方を取ったのだろう。条件が整えば50マイルを緩和するが、今すぐ判断を
変更する決定的な情報はない。」
これは極めて重要です。アメリカは今なお80キロ圏外への退避指示を
解除していない。「今すぐ判断を変更する決定的な情報はない」。
つまり事故当初の避難指示を変更する情報はないとアメリカNRCは
述べているわけです。
これはもはや、80キロという判断が、事故当初にとりあえず安全マージンを
取ろうとしてなされたのではなく、何らかの合理的判断に裏付けられたもので
あることを示しています。重要なのはアメリカがそれを今なお維持している
ことです。アメリカは80キロ圏内に、一般の人が近づいてはいけない
何らかの根拠を持っているのだといわざるをえません。
そこにあるのは何なのか。
さらにデータ解析と推論を重ねていきたいと思います。
*************************
1号機、「水棺」作戦難航 気になる原子炉圧力の低下
2011年4月28日11時58分 朝日新聞
東京電力福島第一原発1号機の格納容器を水で浸す「水棺」が難航している。
東電は原子炉への注水量を2.5倍にして内部の温度や圧力の変化を見る
予定で27日に作業を始めたが、まず毎時6立方メートルから10立方メートル
にしたところで温度や圧力の低下が長引いた。27日中に予定していた
14立方メートルにできずにいる。
東電が特に気にしているのが、格納容器の圧力が低いことだ。冷たい水が
増えたことで、水蒸気が水になっているとみられる。もし1気圧を下回れば
外部から空気が入り込みかねない。水素爆発を避けるために窒素を注入して
いるが、酸素濃度が高まると、水素と混合して爆発する危険が高まる。
東電は28日、さらに24時間、10立方メートルのまま様子を見ると発表した。
一方、原子炉圧力容器の温度は、27日朝に132度だったのが、24時間で
107度になった。まだ下がり続ける傾向にある。
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201104280170.html?ref=recc
「水棺」に向け、1号機の注水量増やす 福島第一原発
2011年5月6日12時29分 朝日新聞
東京電力は6日、福島第一原発1号機の原子炉格納容器を水で満たして
冷やす「水棺」に向け、原子炉圧力容器への注水量を毎時6トンから8トンまで
増やした。前日の5日に、東電は「設計上の想定地震と同程度の余震なら
耐えられる構造で安全性に影響はない」との報告書をまとめ、経済産業省
原子力安全・保安院に提出。保安院も「妥当」と評価していた。
圧力容器への注水で、蒸気や水があふれ、外側の格納容器内にたまって
いく見込み。今後、建屋内に作業員が入って水位計を確認する。保安院は、
想定より大きな揺れがあれば、格納容器につながる圧力抑制室の支柱が
曲がる恐れはあるとみているが、「やむを得ない」と判断したという。
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201105060093.html
米NRC委員長、余震による事態悪化を懸念
2011年5月4日13時54分 読売新聞
【ワシントン=山田哲朗】米原子力規制委員会(NRC)のグレゴリー・ヤツコ
委員長は2日、米紙ワシントン・ポスト本社で同紙や読売新聞と会見し、東京
電力福島第一原子力発電所について「大きな余震などで冷却能力の一部を
失うことはありうる」と述べ、余震や津波で事態が悪化することへの懸念を示した。
そのうえで、「専門知識の提供を続けていく」と日本政府への支援継続を
表明した。
以下、会見の要旨
――現在の態勢は
11人のチームが日本にいて専門知識の提供を続ける。米国内では福島の
教訓を受け、規制の見直しを進める。
――福島で余震の心配は
大きな余震などで施設の冷却能力の一部が失われることはありうる。現状は
静止しているが安定しているとは言えない。時間とともに改善しているが誰もが
望む状態にはなっていない。
――在日米国人に対する原発50マイル(約80キロ・メートル)内からの
避難勧告の根拠は
限られた情報しかなく、その中で最善の判断をした。起こりうることについて、
かなり手堅い評価をしたため、50マイルになった。日本は違うアプローチと違う
見方を取ったのだろう。条件が整えば50マイルを緩和するが、今すぐ判断を
変更する決定的な情報はない。
――日本政府の情報提供が不十分だったのでは
日本政府の第一の責任はNRCに情報を提供することではない。最終的に
時間と資源をどう最も能率的に使うかは日本の判断だ。
――蒸気放出や海水注入は遅かったか
なされなかったことにコメントしても得るところは少ない。地震と津波という
非常に特異な状況で、米政府なら違う対処ができたのか、推測はしたくない。
――チェルノブイリ事故と同じレベル7は妥当か
レベル8や9があったならチェルノブイリと比べられないかもしれないが、
既存の尺度では重大な事象だ。
――日本政府に米国の原発のテロ対策を伝え、注意喚起したことはあるか
詳細は話せないが、米同時テロ後に原発への影響を研究した。日本を含め
多くの国とテロ対策の情報は共有している。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110504-OYT1T00180.htm