守田です。(20110425 09:30)
福島原発の現場で、24日に汚染マップが公開されました。1号機、3号機の水素
爆発などの影響で、現場に高い放射線を出すガレキが散らばっており、それらが
図示されたのです。
こうしたマップを作るダメだけにも、多くの作業者の方たちの必死の計測が行わ
れています。現場労働の過酷さが懸念されますが、数日前にその実態のいったん
を報告する記事が毎日新聞に掲載されましたので、ご紹介します。
記事は以下のように書いています。核心部分です。
「福島第1原発の復旧作業を担う作業員の被ばく線量を定めた特例措置が
あいまいに運用され、作業員の放射線管理手帳に記載されていないケース
があることが明らかになった。現場の作業員はあいまいな運用に不安を
漏らすとともに「結局、ババを引くのは作業員」と嘆く声も聞かれた。」
なんということでしょうか。
記事は、先日紹介した、多発性骨髄種での労災認定に関わった弁護士さんの
コメントも以下のように紹介しています。
「元原発作業員が東電に損害賠償を求めた訴訟で原告代理人を務めた
鈴木篤弁護士の話 原告は4年3カ月の累積70ミリシーベルトで多発性
骨髄腫を発症したとして労災を認められた。250ミリシーベルトの上限
自体が高すぎる。それを別枠にするなどむちゃくちゃだ。被ばく線量を
証明できても裁判所はなかなか発症との因果関係を認めない。きちんと
線量管理がされなければ、作業員が損害賠償を請求しようとしても
基礎的な事実さえ証明できなくなる恐れがある。」
高線量の放射線への被ばく覚悟の労働が現場で行われていることだけでも
胸が痛いですが、働く人々の権利までもが踏みにじられていることに、
強い憤りを感じます。
さらに二つ目の記事では、次のような注目すべき内容が書かれています。
「作業員の被ばく線量を一括管理する財団法人・放射線影響協会の
放射線従事者中央登録センターは「250ミリシーベルト浴びた労働者に
通常規則を当てはめてしまうと、相当年数、就業の機会を奪うことになる。
全く別扱いで管理する」と説明。さらに「労災申請時などに困らないよう、
手帳に記載する方法を検討している」とし、放射線管理手帳への
記載方法が決まっていないことを明らかにした。」
放射線影響協会・・・。「被ばく線量を一括管理する財団法人」と紹介されて
いますが、実際には、ここが「管理」などしておらず、働く人々の「就業の
機会を奪うことになる」などといいつつ、実際は「労働者を使いまわす
機会を奪うことになる」ことを恐れて、管理を放棄しているのです。
あまりにひどい実態です。
このような被ばく隠しを率先する人々が、「被ばく線量を一括管理する財団
法人」であることに、今回の非常時だけでなく、平常時から、原発での
労働において、働く人々の権利がまったく守られておらず、被ばく労働が
管理されないままに行われている実態が透けて見えてきます。
福島の子どもたちを救えという声とともに、原発サイトで働く人々の権利を
守れという声をあげて行く必要があります・・・。
(編集注、昨日、28日のATTACK京都の催しを紹介しましたが、曜日記載を
間違っていました。正しくは28日(木曜日)です。訂正し、お詫びします)
************************
福島第1原発:「ババ引くのは作業員」嘆く下請け社員
毎日新聞 2011年4月21日 2時36分(最終更新 4月21日 7時36分)
福島第1原発の復旧作業を担う作業員の被ばく線量を定めた特例措置が
あいまいに運用され、作業員の放射線管理手帳に記載されていないケース
があることが明らかになった。現場の作業員はあいまいな運用に不安を
漏らすとともに「結局、ババを引くのは作業員」と嘆く声も聞かれた。
関係者からは「線量管理がいいかげんだと、訴訟になった時に証拠が
得られない可能性もあり、問題」との指摘も上がる。
【袴田貴行、森禎行、日下部聡】
◇訴訟時、証拠ない恐れ
「今回食った(受けた)分の放射線量は手帳に載らないから。安心して
いいから」。3月末に福島第1原発の復旧に従事した2次下請け会社の
男性(30)は、作業開始直前、1次下請け会社の社員にそう告げられた。
男性は3月下旬、所属するポンプ点検会社の社長から「上の会社から
3日だけ人を出すよう頼まれた。(現場の状況が)ひどかったら途中で帰って
きていいから、とりあえず3日間だけ行ってくれないか」と言われ、同原発へ。
作業内容は不明のまま駆り出されたが、現地に着くと、使用済み核燃料
共用プールの電源復旧のためにケーブルをつなぐ専門外の作業を
指示された。「とにかく人をかき集めて電源復旧をやっている感じだった」
現場で経験者から指導を受けながら作業を進めたが、「初めてなので
手間取って時間もかかったし、余計な線量を食った」。当時は線量計が足りず、
6人のグループに1台だけ渡されたという。
作業は放水の合間だったため、午前2時までかかったり、朝6時から始めた
ことも。待機場所の免震重要棟は「すし詰め状態で大人1人が寝っころがる
のがやっと。仮眠も取れないのがきつかった。まともにやったら2日で限界」と
振り返る。
結局、3日間で計約12時間働き、線量計の数値は国が特例として引き
上げた上限の5分の1、以前の上限の半分に当たる約50ミリシーベルトに
達していた。「普段そんなにいくことはまずない」。日当は通常なら1日
1万5000円程度だが、今回は事前に決まっていない。ただし「同じような
仕事の募集が日当17万円だったらしい」。3日で50万円になる計算だ。
男性の放射線管理手帳は、この作業時とは別の、震災前に登録していた
元請け会社が管理しており、手元にはない。「ずっと自分の手元に帰って
きてないから(今回の線量が)載っているかどうかは分からない」。
確認しようにも震災前の元請けは震災後、事務所が機能していない。
「自分の手帳を戻すのは困難」と、今後に不安を募らせる。
3次下請けで原発の補修に当たる建設会社社員の男性(28)は線量
管理があいまいになっていることについて「そうでもしないと原発を止めら
れない感覚があるのではないか」と指摘する。その上で「手帳の管理は
下請けによって違う。将来の仕事を受注するため(社員の線量を低くしようと)
下請け会社が手帳に今回の数値を載せないことも考えられる。会社は
仕事をもらえるかもしれないが、結局ババを引くのは作業員だ」と訴えた。
元原発作業員が東電に損害賠償を求めた訴訟で原告代理人を務めた
鈴木篤弁護士の話 原告は4年3カ月の累積70ミリシーベルトで多発性
骨髄腫を発症したとして労災を認められた。250ミリシーベルトの上限
自体が高すぎる。それを別枠にするなどむちゃくちゃだ。被ばく線量を
証明できても裁判所はなかなか発症との因果関係を認めない。きちんと
線量管理がされなければ、作業員が損害賠償を請求しようとしても
基礎的な事実さえ証明できなくなる恐れがある。
http://mainichi.jp/life/today/news/20110421k0000m040167000c.html
福島第1原発:作業員の被ばく線量 管理手帳に記載せず
毎日新聞 2011年4月21日 2時36分(最終更新 4月21日 7時28分)
東京電力福島第1原発の復旧を巡り、作業員の被ばく線量の上限を100
ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げた特例措置が現場で
あいまいに運用され、作業員の放射線管理手帳に線量が記載されていない
ケースがあることが分かった。関係法を所管する厚生労働省は通常規則に
基づき「100ミリシーベルトを超えると5年間は放射線業務に就けない」と
する一方、作業員の被ばく線量を一括管理する文部科学省所管の
財団法人は「通常規則とは全く別扱いとする」と違う見解を示し、手帳への
記載法も決まっていないためだ。
◇上限あいまい運用 補償不利益も
運用があいまいだと作業員の安全管理上問題がある上、将来がんなどを
発症した際の補償で不利益になる可能性もあり、早急な改善が求められそうだ。
作業員の被ばく線量は、原子炉等規制法に基づく告示や労働安全衛生法の
電離放射線障害防止規則で、5年間で100ミリシーベルト、1年間では
50ミリシーベルトに抑えるよう定めている(通常規則)。ただ、緊急時には
別途100ミリシーベルトを上限に放射線を受けることができるとの条文があり、
国は福島第1原発の復旧に限り、250ミリシーベルトに引き上げる特例
措置をとった。国際放射線防護委員会の勧告では、緊急時は500ミリ
シーベルトが上限だ。
問題となっているのは特例措置と通常規則との兼ね合い。厚労省は
「通常規則は有効で、今回の作業で100ミリシーベルトを超えた場合、
5年間は放射線業務をさせないという方向で指導する」とし、細川律夫
厚労相も3月25日の参院厚労委の答弁で全く同じ認識を示した。
◇「労災申請時などに困らないよう記載方法検討」
一方、作業員の被ばく線量を一括管理する財団法人・放射線影響協会の
放射線従事者中央登録センターは「250ミリシーベルト浴びた労働者に
通常規則を当てはめてしまうと、相当年数、就業の機会を奪うことになる。
全く別扱いで管理する」と説明。さらに「労災申請時などに困らないよう、
手帳に記載する方法を検討している」とし、放射線管理手帳への
記載方法が決まっていないことを明らかにした。
復旧作業にあたる2次下請け会社の男性作業員(30)は3月下旬、
現場で元請け会社の社員から「今回浴びた線量は手帳に載らない」と
説明された。「250ミリシーベルト浴びて、新潟県の東電柏崎刈羽原発で
働くことになっても250ミリシーベルトは免除される」と言われたという。
作業員が所持する線量計のデータは通常、原発から同センターの
オンラインシステムに送られ一括管理されるが、福島第1原発では事故後、
オンラインシステムが使用できないという。また、作業員の被ばく線量の
登録管理を巡るルールは、同協会と電力会社、プラント会社など関係
約70社で話し合われるが、事故後は会議を開けない状態が続いていると
される。【市川明代、袴田貴行、森禎行】
【ことば】放射線管理手帳
作業員一人一人の被ばく線量や健康診断結果などを記載する手帳で、
これがないと放射線管理区域には入れないことになっている。ただし法的
根拠はなく、財団法人・放射線影響協会の放射線従事者中央登録センターと
電力各社、元請け会社、主な下請け会社などで自主的に運用している。
作業中は本人たちの手元にはなく、会社側が預かっているケースが
多いとされる。
http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/news/20110421k0000m040166000c