明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(126)福島浜通りはプルトニウムで汚染されているのではないか?

2011年05月26日 23時30分00秒 | 明日に向けて5月1日~31日
守田です。(20110526 23:30)

このところ、さまざまな情報をいただきつつ、どうそれを
出すのか悩みぬいてきました。

とくに重要なのは、福島原発事故で、現在、発表されているよりも、
もっとたくさんの放射性核種が漏れ出しているのではないかという点です。

これは原発が1号機から3号機まで、地震直後にいずれもメルトダウンに
陥ったという東電や政府が発表している事実からも、容易に推論できる
ことがらです。

2800度を超す高温に燃料棒がさらされ、ペレットが溶けてしまったために、
そこに封じ込められていたものが、さまざまな経路から外に出た可能性が
あると考えるのが自然だからです。

しかしあまりにこの点に関する情報が出てこない。
東電や政府が発表を行わないというだけでなく、原発を批判している著名な
科学者の方たちの中からも、あまりこの点を追求する論調が出てきません。

それが何故なのか、正直なよく分からないのですが、ともあれ、この点に
ついて、ユニークは情報解析に基づいて、さまざまな核種の漏れ出しを
示唆した論調も出てきています。

今回はその一つ、4月17日に福島入りして、福島市、飯館村、川俣町、
南相馬市を視察した枝野官房長官を、その服装に着目しつつおいかけた
ものを見つけましたので、それをご紹介したいと思います。


タイトルは
【意見映像】「福島県浜通りはプルトニウムで汚染されているので
はないですか」

です。作成者は「うp主」さんです。

まず映像をご覧ください。9分10秒の映像ですが、よくできています。
http://www.youtube.com/watch?v=I42g843fngw

ポイントとなることは、枝野官房長官が、南相馬市でだけ、「妙に重装備
だった」ことです。

4月18日にいわき医師会が発表した放射線量は、毎時で、福島市1.7マイクロ
シーベルト、飯館村4.82マイクロシーベルト、南相馬市0.6マイクロシーベルト
だった。にもかかわらず、枝野長官は、南相馬市でのみ放射性対応の
3M FFP3規格のマスクをしている。

現地視察でも、頭を完全に覆うフードとゴーグルを着装している。
「うp主」さんはこのように問うています。

「4月13日に福島県から発表された県内小学校の土壌汚染の結果に、
ちょっと奇妙な点がある。・・・というのは南相馬市は土壌汚染は
福島市より低いのに、ヨウ素131の大気汚染は、福島市の8.4倍だ」
(4月5~6日のデータ)

「南相馬市やいわき市は、土壌汚染が低くて、空気中のセシウム
濃度も低いのに、空気中のヨウ素の濃度だけ、突出して高い。」

これを「うp主」さんは「多分、原発から気体状のヨウ素131が今も漏れて
周辺地域に拡散しているのだと思う」「それを知っていて隠していると
するならば、もはや犯罪行為」と断じています。

しかし・・・とこの方は、さらに推論を続けます。
「たかがヨウ素やセシウムが怖くてこんな重装備をするんだろうか?」と。

そして3号機の爆発シーンを流し、そのあとで「MOX燃料(ウランとプルト
ニウムの混合燃料)の3号機の大爆発なのに、プルトニウムのことはまったく
報道されていない」ことを疑問として提示しています。

さらに汚染マップを表示して
「原発の北西方向には濃い放射性物質の帯が広がっているのに、北の
南相馬市は、なぜか線量も土壌汚染も低い」ことに着目しています。

これは何故なのだろうか。
「うp主」さんは、ここから、測られているのはγ線のみで、α線やβ線が
未測定なのではないか。それを発するプルトニウムやストロンチウムが
測られていないのではという疑問を示唆しています。

その上で、「うp主」さんの「妄想的」と銘打った推論が続きます。
「原発が爆発したときに、大量の放射性物質が放出された。このうち、飛び散り
やすいヨウ素やセシウムは、阿武隈山地を越えて、福島中通りに到達し、
飛散しにくいプルトニウムやストロンチウムは、浜通りに蓄積したのではないか。
そのため南相馬市周辺にプルトニウム汚染が広がっているのではないか」
という点です。

だから、枝野長官は、この南相馬市訪問のときにのみ、
重装備だったのではないかというのです。それが「フルアーマー」の理由だった
のではないか。

「うp主」さんはこう結論づけています。

「南相馬市やいわき市は空気中のヨウ素131の濃度も高く、高度にプルトニウム
に汚染されている可能性があります。お子様、乳児がいる家庭、妊娠中の方、
一刻も早く避難することを強くお勧めします。」


さて、この映像を繰り返し見て、何よりも、枝野長官の服装に着目し、
南相馬市だけ重装備だったところから、この地域へのプルトニウム飛散の
推論を立て、それを空間線量データなどから裏付けている「うp主」さんの
論証は、裁判で言えば、状況証拠を重ねていく手法のようでなかなか見事で
あり、説得力があるように思えました。

僕自身は、プルトニウムが阿武隈山地を超えなかったかどうか、結論づける
には論拠が足りないと思いますが、少なくとも原発の直近にプルトニウムなど、
「重い飛散しにくい」と言われてきた放射性核種が、さまざまに存在
しており、それを知るが故に、枝野長官が、フスアーマーだったのではという
「うp主」さんの推論は説得力があると思います。

ただよく分からなかったのが、ヨウ素131の濃度が高い理由です。これを
「うp主」さんは、原発からどんどん漏れ出てきているとしていますが、それなら
なぜこの地域だけ空間線量のみが高いのか、理由がはっきりしません。
また核分裂反応がとまっている今、原発から漏れて来ている量はやはり
少なくなっているはずで、何かそれ以外の理由を考える以外にないように
思えたからです。

それで友人の科学者のAさんと意見交換しました。
そこでAさんが示唆しれたのは、それもまた、つまりヨウ素131が多いことも
実は、プルトニウムの存在を裏付けるのではないかという、極めて
重要な示唆をいただきました。

Aさんが問題にしているのは、プルトニウムもいろいろなものが出て来ている
はずで、その中のプルトニウム240は、自発核分裂をしやすい。それが核分裂
を起こして、ヨウ素131を新たに生成させているのではないかという点です。
こう考えると、この地域でのみ、ヨウ素131の大気中濃度が高いことが
説明がつくし、むしろそのことが、この地域にプルトニウムが存在している
可能性をよりよく論証することになります。

同時に、この地域には中性子線も飛んでいる可能性があることになります。
中性子線は、放射線の中でも格段にエネルギーの高いものです。
何せ、原子を核分裂させてしまうのですから。その点で、超ウラン核種の
吸引による内部被ばくだけでなく、中性子線の外部被ばくの恐れも
考える必要があると思えます。

ともあれ僕も、南相馬市付近をはじめ、より原発に近い地域ほど、プルトニウム
をはじめとするさまざまな放射性核種が漏れ出ているのではないかと思えます。
そのため、例えばこの地域の野菜の汚染度を測定する場合にも、ヨウ素と
セシウムだけを考え、γ線での検知のみに頼っていては、実態がつかめないと
思います。

プルトニウムをはじめ、超ウラン元素は、放射能の中での人体への
毒性が、それこそ桁違いに高い物質です。このことを考えた時、とにもかくにも、
これらの物質を徹底的に測ることが急務であり、それは素人にできることでは
ありませんから、行政に強く働きかける必要があります。

またそれを行って、これらの物質がないことが確認できるまでは、可能な限りの
避難を呼びかけることが大事ではないかと思えます。
もちろん、避難は多大な困難やストレス、またなんともいえない残酷さも
伴うことがしばしばで、それへの十分な配慮が問われるでしょう。

それを外からメールで発信するのは、なんとも申し訳ないことですが、しかし
僕は、非常に強い危機が存在しうることを、お伝えする義務が自分にあると
思ってこれを書いています。


以下、もう少し詳しい内容を知りたい方のために、友人のAさんからの
メールを貼り付けておきます。

************************

守田さん。

UP主さんの指摘によれば、
「いまでも原発から南相馬市に流れてくるヨウ素-131が多いのではないか」
と言っていますが、おそらく、それは違います。

それは違うと考える理由は、
局所的に、かつ継続的にその場所の大気中の放射性物質の濃度が高いのは、
大気中の放射性物質が、その場所の土壌に由来していると考えるのが
自然だと思うからです。

つまり、どういうことか。

南相馬市に核燃料が相当量降り注ぎ、土壌にフォールアウトして、
その場所で「自発核分裂」を起こすことで、希ガスやヨウ素-131が生まれている
と考えることができます。
つまり、大気中ヨウ素濃度の異常は、プルトニウムなどの超ウラン元素の
存在を示す重要な手がかりなのではないか、という仮説です。


原子炉内でもなく、臨界にも達していないのに核分裂が起きるのか?
と言われそうなので、核反応についておさらいします。
ふつうの議論では、核反応は以下の二つの過程だけを論じています。

①通常の核分裂:中性子線照射によって引き起こされる反応
  →ウランやプルトニウムの場合、一回の反応で原子量が90-130くらいの
  核種が生成される。

②放射性崩壊:放射線(α線、ベータ線、ガンマ線)の放出による崩壊
  →半減期にしたがって進行する反応。核種は徐々に小さくなる。

で、実はあまり語られないのですが、重要なもうひとつ別の過程がある。
それが「自発核分裂」です。

③自発核分裂:中性子線の照射を必要とせず、自ら起こされる核分裂。
 →通常の核分裂と同様に一回の反応で原子量が90-130くらいの核種が生じる。


そんなの起こるのかよ?と言われそうですが、
実は、超ウラン元素というのは、もともと自然界に存在しにくい、非常に不安定
な物質でして、何もしなくても勝手に分裂してしまうことは常識なんですね。

自発核分裂
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E7%99%BA%E6%A0%B8%E5%88%86%E8%A3%82

主な核種の自発核分裂の確率を以下に挙げる。
235U: 5.60 × 10-3 回/s-kg
238U: 6.93 回/s-kg
239Pu: 7.01 回/s-kg
240Pu: 489,000 回/s-kg(約 1,000,000 中性子/s-kg)

プルトニウム239の原子核は生成過程で中性子を1個余計に吸収する傾向
があるため、実際のプルトニウム239には常にある量のプルトニウム240が
含まれている。プルトニウム240は自発核分裂の確率が高いため、
プルトニウムの利用に際しては好ましくない混入物質とされている。
兵器級プルトニウムではプルトニウム240の含有量は7%以下とされている。
Pu-240の自発核分裂の確率は突出しています。
じっさい、Pu-240は中性子線源として、いわば原子炉の着火剤として使われます。

このことは、私も見落としていました。
ふつう、自発核分裂する原子核は、どんどん無くなるので、あまり考えなくてよい、
とされるからです。
また、内部被ばくの影響も、通常は奇数核のPu-239やU-235について研究される
ため、α線の影響がメインに研究されているからです。

内部被ばくにおけるPu-240の自発核分裂の影響というのは、
ひとつにはPu-240が核燃料の主物質ではないこと、
また、あまりにも危険すぎて、これまでにそうした事例が少ないこと、
さらに、中性子線の測定が困難を極めることなどが理由として挙げられるで
しょうが、おそらく、誰も公式には考察したことが無いことだと思います。

中性子線というのは、α線、β線、γ線、X線と異なり、透過力が抜群に高く、
その特徴を伸ばした中性子爆弾は、あらゆる装甲を貫通して人員に放射線
障害を与えることのできる武器として、冷戦時にものすごく開発が進みました。
このときにプルトニウムを作りすぎたことが、
プルトニウムの原子力利用・・・プルサーマル計画・・・の主要因となったのですが。


とにかく、ヨウ素の異常濃度地域をフォローしていけば、
Pu-240についての、あるていどの見積もりはできるかもしれません。

そして、この危険性は、おそらく、すでに政府部内には届いていることでしょう。
枝野氏の重装備の理由は、そんなところではないかと。



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