明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1614)自死の多い日本の憂うべき現状を越えていくために-1

2018年10月31日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20181031 23:30)

自死について・・・

少々唐突ですが自死について述べたいと思います。
僕が参加しているあるMLの中で、ある方が「最近、自殺現場によく遭遇している。何が起こっているのだろうか。どう捉えたら良いのだろうか」と書かれていてどうしてもお答えしたくなり書いた一文です。今宵、多少手を加えて投稿します。

〇〇様

自死について述べたいと思います。最近、僕も電車で移動中に先行の列車の自死と思われる事故で数時間遅れることに遭遇しました。
事件が起きたと思われる場を通過するときに祈りを捧げましたが、事故があったこと、電車が遅延することは繰り返し車内放送で知らさせるものの、当事者の方がどうなったのか、生きているのか否かも伝えてもらえませんでした。
それで生きておられるならどうか早く治ってくださいとお祈りしましたが、なんというか人が亡くなったかも知れないのに、電車がどれだけ遅れるかにだけにしかフォーカスしないあり方に悲しい気がしました。

自死は2003年約3.4万人から2017年約2.1万人と減ってはいるが自死率はまだまだ高い!

さてそれで自死そのものですがピーク時の2003年が約3.4万人だったことに対して、2017年は約2.1万人と、このところ減少傾向にあるとされています。
それでも1日平均58人もの方が亡くなっているのですから大きな社会矛盾です。この点については以下の統計をご覧ください。
https://www.jiji.com/sp/graphics?p=ve_soc_tyosa-jikenjisatsu


 

世界の中の自死率比較を見てみるとある統計で日本は上位の13位となっています。OECD参加国に限ってみると1位韓国に次ぐ2位でやはりとても高い。
ちなみに日本は他殺される可能性はOECDの中で一番低く、アメリカの十分の一、メキシコの三十分の一で、その点での安全性は高い国です。
しかし自死率はとても高いのです。各国の順位を掲載した上で、それぞれの国の自死殺率の高さの要因をさぐった記事をご紹介しておきます。
http://english.cheerup.jp/article/5223?page=1


ただしこれらの統計にはより多くの数である「不審死」が含まれておらず、この中に自死が含まれうることを考えればもっと格段に多いはずだという声がネットに挙げられていることも紹介しておきます。
確かにそうなのかもしれません。しかし僕の調査ではこの点を裏付ける正確な情報を得られませんでした。

日本の自死率が高いのは完璧を求めすぎるからではないか?

これらにはさまざまな要因がはらんでおり一概に論じれない問題も多い。新自由主義のもとでの競争で人々が追いつめられているのは確かですが、それだけではとくに日本が高い理由が見出せない。では何が要因なのか。
あくまでも推論にすぎませんが、僕は日本の自死の多さは、日本社会が人々に完璧さや真面目さを求める度合いが他国よりはるかに高いことに要因をおいているのではと思えます。
その結果、多くの人々が実に低い自己評価をしがちなことに少なくとも1つの要因があるのではないでしょうか。

これに新自由主義のもとでの自己責任論というばかげた屁理屈が追い打ちをかけています。
自己責任論は多くの場合、本来社会の側に原因のあることを本人のせいに転嫁する卑劣なレトリックとして使われています。

と言っても完璧さや真面目さを求める志向性の全てが否定されるものではなく、それが高い職人意識などを形成し、芸術、芸能、工芸などさまざまな点で優れたものを生み出す原動力の一つにもなっているのも確かです。
しかし他国に比べた場合、それがこの国の生きづらさにつながり、新自由主義のもとで強まっているのではないかと思えます。

続く

*****

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振込先 ゆうちょ銀行 なまえ モリタトシヤ 記号14490 番号22666151
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明日に向けて(1613)こどもの命を守りたい! 原発事故や自然災害から命を守る知恵を高めよう!(11月2日に鎌倉市でお話します)

2018年10月30日 09時00分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20181030 09:00)

● 11月2日(金)に鎌倉市でお話します!

「こどもの命を守りたい! 原発事故や自然災害から命を守るためのお話」というタイトルです。
午前10時から11時45分まで。鎌倉生涯学習センターホール(JR鎌倉駅東口徒歩3分)にてです。
入場料は中学生以上500円だそうです。

● 鎌倉でのヨウ素剤自主配布会の成功を受けて

主催してくださるのは「ぐるぅぷ未来」さんですが、この団体は今年の2月24日にヨウ素剤の自主配布会をされました!
また6月にはこの方たちの働きかけの中で、鎌倉市議会が安定ヨウ素剤の自主配布を求める陳情を採択しています。
ヨウ素剤の自主配布は、DAYS JAPANの広河隆一さんの呼びかけのもと、昨年より始まった運動で、鎌倉は2度目の大きな配布会を実現してくださいました。これらに関する東京新聞の記事をご紹介しておきます。

● 安定ヨウ素剤の効能とは?

いまここであらためて安定ヨウ素剤の効能を確認しておきましょう。
原発が爆発するとさまざまな放射性物質=死の灰が飛び出してきます。その中でも相早めに出てきて遠くまで飛んでくるのが放射性ヨウ素ですが、これへの対処を知る前に「ヨウ素」とは何かを知っておく必要がある。
端的に言えば自然界にたくさんあり、特に海産物、昆布やワカメにたくさん入っているものです。それが身体の中に入るとのど元にある甲状腺に送られ、成長ホルモンを作る元となります。

日本に住んでいる方は普段から海産物をたくさん食べているので平均して8割は甲状腺のヨウ素容量が埋まっているといわれています。
しかしそこに放射性ヨウ素が飛んできてしまうと、人体は悪いヨウ素(放射性ヨウ素)と良いヨウ素(放射性ではないヨウ素)を区別できないので、悪いヨウ素を甲状腺に送ってしまい、そこで被曝してしまいます。
そうすると甲状腺のがんや疾患にかかってしまう場合が多い。それを未然に防ぐために甲状腺をあらかじめ良いヨウ素で満たしてしまうのがヨウ素剤服用の効能です。

● 安定ヨウ素剤事前配布の意義とは

国はいま地方自治体に対して原発から5キロ以内の住民に安定ヨウ素剤を事前配布することを求めていて多くの自治体が行っていますが、それより遠くの場合は事故時に配布されることになっており、それもほぼ30キロ圏内に限られています。
しかし原発が深刻な事故を起こしたのなら周辺の人々は「とっとと逃げる」ことが肝心です。ところが事故後にヨウ素剤が配られだすと、受け取りに行かなくてはならない分だけ逃げ出すのが遅れてしまいます。
また大きな地震の発生などの複合事態も十分に考えられますから、予定通りの配布ができるか大きな疑問も生じます。

またそもそも事故によっては瞬く間に放射能が飛び出してくるので、その後の配布では放射性ヨウ素の到来に間に合わない可能性が高いです。配布の過程で配る側の自治体職員や受け取りにきた住民が被曝してしまう可能性もあります。
同時に一般的に言ってお薬は効能と副作用に関する説明をきちんと受けていないと不安が生じて飲みにくいもの。このため医師の立場からは「事前配布と説明を行っていなければ有効に飲めない可能性が高い」とも指摘されています。
この点で自治体が率先して事前配布を行うことが重要ですが、それまでの間は市民の間で自主配布を進め、その上であくまでも行政に求め続けることが大切で、鎌倉のみなさんが行ってきたことはとても意義深いです。

● 原子力災害にいかに備えるのか

さてヨウ素剤自主配布を行ったうえで、どのように原子力災害に備えるのかについて述べたいと思います。
ポイントは一にも二にも災害全般に対する対応力を向上させることです。その場合に大事なのは(1)さまざまな災害に対してその特徴や前兆を把握すること、(2)いずれの災害に対しても「とっとと逃げる」準備を重ねておくことです。
地震の場合でも同じです。地震に対しては家の中の家具を固定し、大きな揺れの中で命を落とさないように、怪我をしないようにしておくことが必要ですが、その後は可能な限り地震地帯を脱出した方がいい。

熊本地震の場合は大きな揺れが二度続きました。いわゆる本震・余震という関係ではなく、二度目の方が揺れが大きかったのです。どちらかが本震というわけではなく連続地震だったのです。
熊本地震後、政府の地震調査委員会が過去の内陸地震を調べたところ、約6%で最初の地震を上回る規模の地震が発生していたそうです。このリスクを避けた方がいい。
そうでなくても大きな地震があるとかなりの規模の余震が続き、安心して眠ることができずに心身が消耗します。このリスクも避けた方が良い。

● どこに逃げるかを決めておこう

このため大地震に遭遇した場合も含めて、どこにどう逃げるのか、決めておくことが大切です。
7月豪雨のような水害の際にも、事前に「とっとと逃げる」ことが最も適切な対処でした。豪雨の際には土砂災害も生じうるのでとにかく危険地帯を離れることが大事なのです。
このようにさまざまなケースに即して逃げる準備を重ねておくことが、原発事故の際にも「とっとと逃げる」力を培うことになります。

とにかく災害対策の基本は一刻も早く危険地帯を脱することです。その際「ここは危険地帯ではない」と心理的に思い込むことで逃げ出せなくなる「正常性バイアス」に十分に注意しましょう。
同時に今年の水害の多発の中で、日本は避難所のあり方が国連の提唱する水準をはるかに下回っており、人権も満たされない場であるため、避難が進まない現実があることも見えてきました。
この点を平常時に少しでも改善しておくことが急務です。それぞれの町でいざというときの避難所をよくするための努力を重ねましょう。

以上、鎌倉ではいま述べた後半のことについてより掘り下げたお話をします。
お近くの方、お越しください。

*****

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#安定ヨウ素剤 #原子力災害対策 #災害対策 #正常性バイアス #避難所の改善 #鎌倉 #守田講演会

 

 

 

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明日に向けて(1612)人間的な優しい感情を摩滅させないと兵士は人を殺せない!(10月30日火曜 同志社でお話します)

2018年10月29日 22時30分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20181029 22:30)


(画像は京都国際舞台芸術祭ホームページより 
https://kyoto-ex.jp/2018/features/other/falklands-glossary/

前回に続いて明日(30日)の同志社大学での講演で話そうと思っていることを記しておきたいと思います。
なお講演は午後1時から同志社新町キャンパス尋真館21で行います!

海兵隊兵士の作り方=優しい心を摩滅させる

憲法9条が長く悲しい戦争の果てに生み出されたことに対し、後半ではいまも戦争を行っているアメリカがどのようにして兵士を作っているのかにフォーカスしたいと思います。
この点で僕がいつも僕が学習会の場で使っているのは映画『フルメタル・ジャケット』の冒頭シーンです。明日もちょこっと観てもらうつもりです。
舞台は海兵隊の新兵訓練の場。教官のハートマン軍曹が兵士たちを「鍛える」のですが、その際、ものすごい罵倒を耳元で繰り返すのです。性的スラングや差別用語が乱発されます。

兵士たちはその理不尽な罵倒に「イエス・サー」と言わされ続けます。そのことで理不尽なことを受け入れられるように作り替えられるのです。
そしてこの「理不尽なこと」の最たるものは人を殺させられることなのです。
第二次世界大戦の時、敵と向かい合ったアメリカ兵のうち、まともに敵に向けて射撃ができたのは2割ぐらいしかいなかったのだそうです。海兵隊は残りの8割にいかに人を殺させるかを考え、この訓練を編み出したわけです。

● 兵士の心の中の両親=良心、とりわけお母さんを殺す!

中でも重要なのは兵士、というより戦争に駆り出された若者たちの心の中の良心を押しつぶすことで、実はその拠り所が両親、とくにお母さんなのだそうです。残酷なことをしようとしたとき「お母さんがどう思うだろう」ということがブレーキになる。
このため海兵隊の訓練では、父親と母親を罵倒する言葉がたくさん出てきます。映画の中ではミニタリー・ケイダンスにそれが現れている。みんなでジョギングしながら教官が口ずさむ歌を復唱するのですが、歌詞はこんな感じです。
Mama and Papa were laying in bed.(ママとパパはベッドでゴロゴロ)Mama rolled over and this is what she said;(ママが転がり、こう言った) oh,give me some...(お願い、欲しいの)...P.T.!(しごいて!)
最後の言葉には性的な「しごいて」という意味と自分たちを軍事訓練で「しごいて」という意味がかけあわされています。

映画には出てきませんが、ベトナム戦争時に実際に歌われていたミニタリー・ケイダンスには以下のようなものがありました。
I wanna Rape Kill Pillage’n’ Burn,annnn’ Eat dead Baaa-bies! (レイプするぞ ぶっ殺すぞ ぶんどって 焼き捨てて 死んだ赤ん坊を 食ってやる!)
なんと海兵隊の新兵たちはみんなで「レイプするぞ ぶっ殺すぞ」と唱和しながらジョギングをしていたのです。ちなみにこの歌を強制され続けたことがPTSDになった兵士経験者もいたそうです。


人殺しになるのは過酷なこと

人間はなかなか人を殺せない!・・・どうも私たちには同じ人間を殺すことをためらう心情がそなわっているみたいです。どこまでがインネイトなものなのか分かりませんが、兵士を作るにはこの人を傷つけたくない思いをすりつぶさないといけないのです。
そして一度、その点をすりつぶされると人はなかなかもとに戻れなくなってしまいます。兵士の場合はとくにその点がPTSDの源になるようです。自分が殺されかかった恐怖ももちろんですが、人を殺めてしまった心の傷がずっと続くのです。
実は第二次世界大戦の時の日本兵とてそうだったのです。多くの兵士が人を殺させられることで心がズタズタになっていった。『日本軍兵士』(中公新書)などにそんな実態が書かれています。

またつい先日、ちょっと奇跡のような演劇を見てきました。いま行われている京都国際舞台芸術祭で行われたロラ・アリアスの「MINEFIELD-記憶の地雷原」という作品です。
登場するのは6人の男性ですが、1982年にフォークランド・マルビナス諸島の領有をめぐってイギリスとアルゼンチンの間で行われた戦争の双方の兵士たちなのです。イギリス側が3人、アルゼンチン側が3人。しかもどうも本物の人たちが自分の実際の体験を語っていました。
そのうちの一人、アルゼンチンの元兵士、今はトライアスロンのチャンピオンが一時期はコカ中毒にはまっていたことを告白しました。彼は言いました。「憎しみがないと引き金は引けなかった、そしてそれはその後もなかなか解除できなかった」と。

若者を人殺しにしたくない!

それぞれに思いの違い、立場の違いはあれ、それは6人が共有している感情でした。そして舞台の終幕で彼らはロックを演奏しながらシャウトしました。「戦場に行ったことがあるか!人が燃えるのを見たことがあるか!バラバラの死体を見たことがあるか!」



観ていてただただ涙が流れました。彼らがとても可哀想でした。国家による命令、人々の熱狂の中で送り込まれた戦場で、彼らは心の中に深い傷を負い、苦しみ、もがきつづけてきたのです。

僕が戦争に反対する原点はここにあります。憲法9条を強く支持するものこの点からです。憲法9条はどう読んだって自衛隊など認めていませんが、それよりも僕は「人殺しを作りたくない」からこそ、自衛隊に反対だし、戦争放棄を支持するのです。

僕は若者たちに、僕を守るために人間の良心を摩耗させる訓練なんか受けて欲しくない。戦場に行って人を殺し、えんえんと苦しみ続ける人生など送って欲しくない。
明日の講演は大学の1年生もたくさん来るとのことで、このことを若者たちに訴えたいと思います。
「君たちは何があっても戦場に行ってはいけない!人殺しになってはいけない!なぜなら一番傷つくのは君たちだからだ!」・・・大人としての責任も込めて明日はそう語りかけようと思います。

終わり

*****

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#戦争反対 #憲法9条 #フルメタルジャケット #アメリカ海兵隊 #記憶の地雷原 #京都国際舞台芸術祭

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明日に向けて(1611)長く悲しい戦争のつらなりの末に憲法9条は生まれ育まれてきた!(10月30日火曜に同志社大学でお話します)

2018年10月29日 09時00分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20181029 09:00)

● 同志社で憲法9条についてお話します

10月30日(火)の午後1時10分から2時40分まで、同志社大学の授業をベースとした公開講座でお話することになりました。
同志社大学社会福祉学会「ピース・プロジェクト」が主催です。タイトルは「~明日に向けて~ いまそこにある危険とどう向き合うか 憲法9条を考える」です。

● 江戸時代、日本は穏やかで豊かな文化を形成していた

まずお話したいのは江戸時代の日本は内戦にあけくれたヨーロッパ諸国に比してずっと穏やかな発展を続け、充実した文化を実現していたことです。
例えばスウェーデン人医学者・植物学者で1776年に1年ほど日本に滞在したツンベリーはその日記に以下のように当時の日本のことを書いています。
「注目すべきことに、この国ではどこでも子供をむち打つことはほとんどない。子供に対する禁止や不平の言葉は滅多に聞かれないし、家庭でも船でも子供を打つ、叩く、殴るといったことはほとんどなかった。
まったく嘆かわしいことに、もっと教養があって洗練されているはずの民族に、そうした行為がよく見られる。学校では子供たち全員が、非常に高い声で一緒に本を読む。・・・」

識字率も大変高く、庶民が書物を楽しんでいる当時の世界では稀有な国であったし、さまざまな工芸も発達していました。
すべて他の諸国が戦争にまわしていたエネルギーが、それ以外のこと、諸芸能などに向かい、開花していたためです。
ところが日本は幕末のアメリカとの出会いから一気に変貌していきました。一番大きかったのは西洋の暴力に触れて加速度的にそれを取り込んでいってしまったことにあると思います。

● テロリズムの応酬と内戦の中で明治政府は生まれた

幕末の動乱はアメリカの蒸気船が訪れ、開国を迫られたショックからはじまり、京都などを舞台に討幕派と佐幕派が互いにテロを応酬させました。
討幕派の中心である薩摩も長州も「人斬り〇〇」と呼ばれた暗殺者を抱えていたし、対する幕府も新選組などのテロリスト集団を使い、互いを殺し合いました。
維新の過程では薩長と旧幕府側との間に戊辰戦争が闘われ、さらに新政府軍となった薩長は会津が恭順の意志を示したのに攻め込み、会津に同情した東北諸藩を相手取った戦闘を行いました。東北ではこのときの戦争を「南北戦争」と呼んでいます。
その後西郷隆盛率いる旧薩摩藩士など「士族」が反乱をおこしたことに討伐軍が差し向けられ西南戦争が闘われました。明治10年のことでした。

● 植民地を拡大し西欧列強に伍していった

日本は1889年に大日本国憲法を定めるとさらに軍事大国化の道を歩んで1894年に清国との戦争を開始しました(日清戦争)
この結果として台湾島の領有権を主張するようになり1895年に同島に成立していた台湾民主国を制圧して植民地化してしまいました。
日本はイギリスと日英同盟を結びつつ1904年にロシアと開戦。203高地を2万4千人の死者を出して奪うなど壮絶な戦闘を行いました。

その後、ポーツマス条約でロシアと講和して朝鮮・満州への進出をロシアに認めさせ1905年に韓国を保護国化、さらに1910年に「日韓併合」によって植民地化してしまいました。
一方で1906年に南満州鉄道会社を設立するなど満州への支配を強めていきました。
そして1914年からはじまった第一次世界大戦にも参戦し、その末に起こったロシア革命への干渉戦争であるシベリア出兵を1918年に行いました。

● 血塗られた歴史へとのめり込んだ日本

以降、日本は坂道を転がり落ちるように戦争を続けました。とくに中国大陸に深く深く進攻し、1931年から各地で中国の人々と激突。やがて1937年の盧溝橋事件から日中間の全面戦争にのめり込みました。
その年の11月には国民党政府の首都であった南京に殺到し、30万人を虐殺する南京事件を起こしました。
このとき隊内で虐待につぐ虐待を受けていた多くの日本軍兵士が暴徒化し、略奪やレイプを繰り返しました。このため南京進攻は「レイプ オブ ナンジン」とも呼ばれます。

さらに重慶に逃げ延びた国民党政府に圧力をかけるため、世界で初めての爆撃機を使った都市空襲を始めました。
他方で南京事件で多くの兵士がレイプを行った際に性病にかかってしまったことから、兵士の「性の管理」をはじめ、「慰安所」という性奴隷施設を立ち上げました。集められたのは処女の女性たち・・・女の子たちでした。

一方、これに先立って国内では1923年の東京大震災の際に、朝鮮人の大虐殺事件を引き起こし、かつ1930年には台湾で日本支配の苦しみに対して起ちあがったセーダッカの人々による霧社蜂起に対して大規模な鎮圧戦を行いました。
このように日本はどんどん手を血で汚しながらさらに戦争へ戦争へと突き進み、やがて1941年末からの太平洋戦争に突入しました。
その果てにあったことはみなさん、よくご存じだと思います。主要都市を空襲され、沖縄に地上戦をしかけられ、さらに広島・長崎に原爆を落とされました。

● 憲法9条につまっているのは悲しみを通した平和を守る決意だ

日本国憲法はそれらの末に成立したものです。憲法9条もここから生まれ、長い戦争のあと、苦しみと悲しみを経てきた当時の日本の多くの人々の心の中に浸透し、定着していったのでした。
今回はこの過程を再現しつつ、憲法が公布されたときの時代的雰囲気にも触れたいと思います。

続く

*****

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明日に向けて(1610)廣松哲学を手引きに近代社会の枠組みを考察したい!(社会変革と哲学―2)

2018年10月28日 23時00分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20181028 23:00)

哲学に関する続きを書きます。前回、社会変革と哲学の考察において哲学者廣松渉さんが遺してくださった考察を道しるべとしたいと書きましたが、実は僕は当初、廣松渉さんの考察に批判的でした。

● 最初は廣松哲学は受け入れがたかった!

初期マルクスを愛読し「人間は美しい。それが資本主義社会によって疎外されている。だから資本主義という害悪を取り除いて美しい未来社会を創造するのだ」と僕は考えていたので、廣松さんの考察は当初、あまりに受け入れがたかったのです。
「絶対に廣松渉を論破する!」・・・そう考えて僕は次々と廣松さんの書物を読みだしました。難解な書も多いのですが必死にくらいついた。しかしくらいついて読み進めば進むほど批判できなくなっていきました。率直に言ってどんどん説得されてしまった。
そう。人間を美しいと言ったって、現に人殺しが続いており、収奪や搾取が続いている。それを「本当の姿ではない」と言っても実はただ認識を変えていることに過ぎないのです。

僕は悶絶しました。「人間は絶対に美しい存在なんだ」という思いを捨てたくなかった。
そんなとき、ちょうど電気製品の基盤を作る「超高速ドリル」を売る会社の営業マンになって幾つもの工場を周っているときでしたが、ある工場の正門のすぐそばのバスを待つ停留所で廣松さんの本を開いて、忘れられない一文に出あいました。
廣松さんはそこで「マルクスは美しい人間論を越えるまで2年間沈黙している。どんなに苦しい過程を経たのだろう」と書いていた。「ああ、この人はこの苦しみを感受してたんだ」と胸を打たれました。

それをきっかけに僕は廣松哲学を受け入れようと思い出し、僕の中の「美しい人間像」を越えていきました。
人間を信じたいという思いを持ち続けながらも、そのように信じることよりも人間の中のよきものを開花させることにこそフォーカスしよう。そのために現実に肉薄しようと考えを発展させたのでした。
僕はそれを「ヘーゲル左派」とくくられたマルクスの友でもあった哲学者たちが共有していた心情を、マルクスが自己批判的に越えていく階梯にダブらせました。

● 廣松さんに内的葛藤を伝えたけれども・・・

実は後年、このことを廣松さんに直接、お伝えする機会に恵まれました。ある企画で廣松さんに講演を依頼し、僕がドライバーとしてお迎えとお送りをしたのです。
東京の京王線の初台という駅のそばで企画を行って新宿駅までお送りしたのですが、その車中で僕は廣松さんにこの過程のことを話しました。最後に廣松さんが書かれていることに胸を打たれ、最終的に発想を転換させたことも。
ところが廣松さん、車が大変、嫌いな方で、ひょっとして自分が新宿駅ではなくてもっと遠くまで送られてしまうのかとそわそわどきどきしていたのでした。だから当然にも僕の言葉なんか耳に入っていかない。

僕が話していても「えっとここは新宿駅のそばの〇〇の辺ですね。もうすぐ南口ですね。そこまででいいですからね」と繰り返す。
僕は「ということで廣松さんの書を読んでとにかく論破したいと思ったのですが、その後に・・・」とか言うのだけれど、「あ、あれは小田急線ですね。あ、国鉄もみえますね。新宿駅までにしてくださいね」などと新宿の町のことしか目に入ってない。
かくして南口につくと廣松さんはとても安堵して車から去っていかれました。「あああ。思い切って告白したのになあ」とちょっと淋しく思ったことを思い出します。

● 疎外論から物象化論へ

それはともあれ廣松さんが提起されたのは「疎外論から物象化論へ」というスローガンでした。廣松さんはマルクス自身が26歳から28歳になる過程で「疎外革命論」を捨てて前に進んだ階梯にフォーカスしてこう言ったのでした。
かくしてマルクスが編み出したのが『ドイツ・イデオロギー』だとされるのですが、それまでフォイエルバッハの言葉を借りて「人間は類的存在である」と語っていたマルクスはこの書では「人間とは諸関係の総体である」と全く違うことを言い出すのです。
マルクスが言わんとしたのは「人間はその時々の社会がどんな生産構造をもち、どんな社会を形成しているかに大きく規定されている。つねにさまざまにとり結んでいる関係性の結節点としてある」ということでした。

マルクスはそこから「諸関係の総体」の変革を唱え始めます。そのことで人間そのものを変えようとするわけです。社会が変わり人間が変わる。しかしまた人間が変わることで社会も変わる。マルクスはそう思考を発展させていきます。
「疎外論から物象化論へ」と説いた廣松さんは、初期マルクスを越えたときにこそ、マルクスはマルクス主義を誕生させたのだと語りました。
そこに流れていた考察は「いくら人間が美しいと言っても現に醜いではないか。人間は社会のあり方によって美しくも醜くもなるのだ。まさに社会的諸関係の総体なのだ。だからその社会的諸関係を変えることこそ肝要なのだ」というものでした。

廣松さんはそれで、「では社会的諸関係」とはなんなのかの分析に進まれた。そこでの廣松さんのユニークさはマルクスがそうしたように経済社会の分析に向かうのではなく、あくまでも哲学フィールドでの考察を深めたことでした。
やがて近代社会の中での人々の思考の枠組みをなしているのは何かということを廣松さんは的確につかまえ、それを誰にもみえる形で提示しようとした。
そのとき廣松さんの思考はマルクス主義を大きく拡張していくことにもつながりました。かくしてかれは「廣松哲学」を編み上げたのですが、次回からはこれを手引きに近代社会が私たちの思考をどんな風に規定しているのかを見ていきたいと思います。

続く
 
*****

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明日に向けて(1609)世界を変えるために哲学しよう!(哲学的考察を始めます!)-1

2018年10月27日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20181027 23:30)

● 哲学的考察を始めます!

いささか唐突かもしれませんが、哲学についての考察を始めたいと思います。
なぜ哲学を論じようするのかと言うと私たちがいまどこにいてどこに向かおうとするかをみんなで考えたいからです。
実はもう何年も前から「明日に向けて」にこれを書かねばと思いつつ、原発や災害の現状分析などで伸ばし伸ばしになっていましたが、社会変革あるいは世界変革のためにいましっかりと哲学を論じようと思い立ちました。

私たちがいま生きている社会をどう規定するか。それ自身が一つの哲学論争になりそうですが、それでも大きくは「近代社会」と言ってよいのではと思います。
そしてその近代社会には、ものの考え方や発想の仕方の中の大きな共通項を持っています。その時代の考え方の前提とも言え、しばしば「パラダイム」とも表現されます。思考の枠組みのようなものです。
天動説と地動説を比べてみると分かりやすいかもしれません。ヨーロッパではかつて地球は世界の中心でありそのまわりに天がまわっていると考えるのが常識でした。でもいまは地球が動いていることが常識です。枠組みが大きく変わっている。

社会を変革するためには社会がいかに成り立っているかをつかめるといい。さらにそれらが私たちにどんな精神作用をもたらしているか、あるいはどんな考え方をもたらしているかがつかめたらなおさらいい。
実はそこには私たちが社会と同時に私たち自身をどう変えていくのか、対象変革を通じた自己変革をいかに実現していくのかという大事な問題が含まれています。
私たちは社会の構成要素なのだから私たち自身が変わることによっても社会は変わります。いや対象と自己の並行的変革こそが本当の意味での社会変革のカギだと思います。その点で「主体的」であることが私たちに問われているのです。

● 廣松哲学を導きとして

この際、考察の手引きとして哲学者廣松渉さんが編み出した「廣松哲学」を使いたいと思います。廣松さんは近代思想の枠組み全体を問題とした方であり、近代をいかに越えるかを考え続けた方だからです。
彼はこれをマルクス主義の読み込みの中から編み出されました。正確にはマルクスが、後年「初期マルクス」と言われるようになるおよそ28歳ぐらいまでの思想をいかに越えたのかをトレースする中から考察されたのでした。
少しく難しい言い方をすると「ヘーゲル左派の思考をいかにアウフヘーベン(止揚)したのか」なんてくくることができます。

実はこれ、僕の20代の思考そのものなのです。10代後半に社会運動に飛び込む過程で、僕は哲学を読み始めました。当初はルソーやカント、デカルトなどを読んでいましたが、やがてマルクスを読み始めました。それも哲学的な思考に惹かれました。
中でも愛読したのは『経済学・哲学草稿』と言われる書でした。実はマルクスは生前にこれを出版していなくて、後年に発掘されて世に出た書です。この書を中心とした若き日のマルクスの考察が「初期マルクス主義」と呼ばれています。
マルクス自身が出版した書では『ヘーゲル法哲学批判序説』『ユダヤ人問題によせて』などがありました。

初期マルクスの考えをできるだけ簡単に書いてみると、「人間はもともとは美しいものだ!」という捉え方が根底にあります。フォイエルバッハという哲学者に大きな影響を受けていた時のことです。
しかし私有財産制が人間の美しさを奪い、醜いものに変えてしまった。以来、人々は争いを繰り返してきた。だから私有財産制が社会全体を覆ったものとしての「資本主義社会」を革命によって越え、人間の美しさを取り戻そうというのです。
この考え方を「疎外革命論」と言います。「人間の美しい本質が疎外されている。だからその状態を革命によって突破し、人間性が美しく開花される社会を作り上げよう」と言うのですが実は廣松さんはその考え方を鮮烈に否定されたのでした。

続く
 
*****

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明日に向けて(1608)伊方原発3号機再稼働反対! 現地行動にエールを送ろう!

2018年10月26日 18時00分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20181026 18:00)

● 伊方3号機再稼働に反対して高松駅前に人が集まっています!

伊方原発3号機が再稼働されようとしています。明日27日未明にも原子炉が起動されようとしています。
南海トラフ地震が迫ってきていること一つを取り上げても、こんなところで原発を動かすなど危険と愚かの極みです。ぜひともみんなで食い止めたい。

再稼働への動きに対して高松でまた伊方現地で果敢な反対行動が取り組まれつつあります。
その一つは今宵の行動。まさにいま行われています。午後6時からJR高松駅前広場にてです。集会後デモ行進をするそうです。

さらに再稼働に反対するためになんと明日の未明、夜中の1時に原発ゲート前に可能な方が集まるそうです。
伊方から原発をなくす会の門田さんからの案内を転載します。

● 伊方から原発をなくす会からの明日(27日)未明の行動の呼びかけ

今日は再稼働反対高松行動です。

明日10月27日伊方原発再稼働反対ゲート前座り込みをします。
伊方原発プルサーマル3号機再稼働の時間は27日未明だそうです。 
集まれる方は、27日夜中の1時にゲート前に来てください。
※マイク等は使用不可です

又、再稼働反対の多くの意思表示を明らかにするために、 予定通り 27日8時~11時ゲート前で座り込みを行います。    
※座り込みは天候に関係なく行います。
その後九町での街宣を行います。
現地の判断で悪天候の場合は座り込み後、八幡浜市スポーツセンターで交流会を行います。

伊方から原発をなくす会 門田

● 全国からエールを送ろう

残念ながら僕は今宵の高松駅での集いにも、明日未明、午前1時からの伊方原発ゲート前での抗議行動にも参加できません。
ご参加できる方、よろしくお願いします。また参加できない方は精一杯のエールを現地に届けましょう。
伊方から原発をなくす会の連絡先のメールアドレスを記しておきます。
kyoudoukoudou@gmail.com

● 伊方原発を動かしてはならない幾つもの理由

伊方原発はとくにどこが危険なのか。これまで何度も論じてきていますが、ここでは以下の記事を紹介しておきます。

明日に向けて(1288)伊方原発を動かしてはならない幾つもの理由-上 20160815
https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/ac6e04f05f8f856793573e9be441cddc

明日に向けて(1289)伊方原発を動かしてはならない幾つもの理由-下 20160816
https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/41d6ef9fd874dce9c96df803ffa6ef4a

みんなの力を集めて、原発から命を守りましょう!

#伊方原発 #原発再稼働反対

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明日に向けて(1607)女川原発1号機の廃炉決定!民衆のパワーで原発ゼロにまた一歩近づいた!

2018年10月25日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20181025 23:30)

● 東北電力が女川原発1号機の廃炉を正式決定!

本日25日、東北電力が女川原発1号機の廃炉を正式決定しました!
午後には東北電力の原田社長が宮城県庁を訪れて村井知事と面会し、決定を伝えました。
NHKはこの際、東北電力が「運転開始から30年余りがたち、安全のための設備を追加設置するには技術的な制約があることなどを理由」としたと報じています。

女川原発1号機は廃炉 東北電力が知事に伝達
2018年10月25日 14時56分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181025/k10011685201000.html

● 安全対策が重荷に

一方で毎日新聞は「再稼働に必要な新規制基準を満たす安全対策が重荷となったため」と報じています。
「再稼働には、地震や津波への備えを大幅に強化し、テロ対策も盛り込んだ新規制基準に適合する必要がある」がそれが重荷になっているというのです。
いずれにせよ安全対策が技術的にも経費的にも困難なために廃炉に追い込まれたのは確実です。

安全対策が重荷に 女川原発1号機廃炉決定
毎日新聞2018年10月25日 18時25分
https://mainichi.jp/articles/20181026/k00/00m/040/044000c

● 廃炉決定は民衆の力によって引き出された

しかしさらに一歩突っ込んで分析すべきことは、この廃炉が私たち民衆のパワーによってこそもたらされたものであることです。
福島原発事故後の脱原発運動の進展、持続的な継続、「再稼働反対」の声の高まりの中で、原子力規制委員会など規制当局は、原発の「安全対策」を電力会社に要請せざるを得ませんでした。
その内容は場当たり的なものにすぎなくて、安全が確保されたと言えるものではまったくありませんが、しかしもうそれだけでも経費が賄えなくなり、撤退が決定されたことを見ておくべきです。民衆のパワーが廃炉を実現したのです。

● 裁判も大きく影響している

民衆パワーの高まりは、裁判所のあり方を大きく変え、この間、何度も原発運転停止を命じる判決や決定が出ました。それもまた電力会社に大きなダメージをもたらしています。
多額の費用をかけて再稼働に漕ぎ着けても、裁判で運転停止が出されてしまえば原子炉は動かせず営業的なダメージが出てしまいます。それを上級審でひっくり返したとしてもそれまでの間に大きな赤字が出てしまう。
そのため電力会社にとっては裁判を起こされるともはやそれだけで大きな経営リスクとなっているのです。それもまた廃炉の判断材料になっているのは間違いありません。ここでも私たちの民衆パワーが効いているのです。

● 残る稼働可能な原子炉総数は34基

これで日本に残る稼働可能な原子炉総数はわずか34基になりました。福島原発事故のときまで54基でしたから私たちは20基も原発を減らしたのです。
もっともそのうちの4基は福島第一原発で激しく壊れたわけですから民衆の力で減らしたのは16基だとも言えます。でもそれでもとても大きな前進です。
再稼働だって容易ではない。34基のうち動いているのはわずかに7基(川内2基、玄海2基、大飯2基、高浜1基)。福島原発事故前からするとあのとき稼働可能だった原発の13%しか動かさせていないのです。原子力エネルギー庁の図でこれらのことを確認しておきましょう。

● さらに再稼働反対の声を強めよう

もちろん政府と電力会社がこれで完全に原発をあきらめたわけではありません。
地元で女川原発に反対している人々からは、「1号機の廃炉と引き換えに2号機の再稼働をしようとしているのではないか」という警戒の声も出されています。確かに油断しないでこれらと対決する必要があります。
それでもいま私たちに大事なのは私たちの力を確認することです。これまでの全国での必死な努力があったからこそ廃炉が一歩ずつ進んでいるのです。だからいま、さらに声を高めれば電力会社の経営をますます厳しくすることができます。

自分たち自身の力を信じ、誇りを持ち、原発ゼロへとさらに進んでいきましょう!

#女川原発廃炉 #再稼働反対

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明日に向けて(1606)安倍首相のオリンピック招致発言がますます東電を有利にさせた!-放射能汚染水問題(9)

2018年10月24日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20181024 23:30)

放射能汚染水問題の続きです。

前回、東電が膨大な地下水が汚染水とまじわり海に流れ出ることを知っていながら当初は対処をサボタージュしたこと。
国政選挙をうまく利用しつつ、安倍政権と裏取引をして対策を国の財政で行わせるように仕向けてきたとしか思えないことを論じてきました。今回はそれがさらに強められたことを明らかにしたいと思います。

● さらに矢継ぎ早に、汚染情報を明らかにした東電

東電はその後も矢継ぎ早にサイトに林立しているタンクからの高濃度汚染水漏れなどを発表しました。
8月20日には汚染水を汲み上げたタンクから300トンも汚染水が漏洩したことを発表。ベータ線を出す放射性物質が1リットルあたり8000万ベクレル、300トンだと240兆ベクレルが漏れ出したと発表しました。

こうした情報と数値が次から次へと出てくると、聞いている側は感覚がマヒし、何が「高濃度」なのかも分からなくなってくるものですが、もちろん東電はその効果を十二分に知ってこうした発表を行い続けたのでした。

● 安倍首相のオリンピック招致発言でますます東電は有利になった!

さらに重大なのは安倍首相が東京へのオリンピック招致に向けて世界に大嘘を発信してしまったことでした。
Let me assure you, the situation is under control.「私はみなさんに原発は統制のもとにあることを保証いたします」。メインスピーチでこれを語りました。
「東京に悪影響を及ぼすことはない。私が保証する」とも語りました。もちろん安倍首相の念頭にあったのは汚染水問題でしょう。

あのとき世界は当然、東電が海に汚染水を何百トンも流していたと発表したことを見ていました。あるいはタンクからも汚染水が300トン漏れていたとかというニュースが続き、当然「日本はどうなっているんだ」と懸念が広がっていました。
実は東電はこれもあらかじめ考えていたに違いないのです。選挙だけではない。選挙のあとに東京オリンピック招致のための大きな山場がやってくる。そこに安倍首相が乗り込んでいくことも分かっていたのです。
分かっていたからこの時期にどんどん汚染水問題を表に出したのです。なぜか。政府が東電をどこまでもかばうしかなくなることが見えていたからです。
そしてまんまと安倍首相は東電の思惑通りに「汚染水の影響は福島原発の港湾内〇・三平方キロメートル内で完全にブロックされている」「必ず責任を完全に果たす」と世界に公言してしまいました。東電は重要な言質をとりつけたのです。

● なんと東電が安倍首相の発言を一部否定!

しかもこの時、なんと東電は直後の9月9日に安倍発言の一部否定まで行いました。「完全にブロックされているとは言い難い」と言ってのけたのです。
なぜにこんなことを言ったのか。一つに大嘘をついた安倍首相との対比を際立たせ、あたかも東電が安倍首相より正直であるかのような大嘘をふりまくためでした。
さらに安倍首相を少し苦しい立場に追い込み、より一層、政府に東電をかばわざるをえなくすること、とくに汚染実態を隠さざるをえなくするようにしむけるためだったと思います。東電の立ち回りはまさに狡猾きわまりないものでした。

● 海はすでに深刻に汚染されてしまった!

さて東電のこうした本当に腹立たしい行いはまだまだ続くのですが、ここまででももう十分に事態の本質を描けたのではないかと思います。
繰り返しますが海はすでにもう深刻に汚染されてしまったのです。しかも東電はこうなることを知りながら、自社の責任で対処することを回避し続け、政府をうまいこと対処に引き込んだのです。
そこで絞り出されているのは私たちがおさめた税金です。これはあまりにひどい。

● 私たちの力で人々の暮らしと命を守ろう!

東電、政府のこのあまりにひどく、情けない実態を見たときに、私たちこそが食べ物を厳しく監視し、選び取り、そのことで安全を確保しなければならないことは明らかです。
そのためには食べ物の生産・流通・小売りのすべての場面でひたむきな努力を傾けてきた方たちと消費者が固く、賢く連携していくことがとても大事です。
食べ物をつなぐ輪を命を守る輪として豊かに発展させ、人々の暮らしと命を守っていきましょう。

続く

#放射能汚染水問題 #東京オリンピック

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明日に向けて(1605)隠されてきた内部被曝の危険性!-守山市でお話します(28日)

2018年10月23日 17時30分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20181023 17:30)

● 内部被曝問題について守山市でお話します!

今週末の10月28日日曜日は午後2時から滋賀県守山駅前コミュニティホールにてお話しします。
新日本婦人の会滋賀県本部のお招きで、タイトルは記事の表題と同じです。チラシをご案内します。

● あらためて内部被曝の危険性に目を向けよう

この間、自然災害+人災が猛威を振るっていたのでその対応と分析に追われていましたが、今回は「隠されてきた内部被曝の危険性!」についてしっかりとお話しようと思います。
原発事故が恐ろしいのは大量の放射能が出てきてしまう可能性があるからですが、もともと放射能の危険性は大変、過小評価されてきました。福島原発事故後はさらにそれに拍車がかけられています。
このため被曝から命を守るためには、隠されてきた内部被曝の危険性をきちんと把握することが大事です。

● 内部被曝の危険性を隠したのはアメリカだ!

そもそも大量の人間がたくさんの放射線を浴びせられた経験は広島・長崎への原爆投下が初めてでした。
現代の放射線防護学はこの時に理不尽に放射線を浴びせられた被爆者に対して行った追跡調査を最も大きなデータベースとしています。
問題なのは調査を行ったのが誰かということです。答えは理不尽にも放射線を浴びせたアメリカです。こんな調査、そもそもあってはならなかったのです。加害者が被害者を調査したのですから。加害者に不利なことがきちんとカウントされるはずがない。

● アメリカは被曝の深刻な影響を隠さなければ核戦略を維持できなかった

そもそもアメリカには放射線被害を隠す大きな理由がありました。核兵器をもっとたくさん製造するために非人道性を隠すことでした。
また放射線を当てると生物が影響を受けることは生物学者マラーによるショウジョウバエへのX線の照射実験で、生物学者、とくに遺伝学者の間に広く知られていることがらでした。
このため原爆投下後、ヨーロッパの科学者たちから「原爆は未来世代への攻撃でもあり戦争犯罪そのものだ」という批判の声があがったのでした。アメリカはその声をかき消さなければ核戦略を維持できませんでした。


● 被曝被害を外部被曝に限定

しかし広島・長崎で多くの人が放射線を浴びて大きな傷害を負ったことは否定しようのない事実でした。
そこでアメリカが考え付いたのは、これらの被害は原爆が破裂した時に生じた中性子線とガンマー線による外部被曝によって生じたものとのみ断定することでした。
このため被曝被害の程度は爆心地からの距離によって評価されました。当初アメリカは爆心地から半径2キロまでは100ミリシーベルト相当の放射線が届いたため外部被曝の被害が生じたが、それよりも遠くでは被害は確認されないと主張しました。

このため被曝被害の程度は爆心地からの距離によって評価されました。当初アメリカは爆心地から半径2キロまでは100ミリシーベルト相当の放射線が届いたため外部被曝の被害が生じたが、それよりも遠くでは被害は確認されないと主張しました。

● 内部被曝を隠したアメリカと追従した日本政府

事実はまったく違っていました。原爆によって生じたキノコ雲は放射能の塊であり、それが届いた広範な地域に放射性微粒子が降下しました。
雲の下にいた人々は何らかの形で放射能を身体の中に取り込み、内部被曝してしまったのですが、アメリカは一切、被害を認めませんでした。
いやアメリカだけではありません。日本政府もこれに完全に追従し、被曝の実相を無視しました。こうして内部被曝の被害はほとんどカウントされず、だからまた被爆者への救済もあまりにおざなりなものとなりました。それが原爆被害の実態だったのです。
現在も厚労省がホームページに掲げている距離で影響を測った図と原爆研究の第一人者、沢田昭二さん作成のキノコ雲の図をご紹介します。


● 内部被曝被害を隠したのは管理ができないからでもあった

さらにアメリカが内部被曝を隠したのは、内部被曝が防護が難しく、とてもではないけれども管理できないものであることが分かっていたからだと思われます。
外部被曝は線量で被害を評価することができます。全身に浴びた場合、量が増えれば増えるだけ危険で、量的な評価が可能です。
ところが内部被曝の場合、どのような放射性物質が体のどこに入り込んだのかによってダメージがまったく違ってしまいます。しかもそもそも放射性物質は実に多様で化合物になったりもするので体内の挙動のすべてを把握することなどできないのです。

● シーベルトと言う名のまやかし

また例えば人間にとって甲状腺を被曝し甲状腺がんになってしまうことと、血管に傷害が出て心筋梗塞や脳梗塞を惹き起こすことと、その危険度を数値的に対比することなどできません。
前者に対して後者は突然死する可能性が高く、だからより怖いものだと思えますが、数値化などはできません。いや心筋梗塞と脳梗塞の恐れとて本来、数値化して比較することなどできないのです。
その点で実は放射線がどれだけあたったかの数値で人間への打撃が評価できるわけではないのです。しかしこの点を掘り下げると放射能を管理できないことがあぶり出されてしまうため、で強引に数値化を測ったのが「シーベルト」などの評価の仕方です。

● 放射線は浴びる量が多ければ多いほど危険というのは正しくない! 微量でも大変危険な場合がある!

つまり量だけで被曝影響を評価するあり方は被曝の具体性を無視しているのです。どれだけの放射能が体のどこに入り込んでどの器官をどのように傷つけたか・・・などの具体性です。
本来はその一つ一つを調べなければ事実に迫れない。その際、現代科学では調べられないものも多すぎる。だからまともに管理できないのだから放射性物質の使用はできるだけ避けた方が良いというのが結論になるのです。
医療において厳しい管理のもとに特定された放射線源からの放射線を使って医療行為をするなどが許されるのみで、核兵器の爆発や原発事故ではどんな形で放射能が飛び人体にどう入るのかも分からないことが多すぎるので管理などできるわけがないのです。


● 内部被曝の危険性隠しはいまも行われている!

これらをみたときに出てくる結論は、危険性が高くしかも管理が十分にできない放射性物質を散乱させうる原発など使ってはならないということです。もちろん核兵器などは論外です。
反対に言えば、核戦略を維持し、原発を肯定するために内部被曝の危険性隠しは必須なのだということです。
だから核なき世を手繰り寄せるために、隠された内部被曝の危険性を暴きたて、多くの人に知ってもらうことが大事なのです。

以上、ガイストを書きましたが、10月28日に守山市でより詳しくお話します!ぜひお越しください。

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