明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(121) 福島出身原発作業員から相次いで内部被ばく発見・・・

2011年05月21日 11時00分00秒 | 明日に向けて5月1日~31日
守田です。(20110521 11:00)

原発のウォッチに戻ります。
非常に重要なニュースが毎日新聞に掲載されました。

「東京電力福島第1原発の事故後、福島県外で働く同県出身の原発作業員から、
通常ならめったにない内部被ばくが見つかるケースが相次いでいる。大半は事故
後に福島県に立ち寄っており、水素爆発で飛散した放射性物質を吸い込むなど
したとみられる。周辺住民も同様に内部被ばくした可能性もあり、福島県内の
一部自治体は独自に検査を検討している。」
というものです。

これらの方々は、福島第一原発近くに自宅があり、事故後に避難などで自宅に
戻ったことがあったり、福島第一、第二原発から他の原発に移った人とみられて
います。

ここから重要なことが二つ指摘できます。
一つに、事故当初、水素爆発によって飛散した大量の放射性物質により
非常に多くの内部被ばくが発生しているという事実です。

つまりこれは原発内の労働で起こったというより、事故による放射能漏れを
原因とするものであり、たまたまこれらの人々が、その後に他の原発で
働いて、ホールボティーカウンターでの計測を受けれたことから表面化
してきたものだということです。

しかも記事は次のようにも述べています。
「3月11日以降、福島第1原発を除いた全国の原子力施設で、作業員から
内部被ばくが見つかったケースが4956件あり、うち4766件はその作業員
が事故発生後に福島県内に立ち寄っていた。」

その中には、「3月13日に福島県川内村の自宅に戻り、数時間滞在して
家族と共に郡山市に1泊して県外に出た」方も含まれている。
わずか数時間の立ち寄りで被ばくした可能性が高いのです。

となるとすれば、その間、原発の近くにいた住民の方々の間で、内部被ばくが、
かなり広範に起こっている可能性があります。この調査が速やかに行われる
必要があります。

すでに放射性物質による汚染が、各地の牧草やお茶、汚泥などから見つかって
いて、放射能が私たちの身の回りから現れてきていることを、これまで
取りあげてきましたが、とうとう、人体への被害の一端が浮上してきてわけで、
とても胸が痛みます。


さらに二つ目に大事なこととして、記事からは、福島第一原発の収束作業の
現場でも、かなり深刻な内部被ばくが起こっていることがうかがわれます。

記事には次のように書かれています。
「福島第1原発で作業拠点となっている免震重要棟は、3月に起きた1、3号機の
水素爆発で扉がゆがみ、放射性物質が一時入り込みやすくなっていたという。
40代の作業員男性は「そこで食事しているから(放射性物質は)体に入っている
でしょう」とあきらめ顔だ」。

この時期には多くの作業者の方たちが、線量計すらつけずに働いていました。
そうした方たちの被ばくの実態はほとんど伝わってきていません。ここでも多くの
情報が隠されているか、調べられていないように思えます。

私たちは、被ばく労働の実態についても、注意を最大限に注いでいく必要が
あります。もやは市民の監視の目のみが、作業されている方たち、周辺に
おられる方たち、そしてまた私たち自身を守るのであるからです。

内部被ばく問題について、続けて考察を行っていきたいと思います・・・。

*****************

内部被ばく:県外原発で働く福島出身作業員から相次ぎ発見

毎日新聞 2011年5月21日 2時36分
 東京電力福島第1原発の事故後、福島県外で働く同県出身の原発作業員から、
通常ならめったにない内部被ばくが見つかるケースが相次いでいる。大半は事故
後に福島県に立ち寄っており、水素爆発で飛散した放射性物質を吸い込むなど
したとみられる。周辺住民も同様に内部被ばくした可能性もあり、福島県内の
一部自治体は独自に検査を検討している。
【日下部聡、石川淳一、町田徳丈、袴田貴行、池田知広】

 ◇事故後立ち寄り…内部被ばく4766件
 経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭院長が16日の衆院予算委員会で
明らかにしたデータによると、3月11日以降、福島第1原発を除いた全国の
原子力施設で、作業員から内部被ばくが見つかったケースが4956件あり、
うち4766件はその作業員が事故発生後に福島県内に立ち寄っていた。
柿沢未途議員(みんなの党)の質問に答えた。

 保安院によると、体内からの放射線を測定できる機器「ホールボディーカウ
ンター」による検査で、東電が内部被ばくの目安としている1500cpm(cpmは
1分当たりに検出された放射線量を示す単位)を上回った件数を電力各社から
聞き取った。1人で複数回検査を受けるケースがあるため、件数で集計した。
1万cpmを超えたケースも1193件にのぼった。

 いずれも福島第1原発近くに自宅があり、事故後に家族の避難などのために
帰宅したり、福島第1、第2両原発から他原発に移った人たちとみられる。

 柿沢氏によると、北陸電力志賀原発(石川県)で働いていた作業員は、3月
13日に福島県川内村の自宅に戻り、数時間滞在して家族と共に郡山市に
1泊して県外に出た。同23日、志賀原発で検査を受けたところ5000cpmで、
待機を指示された。2日後には1500cpmを下回ったため、作業に戻ったという。

 取材に応じた福島第2原発の40代の作業員男性は第1原発での水素爆発
以降、自宅のある約30キロ離れたいわき市で待機していた。その後、検査を
受けると2500cpmだった。「大半が(半減期の短い)ヨウ素で数値は(時間の
経過で)下がると思うが、不安だ」と男性は話す。

 同県二本松市には「市民から内部被ばくを心配する声が寄せられ」(市民部)、
市は乳幼児や屋外作業の多い人などを選び、県外のホールボディーカウンター
で内部被ばくの有無を測定することを検討している。

 ◇内部被ばく
 呼吸や飲食などで放射性物質を体内に取り込み、体内から放射線を浴びる
こと。体外からの外部被ばくに比べ継続的で危険が高い。体表から10万cpmを
超す線量を検出すれば放射性物質を洗い落とす「除染」が必要とされるが、
東電は内部被ばくの恐れがあるとする目安を、ホールボディーカウンターで
1500cpm超の場合としている。大量の内部被ばくはがんになるリスクを
高める一方、時間と共に排せつされ、排せつも含めた「半減期」は成人では
ヨウ素131で約7日、セシウム137で約90日。

 ◇扉ゆがむ棟「そこで食事すれば体に入って当然」…福島第1の作業員
 福島第1原発で作業拠点となっている免震重要棟は、3月に起きた1、3号機の
水素爆発で扉がゆがみ、放射性物質が一時入り込みやすくなっていたという。
40代の作業員男性は「そこで食事しているから(放射性物質は)体に入っている
でしょう」とあきらめ顔だ。「『ビール飲んで(尿で体外に)出しゃいいよ』って
感じですよ」

 ◇空気中線量高く機器測定不能に
 今月現場に入った作業員男性(34)は内部被ばくの検査態勢の不十分さを
懸念する。「周りのほとんどは検査を受けていない。特に20代の若手が不安
がっている」。東電は3カ月に1回の定期検査のほか、恐れのある時の随時検査
を定める。だが今月16日現在、検査したのは全作業員の2割程度の約1400人、
このうち結果が確定したのは40人にとどまる。最も高い線量を浴びた作業員は
240・8ミリシーベルトで、うち39ミリシーベルトは内部被ばくだった。

 東電によると、同原発のホールボディーカウンター4台は空気中の放射線量が
高すぎて正確に測定できず、使えるのは福島第2原発といわき市の東電施設、
柏崎刈羽原発の3カ所のみ。今後増設するとしているが、内部被ばくした場合、
作業に従事できないのが通例だ。県内のある下請け会社社長は「このままでは
福島の作業員が大量に失業する可能性がある」とも懸念する。
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110521k0000m040151000c.html
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明日に向けて(120) パレスチナとチェルノブイリ、そしてフクシマ

2011年05月21日 09時00分00秒 | 明日に向けて5月1日~31日
守田です。(20110521 09:00)

みなさま。当日、今日の午後の案内になってしまって大変、恐縮ですが、
午後1時30分より、京都大学で、日本中東学会年次大会初日が行われます。

一般公開イベントとして、〈ガザ〉をテーマにした朗読劇「The Message from
Gaza~ガザ、希望のメッセージ~」が上演され、そのあとシンポジウム「抵抗の
文学~世界文学の中のパレスチナ~」が開催されます。

朗読劇を行う「国境なき朗読者たち」を率いているのは、京都大学の岡真理さん。
自転車を送るプロジェクトなどで活躍してくれている先生です。僕の大事な友だち
の1人でもあります。「国境なき朗読者たち」も多くが僕の友だちで、わが連れ
あいの浅井桐子さんも参加します。

僕にはこのガザのこと、パレスチナのことと、チェルノブイリやフクシマのことが
非常に強く結びついていると感じているのですが、みなさんにどう紹介しようかと
考えあぐねているうちに今日になってしまいました。

一度だけ、練習を見に行ったことがあります。もの凄い迫力です。ガザに
加えられた攻撃の様子が、危機にさらされた命のうめきが、朗読によって
再現されていきます。

それを目をつぶって聞いていると、僕の中には、福島原発事故のシーンが
リアルに浮かんできました。結局、つながりは命の問題なのだと思います。
それが理不尽に危機にさらされていることへの憤り、告発が、パレスチナの
ことと、原発事故のことを僕の中で重ねあわさせます。

もし今からでも行ける方があれば、どうか朗読劇にお越しください。
僕もじっくりと聴いてきます・・・。

以下、ご案内です。

*****************

ガザ朗読劇&シンポジウムのご案内
5月21日(土)@京都大学
*******************************************
来る5月21日(土)、22日(日)、京都大学を会場に、日本中東学会第27回年次
大会が開催されます。
初日の一般公開イベントとして、〈ガザ〉をテーマにした朗読劇「The Message from
Gaza~ガザ、希望のメッセージ~」を上演、そのあとシンポジウム「抵抗の文学~
世界文学の中のパレスチナ~」を開催いたします。
入場無料、どなたでもご参加になれます。以下詳細です。

■日本中東学会第27回年次大会 一般公開イベント
[日時]2011年5月21日(土)
    13:30‐17:00(13:00開場)
[会場]京都大学 吉田南キャンパス 人間・環境学研究科棟地下講義室
キャンパスマップ:http://www.h.kyoto-u.ac.jp/access/
*東大路通りに面した西門から入って、グラウンドを左手に見ながら直進、
右手にある5階建ての建物の地下です。

■プログラム
□第1部 朗読劇
「The Message from Gaza~ガザ、希望のメッセージ~」
上演時間:90分
脚本・演出:岡真理(京都大学)
出演:国境なき朗読者たち(京都大学学生・京滋市民有志)

□第2部 シンポジウム
「抵抗の文学~世界文学の中のパレスチナ~」
パネリスト:
鵜飼 哲(一橋大学、フランス文学)
太田昌国(編集者、民族問題)
岡 真理(京都大学、現代アラブ文学)
細見和之(大阪府立大学、詩人・ドイツ思想)
司会:山本 薫(東京外国語大学)

■企画趣旨
「ナクバ」、すなわちパレスチナ人の民族浄化からこの5月14日で63年。イスラエル
では、パレスチナ系市民がこの日、「ナクバ」を記念することを禁じる法案が
先日、国会で可決されました。
2008年12月から翌年1月にかけてイスラエルによる一方的な破壊と殺戮に
見舞われ、依然、封鎖の続くガザは4月、再び大規模な攻撃に見舞われました。
ナクバは終わっていません。パレスチナの民族浄化は、形を変えて、現在なお
進行中です。

第1部では、「ガザ」をテーマにした朗読劇を上演します。
これは、ガザから外の世界に向けて発信された3つのテクスト(1.2008年‐2009
年のガザ戦争のさなかに、今そこで起きている破壊と殺戮の実態をメールで
証言したサイード・アブデルワーヘド教授の『ガザ通信』、2.パレスチナ人作家
ガッサーン・カナファーニーの短編小説「ガザからの手紙」(1956年)、3.2003年、
ガザでパレスチナ人の人権擁護活動中に殺されたアメリカ人女子大生レイチェル
・コリーさんのメール)をコラージュしたものです。
出演は昨年3月の広島公演に続いて「国境なき朗読者たち」。京都大学で
アラビア語を学ぶ学生有志と、京滋市民有志が熱演します。

第2部では、文学・映画・舞台など芸術表現にかかわりながら、現代世界と人間に
ついて深い思想的考察を展開されてきた3氏(ボリビアのウカマウ集団による
先住民をテーマにした映画制作にかかわってこられたラテンアメリカ研究の太田
昌国氏、ジャン・ジュネのルポルタージュ「シャティーラの4時間」の翻訳者でも
ある鵜飼哲氏、アドルノ研究者であり詩人でもある細見和之氏)をゲストに
お迎えし、文学的想像力を導きの糸としながら「パレスチナ」を「世界」に思想的に
接続します。
――――――――――――――――――――――――――――
[主催]日本中東学会
    京都大学大学院 人間・環境学研究科 岡真理研究室
[問合せ]075-753-9621(中東学会年次大会事務局、長岡)
     090-3948-5261(当日のみ)
――――――――――――――――――――――――――――
コメント (2)
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