明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(792)兵庫県篠山市ですすむ原子力災害への備え

2014年01月31日 07時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20140131 07:00)

すでに「明日に向けて(784)」でもご紹介しましたが、兵庫県篠山市で酒井隆明市長を先頭にした原子力災害対策の取り組みが進んでいます。
1月25日には、「篠山市民防災の集い~原子力防災フォーラム」が開かれましたが、消防団や自治会の方たちの積極的参加で、なんと300人の方が集ってくださいました。
この様子を、篠山市民で、原子力災害対策検討委員会委員でもある畑弘恵みさんがブログにアップされているのでぜひご覧ください。篠山の熱い取り組みが伝わるかと思います。

はぐたんのブログ
http://ameblo.jp/hug-star/entry-11753773084.html

この日は僕の講演の後に、原子力災害対策検討委員会に参加しているみなさんでのパネルディスカッションが行われたのですが、畑さんのブログの中で、消防団北山団長のこんな話が紹介されています。

「話の中でまちの消防団長の北山さんは、前任者からの引継ぎで当委員会へ出席した会のはじめは原子力防災への意識が薄く委員として自覚もなかったのが、会議終了時には「俺がやらなあかん」という高い意識で篠山市消防団のトップとして団員の安全を考えながら1220名の団員を強く導かれています。」

実はこれはパネルディスカッションのコーディネーターを務めさせていただいた僕が振ったお話でした。
というのは、昨年4月に新たに消防団長になられた北山さん。初めて「原子力災害対策検討委員会」に参加されたとき、「これなあ、次回から代理を出してええか?役がたくさんあってなあ、ぜんぜん追いつかへんねん」とおっしゃったのです。
僕がそのときの話をすると北山さん、「前任者から詳しい説明を受ける間もなく会議に参加すると、原子力災害対策関係の分厚い書類が並んでいて、とてもこれを読んで、参加を続けることは無理だと思った」と語ってくださいました。

ところがその日の原子力災害対策検討委員会の会議の話を聞いているうちに、北山さんの委員会への姿勢がどんどん変わっていかれました。次第に体を乗り出し、「これは消防団が一番知らなあかんことや。本気でやらなあかん」と語られ、目が輝きだした。
それで会議が終わるころにはすっかり前向きになり、どんどん質問もだし、自らが積極的に担っていくと語ってくださったのです。

その後、北山団長さん、「守田さん、うちの隊員たちに放射能が来たらどうしたらいいか教えたってくれ」と語られ、消防団班長級以上250人を集めた講演会を開催してくださいました。昨年9月19日のことです。
以下からその様子を見ることができます。

消防団原子力防災研修会
篠山市役所ホームページ 2013年09月19日
http://www.city.sasayama.hyogo.jp/pc/group/bousai/cat3/post-85.html

もちろんこうした取り組みは、篠山市役所が力を入れる中で進められてきたもの。市役所のみなさんも6月30日に職員の多くが集って下さり、僕の講演を聞いてくださいました。
以下、丹波新聞の報道です。昨年6月30日のことです。

原子力災害に備えよ 全職員に研修始める 篠山市役所
丹波新聞2013年06月30日
http://tanba.jp/modules/news/index.php?page=article&storyid=1635

篠山市で行われた防災訓練の様子も以下から見れます。土砂災害避難訓練に、原子力災害対策のレクチャーを加えた試みです。
ぜひビデオをご覧になって「感じ」をつかんで下さい。ちなみにこのビデオクリップを作成してくださったのは舞鶴の田中ユージさんです。
http://www.youtube.com/watch?v=2dj3GOhE21k&feature=youtu.be

この取り組み方はとてもいい。というのは災害対策には共通の重要ポイントがあるからです。災害全般への心得を学んだ上で、水害対策、原子力防災対策と進むことが可能であり、そのためには通常の災害訓練に、原子力災害対策の講演を重ねるのがベストです。ぜひ各地で取り組んで欲しいです。

さて篠山市では2月にさらに4回も講演をさせていただきます。そのうちの2回、2日と22日は、篠山市の西紀地区と丹南地区での人権教育研究大会での取り組みです。地域の自治会の方たちが中心になられています。
このお知らせを末尾に貼り付けておきます。

またこの他に実は今日31日に、若手の市会議員さんに呼んでいただき、関西若手市会議員の会の方たちに、原発と防災のお話をさせていただきます。残念ながらこれはクローズドな会です。
さらに13日と20日夜、午後7時半から、篠山市立丹南健康福祉センターで、放射線防護に関する講演も行います。

お近くのみなさま。ぜひそれぞれの催しにご参加ください!
また多くのみなさまに、篠山市での取り組みにご注目をいただきたいと思います。
僕も原子力災害対策検討委員会の一員として、持てる力を振り絞って、篠山市民、いや多くのみなさんの命を守るために頑張ります!

以下、催しの案内を貼り付けます。

******

西紀のつどい(西紀人権・同和教育研究大会)開催要項

(趣旨) 
東日本大震災の発生からまもなく3年が経過しようとしています。この震災では多くの被害が発生し、原子力発電所の安全神話が崩壊しました。原発災害は、篠山市に住む私達にとっても他人事ではありません。
また、平成25(2013)年は、気候の変動が激しく、篠山市では多くの水害が発生しました。
原発災害、自然災害が身近な問題となってきている近年、未来を担う子ども達と私達の大切な命を守るため、また、安心で安全な地域の構築をめざし、本大会を通して、知識と手法を考えます。

1、日 時 平成26年2月2日(日) 13:30開会(13:00受付)             
2、会 場 西紀老人福祉センター (2階 教育ホール)
3、内 容 (1) 人権作文朗読 西紀中学校 生徒
            (2) 講演:『水害・原子力災害についての心得』/ 講師:守田 敏也 氏
4、参加者  西紀住民約100名
自治会長、人権のまちづくり推進員、人権啓発推進員、学習推進員
民生委員・児童委員、まちづくり協議会(代表者)、人権擁護委員
5、主 催  西紀自治会長会
  共 催  篠山市 篠山市教育委員会 篠山市人権・同和教育研究協議会
       柏原人権擁護委員協議会篠山地区委員会

時間 スケジュール  
12:30 会場準備 地区自治会長3名 地区職員会3名 人権推進課       
13:00 受付 人権推進課
13:30 開会 (司会)西紀自治会長会 西田武司 副代表
  開会あいさつ 西紀自治会長会 宇杉敬治 代表
  共催あいさつ 人権推進課
13:45 人権作文朗読 西紀中学校 生徒
14:00 講演 守田敏也 氏 (フリージャーナリスト)
15:30 質疑応答  
15:40 閉会あいさつ 篠山市人権・同和教育研究協議会


丹南人権教育研究大会開催要項

1、日 時  平成26年2月22日(土) 13:30開会 (13:00受付)                  
2、会 場  篠山市立丹南健康福祉センター(2階 研修室)
3、内 容   講演:『水害・原子力災害についての心得』/ 講師:守田 敏也 氏
4、参加対象  丹南地区
自治会役員、人権のまちづくり推進員、人権啓発推進員、学習推進員 人権擁護委員

5、主 催  丹南人権教育研究大会実行委員会
  共 催  篠山市 篠山市教育委員会 篠山市人権・同和教育研究協議会
       柏原人権擁護委員協議会篠山地区委員会

時間 スケジュール  
12:30 会場準備 自治会長会代表 丹南地区職員会 人権推進課       
13:00 受付 人権推進課
13:30 開会 (司会)味間地区自治会長会 会長 波多野 恭守
  開会あいさつ 実行委員長 西潟 弘
  共催あいさつ 人権推進課
  来賓あいさつ 丹南地区在住篠山市議会議員 代表
13:40 講演 守田敏也 氏 (フリージャーナリスト)
15:10 質疑応答  
15:30 閉会あいさつ 篠山市人権・同和教育研究協議会

 

 


 

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明日に向けて(791)「明日に向けて(788)(789)」の記事への細川弘明さんからのご指摘と記事修正のお知らせ

2014年01月30日 19時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20140130 19:00)

みなさま。
京都精華大学の細川弘明さんより、「明日に向けて(788)非常に危険な福島4号機プール燃料取り出し作業が現在も進行中!注視を!(上)」について、全体の主旨には同意いただけるもの、細かい点で気が付いたことがあるというご指摘をいただきました。
どの点も非常に納得がいきましたので、ブログ・HP上の文書はすでに正しく書き直し、修正を加えたことのみ明記しましたが、非常に示唆に富んだご指摘ですので、みなさまにもご紹介したいと思います。
なお、今回のご指摘で、僕の原子炉構造への理解がまだまだ欠けていることが分かりました。とくにシュラウドの理解ができていませんでした。みなさんに誤った内容をお送りしてしまったことをお詫びします。さらに頑張って知識の向上に努めます。細川さんには大感謝です!

以下、守田の初校と、細川さんのご指摘を並べましたのでご覧下さい。とくに僕はシュラウドをめぐるくだりを読んで、目からうろこが落ちる気がしました・・・。

守田初校
ちなみに燃料棒とは、正確には直径1センチ、長さ4メートルに、ウランのペレットを積み上げたものです。ジルコニウムという金属で覆われています。
使用済み燃料棒とはウランの核分裂反応が終わり、核分裂生成物=放射性物質がたくさん生まれている状態の燃料棒のことです。
 
細川さんの指摘
●「核分裂反応が終わり」といってしまうと、もう核分裂しないように誤解されますので、「原子炉内で、核分裂反応が一定程度すすんだために、ウランの一部がさまざまな種類の核分裂生成物(=死の灰=放射性物質)に変化した状態の燃料棒」くらいの書き方のほうがよいかもしれません。
使用済み燃料であっても、通常の燃焼度のものであれば未分裂のウランが相当多く残っていますから、メルトダウンして再臨界して核分裂反応が再開する恐れがあります。


守田初校
1号機や3号機が、原子炉の上にあるオペレーションフロアで爆発が起こったのに 対し、その下の階での爆発でした。
 
細川さんの指摘
●1号機については、オペフロ(5階)のひとつ下層(4階、ICの階)で最初の爆発がおきた可能性が高いです。

守田初校
なぜかというと、4号機は原子炉を覆っているシュラウドというカバーのような部品の点検・交換が予定されていたのでした。このシュラウドも繰り返し損傷が発見されてきた問題部品なのですが、そのため原子炉の中に水がはってあり、上部の原子炉ウェルも水で満たされていました。
 
●シュラウドは、原子炉(圧力容器)の内側の構造物です。炉心を覆うかたちで配置されていますが、原子炉を覆っているわけではありません。
沸騰水型炉(BWR)では炉水が炉内で沸騰するため、その気泡のサイズと移動をコントロールする(大きな気泡が偏在すると中性子が減速されず核反応が暴走するので、それを避ける)ためにシュラウドのような内釜を設置して冷却水の流れに制限を加えています。
これがあるために、鉛の粒を投入しても炉底のデブリまたは炉底をメルトスルーしたデブリに到達する前に炉内でひっかかってしまうので、金属による冷却という絶妙の方法が使えません。
もう少し正確に書くと、現在の冷却水注入系統だと、鉛の粒はシュラウドの外側(圧力容器の壁とシュラウドのあいだ)に入ってしまい、そこで沈殿してしまうことになるようです。沈殿しなくても、再循環系をぐるりとまわってからでないと炉心(シュラウドの内側)に到達しないので、それまでのどこかでひっかかってしまう)

***

なお同じく(789)にも以下のようなご指摘をいただいています。
この点も重要ですので、みなさんにご紹介します。

守田オリジナル
また作業時に繰り返される余震が重なった時もハイリスクです。地震の揺れによって燃料集合体がラックにひっかかったり破損してしまう可能性もある。
もっと危険視されているのが、燃料集合体で満杯になったキャスクを吊り上げて、トラクターに降ろす時に地震に見舞われること 。東電はクレーンを二重にしてあるので大丈夫だと言っていますが、東電の「大丈夫」はまったく信用がおけません。
 
細川さんの指摘
●書いておられることは、その通りなのですが、同じ作業は、通常の原発で定検のたびにおこなわれている(しかも二重クレーンではない!)ので、4号炉プールからの燃料回収の技術的難度と危険性をあまり強調するのは、どうかなと思います。
1~3号炉については、技術的難度がきわめて高く、また、4号炉と違って建屋の耐震補強がなされていませんから、そちらの危険性はきわめて高いと思います。
防災体制なしで進めてよい作業ではない、という守田さんの主旨には賛成です。

これに対しては以下のようにお答えしました。結果的に修正は入れていません。

守田の回答
細川さんのご指摘になるほどとは思うものの、通常の交換と比べて、プール内のがれきが多いことや、いったん上に吊り上げて、地上まで降ろすため、高さがかなり高くなる点など、やはりより危険性があるとはいえるのではないでしょうか。
文章の訂正がしにくいことからも、この点はそのままに残させていただきたいと思いますがいかがでしょうか?
ただし必要以上に危険を強調すると、かえって論理的説得力が失われていくわけで、今後、この点を論じるときは、 細川さんのご意見を頭に入れて、トーンを調整しようと思います。

細川さんのご返事
●高さも通常の交換と同じでは? 大飯の燃料棒交換なんかは、もっと落差があると思います。(「だから安全だ」とは言いませんが。)
もちろん細かながれきが隙間に入り込んでいるのは気懸かりです。
文章については、間違いというわけではないですから、守田さんのご判断でよいと思います。

***

細川さん、ありがとうござました!

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明日に向けて(790)福島医大に小児腫瘍科 県内で初めて開設へ・・・放射線防護活動の強化が問われている!

2014年01月29日 21時38分28秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20140129 21:30)

今日2つ目の記事の投稿になりますが、何とも言えない情報をキャッチしましたので、とりあえずお知らせします。
表題のように福島医大に小児腫瘍科新設だそうです。

当然、作ってもらわねば困るし、どんどん診察と治療を進めるべきなのですが、一方で怒りと悲しい気持ちが沸いてきます。
福島医大は、当然と言うべきか、事実をつかんでいるのでしょう。僕などよりももっと正確に。それを徹底して隠しつつ、対応を進めている。

ともあれ放射線防護活動の強化が問われています。猶予なしに・・・。

以下のニュースをお読みください。

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福島医大に小児腫瘍科 県内で初めて開設へ
福島民友20140129
http://www.minpo.jp/news/detail/2014012913584

 福島医大は平成26年度、同大付属病院に小児がんの治療に特化した新たな診療科「小児腫瘍科」を開設する。小児がん専門の診療科の開設は県内の医療機関では初めて。
 福島医大によると、小児腫瘍科は現在ある小児科から独立する形で開設する。入院患者の治療のほか、外来診療にも対応する。
 福島医大は東京電力福島第一原発事故からの復興に向けた先端医療、放射線医学の研究、開発を進める拠点「ふくしま国際医療科学センター」を整備し、平成28年度の運用を目指している。将来的には、小児腫瘍科をセンターに組み込む計画で、県内の小児医療の高度化を加速させる。
 同病院には現在、高水準の技術を持つ小児がんの医療チームがあり、これまでも県内外から患者を受け入れてきた。原発事故発生後、住民の間で放射線による健康影響に不安が高まっていることが開設の背景にある。

***

医大病院に小児がん科新設へ 福島
20140128NHKニュース 動画
http://www.dailymotion.com/video/x1ah9pm_20140128%E5%8C%BB%E5%A4%A7%E7%97%85%E9%99%A2%E3%81%AB%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%8C%E3%82%93%E7%A7%91%E6%96%B0%E8%A8%AD%E3%81%B8-%E7%A6%8F%E5%B3%B6_music

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明日に向けて(789)非常に危険な福島4号機プール燃料取り出し作業が現在も進行中!注視を!(下)

2014年01月29日 09時30分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20140129 09:30)

福島4号機からの燃料棒(燃料集合体)取り出し問題の続きです。
前回は4号機プールがいかに危険な状態にあるかに焦点をあてましたが、今回は取り出し作業にまつわる困難性と、他の原子炉の燃料プールのことを論じたいと思います。

危険な4号機プールからの燃料集合体の取り出しが、なぜ2年以上も経って始められたのかですが、一番大きな要因は、もともと燃料交換に使うクレーンのあったオペレーションルームが爆発でなくなってしまったことです。
東電はそのため、4号機の壊れたプール上部を撤去したのち、その上に覆いかぶさるさらに巨大な建屋を作って、新たなクレーンを設置しました。その作業に昨年の秋までかかりました。
さらに燃料プールの中にも無数のがれきが落ち込んでしまっているため、その撤去にも時間がかかりました。がれきは燃料集合体を引き上げる際に、集合体とそれを収めてあるラックの隙間に入り込んでしまい、燃料集合体を引き抜けなくさせる可能性があるからため、細かいものの撤去も必要でした。
これらの作業を終えたのちに、ようやく引き抜き作業が始まりましたが、昨年11月18日から本年1月27日まで、行われたのはわずかに10回。ここまで71日かかっていますから、1回あたりの平均日数として7日かかっていることになります。

なぜゆっくりと作業が行われているのか。一番のポイントは、前にも述べたように燃料棒は空気中に出ると高線量の放射線を発して周辺の作業員を即死させてしまうため、万が一にも水から出ないように慎重に作業を進めないといけないからです。
またがれきもすべてを撤去できたとは言えず、細かく、隙間に入り込みやすいものほど取り除けていません。そのため引き上げ最中に燃料集合体がラックにひっかかってしまう可能性は今も残っており、このためにも作業をゆっくりと進める必要があります。
取り出しと移送そのものも、まずはキャスクと呼ばれる鋼鉄と鉛でできた容器をプールの中に沈め、水の中で燃料集合体をキ入れたのちにプールから取り出し、ふたを閉めて地上に降ろして専用トラクターに積載、地上の共用プールに運ぶという工程を経ています。
これらの一つ一つも慎重に行わなければならないため、1回あたりの取り出しと搬送に7日間がかかっているのです。

作業はこのまま順調に行くのでしょうか。心からそう願いたいですが、東電も燃料集合体にがれきがひっかかるリスクがなおあることを明らかにしています。
しかしリスクはもっとたくさんあります。そもそもがれきがたくさん落下したプール内の燃料集合体が破損したり変形していないかです。思った通りに抜けなかったり、キャスクの中に納まらない可能性が考えられます。
また作業時に繰り返される余震が重なった時もハイリスクです。地震の揺れによって燃料集合体がラックにひっかかったり破損してしまう可能性もある。
もっと危険視されているのが、燃料集合体で満杯になったキャスクを吊り上げて、トラクターに降ろす時に地震に見舞われること。東電はクレーンを二重にしてあるので大丈夫だと言っていますが、東電の「大丈夫」はまったく信用がおけません。

元東芝の格納容器設計士、後藤政志さんはキャスクがもっとも高い地点である30数メートルからの落下に耐えうる保障(実験データ)がないことを問題として指摘しています。
これまでの試験では10数メートルの落下に耐えうることしか確認されておらず、作業のあり方として問題だと言うのです。まずは落下に耐えうることを実証してから行うべきだということです。
万が一、キャスクが落下し、破損した場合はどうなるか。22体もの燃料集合体が大気中に飛び出してきてしまい、すぐに高熱を発しだして、現場に近寄れなくなってしまいます。最悪の場合、そのまま4号機への対応が不可能になる可能性があります。
燃料集合体は残りは1313体。22体ずつ入れていくとして、あと60回はこの作業が必要になります。その長い間、地震がまったくないとは考えられません。非常に危険な状態が続くのです。

ではこの1313体の燃料の取り出しが仮にうまくいけば、私たちの直面している危機は去るのでしょうか。そうではありません。続いて1号機から3号機のプールからも燃料を取り出さねばなりません。
4号機は1号機から3号機に比較すると放射線値が低く、被曝をしながらですが作業員がプールにまで近づくことができます。ところが炉心の核燃料がメルトダウンしている1号機から3号機は建屋の中に入ることすらできないのです。
この1号機のプールに392体、2号機プールに615体、3号機プールに566体の燃料集合体が収まったままです。合計では4号機のプールに当初あった1535体を超える1573体がまだ取り出しを待っている状態なのです。
1号機も3号機も大きな爆発を起こしています。とくに3号機は火花と黒煙をあげ、構造物を空高く舞い上がらせる、規模の大きな爆発を起こしました。即発臨界爆発の可能性が考えられていますが、建屋へのダメージは計り知れません。しかも放射線値が高すぎて、補強工事も容易にできない状態です。

問題はまだあります。実は震災前から1号機の中に70体もの破損した燃料体が沈められたままになっていたというのです。取り出しを開始した4号機にも3体、2号機に3体、3号機に4体、合計80体がもともと破損していたといいます。
1号機ではプール内にある使用済み燃料292体の4分の1に相当する量ですが、当然にもこれらの取り出しには相当な困難が予想されます。それをメルトダウンした核燃料の発するものすごい値の放射線に晒されながら行わなければなりません。当然にも遠隔操作になるでしょうが、果たしてそんな技術はあるのでしょうか。
さらにこれらの作業を終えて、プールからすべての燃料を取り出せても、取りあえず移す先はこれまた水をはった共用プールです。ここには震災以前から6375体もの燃料集合体が集められています。大変な数です。ここもけして安全と言える状態ではなく、いずれ水を必要としない封じ込めに移していく必要があります。
そしてこれらプールの問題をすべてクリアしても、なおかつ1号機から3号機の下部には、メルトダウンした核燃料が残っているのです。これの撤去、ないし完全な封じ込めまで、安全の確保はなされないのです。

本当にもの凄く長い時間、私たちは危険と向かい合い続けなくてはなりません。それが厳然たる事実です。技術的に未知な世界もたくさんあります。また、今、把握できていない問題もたくさんありえます。しかしこれらに「失敗を通じて学ぶ」という技術発展の常識の通用しない世界で、パーフェクトに対応していかなければならないのです。
これらをきちんと見据えるならば、どこかで失敗が起こる可能性を想定しない方が非常識であることは誰にも分かることだと思います。だからこそ、繰り返し述べてきているように、燃料抜き取り作業は、広域の避難態勢の確立と、避難訓練の実施と並行でなされなければならないのです。
こうした社会的ムーブメントを作るためにも、ぜひ個人レベルで避難準備を始めてください。また各地の行政に、避難態勢の整備と避難訓練の実施を呼びかけてください。そのことで危機に向き合う緊張感を作り出すことこそが何よりも大切であり、かつ今できる具体的なことです。
またこのような危機を前に東京オリンピックなど論外であることも、繰り返し訴え続ける必要があります。そんな資金は、当然にもすべて福島原発サイトと原発事故被災者への補償ないし支援に振り向けるべきです。

福島4号機プールからの燃料取り出しをめぐる情報も、このように私たちのなすべきことにつなげる形で読み解くべきだと僕は思います。以上を踏まえ、4号機のウォッチを続けます。

連載終わり

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明日に向けて(788)非常に危険な福島4号機プール燃料取り出し作業が現在も進行中!注視を!(上)

2014年01月28日 20時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20140128 20:00)  (20140129 20:00 一部修正)

東京都知事選が進行しています。僕は宇都宮さんを支持しますが、しかしこの都知事選で、福島原発の今があまりにも危険であること、東京でオリンピックをやる余裕など私たちの国にはまったくないということが焦点化されていないのが残念です。
そのため敢えて今、福島3号機の現状を記事にしましたが、今回は続いて福島4号機燃料プールのことを論じたいと思います。現在もものすごく危険な作業が進行中だからです。

燃料棒、正確には燃料集合体の取り出しが始まったのは昨年(2013年)11月18日のことです。
1回あたり22体の燃料集合体が4号機のプールから取り出され、地上の共用プールに移されていますが、東京電力によれば今年の1月27日までに10回の移送作業が行われたそうです。
移送された燃料集合体は、使用済みのものが全体で1331体のうち198体。まだ使われていなかった新燃料が202体のうちの22体。合計で1533体のうち220体の移送が終わったと報告されています。このため現在、燃料プールの中に残っている燃料集合体は1313体であることになります。

この情報は毎週月曜日に更新されるそうです。情報元を記しておきます。
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/removal4u/index-j.html

ちなみに燃料棒とは、正確には直径1センチ、長さ4メートルに、ウランのペレットを積み上げたものです。ジルコニウムという金属で覆われています。
使用済み燃料棒とはウランの核分裂反応が進み、核分裂生成物=放射性物質がたくさん生まれている状態で、それ以上、発電には使われなくなった燃料棒のことです。使用済みといってもまだ核分裂性のウランは残っています。
この燃料棒を8列かける8列に並べたものが燃料集合体ですが、この集合体のことを「燃料棒」と呼んでいることもあります。これが1533体ないし本あったというわけです。
ちなみに京大原子炉実験所の小出裕章さんの計算では、4号機プールの燃料棒に封印されているセシウム137の量は、広島原爆が撒き散らしたものの1万4千倍だそうです!

さてここでこの燃料集合体の移送はなぜ行われているのか、同時にどのような危険性があるのか、もう一度振り返っておきたいと思います。

2011年3月11日に大地震と津波が福島第一原発を襲ったとき、4号機は不幸中の幸いというべきか、定期点検中で運転しておらず、1号機から3号機のようなメルトダウンを免れました。
その代りに炉心の中の燃料はすべて燃料プールに移されていました。このため大量の使用済み燃料がプールの中にひしめいてる状態で事故に直面し、しかも運転中ではなかったにもかかわらず爆発を起こしました。
3号機が原子炉の上にあるオペレーションフロアで爆発が起こったのに対し、その下の階での爆発でした。
東電は3号機から発生した水素が、ベントの際に4号機の建屋の中に入り込み、爆発にいたったと発表していますが、爆発の原因は今もって不明です。

さらにこのとき4号機の水が抜け出してしまいました。使用済み燃料は空気中に出てしまうと、すぐに近くにいる作業員が即死してしまうほどの放射線を出し、大変危険な状態でした。
どれぐらいの量が抜けたのかも不明です。当時、アメリカなどで、4号機プールにはほとんど水が残ってないのではないかという憶測が繰り返し出されていました。
この点でも真相は分かりませんが、最終的にはまったくの偶然の産物で最悪の事態は免れました。
当時、4号機はプールに隣接している原子炉上部(原子炉ウェル)にまで水がはってあり、その水が燃料プールとの仕切り板を破ってプールに流れ込んだため、水が完全に干上がって燃料が溶け出し、抜け落ちてしまう悪夢の階梯が途中で止まったのです。

なぜかというと、4号機は原子炉圧力容器内に炉心を覆う形に配置されている「シュラウド」という部品の点検・交換が予定されていたのでした。このシュラウドも繰り返し損傷が発見されてきた問題部品なのですが、そのため原子炉の中に水がはってあり、上部の原子炉ウェルも水で満たされていました。
シュラウドも大量の放射線を発するため、水の中で切断・分解して取り出すためでしたが、この作業の終了予定が3月3日とされていて、順調にいけば7日には水が抜かれる予定になっていたのです。
ところが道具の不具合などがあって作業が遅延し、水抜き作業が遅れたまま4号機は事故に直面しました。このことによって原子炉ウェルに水が大量に残っており、結果的に燃料プールに流れ込むことで、悪夢が途中で止まったのです。東電が止めたのではなく、偶然に止まったのでした。
もし作業が予定通りに進んで水が抜かれていたらと思うとぞっとします。1500体以上もある燃料集合体が高熱を発しながら、抜け落ちていくことになっただろうからです。

この点については以下の記事が参考になります。
震災4日前の水抜き予定が遅れて燃料救う 福島第一原発4号機燃料プール隣の原子炉ウェル 奥山 俊宏(おくやま・としひろ)
法と経済ジャーナル2012/03/08
http://judiciary.asahi.com/articles/2012030800001.html

燃料溶解が止まらなかったら実際にはどうなっていたのか。たちまち高線量の放射線が発生して現場は撤退が余儀なくされ、1号機から4号機までがすべて手当できなくなってしまいます。当然にも次々と原子炉が崩壊し、膨大な放射能が発生します。
2011年3月25日に当時の近藤原子力委員長が政府に提出した「近藤シナリオ」によれば、半径170キロ圏が強制避難、東京を含む250キロ圏が、希望者を含んだ避難地域になるところでした。3000万人が避難対象でした。東日本壊滅が予想されましたが、これとて甘い被害想定ではなかったか僕には思えます。

この点について詳報した過去記事を紹介しておきます。
明日に向けて(389)4号機が倒壊したら、半径250キロまで避難の必要が・・・ 20120125
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/b0af865e4de2a836139cfc49cd5583e6

明日に向けて(765)福島原発事故の最悪シナリオは半径170キロ圏内強制移住!250キロ圏内避難地域! 20131119
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/9b867ac64be3b5c0492b5626806e9070

爆発によって吹き飛んだのは燃料プールが埋め込まれているフロアでした。このため燃料プールを支えている床が崩壊してしまいました。プールは宙吊り状態になってしまったのです。
このため事故の破局的進行が途中で止まった段階で、東電は補強工事をはじめました。プールの下から鋼鉄製の柱を立ててコンクリートで固めたのです。しかし作業はあまりの高線量の中でのもの。どれほどの強度が出ているか分かりません。
しかも床が壊れているので、プール全体をきちんとしたから支えられているわけでもありません。そのためプールは今なお非常に不安定な状態にあるのです。
それが4号機のプールの燃料集合体の、より安全性の高いところへの移送が急がれている理由ですが、この作業を途中で失敗すれば、それ自身が事故の拡大に直結する可能性があります。もの凄く危険な作業ですが、それでもやらざるを得ない。今、私たちの命は、まさに綱渡りの上にあるのです。

続く

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明日に向けて(787)東電は福島3号機のことを何ら把握できていない!政府はこれを直視し明言すべき!

2014年01月24日 23時30分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20140124 23:30)

福島3号機に関する記事の続きです。
今回、3号機の床に非常に濃度の高い汚染水が確認されたのは18日ですが、その後、21日に東電は、再度のロボットによる確認で流量が大幅に減ったと発表しています。
しかしこのことで事態はますます分からなくなっています。東電は、核燃料を冷却して汚染された水が、格納容器の配管から漏れ出ていると発表していたのですが、それではなぜ今回、急激に減少したのか説明がつかないからです。
確認されていなかった汚染水が流れ出したことにも、それが急に減少したことにも、把握できていない何らかの状態が背後にあることが十分に考えられます。

そもそも東京電力は、肝心の核燃料が、どの辺に存在しているのかさえ、的確につかめてきていません。というのは、東電は長い間、3号機の核燃料は、一部はメルトダウンして漏れ出したものの、大半は圧力容器内部に残っていると判断していたのです。
ところがこの旧来の見解が、昨年12月13日の発表によって大きく変えられました。ほとんどが溶け落ちてしまっているというものにです。

東電の記者会見の様子を報道したANNのNEWS番組をご紹介します。
http://www.youtube.com/watch?v=8D7tLXKj-ww

ニュースで触れられているように、東電が見解を変えたのは、事故直後に行われた消防車による冷却水の注入が、これまでは炉心に届いていると思われていたものの、別の配管に入り込んでほとんど炉心に到達していなかったことが分かったからです。
実際に燃料の状態を調べた上での見解ではなく、どうも水が届いていなかったらしいということから、シミュレーションを変えて、燃料のほとんどが溶け落ちたことを推定しているのでしかない。
現実の燃料の状態は、放射線量が高すぎて確かめようがなく、推定に頼るしかないわけですが、今回のように前提が変われば、当然にもまた判断が大きく変わることになります。

しかもこの注水がうまくいってなかったという判断自身も、2012年6月に東電が事故調査報告書を出したものの、未解明なものが多いとして調査項目にあげてきた52項目のうちの10件の分析結果としてやっと発表されたものの一つです。
つまり東電自身があげた未解明点だけでもまだ42項目もある。それをあと2年かけて解き明かしていくというのですが、本当にまだまだ分からないことだらけなのです。
そしてだからこそ明らかなのは、現在、3号機がどのような危険を抱えているのかも、皆目見当がつかない状態にあるということです。何よりもこの点が重要です。

実際、昨年7月に3号機上部から水蒸気が発生しだしたときも、東電は理由が分かりませんでした。現在も同じです。炉内の床に大量の汚染水が流れているのが分かっても、なぜ、どこから流れてきているのかも分からない。
それが急に少なくなっても、その理由も分からない。謎だらけ。把握できないことだらけです。

政府が直視すべきなのは、何ら原子炉の実態が把握できていない、この極めて厳しい現状です。何度も言いますが、コントロールできているとかいないとかそんなレベルではありません。
もの凄く危険な、溶け落ちてしまった核燃料の状態が、皆目、分からないのです。それでつい一月前までは、ほとんどが圧力容器の中にあると言っていたのに、突然、ほとんど落ちていたに変わってしまった。

当然ですが、ほとんどが圧力容器の中にあるほうが、落ちてしまった状態よりずっとましです。圧力容器と、格納容器と二つの容器の中にまだあることになるからです。
しかしどうもそうではなかった。つまり想定していたより、ずっと危なかったということです。しかしこれまで東電は、より危険性が低い判断をしていた。それが事故後、2年9か月も維持されてきたのです。

だとするならば、当然にも、今も把握されていない危険性がたくさんあることが予見されます。だからこそ、危機に備える必要があるのです。現状の悪化への備え。いざというときの避難体制の確立を中心とした対応策を積み上げることです。
にもかかわらず政府はこの危機を直視しようとしない。いやできないのでしょう。危機を直視する精神力に欠けているからです。今の政府には、この国に住まう人々を本当に守ろうとする気概と責任感が著しく欠けているのです。
これに対して私たちは、あくまでも危機を直視し、避難体制を民衆の手で、下から作り出していく必要があります。災害心理学に言う「正常性バイアス」にかかったこの国の状態を変える事こそが、たくさんの命を守るために最も必要なことです。

ちなみに東京都知事選が華々しくスタートしていますが、残念ながら、この福島原発の危機が、選挙の争点に挙げられていません。
もちろん、極端な右傾化を強める安倍政権の暴走は食い止めるべきですが、しかし私たちは同時に、あるいはそれよりも、日本にとって、世界にとって、まったく状態すらつかめていない福島原発の存在そのものがものすごい脅威であることを忘れてはなりません。

どの候補も、東京オリンピック反対を掲げたら、それだけで票が取れなくなってしまうのかもしれませんが、それでも僕は、こんな危険な原発を抱えた日本で、オリンピックなどやるべきではないという声を東京から上げて欲しいです。
いや選挙でそれが争点にならない限り、他ならぬ僕自身が、例えどれほど小さな声に過ぎなかろうとも、「オリンピックどころの話ではない。そんな予算があるのなら、すべてを福島原発事故の真の収束に使うべきだ!被曝対策、避難や治療に使うべきだ!」と言い続けようと思います。

福島3号機をめぐる情報は、このように読み解くべきだと僕は思います。この視点に立ち続けた原発のウォッチを続けます。


 

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明日に向けて(786)福島3号機の床に出どころ不明の超高濃度汚染水が!

2014年01月23日 16時30分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20140123 16:30)

福島3号機の建屋の床にものすごい濃度の放射能汚染水が流れていることが、18日に東電によって発表されました。
ストロンチウムなどのベータ線を出す放射性物質が、なんと1リットルあたり2400万ベクレルも確認されています。
汚染水は、セシウム134も70万ベクレル、セシウム137は170万ベクレル確認されており、あわせて240万ベクレルのセシウム値を示しています。

これを報じたFNNのニュース映像をご紹介しておきます。
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00261568.html

最も重要な点は、この汚染水の正体、どこから流れてきているものかが分からないことです。
つまり福島3号機の中で、何が起こっているのかよく分からないということ。当然にもどのような危険があるのかもつかめていないということです。

これに対して東京電力は、3号機に投入している冷却水の温度が約7度であることに対して、この汚染水の温度が約20度であることから、核燃料を冷やした後の汚染水が、格納容器から漏れているという分析を発表しています。
残念ながら、ほとんどのマスコミが、この東電の分析をそのまま伝えているだけです。読売新聞などは、さらに東電の言葉を以下のように付け加えて、あたかも問題が小さいかのように表しています。
「これまで3号機の建屋地下では、汚染水がたまっていることが確認されているが、1階で見つかったのは初めて。1階では、廃炉に向けて、がれき撤去が進められているが、ロボットを使った遠隔作業のため、当面、障害になる恐れは小さいと説明している。」

これに対して、より優れた分析を出しているのは東京新聞です。東京新聞はまず問題をいかのように捉えています。
「建屋の床には本来、水がないはずで、これまで判明していない何らかの異常があることの証しだ。」

その通り!問題は、これまで判明していない何らかの異常がある可能性が極めて高いことです。

その上で、東京新聞は、以下のように分析を続けています。

***

原因として考えられるのは、冷却水が格納容器内の核燃料にまで届かず、途中で漏れていること。雨が建屋に流れ込むことも考えられる。しかし、どちらの水だとしても、床を流れる汚染水ほどの放射性物質を含んでいない。最近は、まとまった雨も降っていない。
使用済み核燃料プールの水は、セシウム濃度がほぼ一致する。問題は位置が離れていること。汚染水が見つかった場所からみると、プールは格納容器の向こう側になる。プールの水位にも大きな異常はない。
ほかに可能性があるのは、溶け落ちた核燃料を冷やした後の高濃度汚染水が、格納容器の損傷部分から漏れていること。東電はこの見方を取っている。しかし、容器からの汚染水なら、もっと高濃度の放射性物質を含んでいるとみられる。
しかも、水は隣接するタービン建屋側から格納容器に向かって流れている。格納容器からの漏出なら、流れは逆のはずだ。

***

優れた分析だと思います。ただし、きちんと分析する気になれば、おのずと見えてくるような分析でもあります。他の新聞社がこの当たり前の作業を放棄してしまっていることが問題です。

ポイントは、確かに床の汚染水が、冷却のために投入されているものよりも高温であることを考えると、核燃料の持つ熱を何らかの形で吸収していることが考えられるわけですが、しかし流れが、タービン建屋から格納容器方向である点です。
これが、格納容器からのものとは、推論しにくくさせている。どこか他から、水が回っている可能性や、まったく把握されていないところの破断によって、汚染水が出てきている可能性もあるわけです。
ともあれ判明していない異常があるのです。にもかかわらず、東電は「当面、障害になる恐れは小さい」と説明しており、それを読売新聞がそのまま垂れ流しています。

私たちがつかまねばならないのは、福島3号機、いや1号機、2号機と、メルトダウンして燃料が原子炉圧力容器から漏れ出してしまっているこれらの原子炉は、まったく実態が把握できていないということです。
安倍首相は、東京五輪招致演説で、福島原発はコントロールされていると大嘘をつきましたが、実態はコントロールされているか、されていないかの以前の段階です。現状が把握できていないのですから。

しかしこの事態を直視せず、原因も分からないのに「障害になる恐れは小さい」などと繰り返すあり方が、私たちの前に依然としてある大きな危機をより強めているのです。
このことこそが問題の核心です!私たちは、この大きな危機とこそ、きちんと向かい合わなければなりません。
ぜひとも関東・東北を中心に、広域の避難訓練を実行し、現状が把握できていない、この恐ろしく壊れた福島原発が、より破局的な危機に陥る事態に備えなくてはなりません。そのような備えこそがまた、現場の緊張感を高め、危機を真に遠ざける営為につながるのです。

以上の点を踏まえて、原発のウォッチを続けます。
ベータ線核種2400万ベクレルとか、次々と出てくるあまりに高い汚染地に、感覚を麻痺させられてしまわずに、危機と向いあい続けましょう!

なお7月に福島3号機から原因不明の白煙が上がりだしたときの分析を再度、紹介しておきます。

明日に向けて(718)福島3号機は未だ不安定。この現実にいかに向き合うのか・・・。
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/03c2c8ba70f8144fea875446bf2fb156
http://toshikyoto.com/press/914

紹介した東京新聞の記事は以下です。

***

福島第一3号機 床の汚染水どこから 東電は格納容器損傷説
東京新聞2014年1月21日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014012102000140.html

東京電力福島第一原発3号機の原子炉建屋一階の床を、大量の汚染水が流れているのが見つかった。建屋の床で大量の汚染水流出が確認されたのは、事故後初めて。東電は二十日、格納容器から漏れた水との見方を示したが、濃度からは使用済み核燃料プールなども疑われ、漏出元ははっきりしない。
建屋の床には本来、水がないはずで、これまで判明していない何らかの異常があることの証しだ。作業用ロボットが撮影した動画で確認された汚染水は、三十センチ幅で床を流れ、排水口から地下に流れ込んでいた。大浴場に注がれるお湯のような勢いだった。放射性セシウムの濃度は一リットル当たり二四〇万ベクレル。海への放出が認められる基準の一万六千倍だった。

原因として考えられるのは、冷却水が格納容器内の核燃料にまで届かず、途中で漏れていること。雨が建屋に流れ込むことも考えられる。しかし、どちらの水だとしても、床を流れる汚染水ほどの放射性物質を含んでいない。最近は、まとまった雨も降っていない。
使用済み核燃料プールの水は、セシウム濃度がほぼ一致する。問題は位置が離れていること。汚染水が見つかった場所からみると、プールは格納容器の向こう側になる。プールの水位にも大きな異常はない。
ほかに可能性があるのは、溶け落ちた核燃料を冷やした後の高濃度汚染水が、格納容器の損傷部分から漏れていること。東電はこの見方を取っている。しかし、容器からの汚染水なら、もっと高濃度の放射性物質を含んでいるとみられる。しかも、水は隣接するタービン建屋側から格納容器に向かって流れている。格納容器からの漏出なら、流れは逆のはずだ。

エネルギー総合工学研究所の内藤正則部長は「漏出元が格納容器と確認できれば、中の冷却水の水位が分かる可能性があり、今後の廃炉作業に役立つ」と述べる。
現場近くは放射線量が高く、人が近寄れない。今後の調査は難航しそうだ。 (清水祐樹)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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明日に向けて(785)京都府舞鶴市、伊根町、兵庫県篠山市でお話しします!(17、18、19日)

2014年01月17日 14時00分00秒 | 講演予定一覧

守田です。(20140117 14:00)

すでにお知らせしていますが、今日から3日間、連続講演を行います。
そのうち、今日の夕方の舞鶴と、明後日の篠山で、原発災害についてお話しします。

舞鶴企画の主催者の一人の田中ユージさんが、本当に丁寧に、ビデオショートメッセージを作ってくれているのですが、また一本、作ってくださったので文字起こしとともにご紹介します。

***

あらゆる災害に対して強くなろう
http://www.youtube.com/watch?v=d01hgHT1g94&feature=youtu.be

災害のことを考えるときに、去年の台風18号の水害は、多くの、とくに関西に住んでいる方には、記憶に残っていると思います。
台風18号だけではなくて、そのあとに次々と来た台風でも、私たちの国には大変な災害がでました。
とくに伊豆大島では大変な地滑りが起こって、たくさんの方が亡くなり、心が痛む事態になりました。

これらに共通することは、今の私たちが直面している水害のあり方が、これまでの想定をどんどん超えてきているということなのですね。
なので、各行政もどうやって対応したら良いか、非常に悩んでいます。
悩んでいる中で、今、災害対策の考え方について、整理すべきことは、行政だけに頼っていたら、とても事態に対応できないということです。
想定外のことが起こっているので、行政も、必ずしもいつ避難をしたらいいとか、確実はタイミングで言うことが難しくなっているのです。
だとすれば、もっと個人個人が、危機に対する判断力をつけなくてはいけない。
そのときに、水害やあらゆる災害に対して、最低限、身に着けておこうという知識が具体的にあります。

1月か2月に舞鶴におうかがいして、具体的にどういうことを想定しておくことが必要なのか、あるいは最低限、これを想定しておけば災害に対して強くなる。
その考え方をお話ししたいと思います。
その中でみんなで一緒に、災害に対して自分自身が強くなっていくことを目指していきましょう!

*****

災害に対するお話は、篠山市では1月19日だけでばく、2月2日、13日、20日、22日と何度も講演をさせていただきます。
2日は篠山市西紀地区で午後に。13、20日は篠山市中央公民館で夜7時半から。22日は篠山市丹南地区で午後にです。
スケジュールはおって掲載しますので、お近くの方、ご参加ください!
それにしても篠山の方たちの熱意は本当に高い!ありがたいことです。

さて、今日の舞鶴の話を終えたら、明日は伊根町にうかがいます。詳しくは以下の記事をご覧ください。

明日に向けて(782)舟屋のある町、伊根から原発を考える・・・(1月18日伊根町)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/1a8fae559aa0a80ca73d596d2b0eff58
http://toshikyoto.com/press/1128

19日の篠山の企画については、以下をご覧ください。

明日に向けて(784)篠山市民防災の集い(原子力防災フォーラム)にご参加を(1月19日)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/1cade50c348a7972da62ce258e81ecb5
http://toshikyoto.com/press/1133

最後に、3つの企画の案内を貼り付けておきます。どうかみなさん、お集まりください!

*****

舞鶴(17日)

★1月17日守田敏也さん講演会★

ーー大災害から家族を守る智恵ーー

日時 1月17日(金)午後7時開演
場所 舞鶴市中総合会館4階研修室
参加費 無料 運営のための費用のカンパをお願いします。
主催 講演会実行委員会
連絡先  舞田 090-1963-7252
      田中 090-4560-8560

19年前の今日起きた阪神淡路大震災、3.11の大地震と津波、原発事故・・・ 昨年、近畿を襲った台風18号。
そして、これからも私たちの暮らしを襲うであろう、さまざまな自然災害。
また、今も収束していない福島第一原発事故による放射能汚染や、可能性がゼロではない若狭の原発事故災害・・・
もし、大きな災害にあってしまったときに、私たちはちゃんと自分や大切な家族のいのちを守ることができるでしょうか。

 「いざという時、どうやって逃げるの? 」「家族が別々の場所にいたら、どこに集合する?」
 「非常持ち出しリュックは何を用意しとくべき?」「愛するペットは一緒に避難できるの?」
原発事故が起きてしまったら、どこに逃げるの?」「帰ってこれるの?」

私たちは、どのくらい心の準備ができているだろうか。
その心の準備を次第で、とっさの時に、生死を分けることになると言われています。

でも、こういう話、なかなかみんなで集まってする機会がないよなあ~と思っていて、
今回、守田敏也さんをお招きして、「みんなでざっくばらんに、話し合ってみよう!」と思います。
防災について、みなさんが知りたいこと、おすすめなことなど、話し合ってよい集いになればと思っています。


 【安全食品について】
3.11の原発事故で、放射能汚染がひろがり続け、食料が汚染されています。
 汚染された食べ物を食べると、私たちの体の中が汚染されて、ガンなどさまざまな病気にかかる可能性が高くなると言われています。
 放射能汚染のこと、気にはしてるけど、実際、今の食生活で大丈夫かな?
そんな私たちに、放射線防護にたずさわっておられる守田さんは、わかりやすく教えてくださいます。いろいろ聞いてみましょ~。

 【 守田さんプロフィル】
 同志社大学社会的共通資本研究センター客員フェローなどを経て、現在フリーライター として取材活動を続けながら、社会的共通資本に関する研究を進めている。
3.11以降は、福島第一原発事故による放射能汚染に対する防護、そしてあらゆる災害に対して、身を守る術を伝えるために日本中を飛び回っている。
 篠山市原子力災害対策検討委員会委員

https://www.facebook.com/events/1506304646260651/

*****

伊根町(18日)

放射能から大切な子どもを守るために

福井の原発から30キロ圏内に入る伊根町、何か事故がおこったとき私たちはどう対応すればよいのか。
まず守らなければいけないのは子どもたち、将来の希望をもつ子どもたちを被曝から守りたい。
放射能によって見えない不安をもつお母さんたちはたくさんいます。老若男女問わず多くの人が放射能・被曝の知識をもつことが大切です。
被災地の現状、私たちの暮らしや健康を守るために何ができるのか守田敏也さんのお話を聞いて考えていきたいと思います。
 
とき   平成26年1月18日(土) 15:00~
ところ  本庄公民館 2階
託児あります(子ども連れでもお気軽にお越し下さい)
参加費無料 (運営カンパにご協力お願いします)

15:00~守田敏也さんのお話し
16:30~みんなで意見交換・座談会

◆◇守田敏也さんご紹介◇◆
1959年生まれ。京都市在住。
同志社大学社会的共通資本研究センター客員フェローなどを経て、現在フリーライターとして取材活動を続け、社会的共通資本に関する研究を進めている。
ナラ枯れ問題に深く関わり、京都の大文字などで害虫防除も実施。東日本大震災以後は、広くネットで情報を発信し、関西をはじめ被災地でも講演を続けている。
また、京都OHANAプロジェクトのメンバーとして、被災地支援活動をおこなっている。
原発関係の著作に、『内部被曝』(矢ケ崎克馬氏との共著、岩波ブックレット2012年)があり、雑誌『世界』などで、福島第一原発事故での市民の取り組みや内部被曝問題についての取材報告をして話題になっている。
3.11以降、インターネットではブログ「明日に向けて」で発信を続け、3年間で800を超えるレポートなどを発表している

お母ちゃんプロジェクト【藤原音夢 090-6735-0973】

*****

篠山(19日)

篠山市民防災の集い~原子力防災フォーラム~

原子力発電所で災害が起これば、篠山市はどうなるんだろう!?

1.特別講演(13:40~14:40)
「福島原発で何が起こったのか」
~篠山市がこの教訓を生かすために~

特別講演講師
守田 敏也氏(フリージャーナリスト)

2.パネルディスカッション

テーマ「一人一人が原子力災害から身を守るために」

コーディネーター
守田 敏也氏

パネリスト(順不同)
橋本 敬子氏 福島県から避難のために移住された方
森口  久氏 篠山市自治会長会理事
北山  正氏 篠山市消防団長
神田 幸久氏 篠山市原子力災害対策検討委員会事前対策部会長
玉山ともよ氏 篠山氏原子力災害対策検討委員会応用対策部会長

とき  平成26年1月19日 13時受付 13時30分開会
ところ 篠山市民センター 多目的ホール

入場料 無料
主催  篠山市、篠山自治会長会
後援  篠山市教育委員会、篠山市社会福祉協議会、篠山市消防団
問い合わせ 篠山市市民生活部市民安全課 電話079‐552‐1116 FAX079‐554‐2332


 

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明日に向けて(784)篠山市民防災の集い(原子力防災フォーラム)にご参加を(1月19日)

2014年01月15日 08時30分00秒 | 講演予定一覧

守田です。(20140115 08:30)

1月19日午後1時半より、兵庫県篠山市の篠山市民センター多目的ホールにて「原子力防災フォーラム」が開催されます。
篠山市は、脱原発・放射性がれき拒否をしっかりと掲げた酒井隆明市長のもと、原子力災害対策に非常に力を入れています。
僕も篠山市原子力災害対策検討委員会委員として参加させていただき、1年数か月にわたって討論を重ねてきました。
今回のフォーラムは、これまでの成果を中間的にお知らせするような位置性のもとに開かれます。ぜひ篠山以外の地域からもご参加いただきたいと思います。

篠山市の原子力災害対策検討委員会が結成されたのは2012年秋のこと。以来、2013年春までの取り組みの様子が以下から見れます。
http://www.city.sasayama.hyogo.jp/pc/group/bousai/post-11.html

これ以降、委員会が避難計画の検討のために二つの部会に分かれて討論を重ねたため、検討委員会としての議事録としてはアップされていませんが、その模様も追って、このページに掲載される予定です。

篠山市で行われた防災訓練の様子が以下から見れます。土砂災害避難訓練に、原子力災害対策のレクチャーを加えた試みです。
ちなみにこのビデオクリップを作成してくださったのも、舞鶴の田中ユージさんです。
http://www.youtube.com/watch?v=2dj3GOhE21k&feature=youtu.be

以下にも訓練の様子が紹介されています。

平成25年度篠山市土砂災害防災訓練を実施
http://www.city.sasayama.hyogo.jp/pc/group/bousai/cat3/post-69.html


今回の催しは二つのセクションに分かれています。
まず前半は特別講演として僕(守田敏也)がお話しします。タイトルは「福島原発で何が起こったのか~篠山市がこの教訓を生かすために~」です。

後半はパネルディスカッション。
テーマは「一人一人が原子力災害から身を守るために」です。

パネラーはすべて検討委員会委員。
福島県から避難のために移住された橋本敬子さん。
篠山市自治会長会理事の森口久さん。
篠山市消防団長さんの北山正さん。
検討委員会事前対策部会長の神田幸久さん。
同じく応用対策部会長の玉山ともよさん。
コーディネータを僕が努めます。

主催は篠山市と篠山自治会長会、後援が篠山市教育委員会、篠山市社会福祉協議会、篠山市消防団です。
問い合わせは篠山市市民生活部市民安全課(電話079-552-1116)です。
入場料無料です!

自分自身が参加してきた篠山市の取り組みを、客観的に評価するのは難しいですが、僕は検討委員会に参加されたみなさんと、市の担当職員のみなさんの類まれな努力により、非常に貴重なものを積み重ねてこれていると思っています。
今回はその一端を市民のみなさんにご紹介する場になります。どうかお誘いあわせの上、ご来場ください。とくに篠山市民のみなさんをはじめ、近郊の町々のみなさんに来ていただきたいです。それぞれの市での取り組みのご参考にされてください。

これまで繰り返し述べてきましたが、私たちの国は、未だ福島原発事故の最悪化という恐ろしい可能性を免れていません。
現在、運転停止中の他の原発も、自然災害を引き金として重大な事故を発生する可能性があります。だからこそ、真剣になって原子力災害対策を進め、避難訓練を行う必要があります。
避難訓練の第一は図上訓練。原発事故について学ぶことです。今回の取り組みのそうした位置性に立って行われます。

みなさんの積極的なご参加をお待ちしています。


 

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明日に向けて(783)小泉原発ゼロ宣言の背景としての自民党政治の変容―2

2014年01月12日 23時30分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20140112 23:30)

東京都知事選に細川元首相が出馬しようとしており、小泉元首相が後押ししようとしています。まだ最終的にどうなるか分かりませんが、元首相連合の登場に、安倍自民党が動揺しているようです。
小泉脱原発宣言を大きく持ち上げてきた「週刊フライデー」は、これを次のように報じています。
「細川・小泉連合で民意の都知事 脱原発!」・・・本当にそうでしょうか。僕はまったくそうは思いません。

しかし脱原発をのぞむ人々の間で、「原発廃止の一点で細川・小泉連合」を応援しようと言う声も出てくるでしょう。すでに市民派候補の宇都宮さんに立候補撤回を囁く声もあるようです。
今、私たちの眼前で起こっていることは何なのか。これを紐解くためには歴史の振り返りが非常に重要です。自民党政治が大きな分岐点に立っていることこそが見据えられねばなりません。
すでに年末にこの考察の一端を行いました。以下の3つの記事がそれです。まだ読まれていない方は、東京都知事選の分析のためにも、ぜひお読み下さい。

明日に向けて(773)小泉元首相(イラク戦争犯罪人)の原発ゼロ宣言をいかにとらえるのか?(上)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/e2e1ba2e26e12f38885fb0d99f53bde0
http://toshikyoto.com/press/1109

明日に向けて(774)小泉元首相(イラク戦争犯罪人)の原発ゼロ宣言をいかにとらえるのか?(下)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/b0e443e9c2cb34d0c263cc5eaca5864b
http://toshikyoto.com/press/1112

明日に向けて(775)小泉原発ゼロ宣言の背景としての自民党政治の変容―1
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/c9df522feadcec12af251e20d39bbf49

今回は「明日に向けて(775)小泉原発ゼロ宣言の背景としての自民党政治の変容-1」の続きを書いていきたいと思いますが、もう少し、ケインズ主義とその行き詰まりについて書き足しておきたいと思います。

前回の記事で僕が書いたのは、自民党がかつてはケインズ主義の立場にあったことです。ケインズ主義は1929年の世界恐慌を経て、第二次世界大戦にいたっていった20世紀資本主義の反省から生まれたものでした。
経済を市場の動向に任せるのではなく、政府が金融政策などから積極的に市場に介入し、恐慌を避けて、「健全な」経済成長を保障する政策です。
同時に、ロシア革命以降の社会主義の歴史的発展に対抗すべく、社会福祉政策をそれまでより重視し、累進課税性などによって貧富の差の拡大の一定の是正などを行うことも特徴としてきました。

自民党の場合は、1960年の安保闘争の大きな広がりを経て、岸政権のように軍国主義に舞い戻る政策を戒め、安保条約のもとで、「軍事はアメリカに任せて経済発展を重視する」ことをうたう路線が定着しました。
これ以降、自民党は主に経済的利益の分配によって集票構造を維持し、さまざまな批判や不満を、主に金銭的に吸収していくことを構造化しました。かくして自民党は長期政権を現出させました。

ここで私たちが踏まえておかなければならないのが、「軍事はアメリカに任せて経済成長を重視する」ということが何を意味していたかです。
端的に言えば、アメリカが戦争を行い、日本はそのものもとで発展するということです。事実、私たちの国は、戦後の混乱から「朝鮮戦争特需」によって経済的復興しました。アメリカが戦争のための資材を日本で調達したからです。
さらに「ベトナム戦争特需」によっても日本は大変な利益を上げました。その利益の国内への分配で、私たちの国の民はまるめこまれてきてしまった。経済的利益の分配で、世界への目、正義への目が曇らされてきたのです。

私たちはこの構造は、今もなお続いていることに十分な注意を傾ける必要があります。福島原発事故によって覚醒した多くの人々が全国でデモを行っているのに、なぜ原発再稼働を掲げる安倍政権が存在できているのか。
「アベノミクス」による「まるめこみ」の力の方がなお大きいからです。いやより正確には、これと現在の選挙制度の歪みが重なることによって、少数派による多数派の仮称が可能になっていることがからなっていますが、いずれにせよ、自民党の集票構造は今なお大きく経済的利害に偏っています。

しかしその世界的な枠組みは、1970年代に大きく崩れ出しました。

戦後のケインズ主義政策は、第二次世界大戦を通じて、政治的経済的な圧倒的な覇者となったアメリカの、潤沢な資金の存在によって可能となったものでした。第三世界=旧植民地諸国から生み出される安い工業資源もこれを支えました。
ところがアメリカは1960年代からベトナム戦争にのめり込み、多大な軍事支出によって、次第に世界経済の中心国としての重みに耐えなれなくなり、1971年、ドルショックを宣言して、ドルと金の兌換を一方的に廃止してしまいました。
さらに1973年、中東の産油国の連合であるOPECが、エネルギ―戦略を発動、原油価格を一気に高騰させました。このためにケインズ主義的政策は、各国で音を立てて崩れ始めます。

このときケインズ主義の、「大きな政府」路線、政府による経済への介入や、福祉政策の充実こそが、経済停滞の要因だと主張して登場してきたのが、今、世界を席巻してる「新自由主義」です。新自由主義はケインズ主義を「社会主義」として攻撃しました。
当時、新自由主義政策を唱えたのはアメリカ・レーガン政権と、イギリス・サッチャー政権、日本・中曽根政権でしたが、実はもう一つ、大きな国が、新自由主義政策の道を走り出しました。赤い資本主義の国、中国です。
なぜ中国は新自由主義路線を走り出したのか。この時期、中国は文化大革命が終焉し、「開放・改革経済」に向かい始めたところでした。「開放・改革」経済は、それまで戒めてきた資本主義的発想を取り込むことを目指すものでしたが、取り込む相手がこの時、新自由主義に転換しつつあったのでした。
文化大革命は、極端な平等化や金儲け主義の徹底した否定という側面を持っており、そのもとで生まれた政治的混乱が長く続いたため、新自由主義による社会主義批判が、文化大革命批判と結合してしまった側面が大きくありました。

かくして世界は1980年代より、弱肉強食の資本主義に舞い戻り始めたのですが、これに対抗する位置があったはずの社会主義各国もまた、経済発展において完全に行き詰まり、資本主義への対抗軸の位置を大きく後退させてしまいました。
あたかもそれは新自由主義の正当性を証明するような錯誤を生みましたが、むしろ露呈したのは、それまで唱えられてきた社会主義の主張の多くが「資本主義より社会主義の方が経済発展する」という点に偏ってしまい、資本主義的な、金儲けの追及を中心とする人生観や幸福感を、十分に批判できていない点であったと僕は思います。
特にソ連邦は、アメリカとの軍拡競争の中で疲弊を深めるとともに、1979年から開始したアフガニスタン侵攻によっても、かつてアメリカがべトナム戦争によって疲弊したのと同じ構造に落ち込みました。
さらに1986年、チェルノブイリ原発が巨大な事故を起こし、政府や社会主義からの人心の離反を促進させてしまいました。社会主義の下では幸せになれないという思いが、東欧、旧ソ連邦に広がっていったのです。

しかしケインズ主義から新自由主義への転換を図ったはずのアメリカでも矛盾が続いていました。強烈な反ソ連政策を掲げたレーガン政権が、大軍拡路線を取りつづけたからです。軍拡は政府による大きな財政出動のもとでしか実現できないもので、むしろケインズ主義そのものと言ってもいいものでした。
アメリカは軍拡競争にうちてこれなくなったソ連に対してこそ優位性を示したものの、財政出動によって巨額の赤字を作り出してしまいました。
それでは日本はどうだったのでしょうか。世界的にケインズ主義が行き詰った1980年代になお順調な成長を続けたのは日本でした。日本もまた高度経済成長が1970年代にいたって頭打ちになり、政府の財政が赤字に転落しましたが、なお積極的な経済介入の政策が続きました。
そのもとで自動車や家電などの「ハイテク産業」を中心に、欧米への輸出を伸ばし続けたのです。アメリカの産業が他国に転出する「空洞化」を迎えたことに対し、発展を続ける日本経済は、アメリカの反感を買い「日米経済摩擦」が生じます。
アメリカはこのころ、ベトナム戦争で自国が疲弊する過程で、輸出貿易を軸に大きな経済発展を実現した日本を、次第に経済的な「敵」と認識し始めていました。かくして対日赤字を削減するための圧力が強まり、1985年の「プラザ合意」によって、「円高」が現出し、日本経済もまた大きな転換の渦に巻き込まれていくこととなりました。

続く

 


 

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