守田です。(20110527 17:30)
福島原発事故の初期対応をめぐって、うんざりするような論議が繰り返されて
います。海水注入に対して、斑目原子力安全委員長が、臨界の可能性があると
言ったとか、言わなかったとか、それで注水が中断されたとか、されないとか、
その場合、管首相に責任があったのか、なかったのかなどです。
このやりとりが、うんざりするのは、実は今につながる情報がないからです。
今、必要なこと、原発はどうなっているのか、事態はいかに推移しているのか、
そして私たちは今、どのような姿勢で福島原発に対応しなければならないのか、
肝心な内容がまったく出てこない。だから聴いているのも嫌になってくる。
しかしそんなときに思いだすのが、自民党の往年の歴代首相、とくに大平正芳
氏や、竹下登氏の国会演説でした。とくに大平氏は「えー、」とか「うー」を連発する
ばかりで何を言っているのかよく分からなかった。鈍重な印象だけが残って、野党
側が度々、言い逃れられてしまっていた。実はこれ、「戦略的愚鈍」だったのです。
実は今も同じようなことが起こっているのではないでしょうか。意図的にせよ、
非意図的にせよ、海水注入中断問題?などが騒がれる中で、他のもっと大事な
ことから論点がずらされている。政府や東電に本当に問いただすべきことが
あいまいになり、私たちの安全に関する論議が深まっていかない。
この責任の一端はマスコミの報道姿勢にあります。そもそもほとんどの大手
マスコミは、事故当初、政府の虚偽の発表をまるで広報のように報道し続けた
わけです。進行する危機の実態を明らかにした大手マスコミは一つもなかった。
端的に言えば、政府の流すガセネタを報道し続けた。
今、大手マスコミに問われるのは、この報道姿勢の自己検証なのではないで
しょうか。意図的だったのか、非意図的だったは分かりませんが、政府の偽の
情報に踊らされ続けてきたことを、真剣にとらえ返すべきです。そうでなければ、
今も、未来もまた、虚偽情報をうのみのままに流してしまうことになるからです。
では大事なこととは何か。最も重要なのは、1号機から3号機まで、事故初期に
メルトダウンしていた事実を、政府はどうして発表しなかったのかです。
これは二つの場合分けによって検証される必要がある。まず第一には、枝野
長官などが繰り返している「知らなかった」説です。
ようするに何が起こっているのか、さっぱりつかめなかったのだという。だから
自分たちは、情報隠しをしたのではない。ウソをついたのではないと言いたい
わけですが、それならそれで政府は重大なミスを犯したことを認めたことになり
ます。これは事故に対する対応能力がゼロであったことの自己暴露です。
この点で、注目すべき記事が朝日新聞に出ています。
「炉心溶融「震災数日後には確信」米NRC事務局」という記事です。
記事の中で、米NRCは次のように述べています。
「東日本大震災が発生した数日後には、そう(炉心溶解を)確信していた」
「(当時観測されていた)高いレベルの放射線は、かなり深刻な燃料損傷が
起きない限りあり得ないからだ」
(原発から80キロ圏内の米国人に対する避難勧告を出していることに
ついては)「(炉心溶融など)深刻な事態が起きていることがぐにわかったことが、
そう勧告した理由の一つだった」。
地震数日後に、米NRCはこのような認識を持っており、だからすぐに80キロ圏外
避難指示を出した。端的に言って、日本政府はどうしてこの当たり前の認識に
立てなかったのでしょうか。またなぜ、このことを米NRCから聞かなかったの
でしょうか。どうして米NRCの指示の根拠を調べなかったのでしょうか。
もし本当に知らなかった、聞くこともしなかったというのならば、日本政府が事故
への対応能力がまったくないこと、それこそ「素人以下」であることが明らかです。
それは国民と住民の生命と財産を守るべき義務を負っている政府にとって
致命的欠陥であることは明らかです。
枝野長官も、管首相も、「知らなかった」と言っているわけですから、何より
それが追求されなければなりません。これだけで内閣総辞職をし、民主党が
下野するに足る十分な事実なのです。しかし大手マスコミも、野党の自民党も
そこだけは責めない。その点では党内反対派の小沢氏も同様です。
第二に、そうでないとするならば、政府はこの事実をひた隠しにしていたことに
なります。僕はこちらの方が、かなり可能性が高く、かつ部分的に本当に
能力が低くて、知らないこともあったぐらいに思っていますが、ともあれその
場合、政府は国民と住民に対する重大な背信行為を働いたいことになります。
核心問題は、炉心がメルトダウンし、しかも格納容器までが損傷することによって、
非常に深刻な放射能漏れが起こっていることを、何ら私たちに伝えなかったこと
です。チェルノブイリのような爆発の危険性があることも伝えなかった。たくさんの
放射能が漏れているのに、「危険です、防いでください」とも言わなかった。
今、一番大事なのは、この点の責任問題です。海水の注水を中断したかどうか、
再臨界しうると判断したのかどうかなど、この事実の前にはあまりに瑣末なことで
しかない。それは判断の問題であって、ある意味でミスもありうることだからです。
しかもその前提すらくるくる覆り、それでマスコミも踊らされている・・・。
それよりも、メルトダウンという重大な事実をまったくつかめず、米NRCの80キロ
圏外退避勧告の根拠も聞こうとせず、ただただ、無為に住民を危険にさらし続け
たのか、あるいは事実を知りながらそれを伏せ、避難すべき人にそれを
知らせなかったのか。そのどちらか一方の可能性が濃厚です。
そしてどちらであっても重大問題です。どちらの場合も、そのことを的確に見抜け
ず、結局、政府と等しく住民に最も重要な情報を伝えられなかったマスコミの
責任問題も浮上してきます。その点では「野党」の自民党も何ら変わらない。
問題はこの点を事故当初に指摘し、避難を主張したか否かなのですから。
さらにここから問われるべき第三の点が浮上します。端的に、現在の政府情報が
信用できるのかどうかという点です。第一の場合、つまり本当にメルトダウンを
知らなかったのだとしたら、現状もまたほとんど何もつかめていないことが濃厚
です。つまり能力的に信用するに値しない。
第二の場合、知っていたのに隠していたのだとしたら、当然にも現在もまた重大な
情報を隠している可能性が濃厚にあるわけです。そして重要なのはどちらであって
も、私たちは今、政府によって、非常に危険な状態に立たされている可能性が
高いということです。事故初期に大変な危険性が告げられなかったように。
ここでも僕は第二の可能性の方が強いと思っています。その場合、隠されている
ことは何でしょうか。一つには、現在の原発の状態が、安定化などにはほど遠く、
まだまだ非常に危険な状態におかれているということです。破局的な爆発への
発展の可能性はまだまだありうる。そうとしか考えられません。
第二に、繰り返し述べているように、すでに大気中に飛び足した放射能汚染の
深刻な実態に、かなりのマスクがされている可能性が高いということです。とくに
ストロンチウムや、プルトニウムなどが、意図的に計測されてない可能性が高い。
少なくとも、きちんとした計測がほとんど行われていないのは事実です。
その意味で、現在の政府・東電・安全委のドタバタ劇を読み解くと出てくるのは、
現在の私たちの危機です。真実がまったく告げられていない。政府自ら解析
できないのか、事実が隠されているのか、そのどっちかによってです。
そのことをマスコミが覆い隠す形での、ドタバタ報道が続いています。
うんざりする喧騒につられて、報道から目をそらしてしまわずに、
情報解析を続けていこうと思います・・・。
*************************
炉心溶融「震災数日後には確信」 米NRC事務局長
2011年5月27日10時17分 朝日新聞
米原子力規制委員会(NRC)のボーチャード事務局長は26日、東京電力福島
第一原子力発電所で、核燃料の大部分が原子炉圧力容器の底に落ちる炉心
溶融が起きていた可能性について「東日本大震災が発生した数日後には、
そう確信していた」と述べた。
日米交流団体「ジャパン・ソサエティー」がニューヨークで開いた講演会のあとの
会見で述べた。根拠について「(当時観測されていた)高いレベルの放射線は、
かなり深刻な燃料損傷が起きない限りあり得ないからだ」と述べた。
NRCは大震災発生から5日後、同原発から50マイル(80キロ)圏内の米国人に
対する避難勧告を出しているが、「(炉心溶融など)深刻な事態が起きていることが
すぐにわかったことが、そう勧告した理由の一つだった」と話した。
炉心溶融の可能性は専門家がかなり早い時期から指摘していたが、東京電力
が同原発1~3号機について正式に認めたのは大震災発生から約2カ月後
だった。(ニューヨーク=勝田敏彦)
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201105270114.html
***********
福島第一の海水注入中断せず 東電所長、本社に無断
2011年5月27日0時16分 朝日新聞
東京電力福島第一原発1号機の海水注入問題で、東電は26日、一時中断
したと説明してきた海水注入を、実際には中断せずに継続していたと発表した。
東電本社と発電所の協議では、海水注入をめぐる検討が官邸で続いていたこと
から中断を決めたが、福島第一原発の吉田昌郎所長の判断で継続していた。
国会でも追及された問題が根底から百八十度くつがえされた。
東電によると、3月12日午後2時53分に真水の注入が停止したため、午後
7時4分から海水の注入を始めた。しかし、午後7時25分、官邸にいた東電の
武黒一郎フェローが「首相の了解が得られていない。議論が行われている」との
状況判断を本社に連絡。本社と発電所がテレビ会議で協議し、注入の中断を
決めた。
海水注入をめぐって政府と東電は21日、東電が自主的に中断していたとの
見解を公表。首相が注入を指示した後の午後8時20分に再開したと説明して
いた。午後7時4分からの注入は、東電から経済産業省原子力安全・保安院の
担当者に口頭連絡されたものの官邸に伝わらなかったとされた。
だが、こうした経緯は本社の社員や社内に残るメモなどから判断し、吉田所長
を含め発電所側に確認していなかった。今月23日の衆院復興特別委員会で、
自民党の谷垣禎一総裁が、菅首相の責任を追及する事態に発展。東電が24、
25日に吉田所長や発電所の社員らから事情を聴いたところ、中断していな
かった事実が判明した。
吉田所長は、東電の調査に対して「事故の進展を防止するためには、原子
炉への注水の継続が何よりも重要と判断して継続した」と説明。新聞や国会で
問題になっているうえ、国際原子力機関(IAEA)の調査団が来日したこともあり、
事実を打ち明ける決意をしたと話しているという。
事故時の注水は発電所長の判断で基本的にできることになっていた。東電は
当日も保安院に対して午後8時20分に海水注入開始とファクスで通報。今月
23日に法に基づき提出した事故分析の報告書にも同様に記していた。
吉田所長の注入継続の判断について、原子力・立地本部長の武藤栄副社長は
「現場の安全を考える上で技術的には妥当な判断」と評価した。だが、その後、
長期にわたって事後の報告をしていなかったことから、東電は吉田所長の処分
を検討している。
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201105260339.html
福島原発事故の初期対応をめぐって、うんざりするような論議が繰り返されて
います。海水注入に対して、斑目原子力安全委員長が、臨界の可能性があると
言ったとか、言わなかったとか、それで注水が中断されたとか、されないとか、
その場合、管首相に責任があったのか、なかったのかなどです。
このやりとりが、うんざりするのは、実は今につながる情報がないからです。
今、必要なこと、原発はどうなっているのか、事態はいかに推移しているのか、
そして私たちは今、どのような姿勢で福島原発に対応しなければならないのか、
肝心な内容がまったく出てこない。だから聴いているのも嫌になってくる。
しかしそんなときに思いだすのが、自民党の往年の歴代首相、とくに大平正芳
氏や、竹下登氏の国会演説でした。とくに大平氏は「えー、」とか「うー」を連発する
ばかりで何を言っているのかよく分からなかった。鈍重な印象だけが残って、野党
側が度々、言い逃れられてしまっていた。実はこれ、「戦略的愚鈍」だったのです。
実は今も同じようなことが起こっているのではないでしょうか。意図的にせよ、
非意図的にせよ、海水注入中断問題?などが騒がれる中で、他のもっと大事な
ことから論点がずらされている。政府や東電に本当に問いただすべきことが
あいまいになり、私たちの安全に関する論議が深まっていかない。
この責任の一端はマスコミの報道姿勢にあります。そもそもほとんどの大手
マスコミは、事故当初、政府の虚偽の発表をまるで広報のように報道し続けた
わけです。進行する危機の実態を明らかにした大手マスコミは一つもなかった。
端的に言えば、政府の流すガセネタを報道し続けた。
今、大手マスコミに問われるのは、この報道姿勢の自己検証なのではないで
しょうか。意図的だったのか、非意図的だったは分かりませんが、政府の偽の
情報に踊らされ続けてきたことを、真剣にとらえ返すべきです。そうでなければ、
今も、未来もまた、虚偽情報をうのみのままに流してしまうことになるからです。
では大事なこととは何か。最も重要なのは、1号機から3号機まで、事故初期に
メルトダウンしていた事実を、政府はどうして発表しなかったのかです。
これは二つの場合分けによって検証される必要がある。まず第一には、枝野
長官などが繰り返している「知らなかった」説です。
ようするに何が起こっているのか、さっぱりつかめなかったのだという。だから
自分たちは、情報隠しをしたのではない。ウソをついたのではないと言いたい
わけですが、それならそれで政府は重大なミスを犯したことを認めたことになり
ます。これは事故に対する対応能力がゼロであったことの自己暴露です。
この点で、注目すべき記事が朝日新聞に出ています。
「炉心溶融「震災数日後には確信」米NRC事務局」という記事です。
記事の中で、米NRCは次のように述べています。
「東日本大震災が発生した数日後には、そう(炉心溶解を)確信していた」
「(当時観測されていた)高いレベルの放射線は、かなり深刻な燃料損傷が
起きない限りあり得ないからだ」
(原発から80キロ圏内の米国人に対する避難勧告を出していることに
ついては)「(炉心溶融など)深刻な事態が起きていることがぐにわかったことが、
そう勧告した理由の一つだった」。
地震数日後に、米NRCはこのような認識を持っており、だからすぐに80キロ圏外
避難指示を出した。端的に言って、日本政府はどうしてこの当たり前の認識に
立てなかったのでしょうか。またなぜ、このことを米NRCから聞かなかったの
でしょうか。どうして米NRCの指示の根拠を調べなかったのでしょうか。
もし本当に知らなかった、聞くこともしなかったというのならば、日本政府が事故
への対応能力がまったくないこと、それこそ「素人以下」であることが明らかです。
それは国民と住民の生命と財産を守るべき義務を負っている政府にとって
致命的欠陥であることは明らかです。
枝野長官も、管首相も、「知らなかった」と言っているわけですから、何より
それが追求されなければなりません。これだけで内閣総辞職をし、民主党が
下野するに足る十分な事実なのです。しかし大手マスコミも、野党の自民党も
そこだけは責めない。その点では党内反対派の小沢氏も同様です。
第二に、そうでないとするならば、政府はこの事実をひた隠しにしていたことに
なります。僕はこちらの方が、かなり可能性が高く、かつ部分的に本当に
能力が低くて、知らないこともあったぐらいに思っていますが、ともあれその
場合、政府は国民と住民に対する重大な背信行為を働いたいことになります。
核心問題は、炉心がメルトダウンし、しかも格納容器までが損傷することによって、
非常に深刻な放射能漏れが起こっていることを、何ら私たちに伝えなかったこと
です。チェルノブイリのような爆発の危険性があることも伝えなかった。たくさんの
放射能が漏れているのに、「危険です、防いでください」とも言わなかった。
今、一番大事なのは、この点の責任問題です。海水の注水を中断したかどうか、
再臨界しうると判断したのかどうかなど、この事実の前にはあまりに瑣末なことで
しかない。それは判断の問題であって、ある意味でミスもありうることだからです。
しかもその前提すらくるくる覆り、それでマスコミも踊らされている・・・。
それよりも、メルトダウンという重大な事実をまったくつかめず、米NRCの80キロ
圏外退避勧告の根拠も聞こうとせず、ただただ、無為に住民を危険にさらし続け
たのか、あるいは事実を知りながらそれを伏せ、避難すべき人にそれを
知らせなかったのか。そのどちらか一方の可能性が濃厚です。
そしてどちらであっても重大問題です。どちらの場合も、そのことを的確に見抜け
ず、結局、政府と等しく住民に最も重要な情報を伝えられなかったマスコミの
責任問題も浮上してきます。その点では「野党」の自民党も何ら変わらない。
問題はこの点を事故当初に指摘し、避難を主張したか否かなのですから。
さらにここから問われるべき第三の点が浮上します。端的に、現在の政府情報が
信用できるのかどうかという点です。第一の場合、つまり本当にメルトダウンを
知らなかったのだとしたら、現状もまたほとんど何もつかめていないことが濃厚
です。つまり能力的に信用するに値しない。
第二の場合、知っていたのに隠していたのだとしたら、当然にも現在もまた重大な
情報を隠している可能性が濃厚にあるわけです。そして重要なのはどちらであって
も、私たちは今、政府によって、非常に危険な状態に立たされている可能性が
高いということです。事故初期に大変な危険性が告げられなかったように。
ここでも僕は第二の可能性の方が強いと思っています。その場合、隠されている
ことは何でしょうか。一つには、現在の原発の状態が、安定化などにはほど遠く、
まだまだ非常に危険な状態におかれているということです。破局的な爆発への
発展の可能性はまだまだありうる。そうとしか考えられません。
第二に、繰り返し述べているように、すでに大気中に飛び足した放射能汚染の
深刻な実態に、かなりのマスクがされている可能性が高いということです。とくに
ストロンチウムや、プルトニウムなどが、意図的に計測されてない可能性が高い。
少なくとも、きちんとした計測がほとんど行われていないのは事実です。
その意味で、現在の政府・東電・安全委のドタバタ劇を読み解くと出てくるのは、
現在の私たちの危機です。真実がまったく告げられていない。政府自ら解析
できないのか、事実が隠されているのか、そのどっちかによってです。
そのことをマスコミが覆い隠す形での、ドタバタ報道が続いています。
うんざりする喧騒につられて、報道から目をそらしてしまわずに、
情報解析を続けていこうと思います・・・。
*************************
炉心溶融「震災数日後には確信」 米NRC事務局長
2011年5月27日10時17分 朝日新聞
米原子力規制委員会(NRC)のボーチャード事務局長は26日、東京電力福島
第一原子力発電所で、核燃料の大部分が原子炉圧力容器の底に落ちる炉心
溶融が起きていた可能性について「東日本大震災が発生した数日後には、
そう確信していた」と述べた。
日米交流団体「ジャパン・ソサエティー」がニューヨークで開いた講演会のあとの
会見で述べた。根拠について「(当時観測されていた)高いレベルの放射線は、
かなり深刻な燃料損傷が起きない限りあり得ないからだ」と述べた。
NRCは大震災発生から5日後、同原発から50マイル(80キロ)圏内の米国人に
対する避難勧告を出しているが、「(炉心溶融など)深刻な事態が起きていることが
すぐにわかったことが、そう勧告した理由の一つだった」と話した。
炉心溶融の可能性は専門家がかなり早い時期から指摘していたが、東京電力
が同原発1~3号機について正式に認めたのは大震災発生から約2カ月後
だった。(ニューヨーク=勝田敏彦)
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201105270114.html
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福島第一の海水注入中断せず 東電所長、本社に無断
2011年5月27日0時16分 朝日新聞
東京電力福島第一原発1号機の海水注入問題で、東電は26日、一時中断
したと説明してきた海水注入を、実際には中断せずに継続していたと発表した。
東電本社と発電所の協議では、海水注入をめぐる検討が官邸で続いていたこと
から中断を決めたが、福島第一原発の吉田昌郎所長の判断で継続していた。
国会でも追及された問題が根底から百八十度くつがえされた。
東電によると、3月12日午後2時53分に真水の注入が停止したため、午後
7時4分から海水の注入を始めた。しかし、午後7時25分、官邸にいた東電の
武黒一郎フェローが「首相の了解が得られていない。議論が行われている」との
状況判断を本社に連絡。本社と発電所がテレビ会議で協議し、注入の中断を
決めた。
海水注入をめぐって政府と東電は21日、東電が自主的に中断していたとの
見解を公表。首相が注入を指示した後の午後8時20分に再開したと説明して
いた。午後7時4分からの注入は、東電から経済産業省原子力安全・保安院の
担当者に口頭連絡されたものの官邸に伝わらなかったとされた。
だが、こうした経緯は本社の社員や社内に残るメモなどから判断し、吉田所長
を含め発電所側に確認していなかった。今月23日の衆院復興特別委員会で、
自民党の谷垣禎一総裁が、菅首相の責任を追及する事態に発展。東電が24、
25日に吉田所長や発電所の社員らから事情を聴いたところ、中断していな
かった事実が判明した。
吉田所長は、東電の調査に対して「事故の進展を防止するためには、原子
炉への注水の継続が何よりも重要と判断して継続した」と説明。新聞や国会で
問題になっているうえ、国際原子力機関(IAEA)の調査団が来日したこともあり、
事実を打ち明ける決意をしたと話しているという。
事故時の注水は発電所長の判断で基本的にできることになっていた。東電は
当日も保安院に対して午後8時20分に海水注入開始とファクスで通報。今月
23日に法に基づき提出した事故分析の報告書にも同様に記していた。
吉田所長の注入継続の判断について、原子力・立地本部長の武藤栄副社長は
「現場の安全を考える上で技術的には妥当な判断」と評価した。だが、その後、
長期にわたって事後の報告をしていなかったことから、東電は吉田所長の処分
を検討している。
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201105260339.html