明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1200)再稼働反対行動と連動しつつ市民側から原発事故への備えを向上させていく必要がある!

2015年12月31日 14時00分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20151231 14:00)


高浜原発再稼働の動きに対する分析といかに対処すべきなのかの提案の最後に、これまでも繰り返してきた原発事故への備えについて語りたいと思います。

これまで見てきたように、政府と原子力村が原発の再稼働や輸出に走ろうとしていることの背景には、東芝や三菱の大苦境が横たわっています。

このままでは原子力産業が倒れるばかりか日本の基幹産業の危機にも発展しかねない。そのことを背景に再稼働や輸出が連動しながら強行されようとしています。

しかしこの危機は、あまりに危険で制御しきれない原子力エネルギーに固執しているがゆえに生まれた危機であって、脱原発こそが実は経済的にも最も合理的な選択です。

 

高浜原発の固有性について触れるならば、この原発も一足先に再稼働を強行した川内原発と同じ、三菱重工製の加圧水型原発です。したがって同じ弱点を持っています。

この中で最も大きいものは蒸気発生器がトラブルを続けてきたことで、実際に美浜原発ではギロチン切断と呼ばれた一次冷却水の配管の完全切断事故が起こりました。

加圧水原発の一時冷却水は150気圧に加圧され、300度の高温で回っているため、配管が破断すれば冷却水は一気に外部に漏れていきます。

このためこのときも冷却剤喪失によるメルトダウンまで寸前のところまで事故が進展しました。

 

三菱重工はこの構造的欠陥に対して、点検時にピンホールがあいたり、摩耗して薄くなったりした細管に栓をする対処を行い、一定期間が過ぎると交換をするようになりました。

しかし蒸気発生機の交換はもともとの設計仕様になかったことであり、交換時には気密性と耐圧性が問われる原子炉格納容器に大きな穴をあけなければならなくなりました。

またこの危機につながる配管も一旦切断し、再度、接合しなければなりません。これらを放射線値の高い環境下で行わなければなりません。

この蒸気発生機の交換の様子を記したビデオクリップがネットにあがっていたので紹介します。(残念ながら出典は分かりませんでした。)

 

 美浜原発蒸気発生器交換について

    http://www.dailymotion.com/video/x2e3gaw_%E8%92%B8%E6%B0%97%E7%99%BA%E7%94%9F%E5%99%A8%E4%BA%A4%E6%8F%9B_tech

 

まず問題なのはこのような交換は設計時に想定されていなかったのですから、明らかな設計ミスであり、この段階でプラントとしてはアウトだということです。

実際、先にも述べたように格納容器は内部の大型機器の交換を前提に設計されていません。このため本来ならば蒸気発生器がトラブルを起こした段階でこの炉は使用を中止すべきなのです。

どうしても原発を稼働させたいのであれば、少なくともこの蒸気発生器の欠陥をきちんとクリアして、交換など必要のない加圧水型原子炉を再度、設計しなおすべきなのです。

蒸気発生器の交換は小手先の対処であり、耐久性の問われる格納容器や主要配管を自ら切断して行うのですから、安全性を著しく損なうものでしかありません。

 

さらにより決定的なことは新しく交換した蒸気発生器でも不具合や事故が起こってしまっていること。三菱重工が技術的限界をいまだに超えられていない事です。

このため2009年、2010年に相次いでこの機器を三菱重工製の新型に変えたアメリカのサンオノフレ原発3号機で2012年1月に一次冷却水漏れ事故が発生。

すぐに原発を緊急停止させて新型で運転していた2号機、3号機双方を点検したところ、配管の異常な摩耗等が15000カ所も見つかりました。運転後わずか1年と数ヶ月でです。

アメリカ原子力規制庁が徹底した調査を行う中で、問題は修理などによっては克服できないと判断され、同原発は廃炉になってしまいました。

 

このことで三菱重工は、原発の所有者であるサザンカリフォルニアエンジン社から9300億円の損害賠償訴訟を起こされています。

川内原発再稼働強行に続く、高浜原発再稼働の動きは、直接的にはこうした苦境にある三菱重工救済の位置性が高いと思われます。両原発ともに三菱重工製だからです。

トルコのシノップへの輸出が狙われているのも同じく三菱重工の原発です。再稼働も原発輸出も、東芝のみならず三菱重工の苦境へのサポートの位置を大きく持っている。

この判断はまったく間違っています。アメリカ規制庁が正しくも判断したように、三菱重工には蒸気発生器の問題を超える事はできていないのです。だからこんなことを強行したらさらに危機も拡大するだけです。

 

さらに私たちが腹をくくって見据えておかなければならないのは、このように原発の再稼働も輸出も、瀕死の状態の原発メーカー救済策として強行されようとしているからこそより危険だということです。

原発への関わりをめぐってリーマンショック以来、すでに7年もの間、不正会計という経済犯罪を続けてきた東芝や、それを見抜けなかった経産省や監督官庁に、原発の安全な管理などできるわけがありません。

また三菱重工も、アメリカ原子力規制庁の調査の中で、実は事前に不具合を知りながら運転を強行した事が指摘されています。だから廃炉にされてしまったのです。

東芝も三菱重工もこれまで原発の稼働において誠実な態度をまったくとってきませんでした。いつも問題の隠蔽を繰り返してきました。それが捉え返されずになぜ誠実な関わりが期待できるでしょうか。

 

これまでも危険性を無視し、科学的知見を何度もねじ曲げて運転を強行してきたのが原発メーカーです。これを容認し、それどころかかばい続けてきたのが歴代政権です。

このような人々が瀕死の状態で、目先の利害だけ考えて再稼働を強行しようとしているが故に、もはやこれまで以上に危険である事を私たちはしっかりと認識すべきです。

その上、高浜原発も川内原発と同じく4年以上も止まっていたのであって、その点からだけでも再稼働にリスクがあることが付け加わります。

これまで世界で4年以上止まっていた原発が再稼働されたのは14例しかなく、その全てで稼働後に大小の事故が発生していると言われているからです。

 

この事態を前に、私たちがなすべきことは第一に原発再稼働反対の声をこれまで以上に高める事です。高浜の再稼働を許さない運動、川内をもう一度止める運動が必要です。

それと同時に、第二に原発災害に対する市民側からの対処、原発から命を守る知恵と体制を積み上げていく事が今こそ必要です。

多くの人々が原発の危険性を語っている訳ですが、しかしそのリアリティを深めるために、もはや原発に反対する全ての人が最低限、安定ヨウ素剤を手にし、災害時のパーソナルシミュレーションを持って欲しいと思います。

またそのための論議をあちこちで巻き起こしていただきたい。災害対策ならば原発賛成・反対をひとまず横においておいて話ができるからです。

 

原発に反対しているみなさんにぜひ呼びかけたいのは、原発に賛成している多くの人々とこうした会話を行える場を積極的に設けて欲しいという事です。

端的に言って、賛成している人の過半は政府と電力会社に騙されています。過酷事故の可能性が十分にあることをしっかり自覚しながら原発賛成を唱えている人等ほとんどいません。

このためもし事故が起こったらこの方たちが一番、被害を受けてしまいます。適切に逃げる事等できないだろうからです。僕はそれも避けたいと思うのです。そのもとには多くの子どもをはじめ、判断主体ではない人々もたくさんいます。

一方でもしそこまで考えて賛成を唱えているのならば、その方とは即時、実効性のある対策の積み上げ、避難対策の策定などで合意できるはずです。

 

だからこそ、より広範に原発の危険性と向きあえる可能性を持つものとしての原発災害対策、原発からの命の守り方をみんなで広げていきたいと思います。

しかもこの知恵は、現に福島原発事故で飛び出してしまった放射能からの身の守り方にも直結しています。

さらに災害心理学や災害社会工学の知恵を援用する事で、水害や土砂水害など、災害全般への対処能力をも同時に向上させていく事ができます。

多くの人々が命を守るすべを身につけていく事、命を守る力を向上させていく事、ぜひこのことに一緒に取り組みましょう。

 

本年10月末に上梓した『原発からの命の守り方』に、僕はそのエッセンスを詰め込みました。

これ自身はまだまだたたき台だと思っています。多くの方とさらに知恵を練り上げてバージョンアップしていきたいですがまずはぜひこれを広めて下さい。

同時に僕が関わっている兵庫県篠山市では2016年1月末から、安定ヨウ素剤の住民への事前配布を開始します。ぜひこの篠山方式を全国に広げていただきたいです。

そのために僕は来年もこの領域に、持てる力のすべてを投入して奮闘します。核のない世の中の実現のため、すべての命を放射能から守るため、ともに歩みを進めましょう! 


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明日に向けて(1199)原発メーカー救済のための危険な原発再稼働と原発輸出を許してはならない!

2015年12月26日 11時30分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20151226 11:30)

この夏の川内原発再稼働に続く高浜原発再稼働容認の動きが、東芝の大苦境に象徴される原発メーカーの瓦解への救済策であることを前回明らかにしました。
今回は東芝の経営危機の日本経済全体にもたらす意味と、原発メーカーの救済の不可能性を明らかにしつつ、原発再稼働の流れを断ちきっていく展望を明らかにしたいと思います。

21日の記者会見で東芝は来年3月期で5500億円の赤字を計上すること。大幅なリストラや不採算部門の切り捨てなどで生き残りを図るものの、1兆840億円あった自己資本の6割を失い、4300億円にまで目減りすることを明らかにしました。
これを受けて、毎日新聞経済プレミア編集長が、この記者会見を「東芝の問題が単なる「不正会計」から、「経営危機」という別次元の段階に入った象徴的なもの」と評したことを昨日お伝えしましたが、これは日本経済全体にとっても大きなことです。
なぜなら東芝はかつては財界総理と言われる経団連会長を連続で排出し、その後も経団連副会長の座に常駐してきたリーディングカンパニーだからです。

歴代社長の在任期間とその後に財界でついた役職をみてみましょう。

 石坂泰三(1949~57)経団連会長
 土光敏夫(1965~72)経団連会長
 佐波正一(1980~86)経団連副会長
 青井舒一(1987~92)経団連副会長・経済同友会副代表幹事
 西村泰三(96~2000)経団連副会長・経団連評議会議長
 岡村 正(2000~05)日本商工会議所会頭・経団連副会長
 西田厚聰(2005~09)経団連副会長
 佐々木則夫(09~13)経団連副会長

 引用は以下の記事より
 東芝が失う「財界活動」の特別パスポート
 週刊東洋経済ビジネス 2015年07月28日 前田 佳子
 http://toyokeizai.net/articles/-/78449

このように一覧を見てみると東芝が常に日本の経済界のいわば「大番頭」を務めてきたことが分かりますが、その中でもより大きな位置を占めた人物は1965年から72年まで社長を務め、その後に経団連会長となった土光敏夫氏でした。
日本に原発を導入したのは政治家では元中曽根首相であったことに対し、経済界で積極的な旗振り役となったのが土光敏夫氏だったからです。実際に土光氏が社長時代に福島第一原発の建設に大きく関わりました。
福島第一原発1号機は、東海原発、敦賀原発、美浜原発につぐ日本で4番目の原発として1971年3月26日より運転開始。このときはGE社純正でしたが東芝は大きく技術を習得していきました。

土光氏は社長退任後に経団連会長となり、さらに原発建設を推進。東芝を強力に後押しし、福島第一原発2号機(74年7月18日運転開始)では付属設備を担わせ、3号機(76年3月27日運転開始)はついに東芝純正となりました。
ちなみに4号機(78年10月12日運転開始)は全面的に日立に担わせ、5号機(78年4月18日運転開始)は再び東芝純正。6号機(79年10月24日運転開始)は改良の必要が生じたためGEが製造し、再び付帯設備を東芝が担いました。
このようにまさに土光敏夫氏のもとで東芝がリーディングしつつ次々と作られていったのが福島第一原発だったのです。なお福島第二も1号機と3号機が東芝製、2号機と4号機が日立製です。

さらに1980年代にいたるや土光氏はこの国の方向性により決定的な役割を果たしました。世界的な新保守主義ないし新自由主義の台頭のもと、首相に登りつめた日本への原発導入者の中曽根康弘氏のもとで行財政改革に大きくコミットしたのです。
これを臨時行政調査会=臨調と呼びます。正確には第二臨調になるのですが、土光氏がリーディングしたことで土光臨調とも呼ばれました。何をしたのかというと国鉄、電電公社、専売公社など三公社の民営化などでした。
新自由主義のもと、すべてを市場経済の自由競争に任せれば良い、政府による社会保障サービスを減らし、人々を競争に追い込むべきたという考えに立った施策で、この下に国鉄労働組合が酷い方法で解体され、非正規雇用拡大の道が切り開かれました。

ちなみに僕は一貫して福島原発事故は、かつての戦争に大きくつながっていること、なかでもアジア侵略戦争の中で行われた軍隊「慰安婦」制度などとのつながりが深いことを指摘してきましたが、ここでは人物的なつながりも見いだせます。
まず原発と新自由主義を日本に導入した中曽根元首相こそ、軍隊の将校時代に「慰安所」建設を推し進めた張本人でした。本人の著書の中に書かれています。(ただし自分の作った「慰安所」が性奴隷施設であったことは否定)
さらに福島原発誘致を促進し、県の土地調査結果も踏み潰して建設独断的に採決した木村守江元福島県知事(任期1964~76)は南京大虐殺を行った「歩兵65連隊(福島会津若松)」の軍医で「聖戦の勇士」と呼ばれた人物でした。

木村軍医は南京戦に関するレポートを軍事郵便でこう書き綴っています。「捕虜二万余の始末に困った」「捕虜をどうしたかと言うことは軍司令官の令に由った丈で此処には書くことが出来ぬから御想像にまかせることにする」。
どうみても大量虐殺に直接に関与し、しかもそれを誇っているのです。そういう人物が中曽根氏のもとで導入された原発を福島の地で次々と建てされたのでした。(ただしもともとの誘致を行ったのは先任の佐藤善一郎知事)
この時、日本兵たちは各地で殺人ばかりでなくレイプや強奪を繰り返しました。これに手を焼いた軍部が南京虐殺の総括の上に作りだしたのが「慰安所」なのでした。主要目的はレイプを減らすことで、兵士が性病にかかり損耗することを防ぐことでした。
なお木村元知事が、南京大虐殺に関与した軍医であったことは以下に詳しく紹介されています。

 南京大虐殺の「勇士 木村守江」は福島原発導入の張本人だった!~レイバーネットTVで明らかに
 http://www.labornetjp.org/news/2015/1209shasin

土光敏夫氏自身は、戦中の多くを軍需産業の一員として国内で過ごしていたようですが、ともあれこうした戦前の流れが断ち切られないままにこの国に原発が導入され、なおかつ新自由主義が持ち込まれる中でその両者で力を発揮したのが彼だったのでした。
こうした産業界への大きな「功績」のもとに東芝はその後も経団連副会長の座に常についてきたのでした。その東芝が不正会計で信用を完全に失墜させ、さらに経営危機にまで陥っているのです。
僕にはこれはある意味でこの国の原子力産業と、新自由主義政策の末路の象徴であるようにも思えます。いやそうであるがゆえに東芝を支えることが、東芝のみならず日本経済界全体の問題として意識されているのではないでしょうか。

さてこのように現在の非正規雇用やブラックなあり方が状態化している日本産業界のあり方をリードしてきた東芝は、まさにそれゆえに内部においても企業倫理をどんどんと堕落させ、2008年から7年にもわたって不正会計を続けてしまいました。
アメリカでの原発建設での巻き返しに失敗して以降は、社内で「チャレンジ」と呼ばれる高い売り上げ目標の達成の強要が常態化し、要するにブラック企業化を深め、挙句の果てに内部告発が起こったのですが、そんな東芝の救済は可能なのでしょうか。
僕は不可能だと思います。倫理的に崩壊しているからです。その意味で東芝の崩壊は、原発と新自由主義導入の崩壊の象徴なのです。

しかし小泉政権時代からこの原発推進と新自由主義の徹底化を推し進めてきた安倍自民党政権は、事態を捉え返すことができないがゆえに、破産した事態をさまざまな言い逃れ、すり替え、無視などの連発で認めず、事態の強引な突破を試みています。
その大きな柱は原発輸出です。安倍政権とて国内で原発がもう新たに作れないことは認識しています。幾つかの原発を動かしたとしてもそれだけでは原子力産業の衰退は避けようがない。だからこそ輸出を行おうとしているのです。
そのためには国内を原発ゼロ状態においておくわけにはいかない。幾つかの原発が動かないといくらなんでも国際的信用が得られません。また原発メーカーにも点検料収入も入らない。

それだけではありません。原発を動かしていないと技術の継承もできない。さらにあらゆる機械は止めている期間が長ければ長いだけだめになっていきますから、その面でも早く原発を動かさないと既存の設備もダメになってしまう。
だからこそとにかく動かすこと、東芝が携わっている沸騰水型原発はすぐには動かせないとしても、まずは加圧水型原発を動かして、とにかく原子力産業を死滅から逃れさせ、延命させようとしているのです。
いやその加圧水型原発のメーカーである三菱重工も、蒸気発生器に大きな問題を抱えていて、アメリカのサンオノフレ原発で事故を起こし、廃炉に追い込まれてしまいました。そのため9800億円もの損害賠償を請求されています。

この上にもう一つ大きなことが重なっています。他ならぬ私たち民衆の力です。福島原発事故以降、とにかくものすごい数の原発反対デモが繰り広げられてきました。
絶対多数の議席を誇る安倍政権、与党内には誰も逆らうものなどいない王様状態でも、祖父の岸信介氏をデモで倒されている安倍首相は、このデモを恐れてなかなかに再稼働に踏み切ってはこれませんでした。
しかしそれで日本中の原発がとまってしまっていて、ユーゼックというウラン供給会社が倒産してしまいました。しかも世界4大会社の一つでした。日本民衆の力によって世界の原子力産業の衰退が加速されているのです。

まさにこのような事態の中で、土俵際に追い込まれたがゆえに、安倍政権も原子力村も、非常に苦しい中で再稼働に走り出したことを私たちは見ておく必要があります。
重要なことは二つです。一つに原発再稼働の流れはけして原子力村の側の攻勢ではないということ。原子力産業は行き詰まり、なおかつ追い詰められ、息も絶え絶えです。だから愚かな再稼働に走っています。この根本的な脆弱性をしっかりみすえましょう。
二つにしかしだからこそ大変危険なこと、自らの生き残りのために安全性を無視して走りだしたのですから、深刻な事故の可能性もまた高まっているといわざるを得ません。

ではどうするべきなのか。原子力産業にとって大きなボディーブローとなってきた私たちの反原発運動をさらに継続すること、力を増していくことが一つ。
もう一つはすでに川内で再稼働がなされてしまっている事実、今後高浜も動き出す可能性が否定できない点を見据えつつ、民衆サイドから原発事故への備えを逞しくしていくことです。またこの中で原発をめぐる社会的討論を拡大することです。
災害対策はとりあえず原発の是非は横に置いて行うことができるものです。そうであるがゆえに賛成派、推進派の人々とも同じテーブルにつけます。そうして客観的に事故対策を考えれば原発の危険性や実にくっきりと見えてきます。
だからこそ政府はこれまでまともな災害対策をとってこなかったし、この間も避難計画に関与しようとしないのです。大きな嘘がばれるからです。だとするならば今こそ民衆の側からこの領域に踏み込んでいく必要があります。

次回はこの点を掘り下げます。

続く

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明日に向けて(1198)東芝が5500億円の赤字―原発再稼働強行は瀕死の原発メーカーを守るため

2015年12月25日 15時00分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20151225 15:00)

昨日24日に福井地裁が樋口裁判長が下した高浜原発再稼働禁止仮処分への関西電力の異議申し立てを認め、再稼働を容認する決定を出してしまいました。
しかしそもそも再稼働の前提になる「新規制基準」は、未だ収束もしておらず事故原因も不明確なことが多い「福島原発事故の教訓を踏まえる」ことを電力会社に求めたものですから、まだまだたくさんのことが分からない現段階では無効です。
この点を、明日に向けて(1196)(1197)で論じましたが、今回はそれではなぜ、これほどに理屈的にも辻褄が合わず、到底、教訓を踏まえたとも言えなければ、安全を担保したとも言えない再稼働が強行されるのかを押さえておきたいと思います。
結論は端的に原発メーカーの東芝が瀕死の状態になっており、なおかつ三菱重工も原発部門で大きくつまづいており、ここで原発を稼働させないと、日本の「中核」産業が滅びの道をまっすぐに転がり落ちてしまうためです。

とくに深刻なのは東芝の崩壊です。ご存知のように東芝は、商売の基本中の基本である会計で大きな不正を行ったがゆえに大揺れに揺れています。
隠していた大幅な赤字が表面化するとともに、信用失墜もはなはだしく、株価も急落。とどまるところを知らない状態です。このため21日の発表によれば2016年3月期の業績予想で過去最悪の5500億円の赤字が見込まれています。
この苦境を東芝は7800人をリストラ(2015年で総計10600人)するとともに不採算部門となってしまった家電部門を切り縮めることで凌ぐ方針ですが、はたしてそれで再建ができるのか危ぶまれています。
例えば毎日新聞経済プレミアの今沢真編集長は次のように述べています。

「この記者会見は、東芝の問題が単なる「不正会計」から、「経営危機」という別次元の段階に入った象徴的なものだと筆者は考えている。
もちろん、不正会計で経営が相当悪い方向に向かう感覚はあった。それでも、経営の屋台骨がここまで危機的に揺らぐとは考えていなかった。
それほど今回の巨額の赤字は衝撃的だった。なぜか。東芝の自己資本が急激に減少するからである。 」

「東芝はこうしたリストラの結果、自己資本が大きく減少する。不正会計発覚前の15年3月末に自己資本は1兆840億円あった。それが16年3月末に4300億円になる。
1年で6割の大幅減。再び5500億円の赤字を出すようなことがあったら、自己資本が枯渇してしまう。 」

なお引用は以下の記事からです。

 「もはや経営危機」東芝5500億円赤字の衝撃度
 毎日新聞経済プレミア 2015年12月25日
 http://mainichi.jp/premier/business/articles/20151224/biz/00m/010/012000c

なんと1兆840億円あった自己資本の6割を失ってしまったというのですから打撃ははかりしれません。
まさに深刻な経営危機が東芝を襲っているのです。

どうしてこんなことになってしまったのか。これまでも「明日に向けて」でも紹介してきたように、多くの経済ジャーナリストが「原発部門でのつまづき」を指摘しています。
最も大きいのは、ウェスティングハウス社を市場価格の3倍とも言われた価格(54億ドル=約6000億円)で強引に買収したダメージが払拭できなかったことです。
東芝はなぜそのような大きな賭けにうって出たのか。2000年代になって突如アメリカブッシュジュニア政権が打ち出した「原子力ルネッサンス」宣言を真に受けてしまったからです。「もう一度、原子力産業を隆盛させるぞ」という「大風呂敷」です。

いやより正確には、ブッシュジュニア政権にピッタリと寄り添って新自由主義の道をひた走っていた小泉政権がこれにタイアップし「2005年骨太大綱」などで、原子力産業隆盛の道を大々的にうたいあげたことにこそ東芝は飛びついたのでした。
このためウエスチングハウス社の買収に社運をかけました。なぜかといえば、現在の商業用軽水炉は、大きくは沸騰水型と加圧水型の二つのタイプに分かれれています。ウエスチングハウス社は加圧水型原子炉のもともとの開発メーカーです。
これに対して東芝はアメリカのGE=ゼネラルエレクトリック社が開発した沸騰水型原発を製造してきたわけですが、ここでウエスチングハウス社を傘下に収めることができれば、原子力産業のリーディングカンパニーになれると踏んだのです。

ちなみにウエスチングハウス社は、もともと潜水艦や空母のエンジンを開発・製造してきたアメリカの名うての軍需産業でもありました。原潜や原子力空母のエンジンも手がけており、現在就航しているアメリカの原子力空母のエンジンもすべて同社製です。
これは海の中を潜航したり、洋上にあっても激しい波で揺さぶられる艦船では、炉心の中を水が満たしていないために横揺れで波打ってしまう可能性のある沸騰水型原子炉は使えないためです。
しかしアメリカの原子力産業の衰退の中でウエスチングハウス社も経営悪化し、軍需部門をノースロップグラマン社に売却、原子力部門もイギリス核燃料会社(BFNL)に売却されてしまいましたが、東芝はこれを市場価格の3倍の価格で買い取ったのでした。

しかしその直後の2008年にリーマンショックに襲われるや否や、たちまちこの無理がたたり、東芝はこの時点からすでに不正会計に踏み込みはじめました。
もちろん東芝経営陣とて不正会計が破滅の道であることは熟知しており、経営の好転による苦境からの脱却が目指されました。その大きな柱に据えられたのが、柏崎刈羽原発を再稼働するとともに日本で初の原発輸出をアメリカ向けに行うことでした。
かくしてサウスカロライナ原発建設計画が立ちあがり、東芝の子会社となったウエスチングハウス社製の加圧水型原発2基が採用されることとなりました。

ところがこの時、東芝を震撼させる事態が勃発しました。それこそが福島原発事故でした。
なぜだったのか。そもそも深刻な事故を起こした福島原発の2号機、3号機をはじめ、福島第一原発の6つの原子炉の製造に東芝が大きくかかわっていたからです。
このことで東芝は原発メーカーとしての信用を大きく損なってしまい、アメリカでの原発建設の道が閉ざされてしまいました。同時に柏崎刈羽原発再稼働の道も大きく遠のきました。経営苦境を脱出するための大きな柱が折れてしまったのでした。

続く

*****

なお今宵は首相官邸前や電力会社前に駆けつけて、福井地裁の不当判断に抗議し、高浜原発再稼働反対の大きな声をあげましょう!僕もこれから出かけます!

 

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明日に向けて(1197)新規制基準に基づく再稼働判断の誤りを突き出し、高浜原発を止め続けよう!

2015年12月25日 01時00分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20151225 01:00)

みなさま。メリークリスマスです!
今宵は前回の続きもアップします!

前回、新規制基準をめぐる矛盾についても述べましたが、実はこの点も後藤政志さんが前々から指摘されてきたことです。福島原発事故は未だ原因の解明がすべてなされておらず、分かってないことがまだまだ多い。だから今回のような発表も出てくるのです。
ところが新規制基準は「福島原発事故の教訓を踏まえた対策」を求めているのです。しかも過酷事故を起こしても、福島原発事故で放出された放射能の100分の1になることを求めています。
しかし事故の全容が判明しないのに、どうして対策が建てられるのでしょうか。いやそもそも福島原発事故はいまだに収束などしておらず、相変わらず海に膨大な放射能が垂れ流され続けています。それでなぜ100分の1などという目標が出せるのでしょうか。

特に深刻なのは、過酷事故が起こるとシール材がやられてしまい、想定になかった電磁弁の不具合だとか、格納容器からの放射能漏れが起こってしまうことが明らかになったことです。
原子炉は巨大な鉄の構造物であると同時に、配管やバルブをはじめ、無数の接合点を有しているため、非常にたくさんのシール材が使われています。鉄と鉄を接合するたけでは密閉構造を作れないからです。
このため柔軟な材料をはさんで加締めることなどで密閉性を確保しているわけですが、一般に柔軟な素材は熱に弱いために、鉄材がクリアできる温度でも先にやられてしまうわけです。

東電は今回の発表で柏崎刈羽原発の再稼働に向けた対策として、当該部分のシール材を熱に強いものに変えると表明していますが、「熱に強い」と言っても、一体、何度まで耐えられるようにするというのでしょうか。
またすべてのシール材の耐熱温度を確かめる実験はなされたのでしょうか。さらに言えばそもそも設計士の想定を越えた過酷事故が発生した場合、各シール材にかかる熱が何度になるか想定できるのでしょうか?
福島原発事故ではこのシール材が激しく突破されてしまい、格納容器の最大の任務である放射能を閉じ込めることに大失敗してしまったのです。それほどに根本的な欠陥、設計の限界であるのに、こんなに簡単に越えられるのでしょうか。

しかも現段階ではこれらの点を東電ですらが「可能性」と語っているに過ぎないのです。確定とは言えない。あくまでも現に起こったことを推定しているのであって、事実は違っていたのかもしれない。
そうであるとすればまだ判明していない原因がありうるということなのです。いや実際に4年9カ月経ってそれまで分からなかったことが分かったのですから、同じように今はまだ分からないことがあると考えるのが当然です。だから「可能性」なのです。
とするならば新規制基準には大きな抜け穴があることも容易に分かります。少なくとも福島原発事故の教訓を踏まえた対策をとるというのなら、すべてが確定的に分かってからでなけれができないのが道理です。

福井裁判所の今回の判断も、新規制基準のさまざまな矛盾を指摘した樋口裁判長の真っ当な仮処分判断を、何らの正当な根拠もなく覆したものであり、新規制基準の大きな抜け穴を見てみぬフリをしたものに他なりません。
このような理不尽なあり方に対して私たちは正々堂々たる抗議を行い、再稼働反対の声をより大きくするだけです。そのためにも、12月17日の東電の発表が、新規制基準の前提を覆しているものであることに着目し、この点も各地で広げていきましょう。
ちなみに東電が17日に発表したのも、24日に判断が出され人々の怒りがそちらに流れるだろうことを計算してのことでしょう。東電はそういうことばかりに知恵を回します。しかしそんなことに騙されてなるものか。東電への厳しいウォッチも継続しましょう。

福井裁判所も、その後ろに控える安倍政権も、このように再稼働容認判断が何らの合理性も正当性もなく、説得力がないことを熟知しているがゆえに、人々が一時の幸せを享受しているクリスマスにあえてこの判断を出したのです。
そのまま年末年始に向かうために最もデモや抗議行動が起こしにくいことを計算の上でです。しかしこのいやらしい時期の選び方はそれだけ民衆の怒りを恐れている証です。心底怖いのです。だからこんな時期を狙うのです。
これは祖父である岸信介元首相を国会を取り巻くデモで倒された安倍首相のDNAに刷りこまれた恐怖だとも言えるでしょう。だったら私たちは安倍政権が最も恐れている道を堂々と、しなやかに、かつのびやかに歩もうではありませんか!

今宵が明けて金曜日の朝を向かいます。この日の夜には首相官邸前や全国の電力会社前などで怒りのスタンディングやデモンストレーションが行われるでしょう。いや積極的に呼び掛け合って行いましょう!
僕も関西電力京都支店前の行動に駆けつけるつもりです。
みなさん。これでひるんではならないしひるむ必要もありません。さらに前に進みましょう!

なお重要な内容ですので、前回ご紹介した東京新聞の記事を貼り付けておきます。

*****

福島原発事故 2・3号機の部品溶融 注水遅れ外部汚染要因
東京新聞2015年12月18日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2015121802100005.html

東京電力は十七日、福島第一原発事故の際、2号機で原子炉圧力容器内の蒸気を抜いて圧力を下げる「逃がし安全弁」と呼ばれる弁を作動させるための装置のシール材が、高熱で溶けていた可能性があると発表した。
また3号機でも原子炉格納容器のふたのシール材が溶け、放射性物質を含んだ蒸気が隙間から直接、環境に放出されていた可能性が高いことも分かった。
いずれも事故の未解明部分として進めていた調査で判明した。2号機のシール材溶融は「原子炉の圧力を下げる作業が難航し、注水が遅れた要因の一つとなった可能性もある」としている。

2号機では、逃がし安全弁を作動させるために窒素ガスを送り込む「電磁弁」と呼ばれる装置のゴム製シール材が溶けた可能性がある。耐熱温度は約一七〇度だったが、検証の結果、高温だと短時間の使用にしか耐えられないことが判明した。
2号機では二〇一一年三月十四日、原子炉に注水を続けてきた冷却装置が停止、消防車による代替注水を試みたが、炉内圧力が高く水が入らなかった。
東電は圧力容器の蒸気を抜くため仮設バッテリーで八個ある逃がし安全弁を開く操作をしたが難航。何度か操作するうち、弁が開いて注水が可能になった。
東電は、電磁弁のシール材が溶けたことで窒素ガスが漏れ、逃がし安全弁が作動しなかった可能性があるとみている。

一方、3号機でも格納容器のふたの接合部に使われていたシリコーン製シール材の耐熱性が不十分だったため高温で溶けて隙間ができ、格納容器の気密性が失われた。
3号機では格納容器から蒸気を放出するベントを十三~十六日に計六回試みたが、うち四回は格納容器内の圧力や電源不足などの影響で十分な効果がなかったことから、第一原発周辺の土地を汚染した3号機由来の放射性物質の大半は、ベントではなく格納容器

の隙間から放出されたと判断した。

東電は、再稼働を目指す柏崎刈羽原発(新潟県)では高温下でも長時間の使用に耐えられるシール材に交換する方針。

<逃がし安全弁> 原子炉圧力容器の圧力が異常上昇した場合に損傷を防ぐため、容器内の蒸気を格納容器下部の圧力抑制室へ逃がす弁。蒸気は圧力抑制室内の水で冷やされ液化される。原子炉1基に複数設置されている。一定の圧力を超えた場合に自動で作動

するケースと、中央制御室から遠隔操作で作動させるケースがある。弁を作動させるには電源のほか、装置内のピストンを動かすための窒素ガスが必要となる。

*****

連載終わり

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明日に向けて(1196)福島原発はシール剤が溶け事故が悪化!これを反映していない新規制基準は無効だ!

2015年12月24日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20151224 23:30)

本日24日、高浜原発再稼働禁止仮処分への関西電力の異議申し立てに対する福井地裁の判断が出され、再稼働が容認されてしまいました。
危険かつ理不尽極まりない再稼働を容認したこの判断に対して心の底からの怒りを表明します。

この判断は、樋口裁判長のもとで出された、憲法の精神に則り、真の法の精神を示した素晴らしい決定を踏みにじることで、司法の責任や尊厳を自ら足蹴にしたものに他なりません。
司法の独立性を放棄し、国家権力に媚びて人々の人権と人格権を貶めたこの判断に対決あるのみです!民衆の直接行動、デモンストレーションで応えていきましょう。

さてこのように再稼働に向けた動きが高まる中、福島原発事故から4年9カ月も経って福島原発事故の深刻化の要因がまた新たに見つかりました。東電によって17日に発表されました。正確には「可能性」とされているのでまだ確定しでないのですが・・・。
明らかになったのは福島原発事故時に2号機圧力容器内の蒸気を抜いて圧力を下げるための「逃がし安全弁」が働かなかったことや、3号機で格納容器の蓋の部分の密閉性が失われたことなどです。
この二つの事態はともにこれらの部分に使われていたシール材(ガスケット)が事故で発生した高温に耐えきれずに溶けてしまったことを原因としています。

以下に東電が記者会見の際に配布した資料のアドレスをあげておきます。

 福島原子力事故発生後の詳細な進展メカニズムに関する未確認・未解明事項の調査・検討結果のご報告~ 第4回進捗報告~(概要と詳細)
 http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu15_j/images/151217j0101.pdf
 http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu15_j/images/151217j0102.pdf

 福島第一原子力発電所1~3 号機の炉心・格納容器の状態の推定と未解明問題に関する検討 第4回進捗報告
 http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu15_j/images/151217j0104.pdf

量が多いので、今後、詳細な点を分析することとして、今日のところは配布資料を参照しつつ、主要にこの内容を伝えた東京新聞の報道に即しつつ検討を行っておきたいと思います。
参照するのは以下の記事です。

 福島原発事故 2・3号機の部品溶融 注水遅れ外部汚染要因
 東京新聞2015年12月18日
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2015121802100005.html

前提として押さえておくべきことは深刻な事故を起こした1~4号機はほぼ同じ構造(マークⅠ型と改良型)で、圧力容器内部で燃料損傷事故が発生し、高温化によって内部圧力が高まった場合、発生した蒸気を圧力抑制室に導くようになっていたことです。
東電の資料から原子炉の構造図などを参照しつつ読んでいただければ分かりやすいと思うのですが、ともあれ圧力抑制室とは、文字通り、原子炉内で事故などで発生した圧力=蒸気を「抑制」すべく取り付けられた装置です。
フラスコ型の格納容器の下方の周りにドーナツのような形に取り付けられたもので、中に水が張ってあり、この水の中に圧力容器の中の水蒸気を導いて噴出させて蒸気を気体から液体=水に戻して一気に体積を小さくする(抑制する)ことを目指していました。

ところがこのため逃がし安全弁を作動させるため、安全弁のピストンを動かす電磁弁を開け、窒素ガスによって弁をあける動作をしたものの、電磁弁のシール材が溶けて窒素ガスが漏れてピストンが動かず安全弁を動かせなかった可能性があるというのです。
このため2号機は冷却装置ダウン以降に消防車で注水をしようとしたものの、圧力容器内の圧力が高すぎて注水できない状態が続きました。記事では仮設バッテリーで8個ある安全弁を開く操作を何度かするうちに注水が可能になったと書かれています。
しかし2号機はやがて格納容器内の圧力が高まってしまい、本来は閉じ込めておくべき放射能と一緒に内部のガスを放出するベントを試みたのですが、1号機や3号機と違って最後までベントの弁が開かず、格納容器の深刻な破壊をもたらしてしまいました。

これに対して3号機の場合も電力不足から当初は逃がし安全弁が開かなかったものの約5時間後に作動しました。
しかし格納容器内の圧力が高まるや格納容器とその蓋を接合する部分のシール材が溶けて気密性が失われ、ガスが大量に漏洩してしまいました。
この間、6回のベントが試みられましたが、うち4回は思ったほどの効果があげられず、結局、3号機から噴出した放射能による周囲の被曝は主にこのシール材が溶けたところから漏洩したものであることも分かったとされています。

以上が主要に明らかにされた点ですが、これらには重要な問題が孕まれています。
まず現在の再稼働の動きと絡んでもっとも大事なことは、福島原発事故の深刻化の要因が今になってまた一つ明らかになったわけですが、しかし現段階では「可能性」として浮上しているだけで、確定しておらずまだ他の可能性もありうるということです。
これに対して再稼働を認める条件である「新規制基準」はこの事態が明らかにされる前に作られたのですからこの内容が反映されていません。しかもまだ「可能性」なのですから反映のしようもありません。だから再稼働判断など出せない。無効なのです!

続く

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明日に向けて(1195)『原発からの命の守り方』への反応と拡散のためのお願い

2015年12月22日 17時00分00秒 | 「原発からの命の守り方」発売中です!

守田です。(20151222 17:00)

11月4日に発売された『原発からの命の守り方』、お陰さまでとてもよく売れています。
一カ月半あまりが経って、いろいろな反応が出てきました。
まずご報告したいのは日本図書館協会の選定図書に指定されたことです。
年刊6万点は出ると言われている新書の中から選ばれるのだそうで、およそ16%が該当し、全国の図書館に推薦が送られるとのことです。とても光栄です。

論評や書評も出てきています。
まずは毎日新聞鳥取支局で知人の太田裕之記者が短いスペースながらも素敵な紹介を書いてくれました。

 直言曲言 京都在住の知人でフリーライター、守田敏也さんが・・・
 毎日新聞2015年12月6日 鳥取版
 http://mainichi.jp/articles/20151206/ddl/k31/070/353000c

 京都在住の知人でフリーライター、守田敏也さんが新著「原発からの命の守り方」(海象社、1490円)を出版した。東京電力福島第1原発の事故以降、被ばくの問題と対処法を研究し、「明日に向けて」と題したブログや全国各地での講演で発信し続けている▼副題は「いまそこにある危険とどう向き合うか」。次々に進められる再稼働では完全な安全性が保証されたわけではなく、重大事故が起きた場合の避難計画も実効性は不明。停止中の原発でも冷却し続けなければならない使用済み燃料棒によるリスクは常にある▼福島の事故で多くの人を被ばくさせた後も原発への固執を続ける国に「もはや命を預けていてはならない」と守田さんは指摘する。「私たち自身で守る力をより強くする」「(もともと)無理な避難計画作りを求められてきた自治体の方たちにも読んでいただきたい」。原発に隣接する鳥取県の人たちにも参考になると思う。【太田裕之】

個人・団体のブログでは東日本震災避難者の会の「サンドリ文庫」、「SAVE LIFE action」への佐藤光夫さんの投稿、滋賀県東近江市の「でこ姉妹舎・アートにどぼん」でも取り上げて下さいました。
大阪府高槻市,茨木市,島本町などで活動している「星の対話プロジェクト」(災害避難者の人権ネットワーク)、また「脱原発の日ブログ」でも触れていただいています。それぞれのみなさまに感謝しつつ、リンク先をご紹介します。

 東日本大震災避難者の会 サンドリ文庫
 http://linkis.com/WOaLR

 SAVE LIFE action 佐藤光夫さんの投稿
 http://save-life-action.org/10-21-2015.htm

 でこ姉妹舎 アートにどぼん
 http://dekosimaisha.shiga-saku.net/e1205419.html

 星の対話プロジェクト(災害避難者の人権ネットワーク)
 http://starsdialog.blog.jp/archives/45831461.html

 脱原発の日ブログ
 http://ameblo.jp/datsugenpatsu1208/entry-12086093487.html


アマゾンのカスタマーレビューでも取り上げられました。
特にご紹介したいのは、知人でもある「哲郎さん」の書評です。
哲郎さんは200以上の書籍に関する説得力のあるレビューを掲載していて、アマゾントップ1000レビュアーに選ばれている方です。

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原発防災のリアリティを解き明かす伝道書
投稿者  哲郎  トップ1000レビュアー 投稿日 2015/12/21

著者はすでに岩波ブックレット『内部被曝』で、一般にはなじみがなかった(そして原子力ムラからはその恐ろしさを隠ぺいされていた)原発放射能による人体へのダメージを人々に分かりやすく伝えている。
社会科学を基礎とした人間と社会への洞察を背景に、福島第1原発事故のあり得た災害規模、災害から避難するとはどういうことか、為政者はどういう情報操作を行うか、そして改めてアルファ線・ベータ線が人体にどういう作用を及ぼすかなどを、透視画のように明晰に解説してくれる。
兵庫県篠山市の原子力災害対策検討委員会で有識者として活動した経験から、人が陥りやすい心理的バイアス、それを克服する防災訓練などの有効性などを、あたかもそばで見ているような臨場感を感じさせる解説をしてくれる。
困難の中にある福島のに人びとへの同情、再稼働を始めた原子力ムラの政府と事業者への憤り、肥田俊太郎医師からの聞き取りなど、暖かさと知性を感じさせる筆致に、快い共感を覚えた。
評者がとくに勉強になったところを以下に挙げる。
-福島第1から放射能が飛散した範囲が250kmを超えており、様々な僥倖に助けられることがなかったら、東京圏も居住不能になった可能性があること。
-各原発地元自治体が過酷事故時の避難計画立案を求められているが、すべての人が避難できる計画が立てられないこと。
-避難行動について、津波や洪水からの避難の歴史から、行政が号令をかけるのではなくて個人ひとりひとりが自分で身を守るという行動をとる以外に方法がないこと。
-官庁の発する原発避難指示はどうしても手遅れで、かつ、範囲が過小になること。
-被ばくによる体内のダメージは、エネルギーだけでは表現できないこと。
-ICRPの基準は人柱を前提にして原発推進を行うためのALARA原則によること。
-安定ヨウ素剤はすぐのむこと。副作用は実質微少であること。
-行政が行う防災訓練は十分に効果があること。
きわめて実践的な指針が示されており、原発地元の人々や防災担当の方々にとって過不足ない教科書だと思う。


もう一つは遠藤忠様の投稿です。内容紹介というより本書を読んで思われたことの紹介となっています。

原発被害について
投稿者  遠藤忠   投稿日 2015/12/18

原発事故で懸念されるのは、被害補償である。日本の原発でチェルノブイリ級の事故が起こった場合、その損害額は数百兆円に昇るとみられているが、現行制度では、電力会社には千二百億円の保険加入義務しかない。実際、福島事故では今もなお多くの避難民の方が十分な補償を受けられず苦しんでいる。
そこで、再稼働の条件として、稼働する原発に対し電力会社の全社員及びその家族が各人数億円規模の保証を締結することを提案したい。
一見厳しい条件のようだが、再稼働について国民の理解を得られる自信があるなら、家族を説得することなど朝飯前であろう。(私が家族の立場なら即絶縁するが)
もちろん、首相や関係閣僚及びその家族・秘書の方々にも原発保証に加わっていただきたい。その位のリスクを背負った上で再稼働を決めるのが、真の覚悟ある決断である。

*****

こうしてとりあげていただけるのはとてもありがたいです。
出版を祝う会に寄せていただいた本当に温かいみなさんの思いやこうした評価にお答えし、さらに頑張って活動をレベルアップしていきたいと思いますが、そのために本書をもっと大きく広げたいと思っています。
何よりそのことで、原発からの命を守るすべを大きく広げていきたい。同時にその中でまた原発とは何か、なぜ、どこがどのように危険なのかというリアルな討論を広げていきたいです。
しかもそれを国内にとどまることなく世界に広げていきたいと思います。核の恐怖から解き放たれていくのは全世界の民衆の共通の課題だからです。

そのためにぜひお願いしたいことがあります。
1、本書をぜひお読み下さい。
2、読んだら知人にご紹介ください。できれば感想も伝えてください。
3、周りの方と学習会などでお役立てください。
4、可能な方は感想を文字にしてお寄せ下さい。できるところに投稿してください。
5、お近くの図書館に本書をリクエストしてください。

これらの情報をお寄せいただけたらぜひフィードバックさせていただきます。
本書の最終章で触れた兵庫県篠山市では来年1月末から安定ヨウ素剤の事前配布を始めます。話題になると思いますので、ぜひ篠山市のこの行動ともタイアップしつつ本書を広げていきたいです。
心の底からご協力をお願いします!

*****

なお出版元の海象社さんによる本書の紹介と購入案内が記されたページもしめしておきます。
DE かいぞう 58号
http://www.kaizosha.co.jp/HTML/DEKaizo58.html

コメント

明日に向けて(1194)『原発からの命の守り方』出版を祝う会へのお礼です!

2015年12月21日 23時30分00秒 | 「原発からの命の守り方」発売中です!

守田です。(20151221 23:30)

12月12日に新著『原発からの命の守り方』の出版を祝う会を友人たちが京都市で開催してくださいました。
たくさんの方が集まってくださいました。ものすごく嬉しかったです。
Facebookには数日後にお礼を出したのですが、この場では次々と生じる事態に対応していてお礼を出すのが遅れてしまいました。すみません。Facebookに出したものを転載させていただき、お礼に代えさせていただきたいと思います。

***

御礼!

みなさま。12日に新著『原発からの命の守り方』の出版を祝ってくださる会を開催していただき、90人近い方が駆けつけて下さいました。本も72冊も買っていただけました。
ご参加いただいたみなさま。本当にありがとうございました。心からお礼申し上げます。
会場ではなんだか舞い上がっていて、十分にお礼の言葉を尽くせませんでした。この場を借りて心からの感謝をお伝えしたいです。

とくに発言をいただいたみなさん、準備していただいたみなさん、おいしいビールやコーヒー、食べものを意用してくださったみなさん、本当にありがとうございました。
また僕にとって嬉しかったのは今回、新旧の仲間たち、友人、知人、そして僕のブログなどを読んで下さっている方など、多様な方が駆けつけて下さったことです。
僕の福島原発事故直後の活動を最も後押ししてくれた親友、故安藤栄里子さんのご両親をはじめ、ピースウォーク京都以来の仲間やつばめ劇団の面々、放射線防護、脱原発運動で新たに知り合った方々、京都被爆2世3世の会の方たちなど本当にたくさんです。

そんなみなさんを前に記念講演もさせていただきましたが、今までで一番上がりました(笑)
またその後の発言でもみなさんが次々と僕をほめそやしてくださるのでなんだか気恥ずかしく、やはりずっとあがっていました。いやもう本当にありがたや、ありがたやでした。
こんなに大事にしてもらってしかも褒めちぎられてしまったら、頑張るしかないなあとしみじみ思っています。

すでに会場でも、また「明日に向けて」でもお伝えしましたが、この本の作成の舞台ともなった兵庫県篠山市でこのお祝い会の前日まで市議会が開かれていました。
篠山市では来年1月からの安定ヨウ素剤配布に向けた準備を幾重にも重ねてきているのですが、それでも市議会から「準備不十分」を理由に待ったがかかり、予算が却下されるかもしれない事態に。
そのこともあって前日は原子力災害対策検討委員会の緊急会議があって駆けつけていたのですが、結局、予算案は午後3時過ぎに委員会を通過し本会議にまわることになってほぼ成立の目途が立ちました。これで事前配布実行にさらに一歩近付けました。
年明け早々に大々的な配布が開始されると思います。

今後もこの篠山市の実践にしっかりと根をおろしつつ、原発からいかに命を守るのかの論議と実践をみなさんと一緒に各地に広げていきたいと思います。その中から民主主義の大きな発展・レベルアップを目指したいです。
みなさま、骨身を削って頑張ります。あ、だからといって身体を悪くすることなく、健康的に、元気いっぱいに骨身を削ります(笑)
これからもどうかよろしくお願いします。本当にありがとうございました。

***

当日、IWJ京都の萩崎さんが中継してくださいました。以下にアドレスをご紹介しています。

 【京都】守田敏也さん『原発からの命の守り方』(海象社)出版を祝う会(動画)
 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/278379

当日はオープニングに豪華なピアノ演奏があり、途中でボサノバの美声を持っている友人がプロのギタリストの伴奏で3曲もの歌をプレゼントしてくれました。グッときました!
お祝いにいろいろなものもいただきました。
お酒(日本酒・ワイン)、アロマオイルとミスト機のセット、天然素材クッキー、チョコレートセット、漢方薬、僕が飲んでいる漢方薬のもとになる黄連という草(驚いた)、そしてカンパなどなど・・・。
僕は本当に仲間や先達、後輩に恵まれたなあと思います。

この他にお祝いの言葉自身はこの会にこれなかった友人・知人からも本当にたくさんいただきました。
多くの方が企画などが被っていて、これない代わりにと豪華なシュトーレンを送ってきてくれた友人もいました。
この山のような温かい励ましの声を力に変えてさらに前に進んでいきたいと思います。

なお本書への書評などの反応も出始めています。次回にそれらをご紹介します。

コメント

明日に向けて(1193)現代科学では原発も放射能も管理不能だ!(後藤さん講演会を振り返って)

2015年12月18日 21時30分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20151218 21:30)

17日に後藤政志さんをお招きして高浜原発再稼働の危険性を聞く会を持ちました。
準備期間一週間の緊急企画でしたが、予想を大きく上回り40人を上回る方が参加して下さいました。
友人の新宮真知子さんがFacebookに写真をアップしてくださったので自分のタイムラインにシェアさせていただいています。以下、紹介します。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=874247562696184&set=pcb.874247839362823&type=3&theater

IWJ京都の萩原さんが中継をしてくださいましたのでアドレスをご紹介しておきます。
ぜひご覧下さい。なおIWJの会員登録をされてこうした報道を支えて下さることもお願いしたいと思います。

http://iwj.co.jp/wj/open/archives/279080
 

今回の緊急企画の主催は「本田久美子さんを勝手に応援する会」と「ノンべクキッチンホテヴィラ」でした。
本田久美子さんは京都市長選に挑戦している方で、僕も勝手連で応援しているのですが、この日はご本人にも忙しい中で参加していただくことができ、みなさんと後藤さんのお話を聞くことができました。

後藤さんにはまず高浜原発再稼働の危険性のダイジェストを語っていただきましたが、後藤さんが真っ先に挙げられたのは、加圧水型原発のもともとの構造上の問題点である制御棒挿入の問題。
沸騰水型は下から、加圧水型は上から差し込むのですが、地震で大きく揺れたときに果たしてきちんと入るのか信頼が持てないという欠陥を抱えています。
この他にも地震はプラントにとって大きな脅威であるわけですから、あらかじめどれだけの地震が来るという予測を行って設計がなされてきました。

実はここに抜本的な問題が横たわっています。そもそも来るべき地震の規模を現代科学で予測できるのかという問題です。
例えば新潟の柏崎刈羽原発は予想される最大の地震の規模=設計基準地震動を450ガルと設定していました。しかし2007年の中越沖地震でこの原発は1699ガルの揺れに襲われました。設計基準を4倍も上回っていたのです。
このため柏崎刈羽原発は、福島原発事故ほどの破局には至らなかったものの激しく損傷し、現在にいたるも再稼働できていません。膨大な放射能漏れに至らなかったのが幸いというべき事態でした。

世界最大の出力を持つ原発がすでに8年5カ月もとまっているわけですが、ここに表れているのはいかに設計基準地震動動が甘く設定されていたのかという事実です。
いやある意味で「甘い」というよりもより重要なのはそもそも現代科学で地震の規模を正確に予知することなどできないという問題です。
にもかかわらず、原子力規制庁が設けた再稼働に向けて新たな規制基準は、この重大な点を無視しておりそれだけでもアウトです。

後藤さんはここから始めて、さまざまに高浜原発、のみならず川内原発や伊方原発など加圧水型原発の抱えている構造的矛盾と危険性、さらに沸騰水型原発にも共通する原発全体の問題点を話して下さいました。
その際に参加者の胸を深く打ったのは、その多くが後藤さんが実際に格納容器の設計に携わった過程の深い反省から成り立っていることでした。
後藤さんは福島原発事故での水素爆発などについても「私に深い責任があります」と語られました。

これは夏に行った後藤さんと僕との対談内容を受けた内容の中での発言でもありました。
後藤さんが東芝に入社し、はじめて格納容器の設計に携わられた時、一番驚いたのは格納容器に圧力の逃し弁がないことだったとそうです。
普通、ボイラーなどには必ず逃し弁がついている。幾つもです。戦後直後にはボイラーの爆発事故が多発したこともあり、いざという時の安全装置として必須のものとされたのです。

ところが同じような密閉構造の格納容器に弁がついていなかった。最初は「え、大丈夫なのか」と思ったそうです。しかし暫くして「そうか。格納容器は放射能を閉じ込めるのが役目だから安全弁などないんだ。すごい装置だな」と思ったのだとか。
「俺は逃し弁など必要のない凄い装置に関わっているんだ」と嬉しくもなったとも語られていました。ところが暫くしてから風向きが変わってきた。
社内に「安全部」というところがあるのだそうですが、そこの人が来て後藤さんにひそひそ声で「実はいざとなったら緊急冷却装置が働かなくなることがあることが分かった。そうなったらどれぐらいの圧力まで持つか教えてくれ」というのだそうです。

「そんなこと言われたって設計仕様に4気圧と書いてあるでしょう」と答えると、「それじゃあ困る。もっともってくれないと」というのだそうです。
「それならどれぐらいもたして欲しいの?」と聞いたら「3倍」との答え。「そんなのは絶対に無理」と突っぱねつつ、なおも迫られて止むをえず「えいや」と答えたのが「2倍」だったそうです。
そんなやり取りを経て、格納容器に逃がし弁である「ベント」がつけられるようになり、格納容器の圧力が設計基準の2倍になったときに使われることになったのだとか。

ところがこの2倍という値、「間違っていました」と後藤さんは述べられました。圧力容器内で発生し格納容器の中に漏れ出てくる水素を十分に計算に入れていなかったのだそうです。
そのため福島原発事故で水素爆発が起こった時に強い責任を感じられたそうです。「これは私が責められてもまったくやむを得ないことです」と後藤さんは語られました。
後藤さんはこのように、かつて自分が分からなかったこと、技術者として間違えていたことを包み隠さずに明らかにしながら話をされます。だからこそ話に深いリアリティがある。ジーンと感じ入りながら聞き入りました。


さてこの日の話の詳細はまた時間をかけて紹介していこうと思いますが、今日、お伝えしたいのはセッションが終わった後のことです。
新宮さんがアップしてくださった写真の最後にも、2時間半あまりに及んだ企画を終え、ホテヴィラ店内に戻ってくつろいでいる後藤さんと僕と新宮さんのスリーショットがあります。
このあと後藤さんと軽くビールを飲んでお話し、来年3月末頃に東京で後藤さんの主催するAPASTでコラボ企画をしようという話しになって、その時に僕が何を話すかを打ち合わせました。

僕としては原発災害対策も捨てがたいのですが、やはりAPASTでの初めてのお話は内部被曝についてにしたいとお伝えしました。後藤さんも東京で内部被曝の話をしっかり聴きたいとの声が強いことを教えて下さいました。
ただ僕自身はこれまで後藤さんと内部被曝をめぐる観点はそれほどお話してきていませんでした。放射能の影響をめぐっては脱原発派の中でもあまりに大きな差異があるわけですが、その点での後藤さんの評価もお聞きしていませんでした。
後藤さん自身は、ご自分の専門が格納容器であることから、放射能の影響への評価にはあまり言及されていません。そうやって専門分野にとどまっていることはできないと地震や安全工学の問題など、次々触れる範囲を広げられては来てはいるのですが。

それで僕は矢ケ崎さんに学びつつ研究を深めてきた僕の観点を説明するために「内部被曝の評価の基礎は原爆を落としたアメリカが作りました。しかし関わっていて思うのは内部被曝のメカニズムなんて本当はほとんど分かっていないことです」と話しました。
どういうことかと言うと、原爆の破裂においても原発事故においても膨大な種類の放射性物質が飛散します。しかもそれが化学的にはさまざまな物質と結合しうるし、本当に多様な形態で人体の中に入ってしまう。
その後の挙動も複雑でどこにどんな物質がどのような形状でどれだけ入り込んだのかなどおよそつかみ切ることはできない。しかもそこから照射された放射線が、当該箇所をどのように破壊したのか、その影響がどのようにでるかなども複雑すぎます。

ところがこの「分からない」事実が明らかになったら、放射性物質の大量の暴露はとても人類に対処も管理できないということが明らかになり、核実験など言語道断だし、放射能漏れの起こる原発も許してはならないことが歴然としてしまいます。
それでアメリカは分かったふりをした。これに世界の原子力村がなびいてみんなで分かったふりをした。いや正確には今も分かったふりをしている。そこに内部被曝問題の大きなミソがあるのです。
ただし分からないことばかりだと言っても、アメリカを中心にICRP(国際放射線防護委員会)が被曝の具体性を無視し、被曝現象を抽象化し、平均化し、単純化することで、被曝影響を小さく見積もっていることだけは十分に解き明かます。

この話をすると、後藤さん、身を乗り出して話を聞いてくださり「原発をめぐる技術とまったく同じだ」と興奮して語りだされました。例えば先ほども述べた設計基準地震動にしたって、そもそも地震のメカニズムが複雑すぎて簡単に出せるわけがない。
いや地震の波動はさまざまな形で伝わってくるわけですから、ある地点への伝わりを地質・地形のすべてを把握した上で導き出すことなどほとんど不可能に近いのです。
しかしそれでは他の構造物と違って万が一にも地震で倒壊することなど許されない原発は建てることができなくなってしまう。だからこそ「分かったふり」をしてきたのです。

「そうだ。分かったふりだ。分からないことは分からないというのが本当の科学なのに。そこが歪められてきたのだ。その点で原発のコントロールも放射能の管理も同じだ」と大いに盛り上がりました。
そうなのです。現代科学では原発のコントロールも、放射能の管理も不可能なのです。にもかかわらず、この事実を捻じ曲げ、「分かったふり」をしているのが原子力村であり、核の推進者なのです。この非科学性、非道徳性こそが打ち破られねばなりません。
そのために、今後も後藤政志さんにより深く学び、真実を紡ぎ続けていきたいと強く思いました。緊急講演をしていただいた後藤さんに深い感謝を捧げつつ、とりあえずの報告を終えます。

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なお目前に迫った高浜原発再稼働容認の動きに対して、緊急の署名運動が呼び換えられています。
すでに「明日に向けて(1191)でご紹介していますが、ここでも署名先だけご紹介しておきます。ぜひご協力ください。

【高浜3・4号再稼働反対!】全国ネット署名 関西広域連合宛て
 https://fs224.formasp.jp/f389/form1/

 

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明日に向けて(1192)川内・高浜原発再稼働のあまりの危険性をしっかりとつかみ再稼働阻止力をアップしよう!

2015年12月17日 00時30分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20151217 00:30)

今宵はもう一本記事をアップします。
さきほど高浜原発再稼働反対全国署名のお願をアップしましたが、高浜原発の再稼働と川内原発の再稼働にはその危険性において大きなつながりがあります。

これらについてこの間最も的確な指摘をしてこられたのは、元東芝の格納容器設計者の後藤政志さんですが、すでにお伝えしているように本日17日午後2時より、京都市内でその後藤さんのお話を聞く会を行います。
可能な方はぜひお越しいただきたいと思いますし、IWJの萩原さんが中継してくださいますので、ぜひネットでもご覧になって欲しいと思います。
以下にFacebookイベントページをご紹介しておきます。

 後藤政志さんに聞く高浜原発再稼働の危険性
 ・・・守田敏也がインタビュー形式でお尋ねします!
 https://www.facebook.com/events/145470422484021/

川内・高浜原発再稼働の問題点は、大きくは次の4つのポイントがあげられます。
1、再稼働の前提になっている新規制基準が「重大事故」=過酷事故を前提にしていること。
2、加圧水型原発の新たな事故対策そのものにも大きな危険性が含まれていること。
3、加圧水型原発は蒸気発生器の欠陥を克服できていないこと。
4、実効性のある避難計画がまったく作られていなこと。

1、原子力規制庁が出した原発再稼働に向けた新規制基準では、「重大事故」=過酷事故を絶対に起こさないことを求めてはおらず、起こった時の対策を求めています。
しかしこれは大きな論理矛盾です。過酷事故とは設計士の想定がすべて突破されて安全装置が働かずに放射能が環境中に飛び出してくる事故のことです。想定外の事故なのです。本来、想定外のことに備えるということ自身に矛盾があります。
またこれらは福島原発事故の教訓を踏まえたとされていますが、そもそも福島原発事故はいまだに収束しておらず、何が起こってきたのかもまだつかめていないのであって「教訓」の反映などできようがないのです。

2、その上で新たに施された加圧水型原発に対する事故対策としてもさまざまに誤りがあります。
中でも顕著なのは水素爆発の可能性に対する対策です。加圧水型原発は沸騰水型原発と違って内部に窒素を充填しておらず、重大事故の際に水素がたまりやすいのですが、これに対してイグナイタが付けられています。
水素が危険な濃度に溜まる前に着火して燃やしてしまう装置ですが、もしこの装置自身が故障していたらどうなるのか。しかも何度目かでようやく着火に成功した場合、すでに危険濃度にまで水素が溜まっていればかえって自爆装置になってしまいます。

3、しかも加圧水型原発は加圧されて150気圧300度でまわっている一次冷却水の温度を二次冷却水に伝え、蒸気を発生されてタービンを回す「蒸気発生器」に構造的な欠陥を抱えています。
このためメーカーの三菱重工は何度もこの装置の改良を試みてきましたが、その最新型が2010年代にアメリカのサンオノフレ原発で事故を起こしてしまい、同原発は廃炉に至ってしまいました。
川内原発1号機はこの最新型をつけて再稼働したので危険であり、2号機は直前で最新型への交換を止め、旧来の取り換えが必要と認識された旧型で再稼働したので危険です。高浜原発も同じ致命的な欠陥を有しています。

4、さらに実効性のある避難計画は川内原発に続いて高浜原発の場合もまったく作られていません。
事故が起これば最も過酷な立場に置かれる医療・介護施設などはまったく対策がなされておらず、安定ヨウ素剤の配布などもなされていません。
この点からも再稼働はまったく認められません。

以上がポイントになりますが、後藤さんにお話を聞く企画に向けて、あらかじめここでこれまで「明日に向けて」でお伝えしてきた情報を再掲しておきたいと思います。後藤政志さんはとくにこの間、前述の1と2のポイントについて詳しくお話してくださっています。その中でもとくに重要なのは本年1月に薩摩川内市で行った以下の講演です。

 後藤政志(工学博士)川内原発が溶け落ちるとき~元・原子炉格納容器設計者が問う原発再稼働~
 2015年1月31日 薩摩川内市まごころ文学館にて講演 
 https://www.youtube.com/watch?v=4QEwDJhrwFE&feature=youtu.be

ぜひこれをじっくりと見られることを強くお勧めします。また同時にこの講演に触発されるとともに、原子力規制庁が3月3日から高浜町のケーブルテレビで始めた新規制基準の説明ビデオにも刺激されて、本年3月に以下のように記事を連投しましたので紹介しておきます。
川内・高浜と続いている再稼働の動きへのそれぞれに的確な批判となっていると自負していますのでぜひお読み下さい。

 明日に向けて(1060)あまりに杜撰な川内原発工事認可申請(後藤政志さん談)
 2015年3月24日
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/0870cd08844d3d12e17ae6345ae8b79b

 明日に向けて(1062)原発再稼働に向けた新規制基準は大事故を前提にしている!
 2015年3月28日
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/3d3e4b0cb07ae7a68734a3b52c9c693f

 明日に向けて(1063)福島の教訓に基づく重大事故対策などまだできるわけがない!
 2015年3月29日
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/8718f402298f072498d32eb7f59478f8

 明日に向けて(1064)原子力規制庁・新規制基準の断層と地震動想定のあやまり(後藤政志さん談)
 2015年3月30日
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/a3f0e8c33a857d8a36a56280845eedc1

 明日に向けて(1065)新規制基準の重大事故対策はあまりに非現実的でむしろ危険だ!
 2015年4月6日
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/d4c8272d4c01e698efd2e68600b4b4af

 明日に向けて(1075)川内原発再稼働も禁止すべきだ!~加圧水型原発事故対策の誤りを後藤政志さんに学ぶ~
 2015年4月22日
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/9605e1dc395c1d33815861dad65ac36a

今回の後藤さんにお話を聞く会も事後的に内容を書き起こしてアップしたいと思いますが、これまでの記事を読んでいただいただけでもかなりの知識を得られると思います。
ぜひそれぞれをゆっくりと読まれてみてください。
できるだけ広範なみなさんで後藤さんの知恵をシェアし、賢くなりましょう。賢くなって、川内・高浜のみならずすべての原発の再稼働を食い止める力を高めていきましょう。
 

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明日に向けて(1191)【緊急・拡散大希望】高浜3・4号再稼働反対全国ネット署名にご協力を!(21日24時まで)

2015年12月16日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20151216 23:30)

高浜原発再稼働に向けた動きがにわかに強まってきています。
12月18日、安倍総理を議長とする「原子力防災会議」で避難計画を速攻「了承」するとみられ、20日には、経済産業大臣が福井入り。24日には、福井地裁による高浜原発保全異議決定告知・・・という流れが予想されています。
これに対して緊急の署名が呼びかけられているのでご紹介します。締め切りは21日24時まで。提出は22日です。

ぜひご協力下さい。また拡散にもお力をお貸しください!
よろしくお願いします。

以下、転載です。

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皆様へ
重複失礼します。美浜の会の島田です。
[拡散歓迎です]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【高浜3・4号再稼働反対!】全国ネット署名 関西広域連合宛て
 https://fs224.formasp.jp/f389/form1/
福島原発事故の実態と被害を無視することは許されません
高浜原発3・4号の再稼働に反対を表明してください
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
高浜原発3・4号の再稼働は、高浜原発3・4号の再稼働は、国・関電主導で、地元を抱き込みながら強引に進められています。
関西と首都圏の団体が共同して、再稼働反対の全国ネット署名を開始しました。被害地元である関西広域連合宛てです。ご協力、よろしくお願いします。

★署名はこちらから → https://fs224.formasp.jp/f389/form1/ 
こちらでも署名できます。同じ署名なので、重複なきようお願いします。
https://goo.gl/nXniKp

◇個人署名です。道府県名とお名前をお願いします。
◇署名締め切り:12月21日(月)24時
◇署名提起団体:避難計画を案ずる関西連絡会/グリーン・アクション/原発なしで暮らしたい丹波の会/脱原発はりまアクション/日本消費者連盟関西グループ/美浜の会/国際環境NGO FoE Japan/原子力規制を監視する市民の会

署名の全文 下記にもつけておきます。
[高浜原発3・4号再稼働反対ネット署名 2015.12.16~12.21]

福島原発事故の実態と被害を無視することは許されません
高浜原発3・4号の再稼働に反対を表明してください

関西広域連合委員会 御中

原発事故が起これば、関西は被害地元となります。住民の命と暮らしを守るため、関西広域連合として、再稼働に反対を表明してください。

[要請の理由]
1.避難計画は実効性がありません。
・要援護者の避難先・避難手段は確保されていません。
・介護者が一緒に避難できるのかさえ決まっていません。
・安定ヨウ素剤は京都府30km圏内の7市町で、各1か所に備蓄しているだけです。配布方法などは決まっていません。

2.関電・国の被ばく評価は、福島原発事故を無視した過小評価です。
・5km地点で1mSv以下。福島原発事故並みに評価すれば約780mSvです。
・放射能放出率は福島原発事故時の千分の1以下(4.2テラベクレル)です。

3.高浜原発で事故が起これば、関西1,400万人の命の水瓶である琵琶湖が汚染され、甚大な被害が及びます。

 関西広域連合は、再稼働の同意権は立地の高浜町・福井県だけでなく、30km圏内を含む京都府・滋賀県など関西一円にあると述べてきました。4月には、避難計画等が不備な状況では「再稼働に同意できる環境にはない」と国に求めました。
しかし、11月の国への予算提言では、「再稼働は国の判断で」として、 これまでの姿勢を後退させています。事故が起これば国が責任を取らないことは、福島原発事故の避難者のおかれた状況からも明らかです。

国の防災会議は、12月18日にも高浜原発に関する防災計画を了承しようとしています。しかし、国が形式的に了承しても、避難計画に実効性がない事実はなんら変わりません。原発事故から住民を守るのは、避難計画を策定している自治体の役割です。

要請事項:高浜原発3・4号の再稼働に反対を表明してください。

署名提起団体:避難計画を案ずる関西連絡会/グリーン・アクション/原発なしで暮らしたい丹波の会/脱原発はりまアクション/日本消費者連盟関西グループ/美浜の会/国際環境NGO FoE Japan/原子力規制を監視する市民の会
提出予定:12月22日頃(24日の関西広域連合委員会の前)

※注:関西広域連合委員会のメンバー
連合長:井戸敏三(兵庫県知事)/ 副連合長:仁坂吉伸(和歌山県知事)
委員:滋賀県知事/京都府知事/大阪府知事/鳥取県知事/徳島県知事/奈良県知事/京都市長/大阪市長/堺市長/神戸市長/

 

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