明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(776)安倍首相の靖国参拝強行を批判する

2013年12月30日 23時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131230 23:00)

年末の諸事に奔走していて、明日に向けての更新が滞ってしまいました。申し訳ありません。
小泉原発ゼロ宣言の背景にある自民党政治の変容を論じていましたが、ある意味ではそれを象徴するような安倍首相の靖国参拝の強行と、中国、韓国政府の猛反発、アメリカ政府の不快感、EUやユダヤ人団体の批判などが行われました。

もちろん僕も安倍首相の靖国参拝強行を許せません。しかしこの問題をめぐっては賛否両論を含めて、かなり論理が錯綜していることを感じています。歴史的経緯を追って考えている論考が少ないのが残念です。

なぜ首相の靖国参拝は認められないのか。論点を整理しておきたいと思います。
まず中国や韓国が非常に強い抗議を行っているのは、靖国神社に、第二次世界大戦後の東京裁判でA級戦犯とされた人々が合祀されているからです。合祀とは、申請のあった人物を靖国神社側が認めて「魂を招き」、それまで祀られていた魂と一緒に祀るということです。

これに対して、中国が激しく批判するのは、中国がA級戦犯を、日本の進路を誤らせて中国侵略戦争を起こし、中国民衆、のみならず日本民衆をも悲惨な戦火の中に巻き込んだと捉えてきたからです。この点は、日本民衆にとって極めて重要なポイントながらほとんど論じられていません。

中国は日本との国交回復のときに、戦争における対日賠償請求を国家としては自己放棄してくれているのです。なぜか。先にも述べたごとく、中国は大多数の日本民衆をも軍国主義者の犠牲者と捉えたからです。中国の賠償請求が、犠牲者である日本民衆の上にのしかかることをよしとしなかったのです。これは当時の中国政府が、世界の民衆の利害は一つであるという「国際主義」の立場をとっていたことに影響されたものです。残念ながら現在の中国政府はこの素晴らしい観点をまったく継承していません。

私たちにとって考えなければならないのは、A級戦犯は、「国のために命を捧げた」のではなく、国の進路をあやまり、多くの人々に命を捧げることを強制した人々であるということです。だから中国がA級戦犯合祀を認めないと宣言したのは、私たち日本の民衆の立場にも合致するものです。こうした人々を祀る場に日本の首相が赴くことが許されてよいはずがないのです。

これに対して「右翼」の人々は、繰り返し、東京裁判は戦勝国の側が行った一方的なものであるから無効だと主張しています。安倍首相も本心はそちらの側にあるのでしょう。アメリカはこれに反発して「失望」を示しているわけですが、しかしだから安倍首相の参拝は国益を損ねたという批判は僕は妥当だとは思えません。

東京裁判は、確かに戦勝国側の裁判です。しかしそこには日本軍のむごい侵略を受けたアジア民衆の怒り、苦しみ、嘆きが強く反映されており、単なる戦勝国の側の一方的な裁きだったのではありません。その点で、A級戦犯らが裁かれたことには社会的正義があるのです。
東京裁判に決定的に欠けていたのは、むしろ戦勝国の側の戦争犯罪への裁きです。アメリカによる日本全土の空襲、原爆投下、沖縄上陸作戦の強行による民間人の大量虐殺が裁かれていないことこそ、東京裁判の欠陥なのです。

しかし日本政府も右翼勢力も、ただの一度もこの点を批判などしてきませんでした。その意味で、東京裁判の不当性を批判してきたなどとはまったく言えないのです。右翼など「愛国」といいながら、日本に住まう人々がこれほど酷く殺された歴史を一度も批判してこなかったことが僕には理解できません。というよりこの人たちの国を「愛する」気持ちに少しも誠意など感じられないのです。この点で、右翼による東京裁判批判はまったく的を得ていないことをおさえる必要があります。

一方で問題にしなければならないのは、靖国神社にA級戦犯が祀られていなければそれで良いのかという点です。この点で、朝日新聞や、毎日新聞は、昭和天皇がA級戦犯合祀に非常に強い不快感を示し、合祀後は一度も参拝をしなかったこと。現天皇も参拝を行っていないことを紹介しています。天皇ですらが参拝などする気になれなかったのがA級戦犯であることを紹介することから、安倍首相の参拝を批判していることになります。

これは正しい批判だとは僕には全く思えまえん。そうではなく、靖国神社という「国家装置」そのものが、日本民衆を戦争や国策に駆り立てるものであったこと、このことが批判されなければならないのです。
そもそも靖国神社は本当に「国のために死んだ人」を祀っているのでしょうか。断じて否。もともと天皇のために、より正確には天皇を担いだ時の政権のために、命を投げ出した人々、ないし投げ出させられた人々を祀っているのでしかないのです。

多くの人々が知らないのは、例えば幕末で、幕府の側についた新撰組をはじめ、戊辰戦争で敗れていった側の藩兵などはすべて除外されている点です。西南の役をおこした西郷隆盛もそうです。
さらに第二次世界大戦を前にして、この国の進路をあやまらせないために、戦争に果敢に反対し、特高警察につかまって監獄の露と消えた人々なども入っていません。政府の戦争政策を積極的にせよ消極的にせよ受け入れ、侵略戦争に駆り出されていった人々のみが祀られているのです。これで「国のため」と言えるでしょうか。

しかも戦場に送られた兵士たちは本当に悲惨でした。もともと日本軍に人権意識が乏しく、暴力的虐待が構造化されているとともに、戦場における作戦指揮が極めて雑で、軍事的に意味がなく、徒労としか呼べないような多くの作戦が強行されたからです。
これには枚挙のいとまがありませんが、兵士たちは本当に消耗品のように扱われ、米軍に次々と酷く殺されたり、飢餓地獄の中を彷徨ったりしました。その意味で大半が国家政策の犠牲者なのです。

もちろん犠牲者である彼らの多くが、自らの受けた構造的虐待を、アジア民衆の側に向けていったこと、それこそ鬼のようになって、何千万ともいわれる命を奪ったこともけして忘れてはなりません。僕自身は、犠牲者である彼らの大きな罪を、背負っていきいたい、そうすることで犠牲になった人々の魂を安らげたいと思いますが、多くの兵士たちが、アジアの人々にとって自分たちの肉親を虐殺した「下手人」であったことはけして忘れてはならない事実です。

これらの人々を、「国のために殉じた英霊」としてしまってよいのでしょうか。絶対にいけません。それでは、これらの人々に犠牲を強い、さらには鬼へと転化させていった軍部や、戦争遂行者たちの罪がまったく消えてしまいます。
実は安倍首相が本当に求めるのもこの点にあります。自らの祖父である岸信介氏をはじめ、戦前の指導者が日本とアジアの民衆に対して犯した罪を、己のアイデンティティの問題としても永久に消し去りたいのでしょう。そしてそれこそが最も許されないことです。

私たちは、靖国に合祀されている人々を、国のあやまった政策の犠牲者としてとらえ、追悼していくことこそが問われています。英霊と呼ばれてこれらの人は満足でしょうか。けしれそんなことはない。あれほどひどい境遇に自分たちを陥れた社会構造にこそメスを入れてほしいと願っていると僕は思います。

そしてその中に僕は、先にも述べたように、私たちがその人々の罪を背負うことが含まれていると思います。罪を私たちが償うことで、罪を犯したまま亡くなった人々の魂を救いたいし、ぜひ多くの人々にそうした優しさを持って欲しいと思います。もちろんその優しさは、殺されたアジアの民衆の怨嗟を、片時も忘れるものであってはなりません。

その意味で、靖国神社は廃止されなければなりません。これにかえて、国家的な「追悼と反省」の場を作り出すべきです。そこに私たちはこう書きこむべきです。「安らかにお眠りください。二度と過ちは起こしません。あなたたちの受けた被害に謝罪します。あなたたちの罪を私たちが償います」と。

安倍首相は、本当に戦争の犠牲になった人々のことなど考えていません。アジアの民衆の痛みなど、なにほどのものとも思っていない。それだけではないのです。戦争に駆り出された日本軍兵士たちの苦しみ、悲しみ、その中で犯した罪への痛みもなにもない。兵士たちへの思いやりなどほんのかけらも感じられません。

これらの観点から、アジアと日本の戦争の中で亡くなった人々の魂を踏みにじる安倍首相の靖国参拝強行を僕は心の底から批判します。
「積極的平和主義」などとまたも大嘘をついて平和の心を踏みにじるこの首相をけして許してはなりません。本当の平和のために行動しましょう!

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明日に向けて(775)小泉原発ゼロ宣言の背景としての自民党政治の変容―1

2013年12月21日 11時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131221 11:00)

小泉元首相の原発ゼロ発言をいかに捉えるのか。2回にわたる考察を踏まえて、今回はより根本的なことに踏み込んでいきたいと思います。小泉発言のさらに大きな背景としてある自民党政治の大きな転換についてです。
ただ歴史の流れなので書き出したら、分量が多くなってしまいました。また小泉首相の発言とは大きく離れるので、タイトルを変えて新しい連載とすることにしました。これに伴って、(774)を(中)から(下)に訂正します。

さて本題ですが、これまで自民党の中には、伝統的に野党や反対派を取り込んでいく「左向き」の政策や勢力がありました。この部分を野党時代にすっかり失い、あるいはそぎ落として、「右向き」の政策、勢力のみで登場してきているのが今の安倍政権です。
「左向き」とは、自民党の中で政治理念よりも利益分配によって支持を集めようとする政策のことで、その中には社会保障制度の確立、維持にに力を入れたり、経済格差の一定の是正などを目指す人々のことです。小泉政権時代に「抵抗勢力」としてそぎ落とされてきた勢力のことでもあります。
この勢力は、自民党の伝統政治の中で、常に自民党政治に不満を持つ人々を吸収し、野党や左翼の側に人々の支持が向かないための役割を果たしてきました。不満のショックアブソーバーでした。それが自民党の極めて長期にわたる政権を支えてきたとも言えます。
今の自民党にはそうした勢力が不在です。小泉氏自身が解体を進めたためですが、野党になることで利益分配ができなくなってしまったことも大きい。そのため自民党はショックアブソーバーを持たないむき出しの右翼政権になっています。実は本質的には、高度経済成長期よりずっと弱いのです。

自民党の長期政権を可能にしたこれらの人々の持つ政治的傾向は、戦後政治史では「保守本流路線」と総称され、吉田茂―池田隼人―田中角栄―宮沢喜一などに継承されてきたものと分類されています。(以下、歴史的記述では敬称を省略します)
「軍事小国・経済大国路線」などとも言われますが、しかしそれがはっきりとした定着を見たのは、安倍首相の祖父の岸伸介による戦前回帰、軍事大国化路線が民衆によって否定される中でのことでした。
戦後の混乱期を経て、1955年に保守合同がなしとげられて自由民主党が成立した時、自民党の中には、戦前のような国家に回帰しようとする潮流と、戦前の様な軍部独裁は二度とごめんだと考える潮流が矛盾的に併存していました。
こうした中でで首相となった岸伸介は、戦前回帰の代表として振る舞い、対米従属も超えた軍事大国に日本を発展させようとして、日米安保条約改定を重要政治課題に据えます。こうした中で1960年、条約の改定の日が近づいてきました。

岸内閣の政策に戦前のファシズム国家の再来を見た民衆は、安保改定反対を叫んで行動を開始。やがて国会前には数十万のデモ隊が連日包囲する状況が生まれました。人々は軍国主義的な岸内閣退陣を叫び続けました。
やがて岸伸介は、安保条約改定を強引に実現したものの、退陣を余儀なくされました。民衆の力が軍事大国化を阻んだのです。
続いて登場したのが池田勇人を首班とする内閣でした。戦前回帰の岸伸介に対し、池田が打ち出したのは「所得倍増計画」でした。安保をめぐる矛盾を、民衆の生活の向上の中で解消しようとしたのです。このため池田内閣は野党から「低姿勢内閣」などと呼ばれました。
池田は、安保条約を維持する理由についても、岸内閣のようにアメリカと対等な軍事同盟を保持する国家に変貌していくためのものではなく、経済的に不効率な軍事部門をアメリカに任せ、日本はその分、経済成長に邁進することができるから良いのだとうたいました。

池田内閣はさらに国民皆保険制度をはじめ、社会保障制度の充実も推し進めつつ、1964年の東京オリンピックに向かいだしました。経済発展の象徴として新幹線や首都高速、東京タワーなどが次々と作られていき、実際に所得が大きく伸び始める中で、安保闘争は次第に後景化していきました。
このとき池田首相のブレーンであり、のちに首相となった宮沢喜一氏が、こうした政策を「ニューライト」路線と名付けました。その中には左翼政党が主張する社会改革の内容を、自民党が取り込み、実現していくというモメントも含まれていました。
宮沢らは、戦前への回帰を目指す「オールドライト」に対して、安保闘争に日本の民衆の中への民主主義の浸透を認め、それとの融和を目指したのでした。そのため軍事・外交路線の政治焦点化は避け、生活向上を政治の争点にし、「豊かさ」の中に民衆を包摂しようとしたのでした。
これは安保反対運動の大きな高揚、民衆の力の台頭への恐れからきたものでもありますが、同時にいかにそのエネルギーを解体し、取り込み、経済成長の活力に転化していくのかを考え抜いたものでもありました。

こうした政策は、もともとロシア革命以降の世界的な社会主義の台頭に対応し、第二次世界大戦後のイギリスを中心に、自由主義諸国で生まれたケインズ主義的な政策を下地としていました。政府が積極的に財政出動を行い、需要を創出して経済成長を果たしつつ、同時に高福祉国家を実現する政策です。
戦後の荒廃の中から立ち上がった日本では、経済再建の分野で、政府が強力にリードしていくケインズ主義が確立していましたが、池田内閣以降に積極化されたのは、「所得倍増」の合言葉のもとさらに公共投資を拡大しつつ、民衆へも一定の利益配分を行うことでした。
東京オリンピックはその絶好の機会でした。日本はこれを契機に「高度経済成長」の道をひた走っていくようになります。池田政権はケインズ主義を社会保障制度の拡充にも適用し、皆保険制度のもとでの医療の充実などが図られていきました。
このもとに国会を取り巻く数十万のデモで岸内閣が倒されながら、自民党は政権を失わず、その後の野党勢力の拡大を押しとどめて、民衆の支持の拡大をもう一度、実現することに成功しました。

しかし民主主義を求める民衆の声は、1960年代後半から再度、再燃していきました。60年代にアメリカがベトナム戦争を開始し、日本各地の米軍基地から爆撃機が飛び立つ情勢の中で「ベトナム反戦」を軸に民衆が再度、大きく立ち上がったのです。
この時、自民党の中で台頭してきたのがのちの首相の田中角栄でした。田中角栄は、民衆運動の中でも突出して高揚する学生運動を力づくで押しつぶすことを画策。「大学運営に関する特別措置法」という法律を国会通過させました。それまで「聖域」として警察が介入できなかった大学に、警察権力=機動隊の導入を可能にした法律です。
田中のライバルだった大平正芳のブレーンの伊藤昌哉は、自著『自民党戦国史』の中で、このとき田中角栄がこの法案を手に「これでわしに天下がやってくる」と叫びながら国会の廊下を走ったという逸話を紹介しています。それほどに学生運動を潰すことは、国家にとって重要な課題だったのです。
やがて田中は「天下をとって」首相になりましたが、政権をとるやいなや、伝統的な経済的取り込み路線を大々的に推し進めました。日本中に金をばらまいた「日本列島改造論」です。新幹線や高速道路の拡張を軸に、公共投資をさらに拡大し、生産力をどこまでも伸ばしていくことが目ざれました。原発もその重要な柱の一つとされました。

保守本流路線はこのように、1970年代も貫かれていきましたが、しかしこの路線は、戦後世界の枠組みの大きな変容の中で次第に展望が見えなくなっていきます。最も大きな要因は、ベトナム戦争で疲弊したアメリカが1971年に、ドルと金の兌換を一方的に取りやめる宣言をなしたことです。
これに追い打ちをかけたのが1973年のOPEC諸国による石油戦略の発動でした。アメリカの豊富なドルの力を背景としたスペンディングポリシー=公共投資による有効需要拡大政策と、安い石油原料を背景とした加工貿易体制が大きくぐらつきだしたのです。
1970年代は世界的に資本主義の行方をめぐる動揺の時代とでしたが、次第にアメリカの中からケインズ主義による有効需要創出の創出や、社会の安定化のための社会保障制度の拡充を否定する潮流が台頭してきました。いわゆる「新自由主義」です。
経済学の分野で中心をになったのは、経済学者のミルトン・フリードマンでした。フリードマンはケインズ主義のような政府による市場への介入が自由競争を阻害していると激しく非難。また社会保障制度があるから競争心が育たないのだと主張し、弱肉強食の市場原理こそが経済を発展させると顕揚しました。

やがてフリードマンらの経済政策を採用しつつ、他方で強引な軍拡を行うという矛盾をはらんだ政権がアメリカに登場します。レーガン政権です。レーガンは強いアメリカの復活を掲げ、そのために自由競争の強化が必要だと訴え、社会保障制度の切り捨てを始めました。
一方で大規模な軍拡を主張。大陸間弾道弾とは別に、トマホークなどの巡航ミサイルに搭載した戦術核の使用にまで言及。この点が「小さな政府論」とは矛盾していたのですが、レーガンはさらに、大気圏外に打ち上げられた衛星からのレーザービームによってソ連邦の大陸間弾道弾を撃ち落とす「スターウォーズ計画」をすら表明します。
このレーガンの登場に呼応するようにして登場してきたのが、イギリスのサッチャー政権でした。サッチャーも、社会保障制度の充実化こそがイギリスを構造的な停滞においやったと唱え、自由競争の強化を掲げました。
日本でも、自民党の傍流に位置していた中曽根康弘が首相の座につき、伝統的な保守本流路線の清算を意味する「戦後政治の総決算」を呼号しました。中曽根は社会的共通資本であった国鉄の分割民営化を叫び、日本労働運動の拠点であった国鉄労働組合(国労)の強引な解体を推し進めました。

これらの政策は、世界的にも日本国内でも、自由主義政権が人々の支持を取り付けるために行ってきた「左向き」の政策を捨てることを意味しており、国内矛盾の激化が必至のものでしたが、もっと大きな世界史的要因によって、政策遂行者を有利な立場に置きました。ソ連や東欧の社会主義が行き詰まり、崩壊しだしたことです。
1970年代、資本主義各国は、アメリカの経済力と、安い資源によって生産力の拡大を実現し、利益分配を可能にして資本主義体制のもとに人々をつなぎとめきたそれまでの政策の根拠を失い、政治的な不安定を迎えていました。
ところが資本主義の競争相手であった社会主義各国も、社会の硬直化の中で生産拡大のインセンティブを失い、行き詰っていました。こうした中でソ連邦は、レーガン政権のとった大規模な軍拡路線に対抗しきれなくなっていきます。
こうした中で1985年、ソ連共産党の新たな書記長にミハエル・ゴルバチョフが就任し、ペレストロイカ(改革)とグラスノスチ(情報公開)軸とする大改革が断行されはじめました。アメリカとも電撃的に軍縮会談を行い、冷戦終焉がにわかに現実味を帯びるようになりました。

ゴルバチョフはまた「人間の顔をした社会主義」を標榜し、ソ連や東欧社会主義の硬直化を脱することを目指しました。しかしそれまでの長きにわたる共産党独裁体制からの転換は、それまで押さえつけられていた矛盾の一挙的な噴出となって現れました。
これに拍車をかけたのが1986年に起こったチェルノブイリ原発事故でした。事故直後のソ連当局の事故隠しの在り方が、政府に対する民衆の信用を大きく後退させるとともに、長きにわたって上からの指令のもとで暮らしてきたあり方の見直しが始まったのでした。
ソ連内部から始まったこの大きな変動はたちまちのうちに東欧社会主義各国に波及、各国共産党も、ソ連の後追いをするに「改革」政策を打ち出しますが、それよりも民衆の覚醒が早く進んで体制が大きく揺らぎ始め、社会主義各国が1980年末に次々と瓦解。やがてソ連邦までもが1991年に崩壊してしまいました。
自由主義圏各国内部にもこれが波及。多くの国で民衆運動や労働運動に影響力を持っていた左翼政党が、社会主義の世界史的後退の中で支持を失い、新自由主義的な政策は、十分な対抗軸が形成されないままに社会に浸透しだしてしまいました。

続く

 

 

 

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明日に向けて(774)小泉元首相(イラク戦争犯罪人)の原発ゼロ宣言をいかにとらえるのか?(下)

2013年12月19日 23時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131219 23:00)

小泉元首相の原発ゼロ発言をいかにとらえるのか、今回は、小泉元首相が、なぜ今、原発ゼロを言い出したのか、またそれはどのような意味を持つのかの分析を行いたいと思います。
ネットを検索すると、幾人かの方が、小泉原発ゼロ宣言の背景を鋭く分析しています。それぞれに参考になりましたが、僕が一番、すっと共感できたのは、山本太郎さんの次の言葉でした。

*****

「小泉さんの『原発ゼロ』提言が本物であるかどうかは、有権者である国民が、しっかりとチェックする必要があります。
小泉さんには、いま実際に被災地が直面する被曝の問題についても聞いてみたいですね。『脱原発』は発言できても『脱被曝』は口にしていない。
いまも、高線量の地域なのにもかかわらず、安全といわれて暮らしている方々がいる。子供たちの避難、避難の権利についてはどう思うのか、小泉さんに問いかけたい。
本当に脱原発を考えているかどうかの『踏み絵』を踏ませることになります。
地震大国である日本が、原発による発電を放棄しなければならないことは明らかなことです。脱原発は、当然の政策です。その意味で、小泉さんは当たり前のことしか言っていません。
小泉さんの提言については、喜ばしいことと思うのと同時に、懐疑的な見方もしてしまいます」。

「現在の安倍政権は極右政権であるばかりか、原発再稼働というとんでもない道に日本を導こうとしている。そんな中で、小泉さんは、自民党の中にもブレーキがあるというアピールをしているように思えます。
また、政権にしてみれば、自民党に対して直接的な影響力を持たない小泉さんが『原発ゼロ』を宣言したところで、マイナスはない。
これから消費税増税がはじまり、政権の足元は揺らぐ。そうだとしたら、次に選挙になったときに、自民党の中で票を逃がさないための求心力が必要とされるわけです。
自民党内に『脱原発』という動きがあることをアピールしておくために、小泉さんの提言は絶妙のタイミングだった」。

「現代ビジネス 経済の死角」より
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37434?page=4

*****

僕も一番強く感じたのはこの点でした。小泉元首相は、民衆の動向に敏感で、なおかつそれを自分の政治路線に取り込む手腕が高い方です。ようするに稀代のペテン師です。
その「手腕」で日本の社会保障制度も壊してしまったし、大量殺戮を伴うイラク戦争に自衛隊を出してしまいながらなんらの責任も問われずにいます。
その小泉氏が着目しているのは、何よりも「高支持率」と言われてきた安倍・自民党政権の危うさと、民衆の中で育つ、脱原発の意志の強固さだと思うのです。
実際、つい先日も小泉氏は安倍首相と同席しましたが、原発問題には触れませんでした。秘密保護法の強引な可決で、安倍内閣の支持率が急落したために、原発問題でさらに窮地に立たせることを避けたかったのではないかと思われます。

小泉氏から見て、安倍政権はどのような危うさを持っているのでしょうか。一つには安倍首相が、何らかの理念で民衆の支持を得ているわけではなく、「アベノミックス」による「景気回復」で、支持率を獲得してきたことです。
また旧民主党政権へのかなり深い失望感が支持を押し上げもした。いわばライバルのエラーで得をしたようなもので、安倍氏自身が、民衆の心をつかんで支持を押し上げたわけではありません。
しかも安倍氏は、東京オリンピック招致発言に見られるような嘘を平気で言う人物です。根本的に人を説得して信用を得ようとする姿勢や資質がありません。
こうした嘘をついてもまだ「支持」が持続したのは、東京オリンピックにおける経済効果などが期待されているからにすぎないでしょう。

アベノミクスとは、これまでの常識を逸脱したような極端な金融緩和を行い、投資家の期待感をあおり、為替を円安に誘導することを基軸としています。そうなれば当然、輸出企業の利益が拡大し、株価が上昇するので「経済成長」を演出できます。
インフレを誘導する単純なバブル政策ですが、しかし金融緩和が、実態としての経済を成長させているわけではありません。期待感をあおることでの円安が基軸ですから、反対にいつ期待感がしぼんでしまうか分からない。
つまりアベノミクスは、いつ崩壊するかわからないしろものなのです。そうなると表面化するのは、日本経済の実際の問題としての、分配の不平等性の著しい拡大という現実です。
端的に企業は儲かっても、大多数の民衆の生活は良くなってなどいない。若者の多くがワーキングプアで、仕事探しも難しい状態です。来年の消費税アップや、TPPによってさらに民衆の生活は悪くなろうとしています。

アベノミクスへの幻想が消えて、この点がクローズアップされてくると、実は困るのは小泉氏本人でもあります。分配の不平等性の著しい拡大は、安倍氏よりも、むしろ小泉元首相の下でこそ拡大したのだからです。
このために安倍自民党は、弱肉強食の市場論理を推し進めるTPPに一度は反対の姿勢をにじませたほどでした。小泉政権のもとでの施策が何をもたらしたのかが次第に明らかになりだす中でのことでした。
その点で、小泉氏が見ているのは、実は現在の自民党や安倍氏の人気よりも、根本的には、小泉政権に対する歴史評価がどうなるのかという点でもあるようにも思えます。
好景気観が消え去り、人々の経済的苦境が際立ってくるにしたがって、問題は小泉政権にあったことが見えてきてしまう。というか、そこが見えるようになることこそ、民衆の覚醒です。小泉氏はこの点を恐れているのではないでしょうか。

とくにイラク戦争については、あやまりがはっきりしていて、イギリスではブレア元首相が何度も議会での追求を受けています。ブッシュ政権の元ブレーンたちも社会的信用を失っています。小泉氏の盟友はあのときのみんな失墜しているのです。
しかもイラクはその後も政治的に安定していない。イスラム圏でのアメリカへの怒りはますます高まるばかりであり、戦争犯罪としてのイラク戦争への追及も今後、さらに行われていく可能性があります。
こうした海外事情を小泉氏が知らないはずがありません。つまり小泉氏は、いつどこで自分が批判にさらされるかもしれない危うい位置に自分自身が立っていることを熟知していると思われます。
しかも原発政策についても小泉政権は強烈に推進したのですから、福島原発事故以降のムーブメントもが自分に向きかねない恐れがある。そのために先に防御を施すこと、先手を打って、攻撃をかわし、「味方」を増やすことを考えたのではないか。

そのために小泉氏は、現在の自民党が、嫌われないための手を打ってきた。山本太郎さんが「小泉さんは、自民党の中にもブレーキがあるというアピールをしているように思えます」と書いた点です。
さらに僕は、その貴重なブレーキが自分なのだと強調することで、小泉氏は、安倍政権への批判が歴史を遡り、自分に波及することをも防ごうとしていると分析したわけですが、そのことの象徴が、「原発ゼロ」を「郵政民営化」になぞらえている点ではないでしょうか。
安倍氏に対しても、民衆の変革への希望を上から吸収してしまうこと、民衆が自ら変革の道を歩まないようにすることこそ、首相として最も大事なことなのだという「教え」を行っているのだと思えます。
民衆の動向に敏感な小泉氏は、民衆がまだ覚醒仕切らない今だからこそ、何らかの手段で、民衆のエネルギーを取り込めると考え、それが野党をも出し抜くような「原発ゼロ発言」に集約されたのではないかと僕には思えます。

以上はあくまでも推論の領域になりますが、小泉氏の真意がどこにあるにせよ、彼の原発ゼロ宣言は、どのような政治的位置性を持っているかをしっかりと見ておくことが大切だと思います。
前回、僕は小泉氏の発言を安易に評価してはならないと書きましたが、原発ゼロ宣言で小泉「人気」が維持されたり、再燃してしまえば、郵政民営化をはじめ彼の行った民衆を苦しめるさまざまな政策への批判がまたも曇らされてしまいます。
いわんや、秘密保護法反対の運動が、安倍自民党政権退陣へと大きく発展するや否や、これを切り崩し、取り込むために、現政権が電撃的に脱原発への転換をうたいだした場合、最も危険な状態が生まれます。
実際には脱原発といっても、何十年かかけてという話にすれば、野党の吸収も可能であり、その間の再稼働も、野党多数の合意のもとに可能にする道も開きうるのです。

最悪のシナリオは、安倍政権が脱原発への転換のもとで支持率を回復し、秘密保護法をはじめとした戦争政策をどんどん推し進めることです。
現状ではそのような流れになる可能性はまだそれほど多くはないかもしれませんが、脱原発勢力が「小泉発言を利用するのだ」とばかりに、小泉元首相を押し立てる形で脱原発運動を進めていけば「小泉氏に説得されて自民党が脱原発にかわる」可能性は拡大します。
何より民衆の力がそれを後押しすることになりかねない。そうなると、何十年後かの原発の廃止という、実現されるかもどうかも分からない公約と引き換えに、民衆の側は、TPPなどの新自由主義政策の強化や、自衛隊のアメリカの属国軍化への抵抗力も失ってしまいかねない。
だからこそ、小泉元首相の原発ゼロ宣言に私たちは絶対に乗らず、むしろ小泉政権のさまざまなあやまりの追及を行うべきなのです。

繰り返しますが、私たちは今、覚醒を推し進めなければなりません。その重要な一つの柱が、小泉劇場政治に民衆の多くも踊らされてしまい、日本の中でイラク戦争反対の大きな運動を起こせなかったことの反省です。
小泉政権のもとで、社会保障制度がどんどん切り崩され、経済格差が開いてしまったのに、それを見据えた大きな抵抗運動を作れなかったことへの反省です。
総じて小泉氏によって民衆の多くが騙されてきたことに気づくことが最も大切です。
僕もそのために、さらに新自由主義への批判を強めていこうと思います。

終わり

ここまで書いてきて、安倍政権の現在の傾向や小泉発言の大きな背景にある自民党の伝統的路線からの大きな転換、というよりも、これまで民衆を取り込んできた大きな力の衰えの側面を論じるべきことが見えてきました。
このため次回からは、戦後史の中で自民党が取りつづけてきた政策を検証し、ここから逸脱した現在の自民党政権の歴史的位置を明らかにするなかで、今、私たちが進めるべき「覚醒」の方向性を考察していきたいと思います。

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明日に向けて(773)小泉元首相(イラク戦争犯罪人)の原発ゼロ宣言をいかにとらえるのか?(上)

2013年12月14日 09時30分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131214 09:30)

秘密保護法を強引に通過させた安倍政権は、民衆の怒りの声に激しく動揺しつつも、さらに共謀罪を画策し、国家安全保障基本法成立は集団的自衛権の「行使」など、戦争政策への傾斜を強めつつあります。
この流れにいかに民衆的抵抗を対置するのかを考える上で、昨秋、小泉元首相が行った原発ゼロ宣言をいかに捉えるのかについて、考えの整理をしておきたいと思います。
僕の結論は、タイトルを見ればお分かりのように、イラク戦争に大きな責任がある小泉元首相の発言を、安易に評価すべきではないというものです。

小泉元首相は、安倍首相の「指南役」であり、今も強い影響力を持っています。その小泉元首相が推し進めたものこそ、イラク戦争への日本の協力であり、自衛隊の派遣でした。戦後日本史を画する戦争政策でした。
自衛隊が大規模に後方支援が行ったこの戦争は、しかし何らの正当な根拠もない侵略戦争でした。「イラクが大量破壊兵器を隠している」という一方的ないいがかりで、大規模な戦闘が行われました。完全な戦争犯罪です。米英のブッシュ元大統領やブレア元首相は、大量殺戮の犯人です。
小泉元首相はこの戦争に加担したのです。戦争犯罪への全面協力です。その小泉氏が指南してきた安倍首相が今、より大々的なアメリカの戦争への協力の道を開くために、秘密保護法の強行採決などを行っているのです。

小泉元首相が行った根深い過ちは、イラク戦争への加担だけではありません。市場原理主義という弱肉強食の論理を日本にもちこみ、「郵政の民営化」など、社会のセーフティーネットを壊し、アメリカ資本の日本への進出に大きく道を明けたこともそうです。
今、多くの若者がワーキングプアに悩んでいます。若者だけではない。たくさんの人々が正規雇用からはじき出され、収入も雇用も不安的な状況におかれています。こうした道を強く推し進めものこそ小泉政権だったのです。
にもかかわらず小泉元首相が、いまだに「人気」があるのは、私たち民衆がまだまだ覚醒しきれていないためです。私たちは、早急にここからの目覚めを進めていかなくてはなりません。だからこの「人気」を「利用する」ことなどもってのほかなのです。

「しかし小泉元首相の原発ゼロ論はそれ自体はまっとうなのではないか。安倍政権や読売新聞などの批判とたたかうべきではないか」という意見もあるかと思います。原発ゼロ論に対して「対案がないのは無責任だ」という批判がなされたからです。
小泉元首相の読売新聞への反論は、「対案など、自分一人で出せるものではない。みんなで知恵を出して考えることだ。政治家はまず道筋をつけるのが大事なのだ。安倍首相が決断すればできるのだ」というものでした。
確かに使用済み燃料の処理方法がないから原発をゼロにすべきだということも、対案がなければ反対できないというのは間違いだというのも、それ自体は正しい。安倍政権や読売新聞の反論の方がまったく間違っていることは明らかです。

実はここには、私たちが脱原発を進める上での、非常に大きな論点が横たわっています。原発はなぜ許してはいけないのか。事故の可能性があるからというのはもちろんです。使用済み燃料の処理方法がないのもそうです。
しかしより大事なのは、原発が通常運転をしていても、「許容値」という名の下に一定量の放射能を漏らしており、それが人体に非常に危険なためです。よくに原発の運転・維持のために、被曝労働が構造化されており、原発はそれ自身が巨大な人を被曝させる装置であり続けてきたのです。
事故の可能性や、未来の問題だけでなく、現に今まで、漏らしてきた放射能が危険だから、原発労働者と周辺住民を構造的に被曝させてきたから、原発はその存在が許されてはならないのです。

歴代の首相はこの被曝に全面的な責任を負っています。もちろん小泉元首相もそうですが、この方は在任期間中に、もんじゅの事故やJCO事故によって、暗礁に乗り上げてきた原子力政策を、むしろ強力に推し進めた張本人なのです。
その重要な柱が2005年に原子力委員会から提出され、政府方針として閣議決定された「原子力政策大綱」でした。これは小泉政権の2006年の「骨太方針」にも明記されています。さらにこれに基づき、2006年に綜合資源エネルギー調査会原子力部会によって「原子力立国計画」が確定されました。
既存原発の60年間運転、2030年以後も原発依存を30~40%程度以上に維持、プルサーマル・再処理の推進、もんじゅの運転再開と高速増殖炉サイクル路線の推進、核廃棄物処分場対策の推進、海外進出を念頭においた「次世代原子炉」開発、ウラン資源の確保、原子力行政の再編と地元対策の強化などがその内容です。

原子力政策大綱
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/taikou/kettei/siryo1.pdf

原子力立国計画
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/images/060901-keikaku.pdf

小泉元首相が、真摯に原発ゼロを唱えるならば、何よりも長年、自民党政権が行ってきた被曝の放置を謝罪すべきであり、自らの政権が決定した「原子力政策大綱」とそれに基づいた原子力立国計画への反省と撤回を行うべきです。
にもかかわらず、小泉元首相は、事故の連続で頓挫しかかっていたこの国の原子力政策を、自らの「人気」をテコに回復させ、強化した歴史には何ら触れていない。
小泉氏を師とあおぐ安倍首相からすれば、自分は小泉路線を継承しているのに、なんで批判されなければらないのかという被害者意識にすら陥っているのではとすら思えます。安倍首相の原発維持路線は、間違いなく小泉路線の継承なのだからです。

小泉発言に飛びついてしまったマスコミは、どうしてこの点を問わないのでしょうか。2005年、あの時に小泉政権が、もんじゅ事故やJCO事故の検証を強力に推し進めていたら、あるいは福島原発事故は未然に防げたかもしれないのです。
さらに小泉氏は原発のもとに構造化された被曝問題の捉え返しなどは一切、行っていません。いわんや福島原発事故のもたらした膨大で深刻な被曝についても何ら言及していません。
福島原発事故の問題で、一番に焦点をあて、検証していかなければならないのもこの点です。原発ゼロも大量被曝への反省に立脚されたものでなければなりません。しかし非常に簡単なこの問いが出てこない。とても残念です。

私たちが何度も確認しておかなければならないのは、原発の問題は、被曝問題だということです。とくに低線量内部被曝の危険性が隠され、たくさんの人々が被曝させられながら、この政策が貫かれてきたことです。政策遂行者には加害責任があります。
この点を抜きに、原発問題をエネルギー問題として、また廃棄物処理問題としてとらえることは非常に危険です。なぜか。現在も放置されたままの大量被曝の現状、福島をはじめ東北・関東の多くの人々が、継続的に被曝を強いられている現実から目をそらされてしまうからです。
その意味で、イラク戦争の戦争犯罪人であり、私たちの社会を弱肉強食の場に変えてきた張本人であり、なおかつ、2000年代に協力に原発政策を推し進めた来た小泉元首相には、何よりも反省と謝罪、罪をつぐなうことこそを問うべきなのです。

続く

次回は、なぜ小泉元首相が原発ゼロを言い出したのかという点を推論したいと思います。

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明日に向けて(772)未来のために学びを深めよう!(美作市、島田町、西成区、高島市でお話しします)

2013年12月13日 16時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131213 16:00)

秘密保護法を使い、福島原発事故の現実を隠し、戦争に邁進しようとする安倍政権との対決のために、ますます私たちの学びが重要になっていますが、各地でどんどん学習熱が高まっています。
僕もさまざまなところに呼んでいただけますが、どこも意欲がとても高い。

例えば、8日の日曜日には広島県三次市にうかがって話をしましたが、交流会である40代の男性がこんなことをおっしゃってました。
「私は東日本大震災まで、社会問題に目を向けたことがありませんでした。そういう私の無関心な態度がいろいろな矛盾を生み出したのではないかと思って、その後にいろいろと考えだしました。
長く考えていなかったので、まだ分からないことだらけなのですが、これからも学んでいこうと思います」・・・。

僕はこう答えました。「そうおっしゃる方がとても多いのですよ。どこにいっても必ずそんな話を聞きます。僕にはそれがとても嬉しいのです。
今、日本では私たち民衆の大きな覚醒が起こっていると思います。その一つがあなたがそう思ってくださったことです。さらに一緒にいろいろと学んで考えていきましょう」。
なお、この日は講演会後に、三次駅周辺で行われている秘密保護法反対のデモにも参加させていただきました。
わざわざ尾道から三次まで駆けつけてくださった方もいたのですが、その方も一緒に秘密保護法反対の声をあげて三次の町を歩きました。なんと生涯で初めてのデモ参加だったそうです!

「東日本大震災後に目覚めた」という発言は、各地の企画の主催者の方々からもよく聞かれますが、中には原発事故から3年弱のあまりに、すでにびっくりするほどたくさんのことを吸収している方もおられて驚きます。
しかも仕事などでもともと身につけてきたさまざまな見識がそこに加わったりしている。もちろん僕が知らないたくさんのこともあり、教えてもらうことが多いです。参加者の間の相互刺激もあちこちで生まれつつあります。

この間、繰り返していることですが、秘密保護法の登場は、政府が知られたくないことがたくさんあることに起因しています。アメリカとの属国的関係や、米軍の作戦に自衛隊を大規模に巻き込もうとしている現実。
福島原発事故で、広範に拡大しつつある放射線被曝による健康被害や、原発そのもののあまりに不安定な現状などなどです。だから私たちが学びを深め、知恵をつけて、平和と安全を目指す行動の礎にしていくことがもっとも大きな抵抗になります。
そのために、学習を重ねながら、さまざまな活動を行っていくことの重要性を何度も訴えたいです。僕自身、学びを深め、常に新しい知識を吸収しながら、講演などをさせていただこうと思っています。

今週と来週末の予定を記しておきます。
15日日曜日には岡山県美作市でお話しします。この日は津軽三味線の演奏も聞けるそうです。楽しみです!
21日土曜日には、大阪の島田町と西成区でお話しします。美作、島田、西成ではともに内部被曝の脅威といかに立ち向かっていくのかが演題です。
23日月曜日には、滋賀県高島市でお話します。高島市には、放射性の木材チップが300トンも不法投棄されるという問題が起こっているので、このことに焦点をあてます。

お近くの方、ぜひお越しください。一緒に学びを進めましょう!
以下、案内を貼り付けておきます!

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12月15日 岡山県美作市

東日本大震災から3年目
福島を忘れない
放射能から身を守りたい

健康被害の現状と対応について
食べ物のお話もしたいですね…

守田敏也さん講演会と蝦名宇摩さん津軽三味線の演奏

とき 2013年12月15日(日曜日)
9:30~12:10(開場9:00)
ところ 湯郷地域交流センター2階(美作市湯郷826-1)

テーマ 福島原発災害の影響現在、未来

守田敏也さん プロフィール
京都市在住
兵庫県篠山市原子力災害対策検討委員会委員。同志社大学社会的共通資本研究センター客員フェローなどを経て、現在フリーライターとして活動中。
原子力政策に関して独自の研究・批判活動を続け被災地にも度々訪問。物理学者矢ヶ崎克馬氏との共著岩波ブックレットから『内部被曝』を上梓。
ブログ「明日に向けて」を通じて、連日、原発情報を発信中。

蝦名宇摩さん プロフイール

鹿児島県奄美大島出身     
秩父屋台囃を学ぶため単身上京。
和太鼓、横笛を取得しながら、本場青森県津軽三味線の名手、蝦名流家元・蝦名伴主師範に津軽三味線・民謡・尺八・民謡太鼓を学ぶ。
後、出身奄美の島唄、三線も取得。埼玉北部民謡大会総合優勝。その他各地民謡大会にて優勝十数回。三味線では、埼玉県津軽三味線大会で優勝。
3.11後、瀬戸内市へ移住し津軽三味線を通して被災地へのボランティア活動や福島の子ども達への支援などで活躍中。  

主 催 美作環境ネットワーク
連絡先 内海(090-4146-4772)

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12月21日 大阪府島本町

ぴあ・ネット/100万年の会講演会

ただ今、日本は原発ゼロ!
~知りたい現状と、考えなければならない未来~

この12月で、3.11から2年9ケ月になります。使用済み核燃料の取り出しという危険な作業が始まりました。
輸送容器の落下事故などがあれば放射性物質の拡散を招く恐れがあります。
しかし相変わらず高濃度汚染水漏れは日常茶飯事で、大気への放射能物質の出っ放しの状況は変わりません。
目には見えなくても日々放射能汚染は拡大しています。
この状況はまだまだ何十年と続くのです。その中で私たちは感覚がマヒしてしまわないかという危惧を抱きます。
そこで、原発ゼロの今、講師に守田敏也さんをお招きして現状を知り、未来へ向かって何を考え行動しなければいけないかを一緒に考えたいと思います。
是非お越しください。お待ちしています。

講師 守田敏也 さん(フリージャーナリスト)

同志社大学社会的共通資本客員フェローなどを経て、フリーライターとして活躍中。
原子力政策に関して独自の研究と批判活動を続け、東日本大震災後は被災地もたびたび訪問。
ボランティアや放射能除染プログラムなどに携わり、ブログ「明日に向けて」を通じて原発情報を発信。
各地で講演を行いつつ、放射線被ばくの恐ろしさを明らかにし、防護を訴えておられます。


と き  12月21日(土)13:30~15:30
ところ  島本町 ふれあいセンター 3階視聴覚室  
資料代  500円
申込み  不要
問合せ  075-961-4450    
主催:ぴあ・ネット/100万年の会

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12月21日 大阪市西成区

たちばな9条の会主催(原発を考えるシリーズ第7弾)

福島原発事故最新情報
~汚染水、燃料棒取り出し、健康被害~

福島原発から放射能は1日あたり2億4000万ベクレルもれ続けています。東京電力廣瀬社長が10月7日参議院で答弁した大気汚染と海洋汚染の数値は以下です。
「大気中に放出された放射性物質はセシウム134と137の2核種合わせた数値で2万兆ベクレルになるとみており、海洋への放出について、当初は7100兆ベクレル放出されたとみている。
その後地下水の汚染などにより、1日あたり最大200億ベクレルのセシウムが放出されている。」と述べています。
7月参院選挙翌日に東電が汚染水もれを発表、9月安倍首相はオリンピック招致総会で嘘をついた。
翌日アルゼンチンホテルの記者会見で安倍首相は「原発比率を下げる。そのためにこの3年は再生可能エネルギーの開発に全力で取り組む。」と行き当たりばったり。

講師の守田敏也氏は、福島原発事故を真摯に取材されているフリーライターです。いま現在も余談をゆるさない汚染水、燃料棒、健康被害についての貴重な講演です。
たちばな9条の会は、原発を考えるシリーズを息長く学び続けています。
過去講師には今中哲二先生(京都大学原子炉実験所助教)やストップザもんじゅの池島芙紀子さん。チェルノブイリを訪問され現地の子どもたちの甲状腺がんと福島とを比較された安達克郎医師。
電力料金の総括原価方式を映像化されたジャーナリストの西谷文和氏ほか。
2カ月に1度のペースで参加者みなさんといっしょに草の根学習会を参学寺(場所地図参照)で開いています。
講演後は忘年会をかねてポットラックパーティ(飲食持ち寄り)。

日時: 2013年12月21日(土)17:30開場/18:00開始
講師:守田敏也(フリーライター、著書『内部被曝』岩波ブックレット。矢ケ崎克馬氏と共著)

守田氏のブログ明日に向けて
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011

会場: 参学寺「参究道場」 TEL 06-6658-8934
大阪市西成区橘1-7-6
参学寺ホームページ
http://www.sangakuji.com/
Eメール sangakuji@cwo.zaq.ne.jp

申込:西田靖弘携帯090-9610-8780
Eメール nishiyan0213@gmail.com
もしくは米澤清恵 電話090-5647-0922 
米澤Eメール kiyoyonyon@hotmail.com

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12月23日 滋賀県高島市

全国に拡大する放射能汚染と汚染チップ投棄を考える交流会
~ジャーナリスト守田敏也さんを迎えて~

汚染チップ撤去スケジュールが決まりました。撤去が安全に、確実に処理完了されることを願います。
この事件に関して、地元のみならず多くの方々が関心を寄せています。
高島で見つかった300トンの高濃度の放射性物質に汚染されたチップの不法投棄は、全国で氷山の一角といわれています。
再発防止策、どのように地域を守っていくのか、どうしたら放射能汚染から身を守れるのかなど、
被災地を何度も訪れ、原発問題に取り組むジャーナリストの守田さんを迎え、一緒に考えていきませんか?
この度、大地さんのご好意で場所をご提供いただき、さまざまな角度から汚染チップ問題を捉えた意見交流会・勉強会を企画いたしました。
お気軽にご参加くださいませ☆

12 月23 日(月) 午後13:30~16:30(13:00 会場)

障害福祉施設「大地」
高島市安曇川町下小川2441-25 (湖周道路沿い)
0740-32-3860

参加費用600円のカンパお願いいたします☆(講師代)
どなたでもお気軽に参加していただけます。遠方の方、お子様連れ歓迎です。
(キッズスペース用意しております☆)

13:00 開場
13:30 ~15:15 守田さんの講演
(拡散する放射能汚染~汚染チップ問題の裏側~若狭湾原発群の影響~内部被爆について他)
15:30~16:30 フリートーク (意見交換・質疑応答・交流会)
* 内容が多少変更することがございますがご了承くださいませ。

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講師:守田敏也さん (フリージャーナリスト)

1959年生まれ。京都市在住。同志社大学社会的共通資本研センター客員フェローなどを経て、現
在フリーライターとして取材活動を続けながら、社会的共通資本に関する研究を進めている 。ナ
ラ枯れ問題に深く関わり京都大文字山での害虫防除なども実施。原子力政策に関して独自の研
究をするとともに、3.11 以降は何度も被災地を訪れ、ブログ「明日に向けて」を通じて情報を発信。
各地で講演を行いつつ、放射線被曝の恐ろしさを明らかにし、防護を訴えている。著書に矢ヶ
克馬琉球大学名誉教授との共著「内部被曝」(岩波ブックレット)がある。

その他ご連絡等090-3815-5873 (担当:梅村)
umemomosakura212781@ezweb.ne.jp

 

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明日に向けて(771)秘密保護法・・・動揺した安倍首相「反省」を表明、それなら廃案にすべき!

2013年12月12日 18時30分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131212 18:30)

まれに見る悪法である秘密保護法を強引に可決した安倍首相は、臨時国会の閉幕を踏まえて首相官邸で記者会見し、民衆の激しい抗議の声に動揺して「反省」の言葉を口にしました。東京新聞は以下のように語ったと伝えています。

***

「厳しい世論は国民の叱声(しっせい)であると、謙虚に真摯(しんし)に受け止めなければならない。私自身が、もっともっと丁寧に、時間を取って説明すべきだったと反省している」
首相は「審議過程では、秘密が際限なく広がる、知る権利が奪われる、通常の生活が脅かされるといった懸念の声もいただいた」と指摘。その上で「そのようなことは断じてあり得ない。今ある秘密の範囲は広がらない。一般の方が巻き込まれることも決してない」

***

「厳しい世論は国民の叱声であると、謙虚に真摯に受け止めなければならない」・・・明らかにこれは、全国津々浦々で行われいる秘密保護法反対デモに動揺して出てきた言葉です。
石破幹事長の「デモはテロ」という発言も、石破氏の反民主主義的な発想と、デモへの恐れがないまぜになって飛び出してきたものでしたが、首相のこの言葉にも、民衆の抵抗への激しい動揺があらわれています。明らかにデモを恐れています。

しかしもちろん、「謙虚に真摯に」などというのはまったく嘘です。本当にこの首相は嘘を平気でつけるひとなのだとため息が出ます。
彼は続けて「秘密が際限なく広がる、知る権利が奪われる、通常の生活が脅かされる・・・そのようなことは断じてあり得ない」と断言しましたが、福島原発がコントロール下にあり、汚染水は完全にブロックされており、現在も未来も健康被害はないと断言したこの首相を、誰が信じることなどできるでしょうか。
安倍首相が何を言おうが、法の性質は条文に記されており、その内容が「秘密が際限なく広がる、知る権利が奪われる、通常の生活が脅かされる」ものとなっているのです。だから日本中で反対の声が上がっているのです。だから「反省」など語るなら、この悪法を廃案にすべきなのです!

また多くの人が危機を感じるから、大きな反対の声を上げているのに、審議を尽くさず、強引に法を通してしまった。「謙虚に真摯に」受け止める気がある人物が、また「時間を取って説明すべきだった」と思う人物が、あのようなあまりに強引なやり方をとるはずなどありません。
にもかかわらず、安倍首相は、またも大嘘で切り抜けようとしている。本当に、この方はまっとうな倫理観を持ち合わせていない。そういう人物こそ、たくさんのことを秘密にしたがります。きちんと持論を説明することができない上に、嘘を繰り返すので、その露見をいつも恐れているからです。
ちなみに首相のお連れ合いの昭恵さんは、「家庭内野党」だそうですが、こういう嘘には反対しないのでしょうか。大嘘つきの伴侶がこの国の首相をしていることに恥ずかしさを感じないのでしょうか。どこが「家庭内野党」なのか大いに疑問です。
ツイッターでのある方の書き込みに、安倍首相の言い分は、暴力を振るった後に「もっと優しくすれば良かった」と語るDV夫のようだというものがありましたが同感です。

安倍首相の大きな動揺は、共同通信が8、9日に行った世論調査で、内閣支持率が11月の57.9%から10.3ポイント落ちて47.6%へと急落したことにも影響されたものです。不支持も26.2%から38.4%に上昇しました。
秘密保護法についても、次期通常国会以降に「修正する」が54.1%、「廃止する」が28.2%で、合わせて82.2%がこのままの施行に反対しています。法律に「不安を感じる」という回答も70.8%に登っています。
経営陣を安倍首相の息のかかった人物に変えてきたNHKの世論調査ですら、支持が60%から50%に下落。不支持が25%から35%に上昇との結果が報じています。

内閣支持率の急落は、全国で展開された秘密保護法反対行動が呼び起こしているものです。もともと安倍政権は、政治的理念での支持など受けていません。「アベノミクス」におけるまやかしの「経済効果」のみが支えです。
秘密保護法のことも、TPPへの参加も、公約にはまったくなかった。にもかかわらず戦争への道をひた走る、安倍政権の危険な姿が、ようやく多くの人々にも見えてきたと言えるでしょう。

こうした民衆の声の高まりの中で大きく動揺しつつ、一方では支持率を失う前により強権的な体制を強めてしまおうと思いながら、他方で支持率低下が気になって仕方がない姿を安倍首相とともに体現しているのが迷走を繰り返す石破幹事長発言です。
石破氏は、「デモはテロ」ととんでもない発言をして批判をあびたときにも、即刻、「テロ」発言を撤回し、「政治家は世の中に対するおそれを持っていかなければならない」と語りました。(12月4日)
デモに対して「テロ」と捉えてしまうような恐れをいだき、その上、このテロ発言批判にも恐れを抱いた石破氏が、自らの動揺を隠すために「恐れを持った」ことを「恐れを持っていかなければならない」と言い換えただけですが、石破幹事長はその後も同じことを繰り返しています。

内閣支持率の低下を受けた11日に、石破氏は日本記者クラブで会見し、秘密保護法で指定された秘密を報道機関が報じることについて「常識的に言って、何らかの方法で抑制されることになると思う」と述べました。
実際には秘密保護法の条文にすら「国民の知る権利の保障に資する報道又(また)は取材の自由に十分に配慮しなければならない」と明記してあり、正当な取材で秘密を入手した場合は処罰の対象にならず、秘密を報じた場合の罰則規定も設けられていないのであって、石破氏の発言は強権的な逸脱です。
ところが、石破氏はこの会見の2時間後に自民党本部で記者団に「(秘密を)漏洩(ろうえい)した公務員は罰せられるが、報道した当事者は処罰の対象にならないということだった」と訂正し、秘密に関する報道についても「抑制を求めたものではない」と釈明したのでした。官僚など側近に、条文への無理解を指摘されたのでしょう。

にもかかわらず12日になると石破氏は再び方向転換。ニッポン放送のラジオ番組の中で、「秘密保護法で指定された秘密情報」を報道機関が報じることに自制を求めて、「外へ出すと国の安全に大きな影響があると分かっているが報道する。(その結果)大勢の人が死んだとなれば『それはどうだろう』というのはある」などと発言しました。
いったんは、報道そのものが罰せられると語り、あわてて、罰せられないと訂正し、さらに罰せられないが自制すべきだと発言の修正を繰り返したわけです。
ここには石破氏の、より強権的な道に進もうという反民主主義的な意図と、民衆の怒りへの怯えが錯綜していることがはっきりと表れていることが見てとれます。同時に、秘密保護法があまりにあいまいで、はっきりとしていない法律であることもよく表れています。だから「常識だ」と言ったことを2時間後に訂正し、翌日、再訂正することになったのです。

安倍首相と石破幹事長の、動揺の繰り返しから見えることは、この二人はまったく反省などしておらず、反民主主義的な野望を持ち続けていますが、他方で、民衆の声をひどく恐れてもいるということです。
実はこれは現政権幹部に共通する価値観に裏打ちされた態度です。それを象徴するのが、麻生副総理が、7月参院選の自民党「圧勝」時に語った「ナチス称賛発言」です。麻生氏はこう語ったのでした。
「ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうかね」・・・。

これに対して、僕は当時、すぐに以下のような分析を出しました。

***

麻生氏は憲法9条をはじめ「改憲」の道に人びとの十分な合意などないことをそれなれりに把握しているのです。また正々堂々と、改憲について論じ合ったとき、自民党の主張がたちまち「民主主義に反している」という正論で破られてしまうことも肌身で感じている。明らかに民主主義に驚異を感じているのです。
だから、選挙民に何が重大問題であるかを気づかせないままに、徹底した嘘と暴力の発動によって、「ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで変わった」ナチスの民主主義破壊の手口に強烈に魅力を感じ、ついその本音を出してしまったのです。」

明日に向けて(720)自民党の「圧勝」?てやんでぃ!(麻生ナチス発言から自民党を支配を見る)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/c085961caa38a6d04a2f23a37d178192

***

現在の、安倍首相や石破幹事長の、非常に強権的でありながら、動揺を繰り返す態度は、麻生ナチス称賛発言に通底するものであり、現政権が共有して持っているものです。
現政権は民主主義をまったく尊重しておらず、ナチスすら褒め称えるような価値観の人々によって成り立っているのです。しかし一方でその本質の露見を痛く恐れているのです。
そうであるならば、私たちの進むべき道はあまりにも明らかです。民主主義の旗を高く掲げ、さらにいっそう怒りの声を大にすること。同時に、さらに一層、民衆の覚醒を深めることです。

そのために街頭行動と、学習会活動を縦横無尽に組み合わせた行動を重ねましょう。
原発のこと、放射線のこと、戦争のこと、戦後史のことを学び、さらにあらゆる分野に知識と知恵を伸ばしていきましょう。
今は真に民主主義を育てるときです。暗黒の独裁政権か、民衆によってラディカルに支えられたデモクラシーか。大きな分岐点に私たちはいます。未来のために、子どもたちのために、力を尽くして頑張りましょう!

 

 

 

 


 

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明日に向けて(770)違憲の秘密保護法など恐れず、学びと覚醒を推し進めよう!

2013年12月08日 09時30分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131208 09:30)

秘密保護法が強行可決されました。さまざまな法的不備もほったらかしたままにです。この強行に対して、多くの人々がこれは「安倍内閣の終わりの始まりだ」と叫んでいます。まったくその通り。
ちなみに安倍首相は、強行採決から一夜が過ぎた翌朝、「官邸前が静かなので、嵐が過ぎ去ったと感じた」と述べたそうです。冗談ではない。嵐はこれからです!

秘密保護法は、これから施行に向けたさまざまな手続きや整備に入ります。それに1年はかかると言われています。この1年間が私たちの国の民主主義の行く末を決めます。私たちはあらゆる手段を通じ、この悪法を無効化するための努力を重ねましょう。1年をかけて、必ずやこの法律を撤回させましょう。大衆的な行動で、安倍政権を追い詰めましょう。

彼の祖父の岸信介首相(当時)も、戦前のような軍事国家への道を歩もうとしたがゆえに、日米安保改定反対デモの拡大の中で退陣を迫られました。国会議員たちの手によってではなく、民衆の直接行動が、軍事ファシズムに舞い戻ろうとする政権を倒したのです。歴史は繰り返す!民主主義につばする安倍政権も私たちの力でこそ倒しましょう。

そもそも安倍首相はあまりにも思い上がっています。この国の主人公が民衆であることを忘れている。首相は本来、公共のしもべとして働くべき存在です。そのことを根本的に履き違えている。
その上、オリンピック招致発言をはじめ、数々の大嘘を平気でついてきています。そもそも秘密保護法など、選挙の公約ではまったく触れられていませんでした。所信表明演説でもです。それどころか自民党は、TPPは絶対反対だと叫んでいたのです。ただ叫ぶだけではなくて「ぶれない」なんて啖呵さえ切っていたのです。ところがこの変わり身の早さ。「嘘つきは泥棒の始まり」という言葉を安倍首相は知らないのでしょうか。

そもそも自民党はなぜ当初はTPPに反対していたのか。日本に住まう人々のたくさんの利益を、アメリカ独占資本に差し出すことになるからです。ところが、安倍首相率いる自民党は、政権につくやすぐにひっくり返ってしまった。なぜでしょうか。この国に強い支配力を行使しようとするアメリカにすり寄ることで、政権を維持しようと欲したからです。

秘密保護法の本質もそう。アメリカ軍との軍事協力体制を強め、自衛隊を、アメリカ軍の属国軍として差し出すために、この法律をアメリカが要望したことに応えたのです。もちろん、嘘に次ぐ嘘の体制を守るため、都合の悪いさまざまな事実を強権的に覆い隠したいという意図も強く働いています。

そんな安倍首相や自民党がそれでも多数派になってしまうのは、小選挙区制をはじめ、この国の選挙制度がかなり歪んでしまっているからです。現在の自民党は、前の選挙で大敗したときよりも、もっと少ない得票率で、大きな議席を得ています。けして多数派政権などではないのです。

この歪んだ選挙制度は必ず変えていかなければなりませんが、しかし私たちが忘れてはいけないのは、民主主義を構成するのはけして選挙だけではないということです。いや、選挙制度が腐敗しているからこそ、今、重要なのは民衆の直接行動です。デモやピースウォークはその重要な柱ですが、それだけではない。ありとあらゆる手段を使って、意志を表明すること、活発に動くことが大切です。

とくに今、もっとも大切なのは、私たちの側がさまざまな領域で学習を強めていくことです。とくに秘密保護法がでてきた背景は、政府がたくさんの秘密を抱えていること、その露見を非常に恐れていることにあるのですから、ならばこの1年、よりたくさんのことを学び、明らかにし、広めていきましょう。そうして私たち民衆の覚醒を強めていきましょう。

各地で、これまでにも増した熱意で、学習会や討論会を開き、原発のこと、被曝のこと、戦争のこと、アメリカ軍のこと、自衛隊のことなどをどんどん深く学んでいきましょう。それだけではありません。TPPのこと、それに関連する農業や医療のこと、食の安全のこと、学ぶことはたくさんあります。

歴史についても理解を深めましょう。そもそも大規模な放射線被曝は、広島・長崎から始まっています。そしてビキニ環礁などでの核実験や、スリーマイル島事故、チェルノブイリ事故からも、私たちはたくさんの知恵を学ぶ必要があります。

戦後史も大切です。新しい憲法ができてから私たちの国はどのような歩みを経てきたのか。アメリカはどのように私たちの国にかかわり続けたのか。なぜ戦後、68年も経っているのに、いまだに沖縄が占領状態にあるのか。学ぶべきことはたくさんあります。

しかもこれらの歴史は、私たちの生活に直結していることでありながら、学校教育ではほとんど教えられていません。なぜか。まさにここを民衆が学ぶと政府が困るからです。現在の私たちの社会の矛盾が生成してきた歴史的からくりがここに含まれている。だから戦後一貫して、自民党はこの部分を学校教育で教えようとしてこなかったのです。

そうして一年間、学びと行動を交互に重ね合わせ、民衆の覚醒を力強く推し進めましょう。秘密保護法などでは、とても真実が覆い隠せないほどの民衆的な力を私たちは身につけましょう。ただこの悪法を撤回させるだけでは足りない。そもそもこの法律が狙っているところを私たちは打ち破らなければならない。それは民衆を事実から遠ざけ、愚かな状態に追い込み、いんちきの選挙制度で、コントロールし続けることです。だから反対の道を私たちは進みましょう。

同時に、自衛隊のアメリカ軍への協力をやめさせなくてはいけません。この点で大事なのは今こそ、イラク戦争をとらえ返すことです。なぜか。自衛隊が初めて大規模にアメリカ軍の展開の下支えをしたのがこの戦争だったからです。

イラク戦争は何のために行われたのか。「イラクが大量破壊兵器を持っていて、世界を脅かしているから」というのが戦争目的でした。日本は小泉首相のもとにこの戦争に全面協力しました。しかし実際にはどうだったのか。イラクは大量破壊兵器などまったく持っていなかったのです。

こんな理不尽なことがあるでしょうか。アメリカは「大量破壊兵器保持を許すな」といってイラクに攻め込み、雨あられと爆弾を投下し、地上軍も投入してたくさんのイラクの人々を殺したのです。しかもたくさんの民間人も巻き添えにした。挙句の果てに、フセイン大統領を捕まえ、アメリカ軍がバックアップする新政権に殺させてしまいました。しかし戦争の理由はまったくの「誤認」だったのです。

これは完全に戦争犯罪です。もっとも重大な責任を負っているのは、ブッシュ元アメリカ大統領と、ブレア元イギリス首相です。しかし小泉元首相の罪も極めて大きい。戦争犯罪に大きく手を貸したのです。
にもかかわらず、私たちの国では、小泉元首相を罰しようとするいかなるモメントも存在しませんでした。

なぜか。悲しいほどに私たち民衆の覚醒が遅れていたからです。今、思い返しても残念でなりません。
みなさん。僕はあのとき、心ある人々とともに、イラク戦争反対を叫んで、何度も町を歩きました。そのときも、一定数の人々は、戦争の本質を見抜いて大きな声を上げ続けました。

しかし民衆の大半は動きませんでした。マスコミもそうでした。そうして小泉元首相の「人気」が保持されていた。
あのときの悔しさ、無念さ、イラクの人々への申し訳なさは今も忘れられません。

それでもあのとき、イラク戦争反対を掲げてデモを続けた多くの人たちは、私たちの国の民衆がいつしか覚醒してくれるだろうことへの希望を捨てませんでした。
僕も周りの友人たちと、何度もビラを作りました。少しでも読みやすいものを、だけれどもけして主張を薄めないものを作ろうと、討論を繰り返し、毎回、心を込めて作りました。

そうしてどんなに少ない数でもいいからと、町に繰り出して歩いた。今は少数派でも、いつか真実が世の中に通るだろうと心に念じて、平和を訴え、歩き続けたのです。
そのころを知る人々にとっては、今は隔世の感があります。これほど多くの人々が連続的に、しかも全国津々浦々で歩く日が来ることはあのときは想像もできなかったからです。

しかしまだ私たちの歩みは途中です。これでもまだまだ足りない。足りないから、秘密保護法もいったんは成立してしまいました。もっと力をつけなくてはいけません。そうして私たちの力がつけばつくだけ、私たちの未来は明るくなり、子どもたちの未来の可能性も開けていくのです。
反対にここで私たちが挫けてしまえば、子どもたち、若者たちには戦争に駆り出される未来が待っている。

私たち大人は、若い人々、子どもたちに対して、たくさんの放射能を残してしまいました。これから未来世代は、私たちの世代がしでかした不始末と長きにわたって格闘していかなくてはなりません。それだけでも申し訳ないのに、その上、戦争に駆り出されるリスクなど送っていいものでしょうか。何としても私たちはこれを止める必要があります。僕はそのためだったら、すべてを投げ出してもなんら惜しくはありません。

覚醒しましょう!もっともっと。賢くなりましょう。
民衆が賢くなり、力をつけていくことこそが、民主主義を支えるのです。民主主義の語源はデモスクラチア。デモス=民衆に、クラチア=力のある状態です。それを精力的に発揮していくのがラディカル・デモクラシーです。

共に進みましょう!

*****
なお、本日は、広島県三次市で講演を行います。
食べ物のことがメインですが、放射線防護や、秘密保護法のことにも触れます!
集会案内を貼り付けておきます!


7月13日に行った講演会の反響があったので第2弾を行います
前回来られた方も初めての方も大歓迎です

「身体は、自分が食べたものでできている」
そんなアタリマエを
忙しい毎日の中で忘れてしまいがち。
 添加物や必要以上の農薬が使われ、安全性がわからない食材を
 いったいどれくらい口にしているのか・・・
 それでも何とか機能している素晴らしい体を
私たちは持っています
 でも、この先もこのまま機能してくれる?
 自分も、子どもも、家族の体も。。。

だから少し立ち止まって、
 本当に体が必要としている食べ物のことを
考えてみませんか?
 食べられる体がある限り、まだ大丈夫!
 守田先生に、今の食品の現状と対策を聞いてみましょう。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

講師 : 守田 敏也さん 
       (ジャーナリスト 京都府在住)
 日時 : 12月8日(日)
 場所 : 三次ふれあい会館2階 会議室(三次コミュニティセンター)
        (三次市三次町1828-5 Tel 0824-62-3612)
時間 : 13:30~15:30(13:00開場)
 参加費 : 1,000円
   ※託児はありませんがキッズスペースをご用意しています。

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明日に向けて(769)秘密保護法案は憲法違反!「成立」したとしても無効にさせよう!

2013年12月06日 12時30分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131206 12:30)

秘密保護法案が成立の瀬戸際に立っています。全国津々浦々で、法案反対のデモが行われています。
僕も昨日、一昨日と、京都の街を、法案反対を叫ぶ多くの人々と一緒に歩きました。昨日は歩きながら、写真を次々とFACEBOOKにアップしました。
京都のデモの様子をご覧になりたい方は以下をご覧ください。
https://www.facebook.com/toshiya.morita.90

今日も引き続き、各地で行動が取り組まれています。僕はどうしても書かなければならない原稿(原発事故の健康被害の暴露もの)があり、今日は申し訳ないけれどもパスさせていただきますが、反対の声は日増しに高まっています。
最も大切なことは、この力があれば、例えこの法案が強行採決されようとも、覆すことが絶対にできるということです。なぜか。この法律が完全に憲法違反だからです。

この点で、参考になる弁護士さんのブログを見つけました。

街の弁護士日記 SINCE1992at名古屋
どこまでもマチベンのブログ by岩月浩二@守山法律事務所(名古屋市)
http://moriyama-law.cocolog-nifty.com/machiben/2013/12/post-664f.html

岩月さんは、このページで「超安心 秘密保護法なんて怖くない! 憲法は最強の切り札なのだ」という記事を書いています。
超安心かどうかはともかく、岩月さんの記事の核心部分を引用します。

***

「憲法21条の「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由」には「過度に広範ゆえ無効の法理」とか「不明確ゆえ無効の法理(あいまいゆえ無効の法理)」とかウルトラマジックな切り札が用意されているんです。
これは大学生でも知っている法理だけど、法学部生でないと知らない可能性があるから、書いておくね。

要するに、表現の自由は民主主義を支える重要な権利だから、表現行為が萎縮するような法律は厳に慎まなければならないんですね。
過度に広範だったり、曖昧だったりすると、表現行為が萎縮してしまうわけ。
そうなると民主主義自体が機能しなくなって、誤った政治が行われても、民主主義による是正ができなくなっちゃうので、表現行為はとりわけ厚く保護されてるんですね。」

「大日本帝国憲法は、法律さえ作れば、無制限に人権を制限することができることになっていましたが、日本国憲法は、法律を超える最高法規ですから、憲法違反で無効だと唱えれば、無効になっちゃうんです。(^^)V
欲張りじいさんは損をするというのは真理で、今回は「何でもかんでも秘密」とばかりに、あんまり欲張ったので、この法律は全体として無効になっちゃうんです。」

***

僕もその通りだと思います。こんな法律、完全に憲法違反です。
そこで大事なのは次の点です。私たちが今こそ、憲法を生かさなければならないということです。正確には憲法に記された人権という大きな力を発動させなければいけない。

憲法の第三章、「国民の権利及び義務」の第十二条には次のような言葉が書かれています。
「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。」
そう。まさに今、問われているのは、私たちの「不断の努力」による、自由及び権利の保持です。
かりに今日、法案が強行可決されるのだとしたら、私たちはただちに、同法が憲法違反であるがゆえに無効であることを主張して立ち上がりましょう!

ただし、ここで大事な点を一つ押さえておく必要があります。
この私たちに力を与えてくれる憲法が、残念なことにその対象を「国民」としていることです。
もともとアメリカのリベラリストたちが憲法を起草したときには、「国民」という言葉ではなくpeople=人民という言葉が使われていたのでした。
しかし憲法施行とともに、「大日本帝国臣民」ではなくなり、「在日朝鮮人」となる人々の力を恐れた当時の日本の支配層が、必死の抵抗で、人民を「国民」に書き換えてしまったのです。そのため「人権」から日本国籍を持たない多くの人々が排除されてしまった。

私たちはこのことを頭に入れて、運動を進めていく必要があります。デモのスローガンなどで「国民」という言葉を使用することは控えましょう。
僕自身は「国民・住民」という書き方もしますが、「民衆」という言葉もいいかもしれません。なかなかしっくりいかないかもしれませんが、この憲法の弱点も踏まえつつ、しかし私たちは先人によって与えられた人権を今こそ十二分に活用して、民主主義を守り、発展させましょう。
大事なのはただ守るのではなく、発展させることです。行動的な民主主義、ラディカル・デモクラシーを発揚するときが今です!

民主主義を発展させるために、主張しておきたいのは、秘密保護法案の反民主主義性、反憲法性を強調することは大切ですが、同法の危険性を強調するあまりに、この法律が成立したらただちに暗黒の世になるかのように宣伝することは止めましょうということです。
そんなことはない。暗黒の世は、私たちが抵抗をあきらめてしまったときにこそ訪れるのです。
繰り返しますが、私たちの手にはしっかりとした人権があります。それも単に憲法の条文に書かれただけのものではない。私たちの心の中にしっかりと根を下ろしています。

人権は私たちの常識感覚の中にも宿っている。私たちが普通に思っている感覚が、たとえば戦前とは大違いなのです。
戦前は、全ての人が「お国のために」命を差し出すことを強制されました。一部の人々が激しく抵抗しましたが、しかし多くの人々はこれに従ってしまいました。
その挙句、凄惨な戦争に連れていかれて人殺しを強要され、、あるいは大切な人を戦争に奪われ、さらに本土空襲、沖縄戦、原爆投下など、戦争の大変な惨禍にまきまれて、多くの命を失ってしまいました。
そのことに文句の一つも言えなかった。残念ながら、それが大日本帝国憲法下の多くの人々の「常識」だったのです。

戦後を十分に正してこれなかった限界は多々あるにせよ、それでも今はまったく違う。現にこれだけたくさんの人々が、民主主義に反する法案を前にしてデモを行っています。
原発の稼働だって食い止めている。自公が巨大与党を作ってもなお、すぐに再稼働なんかできない。首相官邸前に、そして各地の電力会社前に、延々と抗議行動が繰り返されているからです。
民主主義はここにこそある。これは戦後の長い年月を通じて培われ、私たちの心の中に、行動の中に宿っているもの。このあかりを私たちは守らなければならない。このあかりは大事なものであるとともにとても強いもの。今、それをたくさん集めて未来を力強く照らす必要があります。
だから今、萎縮してしまってはいけません!政府を万能のように捉えてはいけません。自主規制して主張を控えるなんてもってのほか。今こそ、政府が秘密にしそうなことの多くをより力強く暴いていきましょう。

政府がけして民衆に対して強いわけではないことは、「強行可決」の過程を見ても分かります。自民党・公明党は、なんとかして、みんなの党と、維新をこの法案に取り込もうとしている。なぜでしょうか。数の上では押し切ることも可能なのになぜ自公だけで押し通せないのか。
単純です。少しでも反対派の意見を取り入れたポーズが欲しいからです。強行採決批判を恐れているのです。国会外が怖いのです。多くの人々の立ち上がりを恐れているのです。
石破発言などはその最たるもの。デモをテロというのは、彼の心の中に民主主義がまったくないことを象徴するものですが、同時に、デモをされるだけで「テロだ」と思えてしまうほどに、民衆の声が怖いのです。心が怯えているのです。
だから封じ込めようとしている。対話で説得できる自信などさらさらないので、この法律にすがりつこうとしている。それが私たちの国の政府の中枢人物たちの実態です。こんな人々に負けるわけにはいきません。

秘密保護法が成立したら、ただちに憲法違反による無効を掲げた行動を対置しましょう。
さらに自衛隊がアメリカ軍の配下となって、戦場に送り出されることを食い止める行動を起こしましょう。もう一つ、政府が秘密にしたそうなことをめぐっての学習会を全国津々浦々で広げていきましょう。
デモも大事ですが、学習・対話もとても大事です。何せ政府はたくさんの知られたくないことを抱え込んでいる。みんなでその一つ一つを暴き、学び、知識を広げ、民衆の覚醒を押し広げましょう。

僕自身は、この悪法が通ってもまったく無視して、取材・執筆・講演活動を続け、放射線被曝の真実、原発の実態を暴き続けます。
かりに逮捕されたら監獄の中から発信するまで。むしろその方が注目が集まろうと言うもの。僕は多くの方の心の中に宿っている民主主義を信じているので何も怖くありません。
もちろん、こんな法律があることは私たちの国の恥ですから、無視するだけでなく、廃止のためにも行動します。
恐れずに、いや、そればかりか強い自信を持って、私たちが継承している人権に誇りを持って、一緒に前に進みましょう。日本の民主主義を、下から支えられたラディカル・デモクラシーを、力強く成長させる時こそが今です!

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明日に向けて(768)秘密保護法制定を阻止しよう!(下)

2013年12月02日 23時30分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20131202 23:30)

秘密保護法に関する論考の(下)をお送りします。
前回の考察の中で、僕は孫崎享さんの歴史的考察を踏まえた見解への共感を述べつつ、僕なりに、秘密保護法の歴史的背景をまとめましたが、その最後に次のように書きました。

「ただし、ここから先は僕は孫崎さんとは違う意見を持っています。
この上に安倍政権や日本の官僚たちが、この法律の制定に動く強い動機を持っていることを感じるからです。その意味で安倍政権や官僚たちは、アメリカに対して受け身ばかりでなく、ごり押しを利用しようともしている。
その最も大きな点は、原発事故にまつわる問題です。端的に言えば、事故の実態を隠し、健康被害を隠し、 これからの福島原発の廃炉行程や、高レベル廃棄物の処理の過程を秘密にしようとすることです。
ただしさらにそれを規定しているのは、安倍政権や官僚たちの恐怖です。何への恐怖なのか。日本の民衆の覚醒に対しての恐怖です!」

・・・今回はこの続きを書きたいと思います。

常々感じることですが、こうした日本の民衆の覚醒については、実態をよく理解していない、ないし理解しようとしない政治家たちに対し、むしろ官僚たちの方が、はるかに実情をよく把握しているとも思います。
原発がコントロールなどとてもできていないこと、それどころか莫大な危険性を未だに抱えていること、さらには健康被害も深刻に拡大していることなどについてもです。
こうした問題をいかに処理するかを考えるとき、彼ら、彼女らが一番、恐れるのは、隠したい事実がどんどん露見し、社会的批判が高まることでしょう。そのことで国民・住民をコントロールできなくなることを最も恐れているのです。

とくに官僚たちが肌で感じているのは、日本の民衆の新たな覚醒だと僕は確信しています。
なぜか。福島第一原発事故以降、次々と明らかになったことは、政府や東電などの大企業が、どんなに平気で嘘をつくのかということでした。また「東京大学」など、権威をもった学者の多くも真実などまったく語りはしないということでした。
大新聞も本当のことを書かない。マスコミの多くも毒されている。そのことに、どれほどのパーセンテージかは分からないにせよ、日本に住まう民衆の中の大きな部分が確実に気がついた。
このため、「権威」によるコントロールが利かなくなりだした。誰よりもそれに気が付いているのが官僚たちです。

一方、政治家の中で、こうした民衆の動向に最も敏感なのが小泉純一郎という人物なのでしょう。そのために、日本を貧富の差の大きな国に作り変え、若者たちをワーキングプアにおいやった張本人が「原発ゼロ」を言い出している。
裏があるのかどうかは分かりませんが、少なくとも民衆の下からのエネルギーを、なんとか上から集約する必要にかられてのことだと思われます。
いや選挙制度の空洞化は、官僚のみならず、自民党の政治家たちにとっても脅威になり始めているのではないか。民衆の意志が選挙に反映しておらず、民主主義が形骸化していること、正確には民主主義という名のもとでの支配の合法性が崩れているのを、選挙の実態を通じて感じざるをえないのでしょう。

では民衆の中ではどうなのか。権威におもねらず、あるいは議員などに社会変革の可能性を委ねず、自ら学び、必要な知識を広げ、能動的に行動する人々が急速に増えだしています。その象徴の一つが、国会前や、各地の電力会社の前で、延々と続く毎週の行動などです。
これほどの動きは、労働組合など、それまで民衆の権利の砦であった組織が次々と解体されてきてしまったここ20年の中では起きることはなかった。特筆すべき能動的な行動です。

僕自身もこのことを、日々、強く実感しています。前回の記事の冒頭で、11月9日から24日までの間に9回も講演したことを書きましたが、主催者の中には中学校のPTAや地域の自治会、町づくり協議会なども含まれていました。
脱原発の市民運動団体ばかりでなく、あらゆるところで新たな学びが開始されているのです。その現場のさまざまな方たちが、「権威」ある肩書などを持たない僕を、次々と呼んでくださるのです。どの会場も非常に強い学習意欲に包まれている。深く感動します。
秘密保護法は、こうした民衆の覚醒への、政治家たちや官僚たちの恐怖によっても強く支えられ、強行されようとしていると僕は肌で感じています。

そこに象徴されているのは、この国のこれまでの支配の合法性そのものが、最後的終焉に近づきつつあるのだということです。
秘密をたくさん作り、持ちたがるのは、知られることが怖いからです。今の国の在り方から人心が大きく離れていることを、政治家や官僚たちが熟知しているのです。もう民衆を説得し、丸め込む自信がないのです。
冷戦の時のように、国民・住民を統合できるだけの社会保障制度ももはやどんどん壊れている。それどころか、官僚たちはもっと壊さなくてはいけない。自民党の中にもはや旧来のシステムを守ろうとするものは皆無です。

しかも、この国は、抜本的に内部から朽ち果てだしています。多くの企業の、とめどもない倫理的堕落はその象徴です。
産地偽装だとか、点検のごまかしだとかそんなことばかりが繰り返され、無責任体質がどんどん強くなってしまっている。真剣になって国や企業を支えようとする人士が激減しているのです。
当然にもそれは支配力のさらなる低下をもたらしています。こうした実情は私たちよりも官僚の方が熟知している。だから彼ら彼女らは、秘密の強化に走っているのです。

実は秘密の強化は彼ら、彼女らをも縛っていくものです。なぜか。政治家や官僚たちは最も国家機密に近いところにいるからです。
ただし自分の属する部門の秘密にしか触れられない。そのためこれまで政治家や官僚たちは、互いに重要情報をリークしあい、そのことで不断に「調整」を図ってきたのです。
ところがこの「調整」が秘密保持の強制によって効かなくなる。そうなれば、政治家や官僚の中ですら、事なかれ主義で動き無責任体質のものの方が有利になってしまいます。
風通しの悪いところで良い知恵など浮かぶはずがない。その意味で、秘密保護法は客観的に言っても亡国の道なのです。それでも覚醒する民衆を恐れる安倍政権や官僚たちは、この道を採る以外に選択の余地がない。

同時にまた現行の政治システムと官僚制度の瓦解と腐敗は、実はまっとうに生きようとする官僚たちの中からの、抜本的な改革への希求をも生み出していることでしょう。
それは官僚の中からの、民衆への重要情報のリークを増やすことに結果していくことになる。したがって秘密保護法には、官僚の中からの反乱の動きをけん制するモメントも強く含まれいることでしょう。
しかしそれは、彼ら彼女らの中の疑心暗鬼を強めることにしか結果しません。秘密保護法のもとでは官僚たちの中でも強く豊かなチームワークなど生まれるはずがない。だからけして国家の本源的な支配力を強くはしないのに、この道が望まれていることに、この国の行き詰まりが表現されているのです。


こうしたことを踏まえて、では私たち民衆の側はどうしたらいいのか。
何よりも強調したいのは恐れずに進むことです!
まずはこの法案を葬り去るために、残された時間を有意義に使って行動しましょう。こんな法律、つぶすに限ります。そのためにあらゆる行動を起こしましょう。
同時に、アメリカの意図と力強く対決することをめざしましょう。たとえ法案が通ろうが通るまいが、自衛隊をアメリカの属国軍として戦場に送り出すことを認めてはいけない。断固とした行動が必要です。

その際、強調すべきことの一つは、私たちの国の政府、特に長く続いた自民党政権が、北朝鮮をはじめとする諸外国を本当は信頼していたために(あるいは甘えていたために)海岸線にたくさんの原発を建ててしまったことです。
そのうちの一つの福島第一原発は瀕死の状態にあります。他のほとんどのものも、避難もままならない僻地に作られてしまっている。こんなもの絶対に軍事的に守りようなどないのです。
その意味で日本は軍事的リアリティから言っても、戦争などできる国ではないのです。いわんやアメリカの属国軍になりさがって、世界の様々な人々から恨みを買い、ゲリラ攻撃を受けるようにでもなったらとても社会を守り切れない。
私たちは憲法9条を守ることこそ、もっともリアリティのある妥当な道であることを高く掲げていく必要があります。

もう一つ、安倍政権や官僚たちが、私たち民衆の覚醒を恐れているのであれば、私たちはもっと覚醒し、学びを深め、前に前にと進んでいこうではありませんか。
そのために大事なのは、横暴を強める安倍政権に対して、あらゆる意味で萎縮せず、歩みを強めることです。とくに相手は民衆が賢くなることを恐れているのですから、さらに学びと行動を強化しましょう。

三つ目に大事なのは、例えこの法律が成立しようが、私たちにはまだまだ先人が命がけで積み上げてくれたたくさんの人権が残されていることを強く自覚することです。
実は僕はこれまで、若い時のデモ参加などをはじめ、5回ほど公安事件で逮捕されたことがあります。そのたびに警察の留置場に入れられましたが、毎回、同じことを思いました。
「共産党をはじめ、戦前の人たちだったらこれから拷問される。本当に辛かっただろう。今は絶対拷問などされない。先人の積み上げた努力がありがたい」ということです。

多くの人々が、今は戦争に突入した時に似ていると語っています。ある意味ではそうかもしれません。しかし圧倒的に違うのは、私たちの持っている人権のレベルの高さです。
これを十分に自覚しなければいけない。戦前と違って、いきなり監獄の中で袋叩きにあって殺されることなど絶対にありません。私たちはこの人権を有効に使わなくてはいけない。

世界を見渡してみましょう。私たちがいま手にしている人権に遠く届かない地域に住んでいる人々はまだまだたくさんいます。
そしてその中からも、不正義をただし、社会を変革しようとする力強い営為が、次から次へと沸き起こってきています。
私たちは、今こそその一つ一つに学び、励ましを受け、自らの持つ人権の強さに覚醒し、前に進むべきなのです。

アメリカも世界の人々の支持などとっくに失っています。日本の支配勢力も、内側からどんどん朽ちています。
一方、私たちの側には間違いなく新たな覚醒が始まっている。だから僕は今は、巨大な社会変革の入り口なのだと思います。

変革は困難抜きには達成されない。当たり前のことです。局面的には私たちはより暗い道を歩むことになるのかもしれませんが、私たちは、もっと暗い道の中から、今の幸せの根拠を手渡されてきたのです。
だから今、私たちも歴史を紡いでいくために行動しましょう。そのためにも秘密保護法廃案のために立ち上がりましょう。万が一、成立したとしても、その日から、秘密保護法廃棄を掲げた歩みを開始しましょう。

未来世代のために、そして私たち自身のために、どこまでも、頑張りましょう!

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