明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1356)人を逃げさせない原子力災害対策は間違いだ!(原子力規制委員会の暴論を批判する)

2017年02月22日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です。(20170222 23:30)

原子力規制委員会が原子力災害対策において飛んでもないことを言い出しています。
端的に「原発から5キロ圏外は逃げるな!」というのです。あまりの暴論です。許しがたい!

具体的な発言は鹿児島県三反田知事と田中俊一原子力規制委員会委員長との会見の中で行われました。
重要な内容なので佐賀新聞の報道をそのまま引用させていただきます。

***

鹿児島知事に「屋内退避重要」 原子力規制委員長
佐賀新聞 2017年02月19日 09時38分
http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/406941 

原子力規制委員会の田中俊一委員長は18日、九州電力川内原発1、2号機が立地する鹿児島県を訪れ、県庁で三反園訓(みたぞのさとし)知事に対して、原発事故時にはむやみに住民を避難させず、屋内退避を中心にすべきだとする国の原子力災害対策指針について説明した。
田中氏は東京電力福島第1原発事故では無理な避難で多くの犠牲者が出た一方で、福島県民の被ばくによる健康影響も過度に心配する状況ではないと強調した。
さらに「(今後、福島のような)深刻な事故が起こることは考えにくいが、何かあったときには原発5キロ圏内は放射性物質が出る前に予防的に避難し、5キロ以遠は屋内退避で様子を見るのが基本だ」と訴えた。

三反園知事は「原発の安全について県民の理解を得るために、厳格な検査を積み重ねて分かりやすい情報発信をしてほしい」と求めた。
田中氏は同日、原発がある鹿児島県薩摩川内市の岩切秀雄市長や住民とも意見交換。「避難までにどのくらい時間的な余裕があるのか」という住民からの質問に対し、田中氏は「どんな状況でも1日から2日の余裕がある」と答えた。

***

何たる暴論。人々に逃げるなというのです!
原発災害時の避難計画に対して、これまで「自らの責任の範囲ではない」とあいまいな態度をとり続けてきた原子力規制委員会は、明らかに「人を逃げさせない」方針への明確な転換を行っています。

もちろんこの発言は非常に大きなあやまりに満ちています。
第一に「(今後、福島のような)深刻な事故が起こることは考えにくい」などと、福島原発事故が収束などしておらず、2号機の炉内など650シーベルトもあってろくな調査もできず、事故原因すら解明できていないのに言い放っている点です。

ただし実はこれは、すでに新規制基準の中でも言われてきたことでもあります。新たな基準として事故が起こった場合「福島原発事故時の放射能放出の100分の1にとどめる」対策が要請されているからですが、これがあまりにでたらめなのです。
なぜなら新規制基準がもともとうたっているのは、「これまでは過酷事故は起こらないといってきたが間違っていた。これからは過酷事故対策をする」というものだったからです。
のちに「過酷事故」を「重大事故」に変える姑息な言葉の入れ替えがなされているのですが、しかしもともと使われていた「過酷事故」とは、設計段階で施された安全対策がすべて突破されてしまった事故=想定外の事故のことなのです。

そのときの放射能の放出量が「福島原発事故時の100分の1に抑えられる」というのであれば、それはもう「過酷事故」ではありません。「想定内の事故」です。
つまり「万が一放射能が格納容器外に漏れてもある一定の量に抑える装置を付ける」のが新規制基準だということになりますが、そんなことが可能なら、そもそも過酷事故が起きないようにすることが可能なはずです。

繰り返しますが、福島原発事故そのものがまだほとんど解明されていないのです。メルトダウンした核燃料がどんな状態でどこにあるのか、格納容器のどこが壊れてどのように放射能が出たのか、何もわかっていないのです。
それでどうして対策などとれるのでしょうか?

この「放射能放出量を福島原発事故時の100分の1に抑える」という暴論を今度はなんと避難計画にまで適用しようというのですから、まったく許すことができません。
しかも「何かあったときには原発5キロ圏内は放射性物質が出る前に予防的に避難し、5キロ以遠は屋内退避で様子を見るのが基本だ」と語ることで、ようするに「5キロ圏内以外は逃げてはいけない」という示唆がなされています。
これが国の原子力災害対策として確定してしまうと、災害対策法で各自治体は「国の計画に抵触してはならない」という縛りを受けますから、逃げ出すための有効な計画が立てられてなくなってしまいます。
いや目先の経済的観点から原発を動かしたい「立地自治体」にとっては、大した災害対策を立てなくてもよい口実にもなってしまい、今ある避難計画すらが後退する結果をももたらしかねません。

しかも福島原発事故での東電と国による加害行為に対して本当にひどい開き直りまでもが始められています。
あの事故では「原発関連死」で少なくとも2000人が亡くなっていることが認定されています。東電と国が殺害したのですが、それが「無理な避難で多くの犠牲者が出た」とあたかも避難を行った側が悪いかのようにすり替えている。
また「福島県民の被ばくによる健康影響も過度に心配する状況ではない」と、甲状腺がんの多発など、深刻な影響がさまざまに表面化しつつある現実を覆い隠し、被ばく影響の全面否定にも踏み込んでいます。
ここでなされているのは加害責任の放棄とひらきなおり、さらに加害責任の被害者へのなすりつけです。「盗人猛々しい」にもほどがある!

「無理な避難で多くの犠牲」が出たのは、避難したことが悪かったからでは断じてありません!避難の準備がまったくなされていなかったことこそ問題だったのです。
何よりあの時点では事故がどこまで広がるか分からなかったのでした。実際に4号機プールは水が無くなりだしていました。しかもどれぐらい減りつつあったのかすら誰にもつかめていなかったのでした。
米軍は独自の解析から「もはや水がないのでは」と判断し、自国民に原発から半径80キロより外に逃げろと命令していましたし、フランスは自国民にすぐに関西より西に行くことをもとめ、さらには出国をも勧告していました。
いやよく伝えられているように、実は東電自身が積極的に社員の家族を逃がしていたいのでした!!
むろん実際に4号機が干上がりつつあったのですから、それらはまったく正しい判断でした。間違っていたのはそうした事実が公開されなかったことでした。

その後4号機が最悪の事態を免れたのは、それ以前から行われていたメンテナンス工事の遅れにより原子炉上部に水が張られており、その水が自重で仕切り板を破って燃料プールに流れ込んだからであって、偶然の産物でしかありません。
そんな状態で、実は国の側ですら原子炉が大爆発する可能性を考え、福島医大などに大規模な遺体安置所を設けていたのですから、とにかく誰にとっても逃げ出すのが当たり前だったのです。
しかしまったく準備がなかった。重病者の搬送の計画、搬送してどこに収容するのかも何一つ決められていませんでした。搬送中のリスクをどう軽減するのかも考えられていなかった。そんな状態で国の命令にしたがって無理な避難がなされたのです。

しかもこれらの避難の過程で人々がどれだけの放射能を被ってしまったのか、実はまともな記録など残っていません。
そもそもあの時、膨大に出ていたキセノンや放射性ヨウ素などのデータは残されていないのです。重病患者が無理な搬送をされる中で、膨大な放射能にさらされ、病状を悪化させた可能性だって大いに残っています。
なおかつ放射能降る中、閉じこもる態勢をとっていない施設で屋内退避が可能だったのでしょうか。しかも国の命令があったのです。だから逃げなくてはならなかったのです。

そもそも国と規制当局は、何らのまともな避難対策もなしに、人々を逃げざるをえない状態においやり、大量に死に至らしめたことを真摯に謝罪すべですし、「業務上過失致死」で裁かれ、刑罰に服すべきなのです。田中委員長自身、原子力村に関わってきたのですから大きな責任を背負っているはずです。
にもかかわらず「無理に逃げたのが悪い」とはなんという言い草でしょうか。これでは命令に従いつつ、たくさんの人々が亡くなっていった過酷な場に立ち会わざるを得なかった人々の心がずたずたにされてしまいます。悪質なハラスメント、言葉の暴力です。

ではなぜこれまで避難計画に対してあいまいな態度をとっていた原子力規制委員会が俄かにこんなにひどいことを言い出したのでしょうか。
考えられるのは原発メーカー東芝の大崩壊の中で、原発輸出路線が大破綻しだしたことです。しかも問題を抱えているのは東芝だけではない。三菱重工も日立製作所も苦境に立っています。
しかもそんな中でベトナムもまた日本からの原発の輸入を断ってしまいました。安倍政権にとっても大打撃なのです。

おそらくは、展望をなくしつつある原発輸出路線に代わり、ここで原発を急ピッチで再稼働させなくてはならないという追い詰められたが故の強い動機が働いているのでしょう。
にもかかわらずまともな避難計画を作っていたら再稼働がなかなか進まない。原子力産業の崩壊が決定的になってしまう。
「だからもう避難計画などなくても良いことにしてしまおう。そのためには5キロ圏外は避難してはいけないことにしよう」というのが政府と原子力規制委員会が考えだしていることだと思われます。
その上、あれだけの放射能が飛び出した福島原発事故の被害もなかったことにしてしまい、人々を福島に強引に帰還させ、その上、避難計画もないものにしてしまおうというのだと思います。

しかし福島原発事故を誠実に反省することないままに、展望を失いゆくアメリカでの原発建設に無理に資源をつぎ込み続けて大崩壊したのが東芝です。
原子力規制委員会、いや安倍政権もなんらこれと変わりません。反省しないこと、いや反省する人間的誠実さを失っているところがまったく同じです。
だからこんなでたらめ、絶対に通用するはずなどないのです。そのことを私たちは証明していきましょう!

いつまでもこんな悪政がまかり通ることなどけしてない!
原子力規制委員会の「人を逃がさない原子力災害対策」と真っ向から対決し、批判を集中していきましょう!人間の命と尊厳を守るために!

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明日に向けて(1355)《想像力》で壁を貫け―朗読劇「ガザ、希望のメッセージ」のお誘い

2017年02月15日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です。(20170215 23:30)

 

群馬訪問から13日に帰ってきました!今回もまた新たにたくさんの方と出会い、命を守るための対話をしっかりと重ねて来る事ができました。

この報告をまたの機会に行いたいと思います。

 

今回は週末に神戸市三宮で行われる朗読劇「The Message from Gaza ガザ、希望のメッセージ」のお誘いをお送りします。

劇をお贈りするのは、平和を目指す朗読集団「国境なき朗読者たち」。京都の岡真理さんをはじめ、長く平和運動を共にしてきた友人たちによって構成させる朗読集団です。

 

この劇の素晴しさはパレスチナで行われている現実を、朗読だけで如実に再現していることです。

正確には朗読によって、聴く側のインスピレーションが大きくかき立てられ、現実が、聴衆の頭の中で再現されるのです。

それはいまのパレスチナを疑似体験すると言っても良いもの。再現は実は聴衆の側の心が作り出すものでもあります。

 

この点を踏まえて、岡真理さんはこのように述べています。

「それは、私たち自身の人間性を「壁」のなかから解放することでもあります。」

 

そう。パレスチナのまわりにもう何十年も作られてきた「壁」。いまトランプ大統領が強化しようとしている「壁」。

それは私たちの心の周りにはりめぐらされたものでもあります。だから私たちは自分自身の心をこの「壁」から解放しなくてはならない。

解放の向こうには開けた世界があります。心の解放区です。

ぜひそこに触れるために、朗読劇にご注目ください。神戸近郊の方はぜひお越し下さい。

 

以下、プロデューサーでもある岡真理さんの呼びかけを転載します。

 

*****

 

《想像力》で壁を貫け――――

 

みなさま、

京都の岡真理です。

 

トランプ大統領のメキシコ国境における「壁」建設にまっさきに喝采を送ったのが、イスラエルのネタニヤフ首相であったのは、まさにむべなることでした。

イスラエルは、西岸に巨大な分離壁を建造し、パレスチナ人の土地を奪い、ガザ地区をフェンスで囲い込み、200万の住民を閉じ込めているのですから。

 

西岸とガザの「占領」は今年で50年目を迎えます。

「占領」という、本来は一時的な「非常事態」が、パレスチナでは「日常」となり、それが50年も続いているのです。

さらに、ガザ地区の完全封鎖は11年目に突入します。

200万もの人間が、人間らしく生きる自由を奪われ、「壁」のなかに監禁され、そして数年ごとに、「芝刈り」のように100人単位、1000人単位で命を刈られています。

 

2003年、ガザに人権活動に赴いたアメリカ人女子大生、レイチェル・コリーさんは、占領下のガザの現実を目にして、こう綴っています――

「私は裏切られた思いです。私が生まれ出たかったのは、こんな世界じゃない。パパとママが、私に生を授けようと決めたとき、私に生まれ出てほしかったのは、こんな世界じゃない!」

 

No Wall ! 

壁を壊しましょう。

No Wall !

壁なき世界を作りましょう。

コンクリートの壁だけでなく、私たちの、無知・無関心・忘却という分厚い「壁」を打ち壊しましょう。

 

私たちの「想像力」で、無知・無関心・忘却という壁を突き破って、その壁のなかに閉じ込められている人たちと繋がりましょう。

それは、私たち自身の人間性を「壁」のなかから解放することでもあります。

 

西岸とガザの占領開始から50年目の今年、パレスチナの占領をテーマにいくつかの企画をおこなう予定です。

その第1弾として、今週の土曜、日曜(2月18日、19日)、ガザをテーマにした朗読劇を神戸で上演いたします。

 

2008年暮れから翌2009年1月半ばにかけて起こった、最初のガザ攻撃を受けて創った朗読劇です。

2009年の初演以来、この8年間、京都を中心に、広島、東京、大阪、三重などで公演を重ねてまいりました。

 

過去公演のトレーラー↓

http://readersforpeace.sakura.ne.jp/?page_id=880 

 

2年前の2015年2月の大阪公演では、前年夏のイスラエルによるすさまじいガザ攻撃の記憶も新しく、大勢の方が来場してくださいました。

 

しかし、大規模な殺戮や破壊がないと《ガザ》がメディアで報じられることはありません、まるで、大量死さえなければ、私たちが問題にすべきことなど、何もないかのように……。

2017年の今、《ガザ》という名はもはや、人々の記憶からすっかり拭い去られてしまったかのようです。

ガザの封鎖も、爆撃による殺傷も、ガザの人々の苦しみも、依然、続いているにもかかわらず。

 

私たちが打ち壊さなければいけない《壁》がここにあります。

私たちを、他者の苦しみから隔てる《壁》。

私たちを、私たちの人間性から疎外する《壁》。

 

私たちを沖縄から隔てる壁と、ガザ/パレスチナから隔てる壁は同じものです。

 

そのような思いを込めて、朗読劇「The Message from Gaza ガザ、希望のメッセージ」を再演します。

想像力で、私たちを隔てる《壁》を貫いて、《ガザ》と出会うために。

 

この機会に、一人でも多くの方に、その声に触れていただければ幸いです。

 

■■□=====================================================

平和を目指す朗読集団「国境なき朗読者たち」が贈る

 朗読劇 「The Message from Gaza ガザ、希望のメッセージ」

  2/18(土)、19(日) 神戸市勤労会館(三宮)

    http://readersforpeace.sakura.ne.jp/ 

======================================================□■■

 

日時:2月18日(土)18:30開演(18:00開場、20:15終演)

   2月19日(日)14:00開演(13:30開場、15:45終演)

 

会場:神戸市勤労会館2階多目的ホール(三宮)

   三宮駅から東へ徒歩5分

http://www.kobe-kinrou.jp/shisetsu/kinroukaikan/index.html 

 

料金:事前予約 1500円(障がいのある方および介助の方、学生1000円)

   当日(予約なし)2000円(同1500円)

 

予約・お問合せ:080-5314-1539(つくい)

tsubamegekidan@gmail.com(つばめ劇団)

 

脚本・演出:岡真理(現代アラブ文学)

出演:朗読集団「国境なき朗読者たち」

 

制作:つばめクラブ、市民社会フォーラム

協力:アムネスティ西日本グループ、劇団どろ、神戸学生青年センター、神戸YWCA

ピースブリッジ、兵庫教職員組合

 

★会場で、パレスチナの刺繍製品を販売いたします。

 

★地方公演もいたします。地元で公演を共催していただける方(個人、団体)がいらっしゃれば、ご連絡ください。


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明日に向けて(1354)群馬県に講演でお邪魔します!島本町、篠山市、京都市でもお話しします。

2017年02月08日 13時00分00秒 | 講演予定一覧

守田です(20170208 13:00)

当面の講演スケジュールをお伝えします。

本日より群馬県に向かいます。各地でお話しします!

主に関東・群馬県における放射線防護の課題と、東芝問題にあらわれた原子力産業の崩壊および脱原発運動の展望を中心に話します。

 

以下、群馬県内のスケジュールをお知らせします。

今回は高崎市が多いです。

 

その後、大阪府島本町、篠山市、京都市でお話しします。

島本町と篠山市では原子力災害対策を中心に。京都市ではトランプ大統領を抱えてしまったアメリカの現状をいかにみるのかについてお話しします。

お近くの会場にぜひお越し下さい!

 

*****

2月9日(木)群馬の森

群馬の森、朝鮮人慰霊碑ツアーと戦争の話

午前10時半集合

企画:安保関連法に反対するママの会ぐんま

みなさんと慰霊碑を訪ねたのちに、戦争への流れをいかにとめるのか、お話しします!

 

2月10日(金) 高崎市

高崎駅西口 再稼働と戦争に反対する市民アクション(タカキン)&救現堂白熱教室

午後7時高崎駅西口バス停前集合

主催:原発とめよう群馬

 

2月11日(土) 高崎市

「何度でも学ぼう 原発のこと 放射能のこと 私たちの未来は?」

午前10時 高崎市総合福祉会館会議室

主催:生活クラブ群馬

 

2月11日(土) 桐生市

「学習会」

午後3時 桐生市桐生倶楽部

主催:むらさきつゆくさの会

 

2月12日(日) 高崎市

映画「A2‐B-C」上映会と守田敏也講演会

(2017さよなら原発アクション/プレ企画)

午後1時 高崎市労使会館ホール 守田講演は14時30分より

主催:群馬さよなら原発アクション実行委員会

 

なお空いている時間で、高崎の放射能測定室、かたつむりの会、八ッ場なども訪問します。

問合せ先

090-6185-8394(木村香織)

 

*****

2月18日 大阪府島本町

 

『原発からの命の守り方』~篠山市の原子力災害対策に学ぶ

講師:守田敏也さん

(フリーライター・篠山市原子力災害対策検討委員)

 

日時:2月18日(土) 午後1時30分~3時30分 

場所:島本町ふれあいセンター 1階健康教育指導室 

 

地震が相次いでいます。40年超えの老朽原発も延命させ、

このまま原発再稼動につき進んでいいのでしょうか。

福井県の原発群からおよそ50kmの兵庫県篠山市は原発事故故が発生した際には同市にも影響が及ぶとして、甲状腺の被曝を防ぐ効果のある「安定ヨウ素剤」を事前配布しています。

同市の原子力災害対策検討委員として原子力災害対策に取り組まれている守田敏也さんにお話を伺います。
 *原子力災害を想定している島本町地域防災計画についても検討してみましょう。

 

守田敏也さん

著書『原発からの命の守り方』

共著『内部被曝』          

 

資料代300円 申込み不要 

共催:草の根市民講座/ぴあ・ネット 
(連絡先:075-962-3062 平野)

携帯:08053257131

 

*****

2月19日 兵庫県篠山市

 

西紀のつどい(西紀人権・同和教育研究大会)

 

日時:2月19日(日)13時30開会

会場:西紀老人福祉センター 2階健康教育ホール

  住所 兵庫県篠山市宮田216 電話:079-593-0896

 

講演内容:「放射能災害と人権 ~安定ヨウ素剤の活用を学ぶ~」

主催:西紀自治会長会

共催:篠山市/篠山市教育委員会/篠山市人権・同和教育研究協議会

   /柏原人権擁護委員協議会篠山地区委員会

 

連絡先:篠山市市民生活部人権推進課 西紀・丹南 

〒669-2397兵庫県篠山市北新町41

電話079-552-6926 FAX079-554-2332

メールアドレス nishida-etsuko@gw.city.sasayama.hyogo.jp

 

*****

 

2月20日 京都市

 

国際婦人年連絡会春の学習会

 

2月20日(月)17:30~19:00

19:00~20:30 懇親会

 

「トランプはなぜ勝ったのか?アメリカで何が起こっているのか」

講師 守田敏也

 

ガーデンホテル1階 中華料理 彩宴

京都市室町御池下がる 

会場が狭いので参加の場合はご連絡を

連絡先 井坂洋子 09052525764

 
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明日に向けて(1353)政府は沖縄への暴力をただちに止めよ!(沖縄タイムス社説を転載します)

2017年02月07日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です(20170207 23:30)

政府が沖縄に対してまたしても理不尽きわまりない暴力で襲いかかっています。

あれほど県民が「もう基地はいやだ」と言っているのに、しかも耐え難い苦しみを繰り返してくる中で「いやだ」と言っているのに、政府は6日朝から辺野古新基地建設に向けた海上工事を強行しだしました。

許すことができません!

 

僕自身は明日から群馬県に向かうので、ああ、沖縄のために何かできることはないかと思っていたら、本日付けの沖縄タイムスに載った素晴しい社説を目にしました。

沖縄タイムス、なんと社説をつかって獄中の山城博治さんへの手紙を書きました!読んでいて胸が熱くなり、目頭も熱くなり、身体が熱くなって震えてくる手紙でした。たくましい正義感と優しい愛のこもった素晴しい手紙でした。

ものを書く者の1人としてもとても感動しました。そうだ。こういうものを紡ぎ出さなくてはいけない。こういう珠玉のような言葉を世に広め、そのことでこそ沖縄への暴力を止めなくてはいけない。

それで今回はこの社説をここに転載させていただくことにしました。

 

沖縄タイムスさん。勝手な転載、ごめんなさい!!

でも今日だけはあらゆる手段であなたたちが山城さんに宛てた手紙を広めさせてください。それが一番暴力への対抗になると思うからです。

そしてみなさん。ぜひこの山城さんへの手紙をさまざまな手段で拡散してください。これはものすごくパワーのこもった言葉です。その力の源は山城さんの行動にあります。いや山城さんをリーダーにがんばってきたみんなの力です。

 

だからこの手紙をできる限り広く拡散して、もっともっと「沖縄への暴力を止めよ」という波を大きくしていきましょう。そしてその広がりを再び山城さんに届けましょう。山城さん解放の日もこの中でこそたぐりよせましょう!

 

このような、道義があり、正義感があり、説得力があり、愛と優しさがある言葉にかなうものなどない。これが広まっていけば、けして政府も暴政を続けられるものではありません。

ペンは暴力よりも強し!そして沖縄の抵抗は、道義と愛があるがゆえに政府の圧政よりも強いのです!

それを私たちの力で証明しましょう!

あらゆる力で「山城さんへの手紙」を拡散しましょう!!

政府は沖縄への暴力を止めよ!

 

*****

 

社説[辺野古から 博治さんへ]「沖縄は絶対諦めない」

2017年(平成29年) 2月7日旧暦 1月11日大安

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/83073

 

山城博治さん、あなたが辺野古・高江の反対運動に絡む三つの罪で逮捕・起訴され、名護署の留置場や那覇拘置所に長期勾留されてから、6日で113日が経ちました。

病を抱える身でありながら、弁護士以外、家族さえ接見できないというあまりにも異常な状態が続いてます。

私たちはあなたから直接話を聞くことができず、あなたは身柄を拘束され辺野古に行くことができません。ならば、と、こういう手紙形式の社説を思いつきました。

博治さん。政府は6日朝、名護市辺野古の新基地建設に向け、海上での工事に着手しました。最大で約14トンもある大型コンクリート製ブロックをクレーンで台船から作業船に積み替える作業です。

翁長雄志知事や稲嶺進名護市長らが建設計画の撤回を求めて訪米した直後に、県と協議もせずに、一方的に作業に踏み切ったのです。

自民党の二階俊博幹事長でさえ、「沖縄の理解を十分に得られていない状況」だということを認めざるを得ませんでした。

ブロックは汚濁防止膜が強風などで流されないように固定するためのもので、7日以降、228個のブロックが海底に投下されることになっています。想像するだけで胸がえぐられる思いがします。

沖縄の切実な声よりも米軍の都合と軍事上の要求が優先され、辺野古への「高機能基地」の建設が目的化してしまっているのです。あの美しい海は、埋め立てればもう元に戻りません。

■ ■

新基地建設に反対する市民らは、工事車両が基地に入るのを阻止しようと、キャンプ・シュワブのゲート前に座り込み、精一杯の抵抗を試みました。

博治さんの不在の穴をみんなで埋め合わせているような、決意と危機感の入り交じった空気と言えばいいのでしょうか。

反対側の歩道で折りたたみ式の簡易イスに座って様子を見守っていたのは島袋文子さん(87)でした。「動悸がしてドクターストップがかかっている」というのに、居ても立ってもいられず、現場に駆け付けたのだそうです。

機動隊員が一人一人を3、4人がかりでごぼう抜きし始めたため、現場は悲鳴と怒号が飛び交い、騒然とした雰囲気になりました。「暴力はやめろ」「海を壊すな」「沖縄は絶対諦めない」

驚いたのは文子さんの行動でした。イスから立ち上がって道を渡り、付き添いの女性に両脇を抱えられながら、ひるむことなく機動隊の前に進み出て、抗議の声を上げたのです。

「戦争の中から逃げるのはこんなもんじゃないよ」と文子さんは言います。

沖縄の戦中・戦後の歴史体験に触れることなしに、新基地建設反対運動を深く理解することはできない。翁長知事が政府との協議の中で何度も強調してきたことですが、正面から受け止めることがありません。

作家の中野重治は、日中戦争前の1928年に発表された「春さきの風」という小説の最後で、こんな言葉を書き付けています。「わたしらは侮辱のなかに生きています」。この言葉は今の沖縄にこそあてはまると言うべきでしょう。

■ ■

問題は、強権的な基地建設だけではありません。国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルは、博治さんの釈放を求める緊急行動を始めました。

国連の「被拘禁者人権原則」は、「家族や弁護士との間のコミュニケーションは、数日間以上拒否されてはならない」とうたっています。

かつて悪性リンパ腫の治療を受け、今も体調が万全でないにもかかわらず、3カ月余も勾留が続き、家族も接見できない状態になっているのです。

政治的意図に基づく長期勾留であるのは明らかであり、人権侵害の疑いさえある、と言わなければなりません。

博治さん。拘置所の狭い空間の中では一人ですが、外の世界では決して一人ではありません。県内や国内だけでなく海外からも、多くの励ましの声が届いていることをお伝えしたいと思います。

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明日に向けて(1352)原発建設の道を閉ざすためトルコ・ドイツを訪問します。ぜひご支援を!

2017年02月05日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です(20170205 23:30)

明日に向けて(1347)~(1351)で東芝の崩壊過程についての分析を行い、原子力産業が世界的に大きく衰退しつつあることを明らかにしました。
福島原発事故の当事者でもある東芝は、事故を反省し、原発建設をもうこれ以上進めてはならないこと、また進められる展望もあまりに薄いことをつかみとるべきだったのに、主観的願望を捨てなかったため、あたら傷口を広げ続けて今日に至りました。
この点では、三菱重工も日立製作所も、原発セールスに走り回ってきた安倍政権も同じ穴のむじなです。

日本の原子力村の、このモラルを欠いた無謀な流れになんとしてもとどめをさしていきたい。
そのための一環として僕はこの3月末から4月にトルコに7月末にドイツに行ってきます。ぜひみなさんの支援をお願いします。

トルコには、三菱重工がフランスのアレバ社と組んで黒海沿岸のシノップに原発を作ろうとしています。
これにはたくさんの問題がありますが、重要なのはトルコが日本と同じく地震大国であることです。しかも黒海沿岸に沿うように大きな断層帯が東西に走っており、これまでも大きな地震が起こっています。
そんなところに原発を輸出することなどあってはならない。日本人としての責任にかけて止めたいです。

しかも今年になってなんと日本政府の委託を受けた調査会社が、原発を襲う地震の想定を最大加速度400ガルと小さめに評価していたことが明らかになりました。
日本での想定よりかなり低いのです。そもそも日本での想定だって、昨年の熊本・九州地震での揺れからみても数分の一も低いものでしかないのに。
なぜ小さくしたのか。明らかに建設費を安くするためです。営業の苦しさがにじみでていますがだったら作らなければ良いのです。原子力産業は本当にモラルを欠いています。

以下、記事をご紹介しておきます。なおスクープしてくださったのは共同通信の記者さんです。

 輸出原発、揺れ小さめ想定 トルコに建設、コスト減狙いか
 共同通信 2017年1月7日
 https://this.kiji.is/190423758017644029

 川内620ガル、大飯856ガルなのにトルコ400ガル 輸出原発 揺れ小さめ想定
 東京新聞 2017年1月8日
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201701/CK2017010802000122.html

同時に見過ごせないのは、この事業が、東芝よりも一足先に崩壊を強めているフランスの原子力産業のアレバ社を救済する位置も持っていることです。
アレバもまたこの間、建設中の原発の安全対策費がかさみ、巨額の赤字を出して倒産し、フランス政府に救済のために国営化されています。
三菱重工はフランス政府からさらに出資を要請され、昨年12月に受けてしまい、自らも苦しくなっています。

ちなみに三菱重工は米サンオノフレ原発へ輸出した蒸気発生器が致命的な事故を起こし、同原発が廃炉になって9300億円という巨額の賠償を請求されてもいます。
その点ではトルコへの輸出は三菱重工事の救済としても位置付けられています。

だからいま、トルコと日本とフランスで反対運動が活発化すれば、安全対策を今以上に重ねなければならなくなることも含めて、三菱重工もアレバも必ず経営的にもたなくなります。
地震の揺れを小さく見積もろうとしたことなど、これを象徴しています。三菱重工もアレバもすでに疲弊を強めているのです。
さらにエルドアン政権が、政情不安の中での人気取りのために電力料金をかなり低く設定しようとしているとも伝えられており、この面でも採算が立たなくなることが懸念されています。

だからこそ国境を越えた民衆の運動を大きくしていけば、この計画は必ず止められます!
そうすれば美しいシノップとトルコの人々を守ることができるし、日本とフランスの方向を変えて、世界から核の火をなくす可能性をさらに大きくすることができます。
展望はいま大きく開けてきている!だからこそできる限りの力を注ぎたい。ぜひ支援をしていただきたいです。

今回のトルコ訪問にはフランスからもアクティヴィストを招請するそうです。
この方がアレバの矛盾を語るので僕に三菱重工の矛盾を語って欲しいと言われています。
このためトルコの地でフランスの方ともがっちりと結合し、三菱・アレバ連合と立ち向かってきます。

さらに7月末にはこうしたトルコでの活動の成果を携えてドイツに行ってきます。ドイツで開かれる「反核サミットキャンプ2017」に招請を受けてのことです。
主にヨーロッパ各地から原発反対を担うアクティヴィストたちが呼ばれるとのこと。もちろんフランスからもトルコからも参加するでしょう。
僕はここで可能な限り、日本からの原発輸出計画のある他の国々の方とも結びつき、連携を強めてくるつもりです。

もちろん核戦争防止国際医師会議(IPPNW)ドイツ支部の方達など、これまでドイツやトルコ、ベラルーシで行動を共にしてきた方たちとの旧交もしっかりと暖め直してきたい。そのことで世界的な連帯をしっかりと強めてきます!

まだ細かいところまで詰まってはいないのですが、トルコへもドイツへも渡航費をこちらで工面することになります。
またできるだけ多くの人と交流するために、可能な限り日数も採りたいので、その分の経費も可能な限り用意したい。このためぜひお力をお貸しください。

以下、振込先を記しておきます。
みなさんの温かいご支援を心からお願いします!

振込先 郵貯ぎんこう なまえ モリタトシヤ 記号14490 番号22666151
他の金融機関からのお振り込みの場合は
店名 四四八(ヨンヨンハチ) 店番448 預金種目 普通預金 口座番号 2266615

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明日に向けて(1351)展望とモラルを喪失した原発建設から全メーカーが撤退し廃炉公社を作るべきだ!

2017年02月04日 22時00分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です(20170204 22:00)

崩れゆく東芝についての考察の第5回目、連載最終回をお届けします。
今回はこれまでの東芝の崩壊過程の細かな分析を踏まえて、より大きな観点から問題を再度、捉え返しておこうと思います。

表題にも掲げたように、東芝問題を分析する中から私たちがはっきりとつかみとっておくべきことは原子力事業が世界的に展望を失っていることです。同時に原子力産業は完全にモラルも失っています。
そもそもの東芝のつまづきは2006年にウェスチングハウス(WH)社を市場価格の2倍とも言われた6400億円で買収してしまったことに始まりました。そしてその後一貫して立ち直れなかったのでした。
それがなぜかをこれまで明らかにしてきましたが、強調したかったのは、東芝がここまで追い込まれてきてしまった主因が、福島原発事故を反省できなかったことにあることでした。

東芝は、採算の問題よりも、あれほどの被害を出した原子力事業を続けて良いのかという点をこそ問うべきだったのです。
原子力産業は何より危険すぎるからこそ展望がないのです。しかし東芝はそこから目を背けるばかりでした。

いや原子力産業の行く手が大きく曇ったのは、スリーマイル島、チェルノブイリ両原発の事故でした。アメリカはこれで一つの原発も作れなくなってしまい、だからこそWH社が売り出されました。
同時に核燃料サイクルの中心を担うはずだった高速増殖炉の開発にも、世界中のどの国も成功せず、この点でも原子力事業の展望は消えていきました。
ところがあくまでもこの事実を無視したのが東芝だったわけですが、この点では日本政府や経産省、同業他社もまた同じ過ちを犯し続けています。

そもそも日本政府は2005年、小泉政権の時に「原子力政策大綱」を打ち出し、原発輸出に乗り出してしまいました。
その意味で東芝崩壊の責任は、日本政府や産業界全体も背負っており、問われているのはこのことを反省して国家的に原子力政策を逆転させることです。
そうしなければ日立も三菱重工も確実に行き詰ります。その上、救済などと称して巨額な国費が消耗されてしまう可能性も大きいです。

両者の行き詰まりはすでに表面化もしています。三菱重工はアメリカのサンオノフレ原発に輸出した蒸気発生器が事故を起こし、同原発が廃炉になってしまったために9300億円の損害賠償を請求されています。
三菱の提携相手のフランス・アレバ社もまた、原発建設費の高騰で事実上倒産してしまい、三菱はフランス政府から救済のための投資を求められてこの点でも困窮しています。
日立もまたつい数日前に、アメリカの沸騰水型メーカーのゼネラル・エレクトリック(GE)社と合弁で進めていたウラン濃縮会社が破綻し、700億円の損失が出てしまったことを発表したばかりです。

しかも福島原発事故そのものがまだ収束しておらず、事故原因の解明すら途上なのです。
倫理的にも技術的にも、それでどうして新しい原発を安全に作ることができるでしょうか。しかも資金も足らず、協力会社にも逃げられていますから、安全マージンがより削られるのも確実です。

問われているのは福島原発事故を真摯に反省し、もはや展望のないことを認めることです。東芝が真っ当な企業として再生しようとするのならそれこそが必要です。
もちろん日本全体がはっきりと原発建設から撤退し、原子力産業の方向性を原発廃炉と使用済み核燃料のより妥当な処理の仕方の開発へと向けるべきです。

そのためにはもはや企業に任せず、原子力産業を公社化すべきです。メーカーや電力各社の技術者を集めて廃炉公社を作り、膨大な放射能の安全な管理の道を探るのです。
この事業は未来世代に対する責任のかかったものです。核のゴミを大量に作りだす過ちを犯してしまった私たちの世代に出来るのは、放射能を少しでも安全に管理しつつ減らす努力をし、やれるだけのことをやって後を未来に託すことです。

この点で強調しておきたいのは、アメリカで原子力事業から早々と逃げ出したNRGエナジーや、ショウグループ、CB&I社などが「賢明だった」とは僕は少しも思ってないことです。
今回、分析を重ねる度に痛感したのは、アメリカの原子力産業をめぐる、一方での合従と他方での売却、そして訴訟合戦があまりに激しく行われていることでした。
「アメリカの会社は利口だが東芝は愚鈍だった」という論調もありますが、儲かるのなら関連会社を買収し、赤字が出そうなら売却して逃げるだけのあり方だって無責任だと僕は思います。

そんなゴリゴリの拝金主義者に原子力など触って欲しくない。そんなつもりなら「最初から手を出すな」と言いたい。
そもそも電力は社会的インフラを担う公共性のあるものです。社会的共通資本なのです。その発電に原子力を使うことが危険だと分かったのだから全力で正すことこそが必要なのです。
原発建設に手を出したNRGエナジーやショウグループ、CB&Iはこの点をどう捉えているのでしょうか。本来、原発建設に手を染めたのですから、福島原発事故への反省を自らに問い、その後の責任を負うべきではないでしょうか。

いやさらに根本的な問題は、ショウグループに属したまま同グループごとCB&Iに買収され、さらにWH社に転売されて7000億円もの負債を東芝に追わせた原発建設会社スターンアンドウェブスター(S&W)の出自です。
なんとマンハッタン計画の中にあって広島・長崎原爆の製造に関わった当事者なのです。もちろん同社は大虐殺に関与したことを反省していません。原子力産業はもともとここにこそ問題があります。

WH社もそうです。この会社が加圧水型原発を開発したのは原子力潜水艦を作るためでした。原子炉圧力容器内に液面がある沸騰水型の炉では原潜に載せられなかったからです。同社はその後に米原子力空母のエンジンのほとんども製造しています。
人類はもうそろそろ、このように、核兵器から始まった核の時代と訣別すべきなのです。福島原発事故の最も大切な教訓として学びとられ実践されなくてはいけないのはこの点であることを何度も強調したいです。

最後に今回の東芝の崩壊の分析を行う際に常に頭の中にあったことを記しておきたいと思います。福島原発事故後にお会いした元東芝の格納容器設計者の後藤政志さんや、その先輩にあたる小倉志郎さんなど、技術者として活躍されてきた方たちの志です。
この方たちは事故後に誰よりも鮮明かつ誠実に原発の危険性を説き続けて下さいました。とくに彗星のように登場された後藤政志さんは、福島原発の中で起こっていることを実に的確に解説してくださいました。
あの時期、後藤さんの説明は大きな光明でした。僕も夢中でノートテークして拡散すると同時に「日本の技術者の力はこんなに凄いのか、もっとこういう方たちの力が政策に反映されるようにしなければ」と強く思いました。

その後、後藤さんたちはサイエンスライターとして以前から活躍されていた元日立の圧力容器設計者の田中三彦さんらと連携されながら、国会事故調にも参加してくださいました。
また筒井哲郎さんをはじめ、たくさんの第一線で活躍されてきた技術者の方たちが参加する「APAST」を立ち上げ、さまざまな提言を続けられています。
この他にかつて日立におられ福島原発4号機の配線を担当された五十嵐高さんにもお会いすることができました。五十嵐さんは事故後に責任感から鬱状態に陥ったそうですが、近隣の方を放射能から守ろうと群馬県桐生市で学習会を立ち上げ継続されています。

みなさん、もう現役をリタイアされてはいますが、それぞれに強い責任感から人々を守ろうと懸命に奮闘しておられます。深く共感しました。何よりこの志が、東芝やアメリカの原発建設会社と格段に違っているのです。
僕はぜひともこうした方たちの力をお借りして廃炉公社を立ち上げる必要があると思っています。もはやモラルのない市場原理などに任せていてはならない。社会的共通資本の観点に立った事業でなければダメです。
そのためにもさらに原発の再稼働と輸出を許さず、原子力事業の完全転換を実現しましょう。東芝崩壊の分析の結論として、このことを世に問うていきましょう。

連載終わり

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明日に向けて(1350)東芝崩壊はリスク管理が甘かったためではなく健全経営の観点を失ったためだ!

2017年02月03日 11時00分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です(20170203 11:00)

東芝の崩壊の考察の4回目です。今回は現在の東芝の苦境の最大の因子となっている子会社のウェスチングハウス(WH)社とそのまた子会社のストーンアンドウェブスター(S&W)社について解析します。
昨年末、東芝が巨額の赤字を計上することになると発表した直接の原因は、子会社のWH社が買収したストーンアンドウェブスター社が7000億円とも推定される赤字を抱えていたからでした。
この報に接して誰もが思うのは、どうしてそんな赤字会社を買ってしまったのかということです。

実際に読売新聞は2月1日付の社説で次のように書いています。
「最大の問題は、東芝が子会社の損失を見抜けなかったことだ。」
「福島の原発事故以降、世界的に原発の安全基準が厳格化され、建設コストが高まる傾向にある。だが、東芝は度重なる損失発生を早期に把握できなかった。目の届きにくい海外事業のリスク管理が甘かったと言わざるを得ない。」
「日本の原発政策を前進させるためにも、東芝には着実な経営再建を求めたい。」

しかしことはそんなに単純でしょうか?「リスク管理が甘かった」ことで7000億円もの赤字を抱えている企業を買ってしまうのでしょうか。
分析があまりにも薄っぺらで甘いと言わざるを得ませんが、読売新聞の分析がそうなってしまうのは、同社がこの期におよんでも「日本の原発政策を前進させるためにも、東芝には着実な経営再建を求めたい」と平然と書いていることに根拠があります。
読売新聞もまたマスコミの中で突出して原発推進の旗を振ってきた企業です。だから福島原発事故に対しても相応の責任があるのに何ら反省をしていません。自らを振り返れない。だから東芝の問題もまともに分析できないのです。

東芝が買収対象の会社の赤字を見抜けなかった背景には、そもそも原発関連の事業がどれもこれも暗礁に乗り上げ、採算割れに至って、火の車になっていたことがあげられます。
このためリーマンショック直後からダメージが来ていたのですが、東芝はここでこの事態と立ち向かうことをせず、赤字を隠して粉飾決算に走ってしまったのでした。このためその後もたくさんの失策が隠されていったわけです。
あれだけの巨大企業ですから赤字や危機隠しは社内のセクション間でも行われていたでしょう。いや粉飾決算はごく限られた中枢で行われていたのでしょうが、そんな状態でそれぞれの持ち場のリスク管理だけがまともに進むわけがあるでしょうか。

しかもすでに火の車になりながら、東芝はさらに強気で原子力事業を推進してしまいました。もはや完全に展望を失っているサウス・テキサス・プロジェクトを中止することもせず、あたかも原子力事業に展望があるかのように内外に喧伝し続けたのです。
例えば2015年11月17日に出されている東芝の株主説明資料では、全世界に「400基以上の原発建設計画がありそのうちの64基の受注を目指す」とうたわれていますが、当時の原子力部門の内情から言えばあまりにデタラメで無責任な説明でした。
また冷静になれば、400などという数は実現可能性を度外視し、少しでも話に登ったことのあるものを並べたものにすぎないことも明白でした。実際にここには「ベトナム8基」と記されていますが、その後同国は賢明にも原発建設計画を中止しています。

このように東芝は、原子力事業に本当にそれほどの展望があるのか、力を注ぎこんで採算が取れるのか、まともにベネフィットとリスクを判断することができなくなっていたのです。
しかも赤字=危機が隠されているわけですから、全社一丸となって危機を乗り切る意志一致を作り出すこともできません。社内的にも都合のよい未来像が語られるだけで、危機の打開に力を注ぐことができなかったのです。
スターアンドウェブスター(S&W)社が抱えている赤字をきちんと精査できなかったのは、こうした事情に依っていたことは間違いないと思います。東芝は各セクションでモラルハザードが起こり、まともで健全な経営判断ができなくなっていたのです。

このことをより確証するためにさらに詳細にこの過程を見ていきましょう。
巨額の赤字を抱えていたS&W社は原発の建設を請け負ってきた会社です。もともとこの会社はショウグループというアメリカの大手の建設企業の子会社でした。
実はこのショウグループが、東芝がウェスチングハウス社を買収する時に、資本参加していたのでした。この時は東芝が77%(6467億円)、ショウグループが20%、残りの3%をIHI(旧石川島播磨重工業)が取得しました。

東芝は出資者を増やしたくて、2007年にカザフスタンの「カザトムプラム」に10%を売却するのですが、このショウグループが福島原発事故後に原発事業からの撤退を決断し、東芝に株式の購入を申し入れました。
ショウグループに株式売却の権限があることは、WH社の買収時からの取り決めだったため、東芝はやむなくこの20%を購入。現在は87%が東芝、カザトムプラム10%、IHI3%となっています。
ちなみにIHIもこの2月1日にWH社の3%の株式を東芝に買い取らせる権限があると宣言しています。

さて原発からの撤退を始めたショウグループはその後に自社をCB&I(シカゴブリッジアンドアイロン)社に売却しました。2013年のことです。このためショウグループ傘下だったS&W社もまたCB&Iの子会社となりました。
CB&Iはこれでエネルギーとエンジニアリングの世界最大手にのしあがったのですが、ショウグループはこのことで、原発建設に深く関わっているS&W社への責任を逃れたのだと思われます。
かくしてアメリカのボーグルとVCサマー両原発の建設は、東芝の子会社のWH社とCB&Iとその傘下のS&W社によって進められることになりましたが、すでに述べたように規制強化などから建設費が高騰、現場は訴訟合戦になっていました。

「明日に向けて(1348)」で詳述したように、当初起こったのは、ボーグル原発の発注者である電力4会社に対するWH社やS&W社側からの訴訟でした。
しかしその後に、相次ぐ建築費の高騰を誰が負担するのかをめぐりWH社とS&W社の間でも相互訴訟が連発されていきました。
これには原発の建設方式の問題も絡んでいました。というのはS&W社は作業の効率化を図るためと称して、原発を現地で組み立てずに巨大な工場を作って一括生産し、現地で部品を組み上げる新方式を採っていて、WH社もコストが安くなると宣伝していました。
ところがこの方式が思うように効果を上げず、建築が滞って工期が伸びるばかりだったのです。このため両原発ともに2016年、2017年の運転開始の目算が大きくずれてしまい、赤字が膨らむばかりで、この責任をめぐって争いが激化したのでした。

この事態の中で今度は大手建設会社のCB&I自身が、原発事業からの撤退を決断し、両原発の建設を主に担ってきたS&W社の切り離しを策してWH社に買収を持ちかけ、同時に訴訟も起こしました。
この段階でWH社がS&Wの買収に応じたのは、同社との間でドロ沼化してしまった訴訟をおさめるためだったと見られています。WH社は訴訟で敗れて巨額の賠償金を背負うことよりも、同社を子会社化した方がリスクが少ないと判断したのでした。
2012年から15年まで続いていた「ドロ沼の訴訟合戦」にこれで終止符が打たれたのですが、その後にこのS&W社が巨額の赤字を抱えていたことが発覚し、そのままWH社=東芝の負債になってしまったのです。

以上が東芝が巨額の赤字を抱えたS&W社を孫会社にしてしまった顛末ですが、この過程を見ていくと、福島原発事故後にアメリカの建築大手のショウグループ、CB&Iが原発事業から撤退していったことが分かります。
サウス・テキサス・プロジェクト(STP)でも電力大手のNRGエナジーが即座に撤退したことをすでに述べましたが、このようにまだしもまともにリスク管理をしていた米企業は、福島原発事故後、東芝と連携していた原発事業から次々と逃げ出したのです。
東芝もその度に方向転換を行うこともできたはずでした。しかし東芝は自らを振り返ることをせず、撤退という勇気ある決断に踏み込むことをしませんでした。
ちなみに東芝は念願のSTPの建築許可を2016年2月にやっと得ることができたのですが、同年5月にCB&Iがこのプロジェクトからの完全撤退を宣言したため、凍結せざるをえなくなっています。いや凍結したままでいまなお撤退の決断ができずにいます。

「原子力産業の未来は明るい」「今後64基を受注する」というあまりに主観的な妄想をかたくなに守り続け、自らに都合の悪いことはまともに認識しようとせず、そのため次々と生み出される損失もカバーもせずに、あたら傷口を広げ続けてきたのが東芝です。
しかもこの危機を粉飾決算で乗り越えようとした東芝は、その末に巨額の赤字企業を抱え込んでしまったわけですが、それが健全経営の観点そのものの喪失によるものであることは明らかです。
読売新聞が主張するような「目の届きにくい海外事業のリスク管理が甘かった」などという単純なものでは断じてないし、だからもはや東芝が-相当な覚悟をもって過ちを捉え返さない限り-「着実な経営再建」に戻ることなどできないのです。

ところでこう見てくると、この姿が何かに似かよっていることに気が付かないでしょうか。そうです。現在の安倍政権のあり方にです。実にそっくりです。
自らに都合の悪いことには一切目を向けず、主観的な展望ばかり語り、その結果無謀な路線を暴走しているところが良く似ています。
いやそもそも、日本を代表する企業の一つである東芝の崩壊、信用の失墜の責任は、展望を失いゆく原子力産業の現状をまったく無視し、自らも主役となって原発輸出の旗振りをしてきた安倍政権にも大きくあります。
その意味で、東芝の崩壊は原発輸出を経済成長の柱と位置づけている安倍政権にとっての大打撃であるとともに、その崩壊の序曲でもあることを私たちは見すえておく必要があります。

続く

注記 これまでの記事で「損益」という言葉を多用しましたが「損失」と書くべきものが多かったです。損益は損害と利益ですから「損益が悪化」とは言えても「損益の拡大」とはいえず、後者の場合は「損失の拡大」が正しいのですが、誤記していました。
ある方の指摘で気が付きましたので、お詫びしてブログとHPの当該箇所を訂正させていただきました。申し訳ありませんでした。

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明日に向けて(1349)東芝は福島原発事故を反省しなかったがゆえに現在の苦境に陥った!

2017年02月02日 14時30分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です。(20170202 14:30)

東芝の崩壊過程の考察の3回目です。
前回は東芝が2006年に無理をして購入した米ウェスチングハウス社の原発建設が次々と訴訟を引き起こして泥沼に入っていったことを書きました。
今回は東芝本体自身がやはりアメリカで進めていた原発建設もまた暗礁に乗り上げてしまった点について解析していきます。

問題はサウス・テキサス・プロジェクト(STP)と呼ばれるもので、テキサス州ヒューストン近郊に2基の原発の増設を狙ったものでした。
発注元は米電力大手NRGエナジー(ニュージャージー州)。もともと2基の原発を所有していますが、3号機、4号機を作ろうという計画でした。
受注は2008年3月。炉のタイプは東芝が長年手がけてきた沸騰水型原子炉(BWR)の改良型(ABWR)で出力は1349メガワット、建設費100億ドル(当時の為替レートによれば約8000億円)で、2015~16年の運転開始が目指されていました。

WH社の原発建設計画が、東芝にとっては、アメリカの原子炉メーカーを子会社化したものであったことに対し、STPは東芝純正の原発をアメリカに建てる計画でしたから、日本で初めての原発輸出事業でした。
東芝は発注元のNRGエナジーとともに事業会社であるニュークリア・イノベーション・ノース・アメリカ(NINA)を起ち上げてこの事業を進めました。
最大手の出資者はNRGエナジーで22億ドル(持ち株比率88%)、東芝が3億ドル(12%)でしたが、さらに約10%に相当する2億5千ドルを東京電力が追加出資することになっていました。東電もまた次世代戦略として海外進出を目指していたのでした。

ところが2011年3月11日に福島第一原発が大事故を起こし、東電は自社の破綻の可能性にも直面して、出資どころではなくなってしまい、早々に撤退しました。
するとこれをみてNRGエナジーが、事故から一月余りの4月19日にやはりいち早くこの計画からの全面撤退を表明してしまったのでした。
「株主に対してこれ以上の投資を正当化できなくなった」というのが表向きの理由でしたが、これから建設しようとする原発が、事故を起こした東芝の原発の後継機種であっため、信用が得られなくなったこと、あるいはNRGエナジー自身が東芝を信用できなくなったことが最大の理由でしょう。

このときすでに資金を投じていたNRGエナジーは発注済みだったSTP3,4号機に関する減損を行い、4億8100万ドル(約400億円)の特別損失を計上したのですが、早期に撤退することで損害をできるだけ小さなものにとどめたとも言えました。
ところが88%の投資者を失い、東電の参加も絶望的な状態になったにも関わらず、東芝はこの計画を捨てきれず、その後もパートナーを探し続けることで、あたら損失を拡大し続けてしまいました。
この段階で処理すれば120億円の損失で済んだと言われているのですが、採算の取れない会社を存続させ続けたため、損失は雪だるま的に増えていきました。

この時期、東芝にとって何よりも問われたのは福島第一原発事故の反省でした。道義的反省と謝罪、被災者の救済、そして事故原因の徹底究明が必要でした。
NRGエナジーが逃げだしたのも、東芝への信用がおけなくなったからであって、同社は巨大事故を起こした当事者としての誤りを真摯に捉え返し、襟を正して責任をとることで、社会的信用を取り戻すことこそ問われていたのです。
これはビジネスの観点からも重要なことでした。商取引の基礎にあるのは信用であり、商品の社会的有用性とともにその会社に誠実さがあってこそ真っ当な商売が進展するからです。これは多くのビジネス書にも記されている基礎的事柄です。

しかし東芝は福島第一原発事故に開き直り、倫理的反省どころか技術的反省すらもないままにそれまでの原発建設路線をただひたすら走り続けました。
そのためにも東芝は、粉飾決算を続けて原発事業のつまづきによる赤字の発生を隠していたものの、さすがにSTPからの大口出資者の撤退に不信を強めた同社の監査法人からせっつかれ、損失を公表せざるを得なくなりました。
東芝はSTPをめぐって2014年3月期に310億円、2015年3月期に410億円の減損をしぶしぶ計上しました。損失は当初の120億円の6倍にも膨らんでいました。

しかも重要なことは東芝は未だにこのプロジェクトに終止符を打たずに損失を膨らませながら存続させていることです。現在もです。このため損失がさらに膨らんでいるに違いありません。
STPをめぐって東芝は2016年2月にやっと念願のCOL=建設・運転一括許可を得ることに漕ぎ着けたのですが、しかし共同出資者が相変わらず見つからない。
それどころか同年5月に、これまでともに原発の建設に参画してきたSB&I社(WH社が買収したストーンアンドウェブスターS&W社のもともとの親会社)が原発部門に見切りを付けて撤退してしまい、許可を得たものの、プロジェクトが凍結してしまいました。

これに対して東芝はこのような声明を出しました。
「NINA社は本年2月にSTP 3、4号機の建設につき、米国原子力規制委員会から建設運転一括許可の承認を受けましたが、建設予定地であるテキサス州では現在電力価格が低迷していることから、今後電力市況を見極めながらパートナー企業を募集し、適切な時期に建設開始の判断をすべく、関係者と協議をしています。」
なんとここにいたってもまだパートナー探しを続けるというのです。出資者だけでなく建設会社も逃げてしまったにも関わらず。同プロジェクトによる損失はさらに拡大を続けるでしょう。

東芝が陥っている苦境はこれだけではありません。STPの展望がついえたことを認めず、NRGエナジーに代わる出資者を探すことで、実は今はまだ経理上は完全に表面化していないもう一つの大変な事態を抱えてしまっています。
何かと言えばLNG(液化天然ガス)プロジェクトへの関与です。これまであまり触れてきませんでしたが、アメリカで原発建設が次々と暗礁に乗り上げた背景の一つに、新たにシェールガスが発見され、安価なガスの提供が可能になったことがありました。
東芝は、この点でも原発の展望を考え直さずに、LNGプロジェクトにも首を突っ込んでSTPプロジェクトを可能なものにしようと画策して、かえって経営的危機を広げてきているのです。

東芝が手を出したのはSTPから数十キロの都市で営業しているFreeportLNG社でした。天然ガスの液化には大量の電力が必要なことに目を付けた東芝は、この会社にSTPで作りだす電力を買ってもらおうと2013年11月にLNG加工契約を結んだのでした。
契約内容は2019年からの20年間に220万トンのLNGを74億ドルで購入するというものでした。東芝が日本国内でガスタービンを売る際にLNGを抱き合わせで販売することも考えてのことでした。

ところがこの頃から顕著になった原油価格の大幅な下落を背景に、契約締結後にLNG価格も大きく下落してしまいました。
LNGはBTUという英国熱量単位で測られています。4BTUで約1キロカロリーですが、東芝が契約した時は100万BTU17ドルでした。ところが2016年5月段階では同価格が7ドルまで下がってしまい、なんと半値以下となってしまいました。
日経ビジネスはこの点について、2016月8月29日付の記事で、今後20年間で東芝に1兆円の赤字が発生するとの計算を明らかにしています。その後、LNG価格の多少の揺り戻しがあって2016年末で100万BTU8.5ドルとなっていますが、いずれにせよこの面での大幅な赤字も必至です。

この他にも東芝が赤字を広げてしまったものがあります。2010年に行った米国のウラン濃縮会社ユーゼックへの約90億円の出資です。同社の株式の65%を占める額でした。
東芝はウラン濃縮にまで手を伸ばして原子力事業の最大手に上り詰めようとしたわけですが、そのユーゼックがなんと2014年3月に市況悪化によって倒産してしまったのです。
最大の理由は日本のほとんどの原発が止まってしまったため、ウラン燃料が売れなくなってしまったことでした。私たち日本民衆の頑張りが同社を倒産に追い込んだのだとも言えます。
ユーゼックの負債総額は約1000億円。東芝はこの65%を負担しなければならないので、ここでも650億円の損失を出してしまっています。

このように見てくると東芝が原子力事業からの撤退の時期を大きく誤まり、その後に損失を重ねてきたことは明白です。
もはや原子力事業の展望が途絶えつつあり、共同出資していたアメリカの会社が次々と逃げ出したのに、あくまで事業に固執し傷口を広げ続けてきたのです。
その意味で東芝は、福島第一原発事故を反省的に捉え返さないがゆえにこそ、墓穴を掘り続けてきたのでした。倫理的反省を欠いたまま、インモラルであこぎな商売を続けたがゆえに、どうともならない隘路に辿りついてしまったのです。

続く

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明日に向けて(1348)米国での原発建設はすぐに提訴の泥沼にはまり東芝の展望を奪った!

2017年02月01日 11時30分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です。(20170201 11:30)

東芝の海外での原発建設からの撤退に関する分析の続きです。
前回の記事でも明らかにしたように、東芝はいま子会社のWH(ウェスチングハウス)社が2015年12月に買収したCB&Iストーン・アンド・ウェブスター社が隠し持っていた7000億円という巨額の負債を背負い、大変な苦境に立っています。
東芝の株式資本は2016年9月末時点で3632億円。このままでは完全に債務の大幅超過になり倒産の危機に直面しており、民間銀行各社の他、政府系金融機関の日本政策投資銀行に救済を求めています。

日本政策投資銀行による救済は、郵便貯金や年金など国民の貯金を原資とする公金の貸付であり、とても容認できることではありません。
もちろん東芝もこうした救済が簡単に受けられるとは思っておらず、1月28日に原発部門の責任者で、WH社会長も務め、この会社の損失を隠した疑いを持たれている志賀重範会長を退任させることを発表しました。
同時にWH社現会長のダニー・ロデリック会長も退任の方向で調整していると言われています。本社と子会社のトップの首のすげ替えです。

それにしても東芝はどうしてこんな会社をWH社が買収することを許してしまったのでしょうか。またなぜWH社は巨額の赤字を抱えている会社を自らの子会社としてしまったのでしょうか。
さまざまな人士が分析を行っていますが、そのどれにも「はてな」がこびりついています。確証できる記事は出ておらず、2月14日の東芝による負債の詳細と再建策の発表が待たれている面もあります。
そのため現時点では推論に頼らざるを得ない面もありますが、ともあれより詳細な分析を行っておきたいと思います。

東芝のこの間の大きなつまづきは、2006年にアメリカのWH社を市場価格の2倍の6400億円で買収してしまったことにあります。
端的に言ってその後、その損失を一貫してカバーできなかったと言えます。結果的には、もともと原子力産業における世界的なリーディングカンパニーになろうとしたことが間違っていたのです。
では東芝の巻き返し策はなぜ、どのように失敗してしまったのでしょうか。今回はその点を追っていきたいと思います。

前回の記事でも書いたように東芝に買収されたWH社はアメリカで2008年にジョージア州ボーグル原発3,4号機、サウスカロライナ州VCサマー原発2,3号機と続けて4基の原発の受注に成功。2009年にはフロリダ州のレヴィ原発1,2号機も受注しました。
この6基の原発の受注はスリーマイル島原発事故以降、約30年間も新規の原発建設が途絶えていたアメリカの原子力事業の再興の展望を切り拓く位置をも持っていました。
この時すでに、東芝本体はリーマンショックの直撃を受けて巨額の買収のダメージが出てしまい、粉飾決算に手を染め始めていたのですが、それでも表面上、WH社を中心とする原発部門は経済界には好調と受け取られていました。

不正に手を染めていた東芝経営陣は、ここで売り上げを伸ばして赤字を埋め合わせ、粉飾が露見しないうちに健全財政に復帰することを狙っていたのでしょう。
しかしその思惑を直撃したのが、自らが設計・建設に携わった福島第一原発事故とその後の世界的な脱原発の流れでした。無論、福島の事故は子会社のWH社にも大きな足かせとなりました。

まず窮地に陥って展望を失ったのは、2009年1月にWHが2基を受注したフロリダ州レビィ原発でした。1号機が2016年、2号機が2017年に完成予定で、2基で1兆円近くの大型プロジェクトだったと推測されています。
ところが発注主体の米デューク電力(契約時は米プログレス・エナジー・フロリダ)が、2013年に建設断念を決定し、翌年にWHとの契約を解除してしまったのでした。
東芝の苦境を脱するための期待の事業の一つであったレヴィ原発建設の展望はこれで完全についえてしまいました。

デューク電力が契約解除に踏み切った最大の理由は、福島原発事故後、アメリカの米原子力規制委員会(NRC)が規制を強化し、COLと呼ばれる建設・運転一括許可の下りる時期がずれこんでしまったことでした。
NRCは日本の規制当局とは違い、福島原発事故後、なんとわずか1年で既存原子炉の継続運転と新規原子炉ライセンス交付のための3つの命令を打ち出しました。
1すべての沸騰水型原発に格納容器ベントを求める、2緊急事態に備え使用済み燃料プールの水量を監視する計測装置の補強を求める、3同時多発的事象に対応できる能力を求めるというものでした。

レヴィ原発をめぐっては、電力会社とWH社の間での契約で、COL取得を2014年1月までに行うとされていたのですが、この新規制への対応のために期限切れ=遅延となることは明らかでした。
デューク電力はこの事態が明らかになるや、すぐに契約解除を決断したのでした。同社はいち早く世論の流れを見て危機回避策を採ったのでしょう。
しかも工事の遅延から契約解除にいたる一連の過程を巡り、デューク電力はWH社を2014年3月28日に提訴しました。WH側も負けじと3月31日に電力会社への逆提訴に踏み切りました。

マスコミ各社はこれを「泥仕合」と報じていますが、実はWH社が抱えた訴訟はこれだけではありませんでした。むしろ福島原発事故後の原発建設の遅延をめぐり、どこでもかしこでも訴訟が発生する大変な事態に突入し始めていたのです。
その一つはレヴィ原発よりも先に起こっていました。WH社が2008年に受注したボーグル原発3,4号機の建設事業においてでした。ボーグル原発はジョージア州にあり、1号機が1987年から、2号機が1989年から稼働しています。
同発電所はジョージア・パワー社、オーグルソープ・パワー社、ジョージア州電力公社、ジョージア州ダルトンの公営電力会社が共同所有していますが、原子炉の許認可取得と建設はサザン原子力発電運転会社が担っていました。

このサザンとストーン&ウェブスター社(米国大手エンジニアリンググループ会社ショーグループの子会社)及びWH社の間で総額140億ドルの設計・調達・建設契約が結ばれました。
この原発のCOL=建設・運転一括許可は2012年2月9日にアメリカ原子力規制委員会により発給されました。この日付は重要な意味を持ちます。新規制が出される直前だったからです。
もちろん新規制はボーグル原発にも適用され、最初の燃料装着前にクリアしなければならないのですが、しかしこの原発は加圧水型で1の内容と無縁であったこともあり、COL=建設・運転一括許可のための審査の遅延を免れることができたのでした。

にもかかわらず、建設が始まるや否や、すぐに訴訟が発生してしまいました。しかもWH社など契約者側が所有企業4社を相手取ったものでした。
内容は原子炉建設に伴って掘り起こした穴の埋め戻し材が不足したので追加費用を求めるものでした。提訴日は2012年7月25日、これに対して所有企業側が8月に同じ問題での逆提訴を行いました。
さらに同年11月1日に契約業者は再び所有企業を提訴。今度は契約者がNRCの新規制を満たすために、原子炉の設計変更を加えたことによる追加費用が求められました。この中には一部の工事の認可受領が遅れたための追加費用も含まれていました。

ボーグル原発はVCサマー原発と共にアメリカでスリーマイル島での事故以降に初めて受注された原発で、それだけに全世界から大きな注目を集めていましたが、工事が始まるや否や主にWH社側からの訴訟が続きました。
レヴィ原発の発注者、デューク電力もまたこの事態を注視していたのではないかと思われます。だからこそレヴィ原発におけるCOL=建設・運転一括許可の遅延を見て、すぐに原発建設を断念し、しかも先んじてWH社を提訴したのでしょう。
福島原発事故後の東芝への不信などのさまざまな余波と世界的な脱原発の声の高まりの中で、東芝の頼みの綱であるWH社の原発建設は、動き出すや否や訴訟の泥沼にはまってしまったのでした。

続く

なおアメリカにおける原発建設の実態については、昨年8月13日にAPAST報告会で使われた川井康郎さん(プラント技術者の会)の資料が大変、参考になりました。
以下にアドレスを示しておきます。

東芝問題と原発輸出産業の現状
http://plantengr.net/p2/2-2-160.pdf

川合さんは「ふくろうの会」と「FoE Japan」が提供しているFFTVに出演し、この資料の核心部分を解説してくださっています。これもご紹介しておきます。

FFTV184 東芝の泥沼と原発輸出企業の現状/ゲスト:川井康郎さん(プラント技術者の会)
https://www.youtube.com/watch?v=_3QIjcYf7AI

川合さんとAPAST、FFTVのみなさんに感謝申し上げます!

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