明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(665)半断食というエクササイズ・・・ルポ2 半断食とは何か(上)

2013年04月30日 19時30分00秒 | 明日に向けて(601)~(700)

守田です。(20130430 19:30)

半断食道場4日目、山場と言われる日を迎えています。
ここでの毎日を簡単にご紹介すると、朝は7時に集合。まずは前日のことを振り返った日誌を書きます。続いて外に出て体操。後半に気功でいい気を体に取り込みます。部屋に入って体の各所を伸ばす運動を継続。その後に2人で組になってフットマッサージを行います。これはマッサージをする側が、主に足を使って行うもの。全身をほぐしていきます。とにかく抜群に気持ちがいい。これに交代で1時間ほど時間をかけます。その後にリラクゼーション。体の各所から力を抜いていくエクササイズで、たちまち寝入ってしまう人も。これらとても気持ちのいいことの連続で10時ごろを迎えます。

この後、橋本宙八さんからの講義。これまでの3回で、半断食とは何か。食べ物とは何か。マクロビオティックの食事法ガイドラインを教わりました。かなり充実しています。
それが終わると、お茶を飲んでからロードワークに出発!明日香村の中をとにかくひたすら歩きます!初日は展望台などにも登りましたが、ちょっとハードだったので、二日目からは明日香の村の中をただひたすらテクテク。さまざまな寺院、古墳、そしてイチゴ狩りのハウスの横などを歩いていきます!距離は10キロ。連日2時間以上かけています。

ロードワークを終えて、宿舎に帰ってくると、お茶が振舞われます。毎日、少しずつ変化があり、生姜やレモンを加えてくれる。今日はお茶の種類が、番茶、玄米コーヒー、レモン水に増えていました。さらにお茶を飲んでから野菜スープ。これも毎日、少しずつ野菜の量が増えています。

このあと(まさに今、15時です)自由時間なのですが、みなさんだいたい昼寝をしておられるようです。僕も昨日、一昨日とすぐに寝入ってしまったのですが、ルポが書けないので、今はちょっと眠気を我慢してこれを執筆しています。
この時間が終わると午後4時過ぎから橋本ちあきさんによる体に優しい料理の手ほどき。玄米の炊き方(圧力釜、土鍋、炊飯器などなど)による炊き上がりの違い、体の状態への違いのお話や、調味料をどう選ぶのか、塩は何がいいのかなど、実際に炊事をする上での知恵を教えていただけます。今日は宙八さんによる講義に変わるようですが・・・。

5時からは呼吸法と瞑想です。みんなで輪になり、部屋を暗くして、呼吸法を行い、静かに瞑想に耽ります。
その後、6時から食事です。初日は玄米一膳と小さなたくわん二切れに梅干一個。二日目は梅干の変わりに白菜、きゅうりなどの野菜とおすましが加わりました。三日目はレモンなどがかかった生野菜の小鉢や、蕗の煮たもの、カブなどが加わり、僕にはご馳走に見えました。汁も味噌汁に。さて今日のご飯はどうなるのだろう。

玄米は一口200回噛むのが原則です。私語をしないで、みんなひたすらもぐもぐと咀嚼を続けます。ただし3日目ぐらいから玄米が食べられない人も出てきます。その場合はおかゆなどに変えてくれます。人によってかなりスピードは違いますが、30分から1時間はかけて食べるでしょうか。

こんな状態で毎日が進んでいますが、みなさん、昨日ごろだるさがでていたようです。4日目がピークで、それを越えた人がなんだか元気になりつつあります。僕はここまで快調に来ていましたが、今日のロードワークの後半は、結構、疲れてだるく、しんどかった・・・。うーん、山が来ているのかなあ。

そんな調子ですが、実は快適に過ごしていたらいいというわけでもなくい、だるさも必然的に出てくるもののようです。その過程を通じて、体の毒素の排毒が行われるのだからです。これを通じて、最後に宿便が出て、体がきれいになり心身がリフレッシュするとのこと。早くそのときを迎えたいなあ。

さて、半断食道場の毎日はこんな感じで進んでいるのですが、それでどうして体が改善されるのか。その点について2日目に行われた橋本宙八さんの講義の内容をここに記しておきたいと思います。あえて今回は録音などを用いずに、ノートテークしたものを書き起こします。細部で間違いがあるかもしれません。あくまでも橋本宙八講義の守田ノートであることを踏まえてお読みください。

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半断食道場講義 半断食とは何か
橋本宙八談
ノートテーク 守田敏也(小見出しは守田)

1、半断食の目指すもの。
半断食とは何か。心と体を変えるメカニズムについて話したい。
半断食とは辞書にない言葉。しかしギリシャの昔にもあった。
断食は世界のどこにでもある心身療法だ。半断食はマクロビオティックなどで50年ぐらい前から始まった。私が始めたのは40年ぐらい前からで、32年前からセミナーを行ってきた。日本で初めにプログラムを作ったものの一人だ。

半断食は、一言で言うと「限りなく断食に近い、少食、少飲による心身改善法」だといえる。体の中の毒素を排出することができる。
私自身は断食を1ヶ月行ったことがある。その経験からすると、必ずしも完全な断食を行った方が効果があるとも言えない。
人間の体はいろいろな変化を受け入れるとともに、常に一定の状態を保とうとする性質がある。これをホメオスタシス(恒常性)という。このためいきなり体の状態を変えようとすると、今の状態を保とうとする力が働く。
これに対して半断食は、この力を働かせず、また玄米をよく噛むので、そのことで毒素をより落とすことが出来る。そのため短時間の効果は完全な断食よりもよい結果が得られる。

断食は人気があるが、現代人がやるのは難しい。それまでしっかりした食材による素食を食べておらず、美食・飽食によってジャンクフードなどをたくさん食べている。命を支える要素を子ども時代からきちんと採れていない。
そのため排毒でリアクションが起きたとき、体を支えるパワーがない。若い人ほどそうだ。したがって断食は出きる人と出きない人がいる。とくに病気を抱えている人は、いろいろな課題があるので、完全な断食は難しい。

昭和一桁の人までは完全断食が可能だった。動物も怪我をすると食べなくなる。本能的に断食を知っている。命がけで自分の生命力を引き出している。しかし人間だけは、病気になると食べてしまうし、若い人は小さいときからいいものを食べれてないので、難しい。
いずれにせよ半断食療法は、本能的力で、免疫力をいい状態にするもの。世間の体質改善法が加算法なら、半断食は消去法だ。このことで自分の命の中にある生命力、外的な自然の力に120パーセントリンクできる生命力、免疫力を取り戻すものだ。

2、半断食の3つのポイント
a、少食、少飲であること
半断食法は、リーダーにより、いろいろなやり方がある。りんごやニンジンジュースを飲んでやるというやり方もある。玄米菜食2食という方法もある。
ここで行っているのは私が編み出した橋本流で、方法は無限にあるだろう。
大事なのはその人の体によって、いいものが決まるということ。人によって差がある。そのためお茶などは増やしても減らしてもいい。

b、よく噛むこと
噛むことは食事で体を変えるのに最も大事なことだ。すでに日本咀嚼学会というものもできてきていて、噛むことが体を良くすることが、さまざまに研究されている。
かつて血友病を克服しか方にインタビューをしたことがある。10歳で発病された。その方は何でも100回噛むことで病に立ち向かった。自らを100回咀嚼道人と呼び、86歳まで生きられた。「咀嚼をきちんとすればエイズだって治るよ」と言われていた。噛むことがいかに大事かを象徴する人だった。

ただしこれもその場、相手による。例えばあまりやせすぎてコントロールできない場合もある。噛み方も問題だ。あまり極端にやせる場合は危ないので、200回を100回、50回と落とす場合もある。それぞれで体の次元が違うので、このことに自在になるのが大事だ。
ロードトレーニングをする場合も、負荷のかけ方によっていろいろな違出てくる。それと同じで、その人の状態に適したあり方でよく噛むのがいい。

C、よく運動する
運動しないと体の改善のスピードが遅い。体に溜め込んだ毒素を有酸素運動でどんどん出していく。そのためにウォーキングを行う。(10キロ)
10年前まではランニングを行っていた。その人ができる範囲で行った。すごい変化があるが長年やってきて、やりすぎ(負荷が多い)の面を感じたので、ソフトにした。

この3つをいかに徹底するか。これが食事療法の基本だ。

続く

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明日に向けて(664)半断食というエクササイズ・・・体験ルポ1

2013年04月28日 23時00分00秒 | 明日に向けて(601)~(700)

守田です。(20130428 23:00)

今僕は、奈良県明日香村の由緒ある寺院の研修所にいます。昨日からここで行われている「半断食道場」に参加しています。今は(午後9時)一日のスケジュールが終わり、お風呂を終えて就寝前の自由時間を迎えているところ。参加されたみなさん、それぞれにのんびりとされているようです。

いきなり「半断食というエクササイズ」と言われて、「なんだそれは」と思われる方もいるかと思いますが、「半断食」とは「限りなく断食に近く、少食、少飲による心身改善法」のことです。この道場で行っている手法を開発されたのはマクロビアンの橋本宙八さん。以下にHPのアドレスを紹介しておきます。
http://www.macrobian.net/

ではなぜ僕が今ここにいるのか。もちろん身体の調子を整えるためでもありますが、何より、こうした健康法を実践してきた橋本宙八さん、お連れ合いのちあきさん、および橋本一家のみなさんに学び、今後の、東北・関東への健康支援にとって必要な何かを身体を通して学びたいと思ったからです。

実は僕は宙八さんよりも、二人の娘(明朱花さん朋果さん)と息子(卓道さん)に先に出会っています。原発事故のあった2011年夏ごろのこと、山水人たちと一緒に、京都大学の教室を借りてイベントを行ったことがあります。僕も講演と対談で出演させていただいたのですが、そのときにオーガニック食材などを振舞ってくれるお店がたくさん出展してくれました。その中に、オープン寸前だったベジタリアンレストランTOSCAがありました。現在も、3人を中心にまわしている素敵なお店です。場所は京都大学農学部の門の横。とにかくおいしいのでお勧めです!
http://tosca-kyoto.com/

このときとても印象的だったのは、企画の最後の方に発言してくれた明朱花さんの言葉でした。「自分たちは福島県いわき市に住んでいた。原発事故の直後に福島を飛び出して避難した。今、縁あって京都でレストランを開くことができた。ここから原発のない世の中を目指していきたい。そんなことも考えながらベジタリアンレストランをスタートさせます」というようなものでした。
大変、胸を打たれました。すぐに明朱花さんに直接にお話を聞きにいったのですが、彼女が言うには、「自分たちの家はチェルノブイリで被災した子どもたちを何度も受け入れてきた。小さいときから、チェルノブイリの子達と一緒で、その胸にチェルノブイリリング(甲状腺手術の痕)があることも見てきた。だから事故があったとき、ここにいてはいけない。すぐに飛び出さなくてはと思った」・・・とのことでした。

その後、TOSCAがオープンし、何かの折にうかがうようになりました。矢ヶ崎さんを京都の招いての集会のときには、ここで矢ヶ崎さん、お連れ合いの沖本八重美さんと合流し、おいしいランチをいただいてから企画に臨みました。そんなことを重ねる中で、やがて娘さんたちから、お父さんの宙八さん、お母さんのちあきさんのことを教えていただきました。ちあきさんは、直接、僕の講演の場にも来てくださいました。

宙八さん、ちあきさんが重ねてきた実践を知るうちに、僕の中に深い共感が生まれていきました。宙八さんは、自らの断食体験などを通じてマクロビオティック(穀物菜食による健康、長寿法)に出会い、以来、この道を研究・実践されながら、自ら「本断食(一切の食を断つこと)」よりも効果の高い「半断食」による体質改善法を開発。このもとでこれまで十数カ国8000人以上を指導し、数々の「奇跡」と呼べる健康回復も実現してこられました。
またチェルノブイリ原発事故に対しても、1994年から2年間、チェルノブイリの子どもたちを招いて1ヶ月の保養滞在させることを繰り返すなど、手厚い支援活動を行ってこられました。

これとは別にちあきさんは、先に紹介した3人を含む5人のお子さんを自然分娩で出産してきた方でもあり、そうした本も書いておられます。もちろん出産も宙八さんとの共同作業でした。このようにお二人は、健康・食の面でも、出産の面でも、現代社会が著しく曲げてしまった自然の持つ力、素晴らしさを、あらゆる角度から取り戻す実践を重ねられてきています。命と食の達人なのです。

こうした実践を見聞きする中で、僕は自分自身が担ってきた日本の平和運動などの社会運動、とくに社会主義的な階級闘争理論に支えられた運動の限界を垣間見たような気がしました。なぜなら社会運動の主な流れの人々は、現代科学のさまざまな限界に自覚的であったとはいえず、命の問題、自然の問題との向き合い方が十分ではなかったように思えるからです。

少なくとも僕自身はそうでした。今となっては恥ずかしいばかりですが、僕は平和運動で駆けまわる中で、会議と会議をかけもつなか、マクドナルドに駆け込んでハンバーガーを電車の中で食べながら次に向かうようなことがよくありました。コンビニ弁当などもよく食べたし、インスタント食品も常用していました。総じて体の声を聞くとか、自然を尊ぶとか、そういう精神が僕には大きく欠けていました。

なぜそうだったのか。悪いのはアメリカの戦争に追随する政府や、それを通じ儲けをたくらんでいる一部の資本家たちであって、こうした「悪者」から政治権力を奪い、「正義」の側に権力が移れば、少なくともたくさんのことが解決の道に着くと割りと単純に発想していたからです。

僕に欠けていたのは、現代社会が、ライフスタイルそのものを大きく変えてしまい、単に、儲けたいとか、自分だけ得をしたいとか、そうした観点からだけではなく、もっと違った危機をたくさん生み出していることへの認識でした。端的に言えば、そこで生み出された考え方は、正義を唱える側、平和な世の中を希求する側の胸のうちにまで、ライフスタイルとして入り込んでいるのであって、単に「悪者とたたかう」だけではなく、自分自身を問い直し、生活のあり方を変えていかなくてはいけないことに目が及ばなかったのです。

この間、放射線防護活動に走り回り、命を守ることを、本当に多角的に考える中で見えてきたのは、こうした僕自身が辿ってきた道の中の貧困であり、弱点でした。それを超えていきたい。その向こうに新たな可能性があるはずだとの思いが僕の中で膨らんできました。

そんなときに、お二人から声をかけていただき、TOSCAでお会いしてお話をする機会を持つことができました。とてもありがたい場だったのですが、そのときに宙八さんから、半断食道場への参加のお誘いを受けたのでした。とても嬉しかったのですぐに「参加します!」とお答えしました。

僕のこうした捉え返しは、もちろん橋本さんたちとの出会いの中だけで芽生えたのではありません。それこそ、山水人たちとの出会いを通じて知った、オルタナティブなライフスタイルを目指し、自由闊達に、おおらかに歩んでいるたくさんの人たち、若者たちの存在からの刺激もそうでした。また一方で、長く体を診てもらっている友人の気功師さんとの対話の積み重ねの中から学んだこともたくさんあります。

総じて、自分を自然の一部として、かけがえのない命の一つとして捉えなおすこと。ワーカーホリックの蔓延する現代社会の中で、市民運動の側のワーカーホリックとでも言えるような状態になりがちな自分を、まったく別の次元で位置づけなおしていくこと、それが僕にとって次に進むべき道であり、それは同時に、現代社会を変革していく上での貴重なモメントの一つになりうるという気持ちが僕の中で発酵してきていたのです。

そんな気持ちから僕はこの「半断食道場」に参加しました。何より、頭でよりも自分の体を通じて何かを学びたい。そうして明日に向けた、より力強いメッセージを発信できるようになりたいとそう思ったのです。

さて、参加の動機を長々と書いてきましたが、今、僕は二日の夜を迎えています。二夜とも、夕食は玄米ご飯一膳と、若干の香の物などです。とてもシンプルな食事です。玄米を200回噛み、1時間はかけて食べるのですが、そうすると玄米のおいしさが本当に余すところなく分かるぐらいに口の中に広がっていきます。そんな体験をしています。

さらに今朝、受けたフットマッサージが凄かった。二人組で体をゆっくりほぐしていくのですが、もの凄く気持ちよくて、まさに「至福の時」でした。「修行のつもりで来たのに、こんなに幸せにしてもらって良いのだろうか」と思いました。そんな感じでとりあえず、ここまでは意外な?感じで進んできています。

でもそんなにうまい話だけで進んでいくのだろうか・・・。と読者のみなさんもお考えではないかと思いますが、続きはまた明日にお届けしたいと思います。どうかみなさんも一緒に半断食を「プチ体験」していただければと思います。よい結末になることをお祈りください!

続く

 

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明日に向けて(663)汚染水処理破綻は、1月にすでに見えていた!

2013年04月27日 11時00分00秒 | 明日に向けて(601)~(700)

守田です。(20130427 11:00)

汚染水問題の続報です。
4月25日付の東京新聞によると、福島原発の汚染水量は、実は1月にすでに地上タンクの要領を超え、貯蔵計画が破綻していたことが明らかになりました。
東電はその後、もともと新型の放射性物質除染装置であるアルプスを作動させ、トリチウム以外の核種の多くを除いた汚染水を投入する目的で作られた貯水池に、これまでタンクに貯蔵してきた汚染水を捨て始めました。
しかし、このことを全面的に隠し、なんと1月15日以降の公表資料において、池に投入した汚染水量の分だけあたかもタンクが増設されて、容量が増えたかのように偽って発表していたのです。またも明らかになった東電の大嘘発表です。
このような対処を行いながら、一方で1月末には汚染水の海洋投棄の可能性を示唆し、さらに2月にトリチウムの危険性を非常に小さくみせる発表を行うなど、海洋投棄への布石を着々と打ち続けてもいます。

東京新聞の連続報道は、東電が隠していることを的確に暴いていて見事ですが、ここから大きく見えてきていることは、東電が事故処理を続けることの無理です。
にもかかわらず、こうした事態に対して、政府は「汚染水処理対策委員会(委員長・大西有三京都大名誉教授)」の初会合を開き、汚染水を減らす対策の議論を始めたと報道されています。
なんという遅さでしょうか。1月にはすでに破綻が明らかになっていたにもかかわらず、東電の発表を検証せずに、危機が深刻化した今になって議論を始めているわけです。しかも繰り返し危機の深化を作り出している東電のあり方が俎上に上がっていません。
これでははじめからここでの議論に実りを期待することはできません。

すでに繰り返し述べていることですが、こうした東電の杜撰な対応と、政府の「押取り刀」の対応が示しているものこそ私たちの危機です。このことにけして慣れてしまってはいけません。
東電のひどさ、杜撰さは、そのまま福島原発の現状の危機として受け止めるべきであり、同時にその中で、トリチウムなどによるさらなる甚大な海洋汚染が意図的になされる可能性があることに私たちはもっと注意を向けなければなりません。
現状でも多くの人々が、海産物の放射能汚染を恐れて、買い控えや食べ控えをしています。しかし日本に住む人々が、これまで普段に食べてきた海産物をまったく採らなくなることは、栄養上の面で非常にリスキーなことでもあります。
しかしここで大量のトリチウムが海洋投棄されてしまえば、海の汚染の深刻さは増してしまい、しかもトリチウムは、検出がセシウムなどよりも難しいため、汚染の度合いを測ることも難しく、より広範な地域の海産物を避けねばならなくなってしまいます。
それらさまざまな点からトリチウムの海洋投棄は許されてはならない行為です。

みなさん。けして今の状態に慣れてしまうことなく、福島原発の今への注意を持ち続けましょう。僕もそうした問題意識を強く保持して、ウォッチを続けます。

以下、2つの記事をご紹介しておきます。

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福島第一 汚染水 破綻明かさず
東京新聞 2013年4月25日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2013042502100007.html

東京電力福島第一原発の汚染水量が一月にはすでに、地上タンクの容量を超え、貯蔵計画が破綻していたことが分かった。危機的状況にもかかわらず、東電はタンクには余裕があると発表。その裏で、水漏れ事故が起きた地下貯水池に汚染水を投入していた。この時点で危機を公表し、真剣にタンク増設に取り組んでいれば、四月五日に発覚した汚染水漏れ事故は防げていた可能性が高い。 
東電の計画は、セシウム以外の放射性物質も除去できる新たな除染装置が昨年九月に稼働することを大前提とし、新装置でさらに浄化された水を池に入れる予定だった。しかし、新装置の安全面の問題により、昨年九月と十二月の二度にわたり稼働を延期した。
計画は新装置が予定通り動かない場合の備えをせず、汚染水量がタンク容量をぎりぎり超えない程度の甘い内容だった。慌ててタンクを増設したが、年明けには水量がタンク容量を超えてしまうことが確実になった。
このため東電は一月八日、3番池に一万一千トンの汚染水を入れ始めた。続いて二月一日には、2番池にも一万三千トンを入れ始めた。
 
だが東電はその事実を説明せず、毎週公表している汚染水処理状況の資料で、厳しいながらもタンク容量は順調に増えていることを記載していた。
一月九日の記者会見で、本紙記者がタンクの残り容量が一週間分の処理量(約二千八百トン)を下回った点をただすと、尾野昌之原子力・立地本部長代理は「タンクは約三万トンの余裕があり、足りなくなることはない」と強調し、池に汚染水を投入したことには触れなかった。
一月十五日付以降の処理状況を示す公表資料では、実際にはタンク増設は全く進んでいないのに、池に投入した汚染水の量をタンク容量が増えた形にして公表していた。タンクが増設されたのは、二回の池への投入が終わった後の三月になってからだった。
東電広報部は「タンクの増設はすべて計画通り進めており、問題はなかった。地下貯水池に(新装置で浄化していない)汚染水を入れることも想定していた。漏れたら別の池に移し替えるつもりだったが、全ての池が使えなくなる状況は考えていなかった」とコメントした。

***

原発汚染水減らす対策、5月中にも提示…政府委
読売新聞 2013年4月26日17時38分
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130426-OYT1T00684.htm?from=ylist

政府は26日、東京電力福島第一原子力発電所の汚染水問題を検討する「汚染水処理対策委員会(委員長・大西有三京都大名誉教授)」の初会合を開き、汚染水を減らす対策について議論を開始した。
 
建屋への地下水流入を防ぐ遮水壁を新設するなど、複数の計画の有効性を検証したうえで、新たな対策の方針を5月中にも示したい考えだ。
汚染水は、原子炉建屋などに地下水が流入することで、毎日約400トンずつ増えている。同委員会は、遮水壁を新設したり、建屋のすき間を埋めたりするなどの対策が有効かどうか議論する。汚染水の総量を減らすため、試運転中の除去装置では取り除けない放射性トリチウムを処理する方法も探る。
初会合で赤羽一嘉経済産業副大臣は、「汚染水の処理は廃炉を進める上で最重要の課題。学界、産業界、国が協力、連携し一日も早く対策に道筋をつけたい」と述べ、同委員会がまとめる汚染水対策を、6月に改定予定の廃炉工程表に反映させる考えを明らかにした。

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明日に向けて(662)今一度、低線量被曝の危険性と向き合おう!

2013年04月23日 23時30分00秒 | 明日に向けて(601)~(700)

守田です。(20130423 23:30)

福島第一原発の現場の杜撰さが、次々と明らかになっています。
ネズミの感電によって引き起こされたクーリングシステムのダウン、そして汚染水の貯水槽からの相次ぐ漏れ出し、昨日はさらに冷却装置の変圧器内に、新たにネズミ2匹の死骸が見つかり、点検のため東電が自らプールの冷却を4時間ほど止めなければならない事態が発生しました。詳しくは以下の記事をご覧下さい。

乱雑ケーブル 野ざらし配管 福島第一 弱点あらわ 相次ぐトラブル
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013042302000129.html

こうした相次ぐトラブルの発生に対して、この間、僕はこの事態をいかに捉えるのかを明らかにしてきました。
一つにはトラブルの発生を主体的に捉えること。つまり東電をなじるだけではダメで、事故がまったく収束しておらず、私たちが今なお危機に直面していることをこそしっかりと把握して、避難訓練の実施など、自らを、そしてまた周りの人々を守るための行動に立ち上がらなくてはならないということです。
二つには、こうしたトラブルの発表の中には、常に東電が次にやろうとしていることが隠されてもおり、その点を見抜くことが必要であること。今回の場合は、汚染水の海洋投棄が狙われている点を見据えていかねばならないことです。とくにその場合は、放射性トリチウムが除去もせずに投棄されようとしており、この危険性に注目しなければなりません。

これらについて、詳しい内容を知りたい方は、以下の3つの記事を参照してください。

明日に向けて(654)福島原発汚染水漏れを考察する・・・露顕したのは杜撰さとストロンチウム隠し?
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/c18da52e4f5ddcfccf7c6cade582d565

明日に向けて(655)福島原発汚染水漏れの考察(2)・・・問われるのは現場の杜撰さに主体的に向き合うこと
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/4cad4aaaa9a0ffb8db24e05757d81e98

明日に向けて(656)福島原発汚染水漏れの考察(3)・・・隠されているトリチウムの危険性
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/c1ef074e7ca5e48e988bb5d3dbf3418e

とくにトリチウムの危険性について詳述した(656)を参照して欲しいのですが、ある意味でここには低線量被曝の危険性の問題、ないしそれが非常に過小評価されている問題がダイレクトに現れているとも言えます。
なぜならトリチウムは、壊変によって放射線のうちの一つであるβ線を出す放射性物質であるわけですが、そのβ線のエネルギーが低いことから、危険性がとても小さく見積もられているからです。
どれがぐらい小さく見積もられているかというと、「周辺監視区域外の水中の濃度限度」がなんと1リットル6万ベクレルという高い値に設定されていいます。セシウム137の場合、同90ベクレル、134の場合でも同60ベクレルであることと比較すると非常に危険性の評価が低いことが分かります。
そのためトリチウムは、大量に環境中に捨てることが容認されており、事実これまでも運転中の原発からも常に大量のトリチウムが廃棄されてきたのです。

しかし実際にはトリチウムの危険性はさまざまに指摘されています。そのうちの一つ、2011年以降の研究論文を見つけたのでご紹介しておきます。

細胞・分子レベルでのトリチウム影響研究
http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2012_04/jspf2012_04-228.pdf

論文の内容の詳しい紹介は次回以降に回しますが、冒頭の一文に問題意識が的確に書かれていたので、引用しておきます。

***

トリチウムの生物影響を検討するために,細胞を用いて種々の指標について生物学的効果比(RBE)の研究が行われており,RBE 値はおよそ2であると推定される.
だが,これまでの研究は,高線量・高線量率の照射によるものであった.しかし,一般公衆の被ばくは低線量・低線量率である上,低線量放射線には特有の生物影響があることが明らかになってきた.
したがって,今後低線量・低線量率でのトリチウム生物影響の研究が重要であり,そのための課題も併せて議論する.

***

要するにこれまでのトリチウムに関する「危険性」の見積もりは、「高線量・高線量率の照射によるもの」でしかないということです。トリチウムによる低線量被曝が細胞レベルで行われた場合の、具体的な危険性については把握されていないのです。
同論文は、乏しいデータの中からも、この領域に踏み込んだ秀作ですが、ここからだけでも押さえられるのは、現在の政府や国際放射線防護委員会(ICRP)による放射線防護指針が、科学的に立証されてなどいない、非常に危険性を過小に見積もった被曝評価になっていること、被曝の具体性をまったく無視したものになっているということです。

その上、水素の同位体であるトリチウムには、人体の中の様々な構成要素となっている有機化合物の中の水素の置き換わってしまうため、被曝以外の細胞への影響も大きいにもかかわらず、この面はまったく無視されてしまっています。
なぜこのような過小評価や無視がまかり通るのかと言えば、原発推進派であるICRPが、人体に対する危険性から規制値を出しているのではなく、原発にとって運転可能な技術的要請から「規制値」と作っているからです。このため低線量被曝の実態が無視されてきたのです。

私たちが今回の汚染水漏れ事故の中で、もう一度見つめ直さなければならないのは、この点にもあるのですが、そのための振り返りに絶好の動画があります。2011年12月28日にNHKによって流された「追跡!真相ファイル File.76 低線量被ばく 揺らぐ国際基準」です。
この情報をもたらしてくれたのは、しばしば僕のブログに有益なコメントをしてくださっている「みき」さんですが、彼女の指摘に基づき、僕も放映時に一度は見て、録画をしてあったこの番組を再度視聴し、ぜひとも今またみなさんに見ていただきたいと思いました。以下に動画のアドレスを記しておきます。

追跡!真相ファイル File.76 低線量被ばく 揺らぐ国際基準」
(NHK総合・2011.12.28)
http://www.dailymotion.com/video/xpedoe_yy-yyyyyy-yyyyyy-yyyyyyy_tech#.UTQybiYUSZM.twitter (動画)

中でもぜひご覧いただきたいのは、トリチウム被曝の被害者と思われる18歳の女性について取り扱っているシーン、および彼女の発言です。
同番組では最後にも彼女の次のような訴えを映し出しています。

「科学者には、私たちが単なる統計の数値でない事を知ってほしい。私たちは生きています。空気と水をきれいにしてください。沢山の苦しみを味わいました。誰にも同じ思いをしてほしくはありません」

ぜひ彼女の切々たる訴えを受け止めたい。彼女は「科学者には」と呼びかけていますが、苦しみを通した彼女の訴えを耳にした私たちは、再度今、低線量被曝の危険性を認識し、被曝防護を少しでも進めることを考えなくてはならないと思います。
同時に番組は、こうした低線量被曝に対して、国際放射線防護委員会(ICRP)が、いかに非科学的に、政治的な判断で「規制値」を決めてきたのかという点も実に丁寧に取材し、鮮やかに描き出しています。この点も含めて、ぜひご覧下さい。

なお、みきさんは、この動画の文字起こしもしてくださっています。動画を見る時間のない方はぜひこちらをご覧下さい。

MICKEYのブログ
「追跡!真相ファイル 低線量被ばく 揺らぐ国際基準」(上)(下)(※動画あり)
http://blogs.yahoo.co.jp/ueda_beck/9121120.html
http://blogs.yahoo.co.jp/ueda_beck/9121195.html

私たちの命、全ての命を守るために、低線量内部被曝の危険性を明らかにしながら、前に進みましょう!


 

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明日に向けて(661)向日市、西宮市、京都市、神戸市、四日市市でお話します。

2013年04月18日 09時30分00秒 | 講演予定一覧

守田です。(20130418 09:30)

4月から5月の講演スケジュールをお知らせします。

4月20日に向日市でお話します。「食品と内部被ばく」というタイトルです。

5月6日に西宮市でお話します。阪神市民放射能測定所開設記念に際してです。

5月19日に京都市でお話します。京都市民放射能測定所開設1周年記念に際してです。

5月21日に神戸市でお話します。全神戸労働組合センター主催です。

5月25、25日に四日市市でお話します。四日市バプテスト教会会員有志主催です。

以下、詳細をお伝えします。お近くの方、ぜひお越し下さい!

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4月20日 京都府向日市

私達の食物は安全?

日時 4月20日(土) 午後2時から4時
会場 向日市寺戸公民館
講師 守田敏也氏

参加無料 保育コーナーを設けています。(4月13日までにご連絡ください)

ご案内

福島原発事故から2年、未だ収束の見えない実態。
放射能汚染で食品の産地にも気を使うと話されています。
フリージャーナリスト、守田敏也氏を招き、食品の安全と内部被曝の講演を催します。
内部被曝の現実と私達の暮らしについて考え、会場で発言も交えて討論します。

主催 原発をなくす向日市民の会
連絡先 事務局筒井 931-3788

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5月6日(祝)兵庫県西宮市

阪神・市民放射能測定所 開設のつどい

12月に開設準備会が発足し、2月に測定器を設置し、皆さんから賛同協力や多くの食材を提供いただき測定研修を積み重ね、いよいよ5月7日に阪神・市民放射能測定所を開設します。
開設にあたり、測定所への期待や開設までの苦労話などを報告しながら皆さんと一緒にお祝いしたいと思います。この間、ご協力いただいた方々のみならず、まだ測定所をご覧になっていない方々、皆さん!是非おこしください。

日時 5月6日(祝)

1部 開設のつどい
場所 西宮市民会館(5階 502会議室)13時30分~15時45分
2部 開設パーティ
場所 NPO法人つむぎの家 16時~18時30分

参加無料

●1部 開設のつどい
◆経過と今後の取り組みについて
◆記念講演 原発事故による放射能汚染と市民測定所の意義
 守田 敏也さん(市民と科学者の内部被ばく問題研究会 常任理事)
◆スタッフ紹介、京都・奈良測定所等の激励のあいさつ等
◆展示(測定結果記録、放射能汚染地図等)

●2部 開設パーティ
測定器や測定状況の見学、軽食とお酒も入れて懇談します。
スタッフ等の思いや苦労話、期待等、楽しい時間にしたいです。

阪神・市民放射能測定所開設準備会
メール:shs.hanshin@gmail.com
ブログ:http://hanshinshs.blog.fc2.com/
連絡先 安東 090-3828-9579

*****

5月19日 京都市伏見区?

丹波橋市民放射能測定所開設1周年の集いです。
詳細はおってお知らせします。

*****

5月21日 神戸市

全神戸労働組合センター学習会
講師 守田敏也さん

日時:5月21日(火)午後6時30~8時30分
場所:兵庫県私学会館101号室(JR元町駅東口の北西5分)

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5月25、26日 三重県四日市市

つなごう、いのち~私たちは学びたい
原子力災害の真実

2013年5月25日(土)午後2時30分から
     5月26日(日)午後1時30分から

会場 日本バプテスト四日市教会
〒510-0815 三重県四日市市野田1-1-27
電話 059-334-7755

「神が造ったすべての物を見られたところ、それははなはだ良かった。」(創1:31)・・・

守田敏也さんを迎えて
3.11以後を私たちはどう生きるのか。原発事故と内部被爆のほんとうを知り、今後の備えについても考えましょう。

参加費無料 カンパ歓迎!

主催 日本バプテスト四日市教会会員有志
協力 日本バプテスト四日市教会

連絡先 加藤美代子(電話・FAX 059-329-7987)

 

 


 

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明日に向けて(660)何をどうやって食べることが大切か(一二三館で子ども達と考えたこと)2

2013年04月17日 11時00分00秒 | 明日に向けて(601)~(700)

守田です。(20130417 11:00)

前回に引き続き、一二三館での子どもたちとの対話の後半部分をお届けします。

*****

何をどうやって食べることが大切か
一二三館で子ども達と考えたこと(後半)

では次の話をしましょう。食欲を進める魔法の白い粉があります。

男の子 「白砂糖」

え、よく知っているねえ。そう。白砂糖はすごく身体に良くないです。

女の子 「色をつけているから」

うん。確かにそれもある。白くしているのだね。でも一番良くないのは「精製」ということをしていることです。例えば沖縄などにある黒糖という黒いお砂糖があります。それにはお砂糖の糖分以外にいろいろな栄養素が入っているのですよね。
ところが白い砂糖は、糖分以外をとってしまっているから、それを食べると、本当は糖分と一緒に身体に入らなければいけないものが、身体の中から使われてしまう。例えば骨が使われてしまいます。骨からカルシウムというものを出します。
だからね。白い砂糖ばかり入ったものをたくさん食べると、成績が落ちちゃうんだね。

男の子 「じゃあ俺、食べないようにしよう」

どうしてかというと、集中力や、やる気が落ちてしまうからです。ではそういうことであまり食べない方がいいものは何かと言うと、マクドナルドのハンバーガーです。

一同  「あー」(どよめき)
女の子 「ハンバーガーはもともとあまり食べないからいいや」

あれはね、砂糖をいっぱいかけているのです。なぜかというと、砂糖がいっぱい入っていると、人間は食欲が進むんです。

男の子 「子どものうちにマクドナルドの味を覚えさせれば大人になっても離れられない」

ピンポン!今のはマクドナルドの社長が言っていること!そうなんだよ。ひどいの。じゃあ、子どものときにその味を覚えさせるといいというのはどうしてだと思う?

女の子 「大人になっても買うから」

うん。大人になっても買うのだけれど、なぜなのだろう。これはちょっと難しいかもしれないな。

女の子 「美味しかったから」

美味しかったからだけど、なぜ美味しいと感じるのだろう。・・・これはもう答えをいいましょう。みなさんは味はどこで感じますか?

一同  「ベロ」

みなさんのベロの中に味蕾(みらい)という美味しさを感じる細胞があります。でもみなさんはまだ小さいので、その味蕾が十分に発達していません。だからどんどん大人になるに従って、舌がだんだん発達していくの。
そのように舌が発達する前に、砂糖をいっぱい食べてしまうと、あまり舌が発達しなくなる。だからね、大人はどうしてこういうものが美味しいと思うんだろうなということあるでしょう?ちょっと苦かったりとか。大人になるとああいうものが美味しくなるのです。
でも子どものときに糖分べったりのものを食べていると、舌が発達しない。だからいつまでも子どものときに感じる「美味しさ」から出ていけないから、だから子どものうちに食べさせれば勝ちだとマクドナルドの社長は言っているのですよ。みなさん。
だからあんなにおもちゃをくれるの。(大人の女性からどよめき)みなさんを一生、マクドナルドにつなぎとめておこうという戦略なのです。

女の子 「でもあのおもちゃ、すぐに壊れるから、途中でやめることができそう」

だって!すごく粗悪なおもちゃだそうです。(大人から笑い)
マクドナルドは世界の中でもどんどん伸びています。伸びているのは、ものの売り方がすごくうまいというか、ひどいからです。例えばマクドナルドはアメリカで発達しました。アメリカ人は今、とても太っています。

男の子 「たしかに」

太っているけれども、アメリカ人の多くはキリスト教を信じていて、キリスト教にはやってはいけない7つの大罪というものがあって、そのうちの一つは大食いなのです。だからマクドナルドは、このキリスト教の大食いの戒めをどう壊すかを考えたのです。
とくにフライドポテトで研究を進めました。それでマクドナルドが考えたこと。人は大食いだとは思われたくないから、絶対にポテトを二個は買わない。だけど一個食べたあとにみんな箱の中の塩を舐めたりしている。もっと食べたいはずだということで、結論、サイズを大きくしました。
フライドポテトの入れ物を大きくしてね。そうしたら大きくなった分だけ人は食べてしまう。それでコカコーラもビックサイズにしました。

男の子 「外国の野球場を見ていたらすごく(コーラが)大きくてやばいって思った」

やばいよね。あれはね、実は何十年か前はあんなではなかったのだね。年々、大きくなってきました。実はそういうこともあって、アメリカはこの20年間の中で劇的に太っているのです。
今日は本を持ってきました。『デブの帝国』(注 原題はFAT LAND)という本です。ちなみに今、ここに「デブ」な人はいませんよ。「デブ」とはどういうことなのか。アメリカの場合はずいぶん、深刻なのです。
体があまりに太ってしまうと心臓が悪くなりやすいのだよね。それで心臓が痛いということで、救急車を呼ぶでしょう。救急隊が到着しました。救急隊が唖然としました。救急隊が家から出せないのです。

女の子 「タンカに乗れない?」

タンカに乗れないどころか、250キロとか体重があって、ドアから簡単には出れないのです。どうするか。

男の子 「壁をぶち壊す」

そう。そうやって救出したなんて話がアメリカでは増えているのです。ではその人は幾つぐらいか。18歳だったりする。そういう劇的な太り方をしている人が増えているのです。日本にはほとんどいないのだけどね。

もう一度、マクドナルドハンバーガーの怖さを話すとね、ちょっと難しいのだけれど、私たちの頭は糖分で動いています。だから糖分が少なくなると、人間は頭の働きが鈍ってしまうのだよね。だから人間は糖分がどれぐらい身体の中にあるかをコントロールしています。
少し難しい言葉だけれど、糖分の血液の中にある値と書いて、血糖値というものをコントロールしています。

女の子 「血糖値が上がりすぎたり下がりすぎたりすると良くないから」

賢いねえ、君。(大人から唸り声とどよめき)そのとおり。血糖値が上がりすぎたり下がりすぎたりすると脳が不安定になるので、血糖値をいつも安定させようとする仕組みがあって、そのために身体の中から出る成分って知っている?これは知らないかな?

女の子 「尿?」「糖尿?」

尿ではないね。今、あなたが言っているのは、この血糖値のコントロールが壊れてしまった時に尿に糖分が出てきてしまうことで、それを糖尿病といいます。尿に糖が出てきます。
身体の中にはすい臓という器官があって、ちょっと難しい言葉だけれど、インシュリンというものがすい臓の中から出ます。それが出ると、身体の糖分がコントロールされるのだけれども、例えばマクドナルドハンバーガーを食べるとどうなるか。
普段、生物としての人間にはそんなにたくさんの糖分だけが入ってくることはありません。だから血糖値が一気にあがってしまう。そうすると体はコントロールしなければならないということで、インシュリンをいっぺんにたくさん出してしまいます。
そうすると、一旦上がった血糖値がいっぺんに下がってしまう。

男の子 「低血圧?」
女の子 「低血糖」

そうだね。血圧ではなくて血糖値が下がるから、低血糖状態というものになります。そうすると体は低血糖状態は良くないから、糖分を欲しくなってしまう。
これを僕は、マクドナルドハンバーガーを一つ食べると、もう一つ食べたくなる法則と言っています。一個食べると、二個目が食べたくなってしまう。だからあそこで食べると、もっともっと食べたいという欲求が強まってしまう。そうなると実は人間は簡単に止まらないのです。どこまでも食べれてしまう。
だから250キロとか、太っても太っても、まだ食べれてしまう。

ではどこからが太っているというか。肥満という言葉がありますよね。健康状態を越えて太っている人のことです。みなさんはOECDというものを知っていますか。アメリカや日本やフランスやイギリスなど、世界の中の有名な、お金持ちの国のグループをさすのだけれど、その中で一番、痩せている体型をしている国はどこだと思いますか。

男の子 「ドイツ」

ドイツではない。ドイツはけっこう太っている。

女の子 「インド」(注、インドはOECD外)

インドは最近、どんどん太りだしています。ヒント、もっと近い国。

女の子 「韓国」

韓国は2番目!

女の子 「台湾」(注、台湾はOECD外)

男の子 「中国」(注、中国はOECD外)

中国も今、太りだしている。

一同 「ロシア」「タイ」「イタリア」(注、ロシアは加盟申請中、タイはOECD外)

もっと近い国!

男の子 「日本」

そう。日本なのです。世界の中でというのではないけれども、お金持ちの国の中では、一番痩せている国は実は日本なのです。何がいいのかというと、お魚とかを砂糖をかけないで食べていることなどだね。和食は身体にいいものが多いです。
(注 ただし食の研究者の中からは、そもそも和食という概念はあいまいで、牛丼など和食ファーストフードもあることや、最近は日本の子どもたちも太りだしていること、一方でやせていればそれで健康だとは言えないことにも警戒すべきだという指摘の声も出ている)
だから日本と韓国は世界の中でも痩せている国です。ではさっき言ってしまったけれど、一番太っている国はどこでしょう?

一同 「アメリカ」

ピンポン!ではどれぐらい太っている人がいるか。OECDという世界のお金持ちの国の平均が、14.7%、100人のうち15人が太っています。日本は100人のうち3人です。(注、体重を身長の二乗で割ったBMI値が30以上をWHOは肥満と規定。統計は2005年のもの))
ではアメリカは100人のうち、どれぐらいだと思いますか?

一同 「25人」「50人」「195人」

100人のうち、195人がいることはできないね。(笑)答えを言いましょう。32人です。100人のうち32人が激太りなのだよ。

男の子 「わおー」

わおーなんだよ。すごく身体に悪い。それで心臓病などとても多いのです。でもさっきもいったように、そのアメリカも30年前だと100人のうち16人ぐらいだったのです。この30年、とくに20年ぐらいの間にどんどん悪くなってきたのです。
何が悪いのかというと、非常に悪い油を使った食べ物がすごく増えたことです。パーム油、ヤシの油だね。それから大豆油。
あとは砂糖の中身も変わってます。昔は蔗糖といって、ピートなどからとってきたのだけれど、今はトウモロコシから採った糖分に変わっています。これも身体によりよくない。だからトウモロコシの成分が入っているもののあまり良くないんだね。

男の子 「コーンポタージュ」

うん。それもあまりよくないね。(注、コーンポタージュは本物はけして悪くはないが、多くの、安価に売られている粉末ものは加工でんぷんなど多くの添加物で底上げされてる。コーンの問題よりも、添加物の問題の方が大きい)

男の子 「じゃあ、コーンフレークも良くないんだ」
女の子 「コーンフレーク、大好き」

コーンフレークは、砂糖のかけすぎがより良くないかな。モノによるのだけれど。(注 コーンフレークもコーンの栄養素部分が削られていて単純な糖質になっている)

男の子 「表面が白いのがある」

そうでしょう。白いのがかかっているのがあるでしょう。あれの中には全体の半分が白砂糖のものがあるんだよ。

男の子 「ギクッ」

そういうものを食べると、どんどん体が悪くなってしまいます。だから甘いものを食べるなら、どちらかというと和菓子の方がまだいいかな。

男の子 「お母さんがそう言っている」


今までの話をまとめたいのだけれど、よく噛むと消化がよくなりますね。そのときもう一つ大事なことは、よく噛むと、時間がかかるので、そんなに食べなくても満腹になるのです。

女の子 「脳が、お腹がいっぱいだと感じてくる」

そう、それだね。脳の中に満腹中枢というものがあります。その通りだよ。噛む回数を増やすとそれだけ脳は満腹を感じやすくなるのです。

女の子 「いっぱい食べたと感じる」

だから噛まさないものをたくさん売っているのです。柔らかくしてあまり噛まないで、飲んでしまうようにする。

男の子 「あと、脳を活性化する」

そう。噛むことでね。顎が動いてね。だからみなさんは、お家に帰ったら、意識的に今までよりも噛む回数を多くしてください。それだけでとても健康になります。それだけで成績が良くなります。

女の子 「100回、噛んでる」

100回、噛んでるの?凄いね。

女の子 「口の中でなくなっちゃったよ。食べ物」

そうだね。なくなっちゃうよね。でも本当にそうやって食べた方がとても身体にいいんです。

男の子 「徳川家康は、ご飯を一回口にいれると48回噛んでいたそうです」

おー、すごいこと知っているね、君。(笑いと大人からのどよめき)
それは本当にそう。戦国の人たちはどうやって食べると身体にいいかを知っていました。とくに徳川家康がなぜそれを考えたのかというと、戦場でご飯を食べるときは、早く食べないといけないので、湯漬けといってお湯をかけて飲み込んでしまう癖がついていました。
そうするとお腹を壊したり、身につかなかったりします。それで徳川家康はもっとよく噛んで、身につけることを知って、それで強くなっていったんだね。すごいことを知っているね。
だからよく噛むことを身につけてください。それから白い砂糖がたくさん入っているものを避けることですね。

甘さというのは仄かな方が美味しいのです。さっき言った、でんぷんってあるでしょう。お米を噛んでいると、でんぷんに唾液が混じります。その唾液の中にはアミラーゼという物質があります。この二つが交わっていくとだんだん甘くなる。だからお米はゆっくり噛んでいると美味しくなる。
ところがそれだとたくさん食べてくれないということで、昔、小僧ずしというお寿司を売るチェーン店が、最初にご飯に砂糖をかけました。そうすると最初から甘いから、あまり噛まないで食べてしまいます。
お寿司を握っている職人の人たちは、そんなことは昔から知っていました。知っていたけれど、絶対にやってはいけないことにしていました。本当のお寿司の美味しさではないからです。
そんなわけで買ってきたものには砂糖が多く使われているので、より甘いものが多いのです。だから甘いオカズが多かったら、お父さん、お母さんに、こんなに甘いものではないものを食べようよと言ってください。

女の子 「もうそれ、はじめてる。ママもアトピーだから」

そうか。そうだね。アトピーなどにもそれはいいことです。そのことでみなさんが身体を強くしていけば、放射能の害とかはあるけれども、それに負けない身体を作っていくことは必ずできるので、とにかくよく噛むことを続けてください。
ただしね、今、みなさんは成長期だし、今の日本にいて、それほど太ることを心配する必要はないです。
とくに女の子は大きくなると、「痩せてないといけない」という声が聞こえてきますが、それには巻き込まれずにね、ゆっくり、一生懸命に噛んで、それで自分が食べたいだけ食べていれば大丈夫なので、そういう食べ方を覚えてください。
それでここから帰っても、みんな元気で、またここでこうやって集まれたらいいね。

はい。それではこれで話を終わります。(拍手)



 


 

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明日に向けて(659)何をどうやって食べることが大切か(一二三館で子ども達と考えたこと)1

2013年04月16日 17時00分00秒 | 明日に向けて(601)~(700)

守田です。(20130416 17:00)

すでに明日に向けて(652)(653)などでお伝えしましたが、3月25日から4月6日までの日程で、「びわこ☆1・2・3キャンプ」が行われました。東日本大震災支援プロジェクトの一環で、子どもたちの保養を目的としたものです。
会場は3月31日までが滋賀県北部のマキノ町にある白藤学園研修センター、4月6日までが、マキノ高原民宿一二三(ひふみ)館でした。主催は同キャンプ実行委員会。キャンプの楽しいチラシがあるのでご覧ください。
http://www.eonet.ne.jp/~makino-hifumikan/img025.pdf

僕はこのキャンプに4月4日呼んでいただき、2つの講演を行いました。一つは参加した保護者の方、スタッフの方など、大人を相手にした放射線防護に関するお話です。
この際、南相馬市から大津市に避難している青田恵子さんが参加してくださり、福島事故のこと、放射能が撒かれてしまった故郷への想いなどを綴った詩を朗読して下さいました。心が揺さぶられる詩でした。ぜひ(653)で詩をご覧ください。

さてこの日は、その後に子どもたちと一緒に夕飯を食べてから、今度は子どもたち向けの講演をしました。何をどうやって食べるかのお話です。およそ30分間、僕がお話し、あとの30分で質疑応答を行ったのですが、この講演会、圧巻でした!!
実はこの講演、2011年3月11日以降、今日までに僕が行った200回近い講演の中で、初めて子どもに向けて話したものだったのですが、何というか、これまでの中でも、一番、レスポンスがよく、高度な質問が続いた講演でした。いやあ、すごかった。

ちなみに講演のときの様子がFACEBOOKにアップされていたのでご紹介します。ここは民宿一二三館の中で、みんなで食事をする大広間です。僕の右手に子どもたちが座ってくれていますが、写真に写っていない左手に同じ数ぐらいの大人たちが座っています。
http://www.facebook.com/toshiya.morita.90#!/photo.php?fbid=142896522555741&set=pcb.142907549221305&type=1&theater

振り返って、次のようなことを思いました。一つに子どものものを学ぶ能力の素晴らしさです。何より好奇心のあり方が大人に比べて断然シャープで、柔軟です。頭をクルクルと回転させながら話についてきてくれる。だからレスポンスがものすごくよくて、こちらもどんどんしゃべらされてしまう。
生命力とか若さとかは、やっぱり好奇心の中にあるのだよなあとつくづく思いました。こうした子どもたちに接していると、大人の側もみずみずしい好奇心を思い出させてもらえます。その分、子どもに近くなり、若返ってしまう。子どもの世話をしていながら、子どもから精気をもらえます。子どもと接する醍醐味ですね。
ちなみに気功治療を行っている友人が、近くの小学校に夜に散歩にいっても、校庭には若々しい気がまだ渦巻いているのだと言っていました。その子どもたちの存在こそが、常に、社会の、私たちの「明日に向けて」の活力になっているのでしょう。子どもたちが社会の宝である由縁です。

でも二つ目に、さすがに福島などの親御さんたちが送り出してくれた子どもたちだなあという思いも強く持ちました。というのは、いかに健康を守るのかという観点からの食べ物に対する洞察が、とても深い子が多かったからです。危ない食べものの話をすると、「お母さんがそう言ってた!」というレスポンスなどがすぐに返ってくる。
小学校高学年の子たちになると、さらに進んでいろいろなことを知っている。それがポンポンと飛び出してくるのです。実は、僕は子どもたちをもう少し舐めていて(子どもたちごめん!)、初めに幾つか質問をして、それなりに時間を使う予定だったのですが、瞬く間に正解が出てしまい、話を前に前にと進めねばなりませんでした。
これには次第に大人たちから呻き声が漏れるほとでした。驚いたのは講演のあとの質疑応答で、かなりハイレベルな質問も出てくる。とうとう僕が答えられないものもでてきました。

具体的には白砂糖の化学式を尋ねられたのでした。恥ずかしながらそのとき咄嗟に、大人の悪知恵で、グルコース(砂糖の成分の一部)の化学式が口からでてしまい、「とかいう感じだったかなあ」と答えてしまったのですが(子どもたちごめん!)あとから質問をした男の子が白砂糖の化学式を書いたものを見つけて僕のところにもってきてくれて、訂正してくれました!!
こんな状況なので、参加した大人たちはもうビビリまくり!子どもたちだけでなく、大人にも質問して欲しいと水を向けると、みんな枕詞に「小学生よりも劣った質問で申し訳ないのですが・・・」という余計な!一言をつけていました。
なぜこの子達が、こんなにいろいろなことを知っているのか。僕は子どもたちの背後に、放射能の害から子どもを守るべく、懸命に頑張っている親御さんたちの姿が垣間見えたように思えました。子どもたちは大人たちの真剣な眼差しを敏感に察知し、これは大切なことだと一生懸命に吸収してきたのでしょう。こうして福島原発事故の中で、新たな世代が育ってきていることをひしひしと感じました。

さて、今回はこの日、子ども達と一緒に食べ物について考えたことを、お伝えしたいと思います。食べ物についての知識もさることながら、ぜひ、キャンプに参加していた子どもたちの息吹も感じ取って欲しいです。
全部で1時間のものですが、文字にすると長くなるので、何回かにわけます。子ども達と一緒に考え、かつ楽しみながらお読み下さい!

*****

何をどうやって食べることが大切か
一二三館で子ども達と考えたこと

みなさんが、それぞれのお家に帰って何に気をつけたらいいのかということで、今日は、食べもののお話をします。
私たちの国にはたくさんの放射能が降っています。だから何かを食べるときは放射能が入ってないものを選ぶことが大切です。このことはあちこちで考えられています。
それだけではなくて、今私たちの国だけではなくて、世界の食べ物がすごく悪くなっています。そのすごく悪いものを食べると、体もどんどん悪くなってしまいます。なので今日は、何をどうやって食べたらいいか。何を食べない方がいいのかというお話をします。ぜひ聞いてください。

今、みなさんとここで一緒にご飯を食べました。今日のご飯は美味しかったですか?ご飯を食べる時にどうやって食べるか。大事なことが二つあります。なんだと思いますか?

男の子 「良く噛むこと」

良く噛むこと!ピンポン!あたり!(拍手)噛むことは確かに一番です。すぐに答えが出ましたね。では次はなんだと思いますか?

男の子 「三角食べ」

うん。それも大事なことだな。でももっと簡単で大事なことがあります。

女の子 「好き嫌いしない」

ああ、それも大事なことだ(笑)僕が予想していなかった良い答えがどんどん出てきますね。(笑)はい、もう一つ、なんでしょう。今日の食べ方を見ていると、うまくいっていたなと思います。

男の子 「バランス」

バランスもそうだな。三角食べとも似ているね。

男の子 「行儀よく食べる」(爆笑とどよめき)

うん、ちょっとかすってる。かすっているのだけれど、そんなに行儀よくなくてもいいんだな。さあ、なんでしょう。・・・・・答えを言いましょう。答えは楽しく食べることです。

男の子 「あ、知ってた。言い忘れた」

知っていたんだね。そのとおり。楽しく食べたほうがご飯は身につくのです。反対に喧嘩しながら食べたりとか、テレビばっかり見ながら食べたりすると栄養が身につかないのです。だからよく噛んで食べることと、楽しく食べることを大事にしてください。
ではここからもう一つ深めましょう。よく噛んで食べることはどうして必要なのでしょうか。

男の子 「唾液が出るから」

あ、そのとおり。ピンポン!(大きな拍手)
もう答えが出てしまった。そうなのだよね、よく噛んで食べることは、細かく砕く事の方に大事な点があると思ってしまう人もいるけれど、それよりも唾液がたくさん出ることの方が大事なのです。よしでは次にいってみよう。なんで唾液をよく出すといいの?

男の子 「消化がよくなるから」

ピンポン(どよめき)

すごい。どこまでいくのでしょう。消化がよくなる、その通りです。つまり唾液の中には、消化をすすめてくれる酵素というものがいっぱいあります。だから唾液をいっぱい出して食べた方がいいのです。
ではここからは大人に質問しましょう。消化がよくなるということはどういうことでしょうか。

大人(女性) うんこがよく出る。(笑)

結論としてはそうです。(笑)答えは私たちの食べるものは、炭水化物、でんぷんやタンパク質、脂質、油に分かれます。それが私たちの身体に吸収しやすくなって、エネルギーなどにも変わりやすくなるということです。

ではここからどういうものを食べてはいけないのかという話に行きますよ。
今、話したように、ご飯を食べる時に大事なことは、よく噛むこととありましたよね。今、作られている多くの食べ物は、できるだけ噛まなくていいいように作られているのです。

男の子 「やばい」

うん、やばいんだよ。すごく。なんでよく噛まないでも食べれるように作られているかというと、その方がたくさん食べてしまうからです。

男の子 「その方がたくさん売れるからだ」

そうそう、たくさん売れるからだね。だからあらかじめ噛まないでも飲み込めるようなものをたくさんいれているのです。

男の子 「添加物!」

そう。添加物。賢いなあ、今日の子たちは。(笑)全部、僕が言う前に答えが出てしまうね。そうです。添加物です。
はいでは大人の人、良くない添加物を言ってください。

大人(女性) アミノ酸

はい。アミノ酸、調味料。全体として良くないですね。

大人(女性) ソルビン酸

そうですね。それもよくないです。

大人(女性) タンパク加水分解物

ああ、詳しいですね。旨みやコクをだすものですね。(注、正確にはアミノ酸混合物)では典型的に柔らかくするものはなんでしょうか。

大人(女性) 加工でんぷん

ピンポンです。でんぷんというものはいろいろなものから取れます。じゃがいもなどお芋からよくとりますね。これをいれるとモチモチ感がでたりして、食べやすくなるのですけれど、天然のものは日持ちがしなくてすぐにパサパサしてきます。
そこに薬をたくさん入れて、もちをよくするのです。それが「加工でんぷん」というものです。これからみなさんがパンやお菓子を買うときに、入っている場合は、裏に書いてありますから見てください。

男の子 「よく見てる」

いいねえ。よく見て、加工でんぷんが入っているものはやめた方がいいです。加工でんぷんが入っているとフワフワしたりしていて、少し噛んだだけで飲み込めてしまう。だからいっぱい食べてしまう。
加工でんぷんが入っている有名なものを言いましょう。ヤマザキのパンです。(大人から笑い)もうこれはやめてください。
僕もビックリしたことがあるのだけれど、こういう話を講演でしていたら、終わってから、ヤマザキの社員の友だちの人が近づいてきて「社員の方たちはヤマザキのパンをまったく食べないそうです」と教えてくれました。

女の子 「お母さんも、ヤマザキのパンはやめとけって言う」

ほんとう?お母さん、賢いなあ。みんな、ヤマザキのパンって分かる?

一同 「わかる!」

よく宣伝しているよね。

男の子 「僕はよく食べる」

やめたほうがいいよ。(どよめき、笑い)
では、ヤマザキのパンの中でもとくに危ないものをいいましょう。ランチパックです!

多数 「えー」「食べてるー」「あー」「僕は食べてない」「この子、先にランチパックがいけないって言ってた!」(しばし興奮)

ではランチパックの中でも一番、やめてほしいのは何かというとタマゴが入っているランチパックです。

男の子 「うわー、俺、いっぱい食べてる!」(爆笑)

なんでなのかというとね。例えばコンビニにいったときに、よくいろいろな食べ物を見てください。タマゴが入っているものは、必ず冷やしたところに置いてあります。

男の子 「うん、確かに」

タマゴが入っていて、冷やしたところにおいてないのは、ランチパックだけ!

一同 「あー」「なるほどー」

腐らないための薬がいっぱい入っているのだね。普通は、温かいところに置いておいたら、タマゴはすぐに腐ってしまうよね。そこに薬をたくさん入れて、腐らないようにしているから、長く持つけれども身体に悪い。

続く

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明日に向けて(658)社会主義再考・・・1 社会主義再考の執筆にあたって

2013年04月15日 08時00分00秒 | 明日に向けて(601)~(700)

守田です(20130415 08:00)

安倍政権は今、日本はTPPに参加させて、新自由主義経済の中により深く入り込もうとしています。世界を席巻する新自由主義経済の基軸は、市場万能論です。すべてを市場に委れればすべてはうまくいくというイデオロギーが背後に存在している。そういいつつ、実際にはさまざまな特権は残りつつあるのですが、いずれにせよこれが現代世界の趨勢です。
この流れが始まったのは1970年代でした。とくに後半から勢いがつき出し、アメリカ・レーガン政権、イギリス・サッチャー政権、日本・中曽根政権のもとで、新自由主義政策がどんどん進められていきました。
その結果、訪れたのは世界大での貧富の格差の拡大です。日本も同じことで、とくに小泉政権になってから、雇用契約の自由化の名のもとに労働者の権利が次々と打ち捨てられ、非正規雇用が一気に増えてしまい、ワーキングプアという言葉までが生まれました。

現代世界をまっとうな方向に戻すためには、やはりこの残酷で理不尽な新自由主義の流れを押す戻すしかないと僕は思います。そのことで民衆がもう一度、力をつけることの中でのみ、核の時代を終わらせ、環境と平和を最も大事にする新たな時代が開けると思うのです。その意味で放射線防護と新自由主義批判は密接に絡まっていると僕は思います。
ではどのようにこの弱肉強食を是とする残酷な資本主義に歯止めをかけるのかと考えたときに、反対にどうしてこうした粗野な資本主義が台頭し、猛威をふるっているのかを考えなければならないと思います。そのとき私たちが注目すべきことは、新自由主義が、1980年代の相次ぐ社会主義政権の崩壊の中でこそ、より力を持ってきたという事実です。
それまでの資本主義、つまり新自由主義以前の資本主義は、社会主義との対抗から、部分的に社会主義的政策を自らの中に取り入れることをしてきました。とくに社会福祉の面で、社会主義国家と比べても遜色のないサービスを増やし、人々が社会主義に流れるのを食い止めようとしたのしたのでした。こうした政策は「ケインズ主義的福祉政策」などと呼ばれます。

しかしこのケインズ政策は、1970年代に行き詰まっていきました。それに代わったのが、高度な福祉国家を目指すこうした政策を全面的に否定した新自由主義の登場だったのです。したがってそれはある意味では社会主義の優位性を明らかにするモメントも持っていたはずでした。
にもかかわらず、社会主義はこの時期、まさに1980年代にこそ相次いで崩壊していきました。これに連動しつつ、資本主義内部でも社会主義を掲げた政党や、ケインズ政策に依拠した政党、派閥などが後退していきました。このことで新自由主義は、貧富の格差の拡大という社会矛盾を広げながら、ひたすら力を増して来たのです。
このことを考えるときに、この新自由主義と向かい合うためには、一度、社会主義とはなんだったのかという問いと向き合わねばならないのではと僕には思えます。

では社会主義とは一体何だったのでしょうか。社会主義が登場したのは1800年代のヨーロッパです。もう少し前、フランス革命の頃から社会主義の萌芽をみてとることができます。しかしなんといっても社会主義が世界史的な力を持ったのは1917年のロシア革命以降でした。世界の各地で自由と正義を愛し、資本主義の矛盾を憂いた人々は、社会主義の旗を掲げて立ち上がり、植民地の解放や、帝国主義国の民主化をもたらしたのでした。
しかし先にも述べたように、社会主義は、政権についた国の多くで新たな抑圧や社会的硬直化を生み出し、1980年代末にあいついで瓦解してしまいました。社会主義はどうして挫折してしまったのでしょうか。この問いに対し「敗北したのはにせの社会主義にすぎない」という答え方があります。しかし僕にはそれでは失敗の責任を、歴史上の人びとに押しつけることにしかならないように思えます。
むしろ僕には、この失敗が、社会主義を目指した人々が、多かれ少なかれ、「科学」や「生産力」の発展に、あまりに多大な期待を寄せたことによって、もたらされたのではなかったかと思えます。そのことを歴史の中から学ぶことが問われているように思えます。

この捉え返しはけしてネガティヴな行為ではないと思います。先人たちの失敗に学び、そこで目指したものを発展的に継承しようとする中から、新たな変革の論理が見えてくるからです。
その意味で、社会主義の世界史的な行き詰まりを超えて、人間らしい、豊かな社会を創造する道を模索するために、今ここで、「社会主義再考」と題した考察を進めていきたいと思います。キーワードは「科学主義」と「生産力主義」です。
「明日に向けて」の思考実験として、ともに考察していただければと思います。

続く

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明日に向けて(657)追悼 同志・安藤栄里子!

2013年04月14日 11時00分00秒 | 明日に向けて(601)~(700)

守田です。(20130414 11:00)

昨年(2012年)の今日、4月14日、大の親友であり、脱原発の道、平和の道を共に歩み続けてきたかけがえのない同志、安藤栄里子さんが亡くなりました。43歳の誕生日を迎える2ヶ月弱前のことでした。
一年目を迎える今日、追悼の意をみなさんの前に表したいと思います。

彼女は多発性骨髄腫という難病を患っていました。まだ完全に治癒した報告例がない病です。彼女が発症したのは2003年11月。病名を告げられると同時に、余命2年の宣告を受けましたが、それから8年と5ヶ月も生き抜きました。
その間に彼女は大きく飛躍しました。もともと彼女は京都新聞の記者であり、中南米に取材に行った際に、グアテマラの解放運動に深く胸を打たれ、日本からの連帯運動への関わりを始めていました。その後、出版社勤務を中断して、現地に鍼灸治療のために赴いた知人に強く感化され、自らも新聞社を退社。鍼灸師の道を歩みだしたのでした。
しかし資格をとって開業した直後に発病。鍼灸の道を続けられなくなりました。多発性骨髄腫は、当時から完全治癒例のない病であり、治療も困難かつ過酷であったためでした。彼女はその中で「日本ラテンアメリカ協力ネットワーク(レコム)」を軸に、ラテンアメリカ連帯運動を継続し、他のさまざまな問題への関わりも強めていきます。

同時に、レコムの友人たちとのつながりを軸に、新聞記者時代から知り合った友人たちに、メールを通じてさまざまな問題を提起。やがておよそ60人のメンバーによる一斉同報メールによるメールラリーの場を作り出しました。
このメールラリーのタイトルは「栄里子いまここ」。いまここを生きるという意味が込められており、ジャーナリスト、新聞記者、編集者、科学者、医療関係者、文学者、詩人、大学研究者、市民活動家などなど、多彩な人々が集まり、積極的なメールのやりとりが行われてきました。

そんな中で2011年3月11日、あの大震災が日本を襲い、福島原発が大変な危機に陥りました。僕を含め、もともと原発に批判的だった人々がメールラリーに参加していたことから、この場がただちに福島原発事故のウオッチングの場に転化しました。避難情報の提供・拡散の場にもなりました。
僕が今も連日執筆している「明日に向けて」も、もともとこのメールラリーへの投稿から始められたものでした。(それで書き出しに「守田です」の一言が入ります)。僕は当時、ネット社会があまり好きではなく、ブログなども持ってはいませんでした。そこでまずはジャーナリストや新聞記者、編集者などの友人が多いこの「いまここ」の、顔の見える友人たちに情報発信することから、原発情報の拡散を始めたのです。

「いまここ」の場を作り出してくれた安藤さんと僕自身との出会いは2006年6月に、レコムがグアテマラから女性活動家を招き、彼女が司会をした集会の場でのことでした。グアテマラの女性たちは政府軍によって家族を惨殺されるとともに、過酷な性暴力を受けてきましたが、その痛みを克服すべく立ち上がっていました。僕は長く、旧日本軍性奴隷問題(いわゆる軍隊慰安婦問題)に関わってきたことから、この集会に興味を持ったのでした。
集会後の交流会で、さわやかに本集会の司会を行っていた彼女に自己紹介すると、いきなり多発性骨髄腫で余命2年の宣告を受け、いま、それを越えて3年目を生きているという話が飛び出してきました。しかも病状が良くないのでこれから入院しますとも。深刻な話を笑いながら話す彼女の目が印象的でした。
彼女はこんなふうに言いました。「ドクターから余命2年と告げられたときに、ドクターの持つペン先の震えをみながら、グアテマラの人々の顔が次々と思い浮かんだ。あんなに“軽々と”殺されてしまった人々の命も、こんなにいとおしい私のこの命と同じ重みなのだと感じられて、グアテマラの人々とより深くつながれたような気がした・・・。」
感動しました。本当に。僕はそれでこのとき、ありったけの思いを込めて彼女に手紙を書きました。僕は困難とまっすぐに向かい合って生きている彼女は美しいと書きました。とてもとても美しいと。そして何らかの形で闘病のお手伝いをしたいと。それで僕は集会の時に撮った彼女の写真と、その年の春に拾い集めておいた桜の葉を、命萌える生気の象徴として彼女に送りました。

その後、彼女は入退院を繰り返しながら、どんどん人の輪を広げていき、2009年初春から上述のメールラリーを始めました。手紙のことから僕のことも覚えていてくれて、いつしか僕も一斉送信の同胞欄に加わっていました。そこに投稿されている内容は非常に濃密で、参加した誰もが当初は困惑したようにも思うのですが、僕もしばらくして心を決めて夏頃から投稿を開始。当時、力を注いでいた森林保護活動に関する記事などを書き始めました。
いつしか投稿回数が増え始め、記事の連載を開始。参加者の中でももっとも濃密な記事の書き手になっていきました。栄里子さんは、これらの投稿への最良の読み手で、彼女の反応がさらにみんなの投稿を引き出していきました。
さらに安藤さんは、僕が参加する「証言集会京都」が主催する、性奴隷問題被害者のおばあさんを京都に招いた証言集会にも参加して発言をしてくれ、僕らもまたレコムと一緒になってグアテマラの女性たちを招請する集会を担うようになりました。暴力を厭い、平和を愛する心で、僕らは強く結ばれていきました。

そうして訪れた2011年3月の福島原発事故。「栄里子いまここ」の場を足がかりに放射線防護活動にすべてを投げ打って走り出した僕にとって、彼女とのやりとりが当初の活動の本当に大きな軸になりました。
あの忘れもしない事故からの2週間余り。僕はとにかく人々に、放射線から身を守り、原発からできるだけ遠くに避難することを訴えていました。僕には事故以前から、「大事故が発生したとき、政府は情報を隠して人々を逃がしてくれないだろう」という強い確信があったため、もしその時がきたら、真っ先に自分が逃げることも含め、とにかく危機を訴え、少しでも多くの人を逃がさねばならないと心に決していました。
しかし事態は想像もしなかったような大津波との複合災害であり、逃げるどころか、被災地には多くの救助隊が向かっていました。しかし原発の現状はどう見ても僕にはメルトダウンに向かっているように見え、大爆発などの大惨事もありうるとしか見えませんでした。そのため、では津波被害の救助はどうするのかという点で、逡巡し、葛藤しながらも、とにかく危機を危機として伝えることに尽力しました。
そのため可能な限り、顔の見える関係から、転送に次ぐ転送で情報が伝わっていくことを目指しました。情報の信頼性を増すためにも、自分の名前も立場も明らかにして情報を出しました。

ところが当初、いや正確には今もですが、この国を災害心理学で言う「正常性バイアス」が覆っていました。事態の深刻さを認めず、状況は安定していくのだという心理的バイアスをかけて心の平静さを保とうとする、災害時にありがちな心理的なロックのことですが、このため、原発の現状が危険だというものに対して、さまざまな形でのバッシングが繰り返されました。
原発が大変な危機に陥っていることを伝える僕のメールに対しても、「そんなに怖いことを言ってくれるな」「もっと希望を語って欲しい」「もうこういうものは読みたくない」という反応が次々と返ってきました。自分の発信内容に対しては確信を持っていましたが、正直、こうした反応が返ってくることに意気消沈する面もありました。
忘れられないのはそのときの栄里子さんとの会話です。「怖いことはもう聞きたくないという反応がたくさん返ってくんねん。もう少しトーンを和らげたほうがええかなあ」と、珍しく弱気になって語った僕に対し、栄里子さんは次のようにいいました。
「あかん、あかん。ここが正念場やで。日本人はな。一度、絶望せなあかんねん。絶望して、それで新しい希望が見えてくんねん。絶対にここで引いたらあかんで」・・・。ピシリとムチを入れられたような気がしました。

正確にはそのことと、僕なりに心理的な山を超えた時が重なっていました。僕はこのとき、福島原発事故が破局的な形に発展する可能性と向き合っていました。チェルノブイリのようになりうる。いや、一つの原子炉が崩壊したら、ほかも全部ダメになるからチェルノブイリの惨事を軽々と超えてしまう。・・・しかしそう想定するのは耐え難いことでした。そうあって欲しくはない。誰かに、何かに、日本を助けて欲しい。そう思う僕の心の中にも正常性バイアスが忍び寄ってきていました。(このころ僕はまだ災害心理学を知りませんでした)
そんなとき、たまたま移動中に高木仁三郎さんの本を読んでいて、あらためて、高木さんがこうした事故の可能性を的確に予言し、指摘してくれていたことに触れる機会がありました。自宅近くの京阪電鉄のホームの上でのことでした。そのとき、僕の心の中から、「高木さん、ごめんなさい。こうやって言ってくれていたのに事故を防げなくてごめんなさい」という思いが溢れ出し、涙がどっと流れ出してきました。僕はひと目もはばからず、ホームの上で、声を上げて嗚咽しました。
大きな声を上げて、泣いて、そして涙を流れるだけ流してから、僕の中で、チェルノブイリを超える事態があろうとも受け入れようとの思いが形作られました。日本が壊滅しても、それで人類が死滅するわけではない。そうなったらそうなったで、またそこから明日を目指すのだ。できることはそれだけなのだ。だから今、覚悟を固めてこの事態に立ち向かうのだ。・・・それが僕の胸に去来したことでした。
こう決意したときと、栄里子さんに諭された時がどちらが先だったのか、記憶が定かではありません。しかしこの2つの大きなことを経て、僕は完全に腹を決め、覚悟を固め、開き直りました。そうしてこの事故への最大級の抵抗、私たちが生き延びるための決死の闘いを継続することを再び決意しました。

栄里子さんとは、事あるごとに電話で意見交換しあい、こうした思いも伝え合っていました。また当時は、原発の状態から一瞬たりとも目が離せない状態でしたが、僕が外出しなければならないときは、彼女にテレビに釘付けになってもらい、何かがあったらすぐにメールで知らせてもらう体制も作りました。
それから僕はとにかく全てを放射線防護活動に投げ込んで走りを加速させていきました。家族である連れ合いの生活上の不安も無視し、それまでの仕事を一切辞めてしまい、後先考えずに走り出しました。その後、連れ合いは、仕事を放り出した僕の代わりに、土日も仕事を入れて、ほとんど休みなしに働いて働いて、僕を支えてくれたのですが、同時に、そんな僕を全面的に支援してくれたのが栄里子さんでした。

彼女と僕は、メールラリーの中でも原発問題にとくに関心の深い数人と特別ユニットを形成。「ゴリ同盟」と名付けました。ゴリとは古い学生運動の活動家が、リゴリズム(厳粛主義)という言葉を文字って、決意の固い活動家のことを「あいつはゴリっとしている」などと言っていたことをもじったものでした。
このゴリ同盟で行ったのは原発事故の解析でした。とくに原発の現状がどうなっているのかということと、どのような放射性物質が出てきているのか、汚染の状況はどうなっているのか、中でもプルトニウムがどこへ行っているのかをおいかけ、解析するのが問題意識の中心になっていました。

実は彼女には、プルトニウムにこだわる特別な理由がありました。というのは先にも述べたように彼女は多発性骨髄腫を患っていたわけですが、この病はどちらかというと高齢者に多く、発症したとき、彼女は日本で最年少の患者でした。なぜこんな業病に罹ってしまったのか。当然にもそれが彼女の中に去来する問でした。
そんな彼女にとって非常に大きな情報が、事故の前にもたらされていました。原発作業員の長尾光明さんという方が、プルトニウム被曝で、多発性骨髄腫になったという事例でした。しかも長尾さんは、福島原発2号機、3号機内でも働いたことがあり、そのときのプルトニウム漏れ事故が、この病を引き起こした可能性が濃厚でした。長尾さんは労災を申請し、長い闘いの末に認定を勝ち取られています。原発労災で、被曝による多発性骨髄腫の発症が認められたのです。
このことと、彼女自身の発症の可能性を大きく結びつけてくれたのも、高木仁三郎さんの論考でした。プルトニウムについて論じた高木さんの考察の中に、アメリカの核軍事工場、ロッキー・フラッツの事故の話が出てきます。この工場は核弾頭を作る工場で、粉末の酸化プルトニウムを大量に扱っていましたが、あるとき火災事故が発生。恐ろしいことにプルトニウムに火がつき、大気中に飛散したプルトニウムが工場の外へと漏れ出していってしまったのです。1965年のことでした。

この事件と栄里子さんはどうつながりを持っていたのか。実は彼女は高校生の時、1985年から1年間、アイダホ州に留学したのですが、なんとその場所が、ロッキー・フラッツ工場の数百キロ風下にあたるところだったのでした。そんな彼女はゴリ同盟の考察の中で「プルトニウムはどれぐらい飛ぶのか」を大変、気にしていたのですが、実際には比重が重いと言われるプルトニウムとて、超微粒子になればどこまでも飛散していくことがわかりました。
これらからロッキー・フラッツ工場の風下に下宿した彼女が、このときにプルトニウムに被曝した可能性が十分に考えられました。彼女のホストファミリーの多くも、ガンを発症しており、そこから彼女は自分を核軍事施設によるプルトニウム被曝者として(少なくともその可能性のあるものとして)考えるようになりました。
こうしたことがあるからこそ、彼女は放射線防護を自らの命を燃やしてでも成し遂げる課題と考えたのでした。まただからこそ、「日本人は絶望せなあかんねん。絶望して、それで新しい希望が見えてくんねん」という言葉が、勢いよく飛び出してもきたのでした。絶望し、そして絶望を超えてきたこと、それはまさしく彼女の歩みそのものだったからです。

その後、彼女はさまざまに情報発信しつつ、放射線防護で走り続ける僕や、原発に変わる代替エネルギーを求め、小水力発電の普及に走り出したジャーナリストの古谷桂信さん、日本に緑の党を出現させ、緑の政治改革の流れを作り出そうと奔走している足立力也さんを「脱原発三銃士」と名指してくれて、われら三人の活動資金を支える「いまここ基金」を立ち上げてくれました。
彼女のパワフルな訴えにより、多くの方々がこの基金に応じてくださり、僕はここから数回にわたって手厚い援助を受けることができました。今、思い返せば僕は、家族のことも、周りのことも、まったく考えず、わがままに走り出してしまったので、この基金と、連れ合いの忍耐強い良い支えがなければどうにもなりませんでした。安藤栄里子同志と基金に応じてくださったみなさんによるサポートに深い感謝を捧げたいと思います。

さて、そのように一緒に放射線防護活動に走り出した彼女でしたが、2011年6月ごろから体調を崩し、再び入退院を繰り返すようになりました。僕には、ギリギリの状態で多発性骨髄腫と格闘していた彼女に、たとえ微量であろうとも京都にも降った福島からの放射能が影響したと思えてなりません。
その中でも彼女は、脱原発を最大の課題と考え、病床からできる限りの発信を続けて僕らを励まし続けてくれました。また僕が連日発信している「明日に向けて」を、自らのコメントを付した「想いのたけ」というメールで、多くの方に転送もしてくれました。たびたび、有益なコメントや、嬉しい反応も伝えてくれました。
しかし彼女はそれまでもありとあらゆる治療を重ねてきており、さらに考えられるだけの治療を追加しましたが、どれも劇的に効果をあげるにいたらず、だんだん治療の展望が苦しくなっていきました。

そんな昨年の3月のこと。彼女に請われて病院に会いに行き、久しぶりにゆっくりと話をする機会を持ちました。2011年3月から4月のことなども少し懐かしい思いで話し合いました。今から思えば生前の彼女に会った最期の時でした。
そのとき僕は、どうしても言っておきたいと思っていたことを彼女に告げました。
「あのな、もう危ないとかいう時ではなくて、こんなときに話しておきたいのだけどな。エリエリ(彼女のニックネーム)が、もし死んだら、主要には太田さん(お連れ合いです)にでいいから、余った力で、俺に取り付いてくれへん?そうしたら俺は、肩のあたりにエリエリを感じて生きるからさ。可能性は少ないかもしれないけれど、もし万が一、俺が先に行くことになったら反対にエリエリに取り付くからさ」。
「あ、なんだかそれいいな。いいよ。取り付くよ」と彼女。
だから僕の肩には今もきっと彼女がいて、僕のことを見ていると僕は思っています。今も横でこのメールを読んでニヤニヤしていることでしょう。

世界の平和のために。圧政や暴力で苦しむ人のない世を作るために。その活動の中で出会った同志安藤栄里子。出会った時にはすでに余命2年を越えて生きて、いまここを生きることの愛おしさ、大切さ、そして切実さを誰よりも知っていた安藤栄里子。ものすごい苦しい闘病を日々、生き抜き、その中で、人を愛する力をたくましく成長させ続けたわが同志。
もうあなたはいません。あなたに会いたいと切実に思います。そうもう一度会いたい。あってもっとたくさんのことを話したい。あれもこれも話しておけば良かったと、そんな思いが募ります。1年が経つのに、あなたがいないことの不思議さに今でも合点がいきません。

でも僕はあなたは我らとともにあると確信しています。そう、僕らはあなたを肩に乗せて歩んでいる。あなたに背中を押されて前に進んでいる。そうして僕はまだしばらくこの現世にいて、多くの人々と苦労を重ねて、そうしていつしかあなたのところに赴き、報告をすることになるのだろう思います。
未来は予想できない。でも「明日に向けて」ただひたすら走りぬいたよ!という報告だけは、僕は必ず持っていくつもりです。

同志安藤栄里子よ。それまでけして安らかに眠るなかれ。われらに取り付き、われらをして走らしめよ。人のため、世のために、われらを使徒とし、われらを酷使し、世に光と熱をもたらしめよ。ともに歩み、ともに闘い、そしてともに人々の幸せを見届けん。
同志よ。永遠に。我らの心に取り付きて永遠に。どこまでもともに。

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明日に向けて(656)福島原発汚染水漏れの考察(3)・・・隠されているトリチウムの危険性

2013年04月13日 22時00分00秒 | 明日に向けて(601)~(700)

守田です。(20130413 22:00)

福島原発汚染水漏れ事故の考察の3回目です。今回はトリチウム問題を取り上げたいと思いますが、まずは前回の記事に対して、みきさんという方からいただいたコメントをご紹介します。

***

力強い記事の連投ありがとうございます。
汚染水漏れが事前に把握されていたのでは、というご指摘はその通りと思います。
最初に汚染水漏れが報じられた時、私にしては珍しく、東電の真夜中の「緊急会見」を見ていましたが、その時、東電側から用意周到に「報道向け資料」が配布されたからです。

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2013/images/handouts_130406_01-j.pdf
「緊急会見を開く」と第一報が入ってわずか1時間でした。

今後、汚染水の海洋投棄容認の動きに誘導する意図があるのではないかというご指摘にもうなづけます。
読売新聞の社説も含め、許しがたいことばかりです。

***

みきさんはここで東電の会見の不自然さを指摘しています。ぜひ東電が報道向けに配った資料をご覧下さい。汚染水問題が明らかになり、「緊急会見を開く」と第一報が入ってわずか1時間後に出されたものがこれです。
どうみてもたっぷりと時間をかけ、用意周到に作られています。汚染水漏れを発見した直後にこれだけの報告書が準備できたと考えるのはあまりに不自然です。
みきさんも「今後、汚染水の海洋投棄容認の動きに誘導する意図があるのではないかというご指摘にもうなづけます」と書いてくださっていますが、こうした可能性はやはり大きいと言えそうです。

こうした点を見ていると、もはや東電には、環境を放射能汚染してはいけないという、職業的倫理観がまったく残っていないのではと思わざるを得ません。それは東電があれほどの放射能をばら撒きながら、何ら、罰を受けていないことによっても加速化されているのでしょう。
そもそも東電は当初はベントをすることを大変、嫌がった。ベントをすれば傷害罪にあたると思っていたためです。ところがその後に何ら、罰せられずに来てしまった。ここにも構造的な矛盾があります。東電を厳しく罰しないと、環境汚染に関する企業的モラルが崩壊をつづけるだけです。

ではそうした東電がさらに目指している海洋投棄において問題になる点は何かというと、一つはすでに試運転が開始されている新たな放射能除去装置アルプスの性能です。62の放射性核種が除去可能とうたわれていますが、本当にそうなのか。その場合、それぞれの核種がどれだけの割合で除去できるのか、海洋投棄を前提することなく東電は明らかにすべきです。
無論、かりに除去がかなりの高い確率で可能であったとしても、海洋投棄は認められません。なぜなら東電自らが、放射性物質のトリチウム(三重水素)は除去できないとしているからです。海洋投棄されればトリチウムはそのまま海を汚染することになります。

そこでトリチウムについていろいろ調べたところ、この点でもすでに東電が資料を発表していたことが分かりました。明らかに、今後のトリチウムの海洋投棄を目指した発表です。日付は本年2月28日。その一ヶ月後にアルプスが稼働し、直後に汚染水漏れが発覚したというわけです。

福島第一原子力発電所でのトリチウムについて
平成25年2月28日 東京電力株式会社
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2013/images/handouts_130228_08-j.pdf

ではトリチウムとは何なのか。あるいは東電はどのように説明しているのか。この資料から見ていくことにしましょう。以下は上記資料2ページ目の記述です。

***

トリチウムの特性は一般的に以下のとおり
○化学上の形態は、主に水として存在し、私たちの飲む水道水にも含まれています
○ろ過や脱塩、蒸留を行なっても普通の水素と分離することが難しい
○半減期は12.3年、食品用ラップでも防げる極めて弱いエネルギー(0.0186MeV)のベータ線しか出さない
○水として存在するので人体にも魚介類にも殆ど留まらず排出される
○セシウム-134、137に比べ、単位Bqあたりの被ばく線量(mSv)は約1,000分の1

***

ここにもあるように、トリチウムとは水素の仲間、正確には水素の同位体です。水素は原子核の中に陽子が一つ、周りを一つの電子が回っている元素ですが、海水の中にはまれに原子核に中性子が一つ入り込んだ重水素と呼ばれるものがあります。ここにさらに中性子が取り込まれ、陽子一つと中性子二つになったものが三重水素、トリチウムです。化学式ではH3と書きます。
トリチウムは自然界にもありますが、なんといっても核実験や原発の運転で膨大に作られてきました。今回の福島原発事故でも大量のトリチウムが炉内から出てきてしまっています。

このトリチウムについて東電は「化学上の形態は、主に水として存在し、私たちの飲む水道水にも含まれています」と書いています。また「ろ過や脱塩、蒸留を行なっても普通の水素と分離することが難しい」とも。「水道水にも含まれている」とは、だから安全だと匂わせる記述ですが、ここに書かれていることは半分は事実であり、半分は虚偽です。
正確には、水素の仲間であるトリチウムは、化学的には原子核に陽子が一つだけの普通の水素とまったく同じように振る舞うのです。だからこそ厄介なのです。なぜかというと、一つには確かに水としても存在していますが、しかし多くの化合物を見てください。水素が入っているものが無数にあります。そのどこにでもトリチウムは入り込んでしまうのです。
私たちの人体を見てみても、構成要素の中にたくさんの水素を含んだ化合物があります。トリチウムはその全ての水素と取り替わる可能性があるのであって、非常に多様な形で存在しえます。けして水としてだけ存在するのではないのです。

こうしたことを無視して、東電は次のような虚偽の発表をしています。「水として存在するので人体にも魚介類にも殆ど留まらず排出される」という点です。正しくは「水として存在したものは・・・排出される」のです。その場合でも東電は、ただちに排出されるかのような書き方をしていますが、高度情報科学技術研究機構によれば生物学的半減期は10日とされています。けしてただちに排泄されるわけではない。
これに対して有機化合物の形をとったものはより長く残り続けます。この場合のトリチウムは、有機結合型トリチウムと呼ばれますが、同機構によれば半減するのに30日から45日かかるのです。詳しくは以下をご覧ください。

トリチウムの生物影響
原子力百科事典 ATOMICA 一般財団法人 高度情報科学技術研究機構 
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=09-02-02-20

さらに東電は、放射性物質としてのトリチウムが出すベータ線がエネルギーが大変低く、セシウムなどに比べて著しく危険性が低いとしています。ただこれ自身は東電の独自見解ではなく、一般的な見解であって、そのためトリチウムの危険性は非常に小さく見積もられています。法的規制もとても弱いのですが、実はここにこそ、原発が抱える構造的矛盾、あるいは構造的危険性の大きなポイントの一つがあるとも言えます。
なぜか。まず「実用発電用原子炉の設置・運転等に関する規則の規定に基づく線量限度を定める告示」による法規制の濃度制限を見ると、「周辺監視区域外の水中の濃度限度」はなんと1リットル6万ベクレルという高い値に設定されていることがわかります。セシウム137は同90ベクレル、134が同60ベクレルとなっていることと比較しても、いかに規制のための基準が弱いかが分かると思います。
これはトリチウムの危険性が、ベータ線のエネルギーからだけ判断されていることに元づいたものです。

しかし先にも述べたように、トリチウムの危険性は、この物質が水素とまったく同じように振る舞い、およそ水素の存在するところ、水素の存在形態であれば、どこでも置き換わってしまうことにあります。
中でも生物にとって深刻なのは、DNA(デオキシリボ核酸)に重要な影響を与えてしまうことです。DNAとは遺伝子のことです。二重の鎖になっており、その中に4つの塩基、アデニン(A) , チミン(T),グアニン(G) ,シトシン(C)があって、組みを作って遺伝子情報を編み上げています。
重要なのは、この塩基のうち、A-T、G-Cという塩基の対が、水素結合という結びつきをしていることです。水素は例えば水などの有機化合物を作るときには、酸素と軌道上の電子を共有しあう形で結合を遂げます。これを共有結合といいます。
ところがこうして共有結合した水素と、他の原子の間に、引力のような力が働く結合方式があります。これが水素結合なのですが、DNAの塩基の対同士は、この力によって結合しているのです。

問題はここに入り込んだ水素が、トリチウムに置き換わってしまった場合です。この場合、一つにDNAはごく直近から、ないしはその内側からベータ線を浴びることになります。同時に重要な点は、ベータ線を出したトリチウムが、違う物質に変わってしまうということです。放射線を出すこと、いわゆる壊変によりヘリウムに変わってしまうのです。
そうなるとどうなるか。水素のあったところに水素でないもの=ヘリウムが登場してしまうのです。当然、水素結合は働かなくなります。そうするとDNAの中の水素結合部分が切れてしまうことになります。また同様に、身体の中の水素を含んだ化合物が、それぞれに違う物質に変わってしまうことになるわけです。
その点で、身体のどこにでも容易に入り込むトリチウムは、放射性物質としての人体へのダメージ以外の危険な作用も持つわけです。そして実はこうしたトリチウムの持つ生態への危険性が全く過小にしか評価されていないところに大きな問題があります。

なぜそうなるのか。答えは単純で水素と同じように振舞うトリチウムは、扱いが非常に難しく、なかなかうまく管理できない物質なので、これまでの原発の通常運転でも、常に相当量が漏れ出してしまってきたからです。
何せ酸素と結合すると水そのものですから、除去がほとんどできない。通常の汚染水は、水の中に汚染物質がある状態であって、濾過であるとか、化学的手法での除去が目指されてきたわけですが、トリチウムが酸素と結合してできた水は、それそのものが放射性物質であって、濾過の対象にもならないのです。それが通常の水と混じってしまうともう手の施しようがありません。

また気体の形でも水素は非常に捕まえにくい物質で、現に福島原発事故の発生直後にも、真っ先に水素がたくさん発生してきて原子炉建屋内に溜まり、爆発を引き起こしました。今から考えると、あのとき爆発した水素の中にトリチウムが混ざっていたはずですが、ともあれとにかく閉じ込めにくい物質が水素なのです。
そのため水素の仲間であるトリチウムの法的規制を強化すると、技術的にクリアすることが難しくなり、たちまち原発の運転を止めなければならなくなるのが実情であり続けてきたのです。いやだからこそ、世界中の原発をすぐに止めるべきなのですが、そうした声の高まりを抑えるために、トリチウムの危険性は、非常に小さく見積もられていることを私たちは知っておく必要があります。
さらにトリチウムの危険性は、核融合を目指すためにも過小評価されてきたことを見ていく必要があります。目指すというより、すでに核融合技術は水爆として確立しており、何度も大気中核実験が行われたわけですが、そのときの核爆発の材料となったのもトリチウムでした。今も核融合発電の燃料とされようとしているわけですが、この面からも危険性が過小評価されてきています。

ではこのトリチウム、一体、どれぐらい環境中に飛び出してきたと見積もられているのでしょうか。
まず東京電力が2011年6月6日に発表した大気中に飛び出した核種についての発表を見ていくと、トリチウムが無視されていることが分かります。

以下は、東電の発表をわかりやすい形にまとめた「AERA」2011.6.27号(朝日新聞出版)18-19ページの表を載せた「子どもを守ろう SAVE♥CHILDのページですが、ここで東電が発表した31核種にトリチウムは含まれていません。
http://savechild.net/archives/3891.html

しかしこれは絶対におかしい。原子炉の運転の中でトリチウムは必ず生まれてきます。炉内ではそれが水として存在していたとしても、当初、水位が下がることにより、燃料棒が加熱してメルトダウンが起こりました。ということは壊変がどんどん進み、放射線がたくさん出たわけです。これが水に当たると分子切断が起こり、酸素と水素に分けられてしまう。イオン化して分かれるわけですがそのことでも水素が発生します。
その水素の一部がトリチウムであるわけですから、先にも述べたごとく、爆発を起こした水素の一部はトリチウムであったはずです。むろん水素は全てが爆発したわけではありません。どんどん周辺に漏れ出ていったわけであり、その一部はトリチウムだったのです。東電の発表はこれを無視しています。事実上のトリチウム放出隠しです。

ではそもそも炉内で作られていたトリチウムのうち、どれぐらいの量が出ていってしまったのでしょうか。これには試算があります。「福島第一原子力発電所の滞留水への放射性核種放出」という日本原子力学会に提出された論文です。

福島第一原子力発電所の滞留水への放射性核種放出
https://www.jstage.jst.go.jp/article/taesj/advpub/0/advpub_J11.040/_pdf

これには以下のような結論が書かれています。

***

福島第一原子力発電所のタービン建屋ならびにその周辺において発生した多量の放射性核種を含む滞留水に対し,サンプリング調査の結果と,放射性核種の炉心インベントリ計算に基づいて,炉心から滞留水への放出率を評価した。その結果,以下のことが明らかになった。
・ ヨウ素およびトリチウムの放出率はセシウムと同程度か,それよりも数倍大きい。
・ バリウムおよびストロンチウムの放出率はセシウムよりも1号機では3~4桁小さく,2, 3号機では1~2 桁小さい。
・ モリブデンの放出率はセシウムより2桁小さく,アンチモンは3桁小さい。
・ トリチウム,ヨウ素,セシウムについて,1 号機では7%程度,2号機では35~60%程度,3号機では20~70%程度の放出率と見積もられる。
・ 2号機とTMI-2事故と比較して,トリチウム,ヨウ素,セシウム,ストロンチウムの放出率は類似である。

***

炉内で作られていた放射性トリチウムのうち、相当量が環境中に出て行ってしまい、汚染水の中に混じっていることが分かります。その汚染水のかなりの部分がすでに海に入ってしまったわけですが、今、タンクや貯水槽に貯めている汚染水を海洋投棄すれば、さらに海洋汚染が重ねられることになります。
ではこれまで海の汚染としてはこれらは確認されたことがないのでしょうか。そう考えて調べてみるとすでに次のような報告がなされたことがあることがつかめました。

福島第一原子力発電所取水口付近で採取した海水中に含まれる放射性物質の核種分析の結果について(10月14日採取分)
http://www.tepco.co.jp/cc/press/11101505-j.html

この中に以下のような資料も出てきます。
平成23 年9月12日に採取した海水に含まれるトリチウム、全アルファ、全ベータの分析
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/111015j.pdf

これを見ると、「福島第一1~4号機取水口内北川海水」から1リットルあたり470ベクレルのトリチウムが検出されています。同じ場所で採取されたセシウム137が同100ベクレル、134が88ベクレルですので、セシウムよりもかなり多いことが分かります。
これだけでは、トリチウムの全貌をつかむことはできませんが、ベクトル換算でセシウムと比較しても、相当な量が出ていたことが分かります。ただ東電はここでも「濃度限度」を強調し、セシウムより危険性がかなり低いことを強調しています。
しかしそれならそれで、汚染水について発表するとき、ほとんどの場合、東電がそこにある核種の違いを発表せずに、ただ1リットルあたり、あるいは1CCあたりのベクレル数を繰り返し発表してきたことも実はデタラメだということも分かってしまいます。
何せ、核種のよっては規制値が1リットル90ベクレル(セシウム137)から1リットル6万ベクレル(トリチウム)まで、あまりに大きな差があるからです。僕はこの6万ベクレルという値は極端に甘すぎると思いますが、ともあれ、そこにある核種がなんであるかを明らかにせずに、ベクレル表示だけするのも、まったくの虚偽報告であるといわざるを得ません。

以上、東京電力が、汚染水漏れ事故などをも通じて目指そうとしている、汚染水の海洋投棄は、どれだけの核種がどれだけの量、捨てられるら明らかにされていない計画であると同時に、膨大なトリチウムを海に流し込んでしまうことに直結する行為で、到底、許されるものではないことを明らかにできたと思います。

このことを踏まえて、東電のウォッチを続けます。

 

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