明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(112) 放射能汚染が各地に拡大中・・・

2011年05月14日 14時00分00秒 | 明日に向けて5月1日~31日
守田です。(20110514 14:00)

数日前に福島以外の各地から、放射能汚染が発見されだしたことをお知らせ
しましたが、続けて加速度的に、福島からより遠い地方での汚染が確認され
出しています。これらをまとめてお伝えします。

まず神奈川県(小田原市や南足柄市)で、お茶から「基準」を越すセシウムが
発見されました。また静岡県(御前崎市)でも「基準」以下ですがセシウムが
発見されています。御前崎市は、静岡市からさらに西にあります。浜岡原発
周辺での定期的な検査で発見されたようです。

栃木県では県東をのぞく多くの地域で牧草の汚染が確認されています。この
ため広範な地域で放牧ができなくなっています。同じく牧草では、岩手県の
滝沢村でも汚染が確認されています。盛岡の北西で、秋田県の近くにある
村です。

茨城県ではパセリから汚染が発見されました。ただ正確には発見されたのは
入荷先の新潟県上越市の市場です。つまりこれは新潟県側がモニタリングを
したことによって発見されたものです。

一方で汚泥の汚染がかなり広範囲に広がっています。中でも東京都に関する
次の報道はショッキングです。
「東京都内の下水処理施設で3月下旬に採取された汚泥焼却灰から、1キロ
グラム当たり17万ベクレルの高濃度の放射性物質が検出されたことが13日、
都への取材で分かった。焼却灰は既にセメントなど建設資材に再利用されたと
いう。」
・・・既にセメントなど建設資材に再利用された・・・このような形で、放射能汚染
された物質が、他の何かに加工されて、人為的に運ばれだしてしまっている。

汚泥の汚染は、東京都だけでなく、宇都宮市・前橋市・横浜市・茨城市でも
確認されています。茨城市のものは「高濃度」と報道されている。

このように汚染は各地に非常に広範囲で広がっており、その一部はセメントに
混入してさらに遠くへ運ばれてしまっています。


それでは福島県の側はどうなっているのでしょうか。福島県ではこれまでなかった
アユやワカサギなど、淡水魚の「初めて」の汚染が確認されました。

また大気をかなり高いところまで測った結果、放射性物質が6キロから8キロ
上空に漂っていることが確認されました。飛行機でこの地域を通る時は
要注意ですし、今後、雨などでこれが降下してくることに対しても注意が
必要です。

さらに原発サイトに目を移してみると、3号機の再び「高濃度」の汚染水が
海に流出していることが確認されています。今なお、莫大な量の放射能漏れが
続いているわけです。


肝心なことが二つあります。これは氷山の一角である点です。これだけ広範囲
になってくると、計測が本当に大変ですが、関東と東北の本当に広い範囲で
しかも密度の濃い計測が行われる必要があります。

さらに第二点として、この広大な地域にプルトニウムなどもまた飛散している
可能性が高いことです。本当に必死の計測が必要です。どうか行政にも
働きかけて、各地での計測を進めてください。

**************************

小田原産などの茶葉からも基準超す放射性セシウム

2011年5月13日11時59分 朝日新聞
 神奈川県南足柄市でとれた「足柄茶」の茶葉から放射性セシウムが検出された
問題で、県は13日、小田原市など県内3市町村でとれた茶葉からも食品衛生法
に基づく基準値(1キロあたり500ベクレル)を超えるセシウムが検出されたことを
明らかにした。

 県によると、11日に小田原市でとった茶葉から780ベクレルを検出。愛川町
(670ベクレル)、清川村(740ベクレル)でも基準値を超えた。地元農協などでは
すでに11日の段階で、県内すべての「足柄茶」の茶葉の出荷を自粛し、回収も
進めている。
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201105130184.html


南足柄の茶葉から基準超えるセシウム 出荷自粛要請

2011年5月12日0時4分 朝日新聞
 神奈川県は11日、同県南足柄市内で採取した茶葉から、食品衛生法に基づく
放射性セシウムの基準(1キロあたり500ベクレル)を超える570ベクレルが
検出されたと発表した。県は、周辺の市町村を含む今年の県内産の「足柄茶」の
茶葉の回収や、当面の間、出荷を自粛するなどの措置を南足柄市や農協に
要請した。

 県は「数回摂取しても健康に影響を与えることはない」(食品衛生課)とみている
が、基準を超えたことが明らかになったため、要請に踏みきったという。

 県環境農政局によると、茶葉のサンプルを採取したのは9日。1回目の検査で
550ベクレルを検出し、別のサンプルで調べても570ベクレルだったという。

 「足柄茶」の今年の新茶は6日に出荷が始まったばかり。同局などによると、
すでに約2600キロを製品化し、半分ほどが販売されたという。農協を中心に
回収を急ぐ方針。
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201105110358.html


静岡茶葉からセシウム…健康影響ないレベル

2011年5月12日16時48分 読売新聞
 静岡県は11日、御前崎市の茶葉(生)から、過去10年間の最高値を上回る
放射性物質のセシウムが検出されたと発表した。

 県は「福島第一原発から放出されたと推定されるが、健康への影響を心配する
レベルではない」としている。浜岡原発周辺で実施している定期的な環境放射能
調査で判明した。

 県が御前崎市で5月2日に採取した茶葉から、セシウムが1キロ・グラムあたり
82・9ベクレル検出された。過去10年間の最高値は0・19ベクレルだった。

 県は7日にも菊川市で採取された茶葉(生)を分析したところ、御前崎市の茶葉を
上回るセシウムを111・0ベクレル検出。茶葉10グラムを430ミリ・リットル、
90度の湯で60秒間浸出した「飲用茶」からは4・32ベクレル検出された。

 飲用茶は、厚生労働省の暫定規制値500ベクレルの約115分の1だった。
県茶業農産課の白井満課長は「検出された値が小さく、影響は大きくない」と
述べた。

農家など戸惑い 県の発表を受け、茶業界からは戸惑いの声が広がった。調査
地点となった菊川市内の茶農家の男性(54)は「一番茶の時期に発表があって
驚いたが、あくまでも基準値以下。消費者には安心して茶を飲んでほしい」と
困惑した様子。別の茶農家の男性(55)も「高い数字が出たことはショックだが、
数字がひとり歩きして、消費者が危険だと誤解しないか心配だ」と、不安を隠さない。

 菊川市や御前崎市の一部などを管内とするJA遠州夢咲の中山豊彦茶業部長は
「数値は暫定規制値を下回っており、安全は証明されていると考える。ただ、
消費者がどう受け止めて反応をするのか、風評被害が心配だ。正確な情報
提供で、消費者の安心安全につなげたい」と話した。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110512-OYT1T00299.htm


県北、県西でも基準値超 県東除く4地域に拡大 放射性物質牧草調査

5月13日05:00下野新聞
飼料用牧草の放射性物質検査を進める県は12日、県北、県西の2地域3地点
で放射性セシウムが乳用牛、肉用牛についての国の暫定基準値(1キロ当たり
300ベクレル)を上回ったと発表した。

追加調査となった県北は、那須塩原市の2地点で860~3600ベクレルを検出。
放射性ヨウ素(基準値70ベクレル)は検出されなかった。初の定点調査となった
県西は、日光市で放射性セシウムが3480ベクレルに達した。放射性ヨウ素は
20ベクレルだった。

県は4月27日、那須、県北、県東、県南の4地域で初の定点調査を実施。那須、
県南で基準値を上回った。基準値を下回った県北、県東に対しては今月3日、
追加調査を実施。牧草が育っていないため調査できなかった県西は、5日に
初の定点調査を行った。

県東は追加調査でも下回ったため、すべての牛について牧草の給餌、放牧が
可能になった。県北、那須、県南は乳用牛、肉用牛への給餌、放牧ができない。

県西は育成牛、繁殖牛の基準値(5千ベクレル)を下回ったが、3千ベクレルを
上回ったため、追加調査で再度5千ベクレル以下が確認されるまで給餌、放牧を
見合わせる。

那須、県南は実施中の2回目の定点調査で基準値を下回った場合、追加調査を
実施。追加調査で3回連続基準値を下回れば給餌、放牧が可能になる。県北は
次回の定点調査で下回った場合、再度、追加調査を実施する。

県畜産振興課は「農家には原発事故以降、現在生えている牧草は与えないよう
徹底している」と説明。さらに「基準値は1日127キロの牧草を食べることを想定
している。実際、そんなに食べるケースはなく、かなり厳しい基準となっている」
とし、流通している牛乳、牛肉の安全性を強調した。
http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20110512/516790


岩手県でも牧草から規制値上回るセシウム

2011年5月13日19時43分 読売新聞
 岩手県は13日、滝沢村で採取した牧草から、農林水産省の規制値を上回る
放射性セシウムが検出されたと発表した。

 牧草1キロ・グラムあたり359ベクレルで、乳用牛や肥育牛の飼料用牧草の
規制値(300ベクレル)を上回った。同県によると福島県より北で、牧草が
規制値を超えたのは初めて。

 県は同村など北西部12市町村に対し、既に牧草の利用自粛や放牧見合わせを
指導しているという。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110513-OYT1T01036.htm


茨城産パセリから基準超えセシウム 新潟県発表

2011年5月13日(金)  茨城新聞
新潟県は12日、同県上越市の卸売市場に入荷した茨城県産のパセリから、食品
衛生法の暫定基準値(1キログラム当たり500ベクレル)を超える放射性セシウムを
検出したと発表した。新潟県で流通する野菜から基準値を超える放射性物質が
検出されたのは初めて。小売店には流通していないとしている。

新潟県によると、パセリは行方市の生産者団体が出荷。12日に採取して調べた
結果、セシウム1110ベクレルを検出。放射性ヨウ素も同210ベクレル(暫定基準値
2千ベクレル)が検出された。
http://www.ibaraki-np.co.jp/news/news.php?f_jun=13052156967769


汚泥焼却灰から放射性物質 都下水処理施設で3月採取

2011年5月13日20時53分 共同通信 
 東京都内の下水処理施設で3月下旬に採取された汚泥焼却灰から、1キロ
グラム当たり17万ベクレルの高濃度の放射性物質が検出されたことが13日、
都への取材で分かった。焼却灰は既にセメントなど建設資材に再利用されたと
いう。

 都下水道局によると、検出された施設は「東部スラッジプラント」(江東区)。
同時期に大田区と板橋区の下水処理施設2カ所でも汚泥焼却灰から
10万~14万ベクレルの放射性物質が検出された。

 1カ月後に再調査し、3施設の放射性物質は1万5千~2万4千ベクレルまで
低下したことを確認。物質が放射性セシウムかどうか特定を進めている。

 一方、宇都宮、前橋、横浜の各市も13日、5月に採取した汚泥などから
放射性セシウムを検出したと発表した。

 宇都宮市によると、市の5施設で6日に採取した汚泥焼却灰や汚泥を検査。
川田水再生センターの焼却灰から2万6千ベクレル、下河原水再生センターの
汚泥から4300ベクレルを検出した。

 前橋市によると、前橋水質浄化センターで9日に採取した汚泥焼却灰から
4万1千ベクレルを検出。汚泥は1844ベクレル、高温処理した溶融スラグは
1万7090ベクレルだった。

 横浜市によると、南部下水道センター(金沢区)で6日に採取した汚泥焼却灰
から約5千ベクレル、汚泥から約240ベクレルを検出。北部下水道センター
(鶴見区)の汚泥は約千ベクレルだった。
http://www.47news.jp/CN/201105/CN2011051301000689.html


下水汚泥焼却灰から高濃度セシウム 県3処理場

2011年5月9日(月)  茨城新聞
福島第1原発事故に伴い、県は9日までに、県の3カ所の下水処理場で処理した
脱水汚泥と焼却灰を検査し、焼却灰から高い値の放射性セシウムが検出されたと
発表した。県は残りの処理場についてもできるだけ早く検査を実施するとし、
国に対して早急に基準値や安全な処理方法を示すよう要望した。

県下水道課によると、放射性物質の測定は、県流域下水道の那珂久慈浄化
センター(ひたちなか市)と霞ケ浦浄化センター(土浦市)、さしまアクア
ステーション(境町)でそれぞれ処理した脱水汚泥と焼却灰を採取して実施した。

検出された放射性物質のうちセシウムは、那珂久慈が脱水汚泥1キロ当たり
493ベクレル、焼却灰同1万7020ベクレル▽霞ケ浦が脱水汚泥同716ベクレル、
焼却灰同7545ベクレル▽さしまが脱水汚泥同252ベクレル(焼却処理して
いない)―で、焼却灰の値が高かった。ヨウ素はそれぞれ不検出~300ベクレル
だった。那珂久慈が3日、霞ケ浦、さしまが4日に採取した。

県は、放射性物質を含む雨水が下水道に流れ込んだのが原因とみている。
焼却灰は汚泥の約20分の1のたい積に圧縮されるという。

県は、放射性物質を含む汚泥などの取り扱いに関して国の基準がないことから、
念のため焼却灰の建設資材への利用を休止し、脱水汚泥や焼却灰の保管
場所への立ち入り制限などの措置を取った。

国に対して、下水汚泥などに含まれる放射能量の基準値や安全な処理方法に
ついて早急に方策を示すよう求めている。

県は、残り5カ所の処理場についても早急に検査を実施する方針。県内市町村が
運営する処理場でも検査を実施する動きが出るとみられる。

下水汚泥などの放射性物質の検査をめぐり、福島県は今月に入り、郡山市内の
処理場の脱水汚泥から1キロ当たり2万6400ベクレル、溶融スラグから同33万
4千ベクレル、堀河町内の処理場の脱水汚泥から同44万6千ベクレルの
セシウムが、それぞれ検出されたと発表している。
http://www.ibaraki-np.co.jp/news/news.php?f_jun=13049449607726


福島のアユ基準値超す 淡水魚で初、ワカサギも

2011年5月13日23時46分 共同通信
 福島県は13日、福島県で採取したアユとワカサギ、シラスから食品衛生法の
暫定基準値(1キログラム当たり500ベクレル)を上回る放射性セシウムを
検出したと発表した。魚類で基準値を超えたのはコウナゴに続き、淡水魚では
初めて。

 福島県によると、いわき市のアユから720ベクレル、北塩原村のワカサギから
870ベクレルのセシウムを検出。いわき市沖のシラスからも850ベクレルの
セシウムが出た。

 ヒラメやマコガレイ、ミズダコなどは基準値を下回った。
http://www.47news.jp/CN/201105/CN2011051301001175.html


放射性物質、上空6~8キロに滞留 福島大が観測

2011年5月12日 福島民友ニュース
 福島大は11日、高層気象観測装置「ラジオゾンデ」を使った大気中の放射性
物質の観測結果を公表した。県内の上空6~8キロ付近で毎時5マイクロ
シーベルトが観測され、同大は「通常はこの付近では出ない数値。原発事故の
影響は明らか」としている。同大によると、事故後に大気中の放射性物質の強度
分布を調査したのは初めて。

 観測では、4月15日から15日間、同大から観測装置を搭載した巨大バルーンを
飛ばし、上空25キロまで5メートル刻みでベータ線とガンマ線を調べた。毎日の
観測データを平均したところ、上空6~8キロ付近で最も高い数値が確認された。
http://www.minyu-net.com/news/news/0512/news2.html


3号機の高濃度汚染水流出 海水に1万8千倍セシウム

2011年5月11日20時38分 朝日新聞
 東京電力は11日夕、福島第一原子力発電所3号機で取水口付近の汚染水を
防ぐために設置されたシルトフェンスの外側の海水から、海洋に排出できる国の
基準の濃度の約1万8千倍のセシウム134を検出したと発表した。2号機から
高濃度汚染水が流出したことがあるが、3号機で確認されたのは初めて。
東電は応急の流出防止策を講じた。

 東電によると、11日午前10時半ごろ、作業員が3号機の坑道とつながっている
作業用の穴(ピット)で、電線を通している空洞部分から高濃度の放射能汚染水が
流れ出ているのを確認した。ピットの海側部分にひび割れがあり、海に漏れていた。
東電は空洞をコンクリートでふさぎ、午後6時45分に水の流出を止めた。

 3号機取水口のシルトフェンス外側の海水は、ヨウ素131も1立方センチあたり
96ベクレルで基準の2400倍だった。フェンス内側の海水はヨウ素131が同
190ベクレルで約4800倍、セシウム134は同1900ベクレルで約3万2千倍
だった。ピット内は、ヨウ素131が同3400ベクレルで8万5千倍、セシウム134は
同3万7千ベクレルで62万倍だった。

 3号機のタービン建屋地下には、高濃度の放射能汚染水がたまっている。東電は
その汚染水が流れ込んだとみている。東電原子力・立地本部の松本純一本部長
代理は「汚染水の流出はフェンスである程度は抑えられるが、完全ではない。
最悪の場合は海へ流れ出る可能性もある」としている。

 東電は同日午後、福島県や周辺市町村、近くの漁協に水漏れの事態について
連絡。さらに、政府も米国や周辺諸国、その他の国の在外公館に連絡した。

 2号機の取水口で漏れが見つかった時は、ヨウ素131が30万ベクレルで国の
基準の750万倍、セシウム134が12万ベクレルで200万倍だった。2号機の
流出後、東電は取水口の周囲などをフェンスで覆ったが、今月10日現在、
2号機のフェンスの外側ではヨウ素131は1立方センチあたり2.1ベクレル、
セシウム134が同1.3ベクレルまで下がっている。

 政府・東電統合対策室事務局長の細野豪志首相補佐官は「今回同じような
水漏れが起きたことは、極めて重大な問題と感じている」と話す。(坪谷英紀)
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201105110351.html




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明日に向けて(111) 「1号機メルトダウン」公表の意味するもの。

2011年05月14日 10時00分00秒 | 明日に向けて5月1日~31日

守田です。(20110514 10:00)

5月12日、東京電力は、福島第一原発1号機でメルトダウンが起こっており、燃料棒が崩壊して圧力容器に数センチの穴をあけ、格納容器下部に落下していると思われると発表しました。

またその格納容器もどこかが破損していて漏れており、水を入れても入れても、満水にできないこと、事実上、水棺化の道が厳しいことも公表しました。これをめぐってネット上でも深刻だという受け止めが多く流れているようです。

しかし僕は、なんでいまさら・・・という第一印象を受けました。「そんなこと、すでに分かっていたじゃないか」と僕には思えた。しかし暫くして、「今更ながらこの事実から引き出すべき重大な何かがあるのでは」とも思えてきた。

それでちょっと、頭の中の「東北の旅モード」をオフにし、「原発解析モード」をオンにし、科学者の友人と交信しながら、あれやこれや調べてみました。その結果、浮かんできた推論をここに述べてみたいと思います。


1号機で起こったのは、おそらく冷却材喪失事故

まず1号機でメルトダウンが起きた問題で重要なのは、なぜ、どのようにして、それが起きたかでしたが、元日立の設計士・田中三彦さんは、3月下旬に重要な解析を行い、原子力資料情報室の会見で明らかにしていました。

田中さんが着目したのはこのころにやっと明らかになった各原子炉のパラメーターでした。それを解析して田中さんは、事故直後に1号機で、冷却材喪失事故が起こった可能性が高いことを示唆されました。

当時、東電と政府は、起こった事故は電源の喪失であると語っていました。冷却ポンプが動かなくなり、緊急冷却装置も作動しなくて、水を送れなくなった。そのために冷却ができなくなったと言っていた。

しかし実際に起こったと思われるのは、炉内にたまっていて、燃料棒を包んでいた水も、一気に抜けてしまったことでした。原因として考えられるのは、配管系統の深刻な破断などでした。

このため、燃料棒は一気にむき出しになり、高温化していった。このため被覆管のジルコニウムが水素を出しながら溶けていき、中にある燃料ペレットがバラバラ下に落ちた。しかもペレットも高温化し、溶け出した。

これは水が送れなくなったことよりも、はるかに重大な事態でした。水を溜める機能に何らかの損傷が起こったからです。それの持つ意味を田中さんは社会的なものと、技術的なものに分けて説明された。

何と言っても重要なのは、このとき、1号機はメルトダウンが原子炉格納容器の破断を引き起こし、破局的な事故に発展する可能性があったことでした。にもかかわらず、東電と政府はそれを住民に伝えるべき義務を怠った。

同時に技術的には、この事態は1号機が何らかの深刻な損傷を抱えており、冷却のための水の保持が困難になっていることを浮上させていました。修復の困難さが、この解析の中で浮かび上がってきたのです。

これについて、僕は「明日に向けて(5)」3月28日で特集しました。詳しくは下記をご覧下さい。
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/c587a4b12542da359d0ea03a16079ab4


メルトダウンは、燃料棒をさし込んでいる場所から

さらにメルトした燃料がどのようにダウンしたのか。とくにどのように原子炉圧力容器を破って、その周りの原子炉格納容器の中に漏れたのかについても後藤政志さんが同時期に的確な分析を行っています。

実はこのとき、東電と政府は、タービン建屋などからみつかった、「高濃度」放射能汚染水に関する発表を繰り返していました。1CCあたり、何万倍の濃度のものがでてきた・・・という話にすべてのマスコミが引き寄せられていた。

このドサクサにあたかもまぎれるように、東電はこの時期に、実は幾つかの炉で、燃料が圧力容器の外に漏れていると考えられると既に発表しています。これに対して後藤さんが、汚染水問題よりもこちらが大事だと反応した。

後藤さんの分析は、原子炉圧力容器の下の部分に制御棒駆動機構(CRD)ハウジングがあり、この溶接部分が弱いので、そこから漏れ出して、次第に穴が大きくなったのではないかというものでした。

これらの点を僕は「明日に向けて(11)」3月31日に特集しています。こちらも詳しくは下記をご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/4ad01f5065eb7cf60592bf49d0fbe518


「1号機メルトダウン」の意味するもの

この点をまとめるならば、「1号機メルトダウン」の意味するものは、東電と政府が、冷却材喪失という、およそこれまて考えられてきた最悪の事故が起こったこと隠していた事実の露見です。これが追求されなければならない。

しかし時間が置かれることによって、すっかりこれがぼかされてしまっている。いわば「ほとぼりが冷めて」からこの事態は公にされたのです。もちろんマスコミはどこもこの重大なポイントに気づいていません。残念なことです。

第二に、水棺化は、事故を数か月で収束に向かわせる展望を、東電や政府が有しているような幻想を国民や住民、また海外にアピールするためにのみ行われたのではないかと思われることです。

東電や政府は、1号機の深刻なトラブルを知っていたはずです。実は水棺化はそれを確認するためになされたのかもしれない。水が漏ることを承知の上でどれぐらい漏れるか確かめたのではないかとすら思えます。

しかし第三により深刻な事態が横たわっており、それが今回もどさくさまぎれに語られているのではないか。そしてそれが何かと言えば、プルトニウムなどの物質が漏れ出しているという重大なことなのではないか。

というのは焦点をメルトダウンがこれ以上進むのか否かよりも、メルトダウンで何が漏れ出したのかに移してみるならば、起こっていたのは燃料ペレットが溶ける事態であり、必然的に中のものが漏れ出す事態だったことが分かります。

もちろん、破局的な爆発が恐ろしいのは当然ですが、実際にはそうした爆発が起こらなくても、燃料ペレットが溶けてしまったのであれば、当然にも深刻な放射性物質の漏えいがかなり深刻になっている可能性がある。

メルトダウンを知っていた東電と政府は、本来、早くからこのことに取り組み、各地で、プルトニウムをはじめとした超ウラン元素などを計測すべきであった。それを行ってきていないことが何よりも追求されねばならないと思えます。


なぜ通常は固体のプルトニウムが漏れるようになるのか?

その場合、もう少し整理しておく必要があることは、通常は個体で、融点や沸点が高いプルトニウムがなぜ、どのように漏れてくるかの仕組みです。プルトニウムの漏れにくさを強調する科学者もいるのでこの点は重要です。

核燃料が水素爆発を起こす温度よりも高温にさらされ、かつ燃料損傷が起きる状況が続くと、ヨウ素やセシウムがでてきますが、続いて、通常は固体であるストロンチウム、プルトニウムなどの放射性物質もエアロゾル化しやすくなります。

エアロゾルとは「気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子」と定義されるものですが、ストロンチウムやプルトニウムも、煙などに含まれて大気中に放出されれば、ヨウ素やセシウムと同様に、広範囲に拡散するのです。

これは、故高木仁三郎さんが強く訴えてきた問題です。ちなみに高木さんは、原子力関係の会社に勤めていた時に、このことに気づいて会社に提言書を出し、「君は企業人には向いてない」と言われて、悩みだしたと回顧しています。

実際に今回は、すでに、テクネチウム、ランタン、ストロンチウムなど、同じく飛散しにくいと言われている固体の放射性物質が原発敷地よりも100km以上も外部でも検出されており、プルトニウムなども飛散している可能性を物語っています。

科学者の友人によると、そのデータからは、SPEEDIなどによる想定以上に固体の放射性物質の漏洩・飛散状況が深刻であることも示唆されているといいます。SPEEDIはその点の想定が甘いのだそうです。

しかし最近になって公表されたそのSPEEDIのデータにおいても、ストロンチウムやランタンやイットリウムなど、固体の放射性物質の外部漏洩が予測されています。核燃料の固体の揮発性は、深刻な原子炉事故解析の重要なパラメータの一つです。

またこれまで「プルトニウムなどの重元素は融点も高く、飛びにくい」とも言われてきたのは、燃料棒の温度が比較的に低く、圧力容器や格納容器の健全性も維持されている場合で、現状はその前提が大きく崩れていることも重要です。

これらからも一刻も早く、固体の放射性物質・・・なかでもウラン、プルトニウム、超ウラン元素、ストロンチウムなどの内部被ばくの危険性が高い核種について、かなりの広範囲でに汚染状況の調査・分析が求められます。

このことは、もっと声を大にして言わなくてはならないことです。ぜひヨウ素やセシウムの汚染が確認されている各地で、続けてこれらの物質を測定せよという声をあげてください。


まとめます。
1号機のメルトダウンの公表から私たちが現時点で引き出すべきもっとも重要な点は、燃料溶解と原子炉圧力容器および格納容器の破断により論理必然化する、プルト二ウムなどさまざまな放射線核種の漏えいです。

メルトダウンがこれ以上、進むかどうかの推論よりも、何よりもこれらの物質の計測と、防衛的対処が急がれるべきです。今、現に目の前に猛毒の物質がありながら、それが認識されていないかもしれないからです。

とくにプルトニウムなど、α線という、ほとんど飛ばずに、内部被ばくで深刻な害をもたらす放射線を出す猛毒の物質が出ているのならば、現在のモニタリングポストなどの値は、目安としてもまったく不十分であることが見えてくる。

ガイガーカウンターでもほとんどα線は測れないのです。だからこそ専門的な徹底した計測が問われます。これが今、何よりも必要だと僕は思います。

同時に、私たち自身も、放射線被ばくからの身を守ることを、一層、真剣に一生懸命に行っていく必要があります。「1号機メルトダウン」という事実から受け止めていくべきことは何よりそこにあると僕は思います。

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1号機は「メルトダウン」…底部の穴から漏水

2011年5月13日01時33分 読売新聞
 東京電力福島第一原子力発電所1号機で、原子炉内の核燃料の大半が溶融し、高熱で圧力容器底部が損傷した問題で、東電は12日、直径数センチ程度の穴に相当する損傷部から水が漏れていると発表した。

 溶融した燃料は圧力容器の底部にたまっていると見られ、東電は、この状態が、核燃料の「メルトダウン(炉心溶融)」であることを認めた。

 東電はこれまで、燃料の一部損傷などと説明していた。

 東電は、圧力容器の温度は100~120度と安定しているため、事態がさらに悪化する可能性は低いと見ているが、圧力容器を覆う格納容器からも水が漏れだしている可能性が高く、格納容器を水で満たす「冠水(水棺)」など事故収束に向けた作業は難航も予想される。

 東電の松本純一原子力立地本部長代理は同日夕の記者会見で「燃料が形状を維持せず、圧力容器下部に崩れ落ちた状態」と現状を説明し、メルトダウンを認めた。

 東電によると、1号機では現在、燃料を冷却するため圧力容器内への注水(毎時約8トン)が続き、累積注水量はすでに1万立方メートルを超えている。ところが、10日に圧力容器の水位計を調整した結果、冷却水の水位が容器の底部から最大4メートル程度しかないことが判明。この漏水量から圧力容器の損傷を計算したところ、直径数センチの穴に相当することが分かった。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110512-OYT1T01114.htm

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1号機、燃料棒すべて落下の可能性と発表

2011年5月12日13時54分 読売新聞
 東京電力は12日、福島第一原子力発電所1号機の原子炉圧力容器の水位が、当初の想定より大幅に低く、完全露出した核燃料が、容器底部に落下しているとみられると発表した。

 原子炉を冷やすため水で満たす冠水(水棺)作業が進む格納容器内の水位もはっきりせず、水は漏れだした可能性が高い。東電は「圧力容器の温度は100~120度と安定しているが、冠水作戦は再検討が必要」と説明し、毎時約8トンの注水量を増加させる検討を始めた。

 東電によると、圧力容器の水位は、10日から原子炉建屋内に入った作業員が水位計を調整して判明。これまで水位は、燃料頂部から約1・6メートル低い位置で事故直後からほとんど変化しなかった。そのため、水位計を調整したところ、燃料頂部から5メートル以上低いことが明らかになった。燃料は長さが約4メートルであることから、完全に冷却水から露出した状態。東電は、既に燃料の大半は
溶けたり、崩れたりして、底部に落下したとみている。経済産業省原子力安全・保安院は、圧力容器の温度も低いことから、「燃料は容器底部にたまった水によって冷やされている」と指摘した。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110512-OYT1T00529.htm

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